股関節痛は怖くない!~変形性股関節症の新しい考え方

変形性股関節症の常識には間違いが多く、怖さを抱えている人が多い。
常識の間違いを理解して人生を楽しみましょう!

筋力低下についてのお話②

2006-01-20 02:28:54 | Weblog
前回に引き続き筋力低下の原因について説明しましょう。

3、筋肉の病気による筋力低下

筋肉の病気による筋力低下は非常に重要ですので先にも説明してきました。
筋肉が病気になると、筋肉は収縮したまま固まってしまいます。
正式には筋・筋膜症候群といいますが、この病気では筋肉内に疲労物質である乳酸が溜まってしまい、やがてセロトニンなどの発痛物質(痛みの物質)が筋肉内に溜まりますので痛みが出やすくなります。

前回説明しましたように、筋肉は痛みがあると筋力があるのに筋力が出なくなります。また、痛みの原因が筋力を出す筋肉自体にあるとき、筋肉の収縮力は低下しますので筋力はさらに発揮できなくなります。
変形性股関節症で、脚をかばうことにより細くなった脚の筋肉に病気が起きると、いろいろな筋力低下の原因が重なり筋力が弱くなったようにみえるのです。

筋・筋膜症候群の代表的な症状は痛みですが、放っておくと痛みは筋膜や骨膜に沿って広がります。筋・筋膜症候群の1つである肩こりを放っておくと頭痛やめまいや吐き気が出るように、股関節痛も腰や膝の痛みとして広がっていきます。
こういう時でも、病院では膝や腰のレントゲンを撮るんですね・・・膝や腰の軟骨に少しでも異常があると、それを痛みの原因だと説明するんですよね・・・それでも、痛みを取ってくれればいいんですけど・・。なかなか痛みを理解してもらえないことが多いんですよね・・・。レントゲンに異常がない時には何と説明するんでしょうね・・・?

筋肉の病気をさらに放っておくと、異常に疲れやすくなったり、精神的に落ち込んだり、自律神経障害や免疫力の低下を招きます。
股関節周囲の筋が筋・筋膜症候群になり放っておいた場合、長距離歩けなくなったり、骨の変形が進んだり、不眠症になったり、風邪を引きやすくなったり、急に膝に力が入らなくなったり、背中が痛かったり、肩がこったり、寝違えを起こしやすくなったり、足首まで痛くなったり・・・・様々な症状が出てきます。
皆さんにはこのような症状はありませんか?

もちろん、脚の太さが違う人は脚のアンバランスな使い方を腰や背中や肩や首でバランスを補っている為に、また、杖を強くついているため腕や肩の筋肉で体重を支えている為にいたるところの筋肉を、無意識に多く使っていることも関係しています。

私が今書いたことは、私の経験にもとずく想像で書いたものではありません。
以前紹介しました、滋賀医科大学の横田先生の著書にも書かれていますし、病院でリハビリを担当する理学療法士という資格を持った先生方の間では、常識的になってきている理論です。

筋肉が病気になると、筋肉は縮んで循環が悪くなります。
ですから、筋肉の病気の治療法は筋肉を伸ばすことなんです。
筋力トレーニングは、筋肉を収縮(縮む)させる方法です。股関節痛がある時は、筋力トレーニングよりも筋肉ストレッチのほうが効果的なんですねぇ。

子供の頃、アキレス腱を伸ばす運動をした覚えがありますよね。あれが筋肉ストレッチです(下腿三頭筋:ひふく筋とひらめ筋:のストレッチです)

しかし、一般的に言われている“筋肉ストレッチ”もいいのですが、それよりももっと効果的な筋肉ストレッチがあります。それは筋肉を直接押して筋線維を伸ばす方法です。


筋肉のストレッチにも2種類あるのです。

1、間接ストレッチ→効果が低い
2、直接ストレッチ→効果が高い

自分で行う筋肉ストレッチ体操は、一見筋肉は伸びるのですが、筋肉の中の一部分に発生している筋肉のコリが伸びない可能性があるのです。
ですから、いわゆる筋肉ストレッチといわれている体操は、間接ストレッチと呼ばれています。あくまでも間接的なんです。ですから効果も低いんです。

