股関節痛は怖くない!~変形性股関節症の新しい考え方

変形性股関節症の常識には間違いが多く、怖さを抱えている人が多い。
常識の間違いを理解して人生を楽しみましょう!

変形性股関節症のタイプ分類(松本のタイプ分類)

2020-09-30 18:23:52 | 股関節の基礎

コロナ禍はやや収束の気配ですが、なかなか患者さんは戻ってきませんね。

 

 

🍓皆さんの股関節には歴史(長期経過)があります。

診療時にはその歴史の長さというものをしっかりと考慮しなければならないのですが、病院では現在のレントゲンだけで診療がなされることが多い印象があります。

 

そこで、『松本のタイプ分類』を世に広めたいと思っています。

今書いている本にもしっかり書きました。

 

松本のタイプ分類 このような分類を提唱する人がいないんだよね~

 

タイプ1 
子供の頃は股関節に異常感は全く無く、大人になって初めて股関節の症状が出てきた方々。

閉経時期前後から自然と股関節に痛みを感じ始めた方々がこのタイプ1になります。
子供の頃は活発に動けたのになぜ股関節の病気になったのか想像もつかず、過去に股関節に悪いことをしたのでは
ないかと自分を責めたり、「なんで私だけ」と悔しい想いで過ごされたりする時期があります。
歩いている時、急に痛みが出たり、急に足が前に出なくなったりすることから症状が出始まる方が多いです。

 

このタイプの方々は大人になってから炎症の山を迎えることが多いです。

従って、股関節痛の原因としては股関節関節包内の炎症が主体となる方々です。

 

 

 

タイプ2 
子供の頃先天性股関節脱臼があったとか、子供の頃から股関節の異常感があった方々はこのタイプ2になります。
子供の頃体育で開脚前転ができなかったり開脚不足で跳び箱が飛べなかったりとか、子供の頃に歩き方がおかしいなどと指摘された経験を持つ方が多いです。
また、子供の頃からあぐらがかけなかったり遠足の夜股関節が痛かったり(長距離歩いた後の痛み)、スポーツの後股関節が痛かった等の経験をお持ちの方も多いです。

 

大人になって時々股関節周辺に痛みはあったが、次の朝起きると股関節痛が無くなっていたのに、最近は常時痛くなってきたとおっしゃる方も多いです。
股関節内の炎症や、骨の修復はすでに子供の頃に落ち着いており、骨は変形を伴って治っている方が多いです。
従って股関節痛の原因は筋肉の病気である筋・筋膜症候群が主体となっている可能性の高い方々が多くなります。

主に、軟骨が狭小化し大腿骨頭が扁平化して変形が治っている方が多いのですが、大人になって筋肉性の股関節
痛を感じ、初めて病院を受診した時に担当の先生は『変形している』とみなし、今後も変形は進むと説明され手術の話をされることが多いです。

このタイプ2の方々は、股関節痛が比較的急激に改善する方が多いのですが、これは子供の頃から頑張ってきたことに対する神様からのご褒美だと感じています。

最近では、タイプ1の方々の中でも経過が長くて(初めての股関節痛から10年以上経過した方)炎症の山を越え骨が治っていると判断できる方はタイプ2に分類するように考えています。

 

 

皆さんはどちらの分類に入りましたか?
タイプ1の方々とタイプ2の方々とでは、歴史が全く異なりますので、当然レントゲン写真の見方も全く異なり、今後の予後予測も全く別の病気の様に異なります。

 

期経過が異なることは、問診で詳しく聞くとわかることです。
私は、初めての患者さんとお会いした時にまず問診にて確認する最重要ポイントです。
問診で患者さんの歴史がわかったら、その歴史を考慮しながらレントゲン写真を見て、予後予測を行うのです。

 

皆さんの歴史によって、診察も治療も変わる可能性がある事は非常に重要なことですので、絶対に覚えておいていただきたいと思います。

 

絶対だよ。

 


変形性股関節症を怖がらないでね





身近な筋トレ

2020-09-24 10:52:17 | 股関節の基礎

みなさん、連休中はどのように過ごされましたか?

7月後半にGo toキャンペーンが始まったにもかかわらず8月に入ると検査陽性者数も感染力も減少していいるせいか、東京は人でごった返していたようですね。

東京はバイ菌だらけみたいなイメージも変わりました。

ついに10月から東京もGo toキャンペーンに参加しますので、その後の経過を観察したと考えています。

 

 

🍓変形性股関節症に対する筋トレは、一般の方が行う筋トレとは大きく異なるので注意が必要です。

 

最近、活動を自粛しているのに股関節痛が出ている方がいます。

皆さんに聞くと、台所に立っている時間が増えたという共通点があります。

 

人には常に重力が加わっています。

立っている時は、活動していないように感じますが、身体にかかる重力(体重)を脚の筋肉でずっと支え続けています。

無意識ですが、ずっとずっと筋肉を収縮させているのです。

意外と疲れます。

私も、大学病院勤務時の教授回診時に腰が痛くなったのを思い出します。

 

