股関節痛は怖くない!~変形性股関節症の新しい考え方

変形性股関節症の常識には間違いが多く、怖さを抱えている人が多い。
常識の間違いを理解して人生を楽しみましょう!

診療の間違い②

2006-01-11 01:05:10 | 診療のこと
変形性股関節症に対する病院での診察と治療(診療)には間違いとして以下の4点を挙げて、①については前回説明しました。

診療の間違い
①触診を行わず、レントゲン中心の診療であること。
②患者さんの個人差を無視したワンパターン診療であること。
③患者さんの心を無視した診療であること。
④説明内容、指導内容自体にも間違いがあること。


今回は①の説明で不足していた股関節の位置について説明した後に②について説明しますね。


●股関節の位置
 皆さんは「股関節が痛い。」と言いますが、股関節の正確な位置をご存知ですか?
「股関節が痛い」と「股関節の周りが痛い」とでは大きな違いがあります。
正確な股関節の位置を知ることは、自分の股関節の触診に役に立ちますし、自分で自分の股関節が触診できることは、股関節に炎症があるのか無いのかと言う判断に役立ちます。
基本的に、レントゲン上いくら骨や軟骨に変形があろうとも、股関節に炎症が無ければ、股関節の症状は落ち着いていると考えます。
骨や軟骨の変形と股関節の炎症は一致しません。

股関節の正確な位置
皆さんが椅子に座った時に、ももとお腹の間にシワができますよね。
腰骨~股の内側までシワがあるとして、そのシワのほぼ中央(ももの上のほぼ中央)に動脈の脈を感じるところを探してください。
その脈の中に股関節があります。
皆さんが思っているより意外と内側ですよ。
皆さん股関節を軽く押してみてください。

ここが実際に痛みを感じる場所ですか?

軽く押してみて痛みを感じましたか?
どちらも「いいえ」と答えた方は、筋肉の痛みが股関節痛の原因である可能性が高いと考えましょう。
病院では股関節の痛みではなくとも「股関節周囲の痛みは、股関節から来る痛みです。」と説明されるでしょう。
その説明には根拠がありません。
筋肉痛が股関節痛の原因である可能性があれば、筋肉の治療をするべきですよね。
皆さん、よく覚えておいてください・・・

“筋肉にも病気があるのです!”
筋肉の病気について理解することは、非常に重要ですので後で詳しく説明しますね。
もしも、皆さんの股関節痛が筋肉痛であるとすれば、股関節痛は無くなる可能性があります。
実は、筋肉の病気が改善すると、骨と軟骨の変形の進行が止められる可能性もあるのです。
なぜなら、股関節への衝撃を吸収して股関節を長持ちさせるのは筋力です。
筋肉が病気になるだけで筋力が低下しますが、筋肉の病気を治療するとすぐに筋力が出るようになるのです。
正常な筋肉では、しっかり筋力が出て、股関節を守ってくれるからです。

前置きが長くなりましたが・・・次に診察の間違い②を説明しましょう。

②患者さんの個人差を無視したワンパターン診療であること。
 変形性股関節症患者さんは一人ひとり症状や治療が異なります。かなりの個人差があります。



個人差
1、変形性股関節症の原因の違い
2、変形性股関節症の経過の違い
3、変形性股関節症の治療方法に対する考え方の違い
4、骨や筋肉の質と量の違い
5、心の強さの違い
6、日常生活での活動量の違い
数え上げればきりが無いかも知れませんね。

重要なことは、同じ変形性股関節症でも個人差が実に大きいと言うことを理解することです。
これは、患者さんはもちろんですが、医療従事者もよく理解しなければならない事実です。
変形性股関節症は、もともと先天性股関節脱臼か寛骨臼蓋形成不全と言う病気が原因で起こる場合が多いです。
そして、症状が子供の頃から出ている人もいれば、40才前後から症状が出ている人もいます。
手術をすぐにしてでも動きたいと思う人もいれば、手術はできるだけ延ばしたいと考えている人もいれば、手術は絶対にしないと決めている人もいます。
治療法に対する色々な希望があると言うことは、通常は病院でも色々な治療法を準備しないといけないと思います。
「この病気の治療法は手術しかありません。」と言う先生は努力不足だと思います。
私の患者さんには、絶対手術はしない!と決めている人がいます。
「あなたは手術しないんだから、もううちの病院には来ないでください。」と言われ憤慨している人がいます。
「いずれ手術をするかも知れないけど、できるだけ股関節を長持ちさせたい」と言う人もいます。
「手術をするので、その前に筋肉をほぐしていただきたいのです」と言う人もいます。
「一度手術をしたが、もう2度としたくない」という人もいます。
私は一人ひとりの希望をかなえるような仕事をしています。
患者さん一人ひとりの希望にそえる治療の選択肢があった方がいいですよね。

骨や筋肉も個人差が大きいですね。
遺伝的な要素が大きいのですが、もともと骨が太くて強い人、骨が弱くて細い人、もともと筋肉が太くて力のある人、筋肉は細いが持久力のある人・・・。
人間の筋肉には2種類の筋線維があります。赤筋と白筋です。
赤筋は鍛えてもあまり太くなりませんが、筋肉の持久力に優れている筋線維です。つまり、疲れにくい筋線維です。
一方、白筋は鍛えると太くなり、筋肉の瞬発力に優れた筋線維です。
ただ、持久力が弱く疲れやすい筋線維です。
人間は赤筋と白筋の割合が一人ひとり違うのです。
ですから、同じ運動をしても、疲れにくい人と疲れて痛みが出やすい人がいるのです。
ですから、集団で同じ運動を行うことや「2Kgの重りをつけて、足を挙げて7秒間止める運動を20回やりましょう」という運動には危険性があるのです。
ましてや、筋肉が病気の状態で運動をさせることは股関節痛を悪化させることがあるのです。
皆さんは病気のときに運動をしますか?股関節が痛いから運動をするという考えには危険性があるのです!
ご安心ください。筋力トレーニングについての考え方についても後で詳しく説明しますね。

あとは、心の強さや素直さにも個人差がありますよね。誰でも病気になると心にストレスを感じます。
心の強さとは、そのストレスが溜まりやすいか溜まりにくいかということです。
ストレスは血管を縮め筋肉を硬くしますので、ストレスだけでも筋肉が原因の股関節痛が出ることがあります。
例えば、股関節痛のレベルが10点の方がいて、治療によって6点まで改善したとします。この時に「やったー、4点も良くなったと笑顔になりストレスが少なくなるか、「あーあー、まだ6点も痛みがあると落ち込んでストレスを増やすかの違いです。

また、病院の先生の言葉なんかも心に強く影響しますよね。
中には言葉の暴力(ハラスメント)をふるう先生もいますからね・・・。
最後に日常生活での活動量にも個人差はありますよね。
仕事をしているかしていないか、ご両親の面倒をみているかみていないか、ご主人の協力が得られるか得られないか、家事を多くやらなければならないか他の人に任せられるか・・・などで生活の中での活動量にかなりの個人差が出ますよね。
このように患者さん一人ひとりの個人差が大きいということは、病院の診療では、このような個人差を良く調べながら一人ひとりに合った診療が行われなければなりません。
また、皆さんも他の患者さんと自分を比較してはいけないということですね。
皆さんの担当医は、ワンパターン診療を行っていませんか?
ワンパターン診療は間違いです。

ワンパターン診療の結果を鵜呑みにして落ち込まないでくださいね。


変形性股関節症を怖がらないでね