これに対して、筋肉のコリを直接押す方法を直接ストレッチと呼びます。
硬くなった筋肉の一部(コリ)の筋線維を直接伸ばしますので効果は高いのです。
股関節は人体の深いところにありますので、やや強めに押さないと効果が出ない場合があります。極端に言うと、表面の脂肪だけ押しても筋肉の痛みは取れないということです。脂肪のすぐ下の筋肉を押しても痛みが取れないことがあります。筋肉は幾重にも重なり、関節に近い深層筋に痛みが出ることが多いのです。

表面の筋肉の病気はマッサージや指圧で取れることはあります。しかし、深層筋となるとかなり強く押すことも必要なので、なかなか皆さんの痛みを取ってくれる先生がいないのです。しかし、まったく筋肉のお手入れをしない人に比べると、マッサージや指圧で手入れしている人のほうが、遥かに筋肉の状態は良いようです。
かなり強く押すと、指は痛いし、肩はこるし、疲れますもん。これが、かなり強く押す先生が少ない理由でしょうか・・・・。

私も筋肉がコリやすいタイプのヘナチョコ野郎です。
ヘナチョコ野郎は関係ないですね。
ですから、いろんなところで施術も受けますが、なかなか満足できません。
押し方が弱いところには二度と行きません。誰か、良い先生をご存じないですか?・・・・ナーンチャッテ。


私は、薬局で快癒器(かいゆき)というのを買って、背中や腰の下に入れて寝て、自分の体の重さで押しています。
昔から、中山式快癒器というのがあって、和歌山の山の中で育った私でさえ、子供の頃すでにうちのおばあちゃんが使っていたのを覚えています。今でも薬局に置いてますよ。いろいろ工夫しながら、快癒器を使いこなしている患者さんもいますよ。快癒器友の会を作って私も頑張っています。(うそです)

また、ももが痛い時やだるい時は、ビール瓶で筋肉を叩くようにしています。(本当です)
私はけっこう強く叩きますが、皆さんは強く叩くというよりビール瓶の重さを利用して、重さで叩くといいでしょう。腕が疲れない範囲にしてくださいね。
けっこう楽になりますよ。皆さんも、痛いところを叩いてみてはいかがですか?
ただし、骨は叩かないで下さいね。骨を叩いても、コツという音だけで、まったく意味無くただ痛いだけですから。
後は、自分で触診して股関節の炎症が無ければ、どんどん温めることですね。

「筋肉を強く押すと、筋肉に炎症が起き、さらに筋肉が硬くなります。」という先生がいます。そのような先生には「先生は強く押したことがありますか?」って聞いてください。私はもう10年も強く押していますが、押すことによってよって悪化した人は見たことがありません。もちろんもともと炎症がある場所は押しませんし、押し方の上手下手はあると思いますが。

また「筋肉を強く押すと痛みが取れるのは知っていますが、そんなことをしたら指が壊れてしまうので、私は押しません。」という先生もいました。
ちなみに私の指は壊れていません。

プレート療法という治療法があります。木片を皮膚に押し付けて押す方法です。
理論は一緒ですので上手な先生を見つけるといいかも知れません。以前、私の患者さんが一度受けたました。私は付き添いのフリをして見学しました。
見学していて、「これは駄目かな・・・」と思っていたら、終わったあと患者さんが私の方を見て手で×をしました。浅いところの筋肉の押しが弱いし、深いところに力が届かなかった。とその患者さんは言いました。先生しだいだと思いますが、基本的にプレート療法で効果がある可能性はあります。

しかし、同じ押すのであれば、神経の行き届いた指や肘で押せばいいのに・・・と思ってしまうのであった。
人間の身体は利口で、私の親指や肘は筋肉の細い線維まで感じるようになりました。初めて押した時なんか、どこに何があるかわからなかったのに(解剖学はしっかり勉強していましたよ)・・・。何回も押していると、指も肘も壊れるどころか、どんどん強くなって神経が研ぎ澄まされていくのです。人間ってすごい

これは私の持論ですが、“人の心と身体を楽にする仕事の人は、自分が楽をしていては駄目だ!”

なんか変な終わり方になりましたが、筋肉の病気は、かなり筋力が低下したように見えることがあり、筋肉の病気が治るとすぐに筋力が出るようになるということをご理解いただきたいと思います。


4、脚の長さが短くなる為の筋力低下

筋肉というのは、ある一定の長さの時に最大の筋力が出るようにできています。
これは事実です。
肘を曲げる筋肉(上腕二頭筋:じょうわんにとうきん)を例にとると、上腕二頭筋は肘を伸ばしたときに最も伸びて長くなります。この時には力は出にくくなります。また、肘を深く曲げたときには最も縮んで短くなります。この時にもあまり力は出ません。しかし、肘を90度くらい曲げた時には、しっかり筋力が出るのです。てこの作用も関係していますが、一般的に人間の筋肉は、最も力が出る長さにできていて、最も力の出る関節の角度があるのです。

正常の股関節の場合、大腿骨頭(だいたいこっとう)は非常にきれいな円形をしています。しかし、変形性股関節症患者さんの場合、変形(実は修復なんですけど)のおかげで、円形がつぶれて楕円形のような形になる場合があります。

円が楕円になりますので、結果として大腿骨は短くなるのです。

皆さんの中で片脚だけが短い人がいますね、気がつきにくいのですが両方の脚が以前より短くなっている人もいますね。以前はいていたズボンなんかをはくとわかるかもしれません。


脚が短くなる理由はいくつもありますが、7つほど挙げてみます。

1、骨盤が傾いている。
2、大腿骨頭の形が楕円形になっている。
3、膝や股関節の軟骨が減っている
4、股関節か膝関節が曲がったまま伸びない。
5、手術で骨を切っている。
6、以前何らかの理由で骨折などをして骨が短くくっついている。
7、脊髄性小児麻痺(ポリオ)などによって骨に発育障害がある。

この場合も、なぜ脚が短くなっているのかという原因を突き止めないと、適切な対策はできません。仰向きに寝ると片方の脚が短いから、靴の中に中敷を入れて調整すれば良いという簡単なことでは解決できないことがあります。

上記の1、と4、は脚が短くなっているように見えるだけの可能性があります。
1、は骨盤を元の位置に戻すことが対策になります。4、は関節の動きを良くする事が対策です。
他は、脚の長さが骨や軟骨の長さの変化によって起きている可能性が高いので靴の中敷や踵を高くすることによって脚の長さをそろえるべきです。脚の長さにも左右差はよくありません。長いほうの脚の膝関節周囲に痛みが出たり、腰や肩に痛みが出やすいからです。

人間の身体は利口で、脚の長さが違う場合は体全体のバランスがとりやすいように骨盤を傾けたり、背骨が横に曲がったりするんです。脚の長さが違うとき、背骨が曲がったり骨盤が傾くのは、バランスを良くしてくれているのです。
ですから、いきなり、中敷などを高くして脚の長さを合わせると、最初は痛みが出ることもあります。曲がっていた骨盤や背骨が元の戻ろうとするからです。ですから、中敷などは徐々に高くしたほうがいいですね。

なぜ、脚が短くなる話をしてきたかというと、脚が短くなるのは骨と軟骨に何か異常が生じた時に起こるということをご理解していただいたうえで、次のことをを理解していただきたかったのです。


脚が短くなる(骨が短くなる)ということは・・・

●骨が短くなるのと一緒に、筋肉、神経、血管も短くなるということです!

このことを良く覚えておいて下さい。


5、手術による筋力低下

手術は人工的なケガです。手術をするとケガの影響で筋力が出にくくなります。ましてや、手術直後は人工的なケガの痛みによりさらに筋力が出ない状態ですね。
手術によって骨はかっこよくなり正常に近づきます。しかし、骨まで達するまでに切られた筋膜や靭帯や筋肉は手術することによって正常から遠のくのです。
よく考えるまでも無く当たり前のことですね。
長年脚が短く、筋肉や神経や血管が縮んでしまっている人が、人工骨の手術を受けると急に2~3cm脚の長さが伸びるんですよ。つまり骨を元の長さに戻すのです。これは良いことですが、手術によって筋肉や神経や血管も急に2~3cm伸ばされるのです。かなり縮んでいた筋肉などはびっくりしているでしょうね。筋肉がかなり縮んでいると、急に伸ばされた痛みも出るでしょうね。
手術後に痛みが出て先生にそのことを言うと「手術はうまくいってますよ。」と言うでしょう。レントゲン上骨は正常に近づいているのですから。手術が失敗することはほとんどありません。しかし手術後に痛みが出る人はいるのです。そのような方は「手術が失敗した」と言います。
痛みのことを何回も言って先生に怒られた人もいます。「あなたの骨が悪かったんだね」「あなたのリハビリの方法が悪いのです」と言われた方もいました。
もしも、現在そのような状態の方がいたら、骨以外のことに痛みの原因を求めてみてはいかがでしょうか?手術は成功しているわけですから、自信を持って他の治療法を探しましょう。

手術によっては、大腿骨を切って角度を変える手術をする人もいます。
この場合も筋肉の両端の位置関係が変わるので筋肉の長さが変わる可能性があります。重力のかかる位置も変わることがあります。(アライメントの変化と言います)その場合、10年後くらいに、骨盤が極端に傾き脚が内側に曲がってしまう方がいます。
手術後も、気を抜かずにお手入れは必要だと思います。病院の先生方には、長期間の追跡調査をしていただきたいと思います。手術が終わったら私の役目は終わりです・・・みたいな先生がいますが、もっての外です。一生患者さんと付き合う気持ちがないと股関節専門なんて言えないように思います。
この考え方は私の持論ですが、間違っているかもしれません。
私は、股関節を専門に診ようと決断する時に、このことで悩みましたが、一生診ると決めて決意しました。

ただ、問題が2つあります。
1、こっちはそのように決意しているのに、患者さんが去っていく・・・仕方ないですよね。!
2、患者さんより先に死ねない。先に死んだら許してね。
先に死なないように、長生きしながら後継者を育てないといけないですね。ただ、後継者に知識と技術を教えても、優しさというか・・・魂の性質というか・・・
伝えきれないものを感じます。難しいですね、皆さん誰か紹介してください・・・魂の性質の優れている人を・・・・。

最近の傾向として、入院日の短縮化、手術の傷の短小化があります。
手術の傷の短小化は、できるだけ筋肉や筋膜や靭帯を傷つけないようにすると言う意味でよい傾向だと思います。ただ、入院を短縮する為に早い時期から立たせたり歩かせたりするのはどうでしょうか?筋力の出にくい股関節に体重をかけることは良いことでしょうか?内部の切られたところに負担をかけても良いのでしょうか?

私は手術に立ち会ったことがけっこうあります。その時の先生に教わったことは「内部がしっかりくっつくには、5~6週間かかるんです」と言うことでした。
私はこの言葉を今でも信じています。表面の皮膚のくっつき方とは違うはずです。
その状態で、早く立たせる意味は何でしょうか?
入院日が早い病院ほどいい病院的な風潮があるように思います。医学は進歩しています、しかし、人間の身体は進歩していないと思うのですが・・いかがでしょうか?私の中ではまだ疑問程度のことですが、これから手術を受ける患者さんには「手術後は一生懸命リハビリはやらないで下さい」と言って私の考えをお話ししてとにかく手術前に筋肉などを柔らかくすることを心がけています。
ちなみに、人工骨の手術の入院期間は4週間になりつつあります。

  
変形性股関節症患者さんの筋力低下は、今までに説明した筋力低下の原因が2つや3つ重複していることが多いです。
筋力低下=筋力トレーニングだけではないということをご理解いただければと思います。

変形性股関節症を怖がらないでね