脚の筋肉の多くが重力を支えているのですが、股関節周りではお尻の横の中殿筋と小殿筋を多く働かせているようです。

 

最近痛みが出ている方の中殿筋は結構硬くなっていました。

 

皆さんの多くは活動が減っているので筋力低下を心配している方も多いと思います。

実際は重力のおかげでそんなことはほとんど無いのですが、不安はありますよね。

 

皆さんが自宅で行う筋力強化法の基本は『筋肉をほぐしてから安全な筋トレを行う』だと考えています。

ほぐして筋トレ、ほぐして筋トレと30回言ってみて下さい。

別に意味はないけどぉ。 

脳に叩き込まれるかもしれませんね。

 

痛みがある部位の筋肉をテニスボールやらっこちゃんでほぐしてから、安全な筋トレをする。

 幸せの黄色いらっこちゃん

 

台所仕事も立派な筋トレです。

疲れて痛みが出るくらいの筋トレです。

ほぐしてから台所仕事がいいのでしょうね。

さすが、らっこちゃんは効きますよ!

 

他に行うとしたら、ほぐした後に患側荷重。

 悪い方の脚に重心をかける、この絵では肩の高さを水平にして骨盤を右に移動しています。

 

30秒くらいでいいと思いますよ。

 

その他には、筋肉をほぐした後、つかまって足踏み、ちょっとももを高く上げながら。

ももをあげる筋トレになり、反対の脚は重力を支える筋トレになる。

左右10回ずつ計20回もやれば十分でしょう。

いずれも痛む時は絶対禁止です。

 

回数を多くすると効果は薄れます。

逆に傷めることになるので、「○○の筋トレを100回行いました!」は全く自慢になりません。

運動生理学をちゃんと勉強している指導者はそのような指導はしないはずです。

 

散歩や自転車に乗って日光を浴びるのも気持ちよさそうですね。

 

そして、重要なことは、その後の身体の反応を良くみることです。

身体が喜んでいるのか?身体が拒否しているのか?

筋トレ後の体調が教えてくれます。

 

筋トレは積極的に勧めませんが、気分転換に少し行っても良いかもしれませんね。

 


変形性股関節症を怖がらないでね




 

 

 

 


なかなか理解されない筋肉の病気のお話 2

2020-09-17 16:38:14 | 股関節の基礎

 

コロナ禍で世の中が変わってしまったなと実感する8月~9月を過ごしています。

世の中が変わったのなら、私も変わらないといけないと考え、様々な対策を実行していこうとしています。

 

 

 

🍓前回の記事に書いた滋賀医科大学の先生が書かれた『臨床医のための痛みのメカニズム』の68ページから69ページにかけて股関節痛の一種『筋筋膜症候群』によって筋肉内のしこりにできるトリガーポイント(発痛点)に対する治療法が3つ書かれています。

 

1、トリガーポイントに局所麻酔薬を注射する

2、筋肉の牽引

3、トリガーポイントの指圧

 

『2、筋肉の牽引』というのは、一般的に行われている筋肉のストレッチのことです。(間接ストレッチ法)

 

『1、トリガーポイントに局所麻酔薬を注射する』は医師にしかできない治療法です。

現在ではトリガーポイント注射と呼ばれる治療法ですね。

 

従って、「変形性股関節症による股関節痛への治療法は手術しかない。」という説明は嘘です。

他に股関節の関節包内に対する注射法もありますね。

ヒアルロン酸とかステロイドの注射ですね。

35年ほど前、私が勤務していた整形外科病院の院長先生(整形外科医)は、トリガーポイント注射も関節内ステロイド注射も行っていました。

その院長先生は、患者さんに注射をするために、左手に持ったレントゲン写真を見ながら問診と右手での触診を繰り返し注射を行うポイントを決めていました。

評判が良く無茶苦茶混んでいる病院でしたので、非常に素早い診察時間で多くの患者さんに対応していました。

この先生は、椅子に座っていることがほとんど無く、いつも動いていた印象があります。

既に、というかかつて40年前にはそのような整形外科医がいたのです。

 

話は戻りますが、この本は私が埼玉医科大学病院に勤務していた1994年頃に、あるリハビリテーション科の医師から頂いた本でした。

その先生は、スペイン語とポルトガル語が好きな先生だったので、スタッフからは『アミーゴ』と呼ばれていました。

そのアミーゴ先生がブラジルへ留学することになって、その時に頂いた本でした。

ここではアミーゴ先生の話は詳しく説明しませんが、既に30年ほど前にこのような本があって、実際にリハビリテーション科の医師が読んでいたのですよ。

 

 

私達が行っている深圧は3、に含まれます。(直接ストレッチ法)

私は医師ではないので、2、と3、を行っているのです。

現在では『筋膜リリース』と呼ばれる方法も3、に含まれるでしょう。

 

医師は法律上どのような治療法を行ってもいいんですよ。

オールマイティーなんですね。

従って、医師は法律上では1、だけでなく2、3、も行う事はできるし、鍼灸だってできるのです。

 

 

 

 

この図のように、筋肉の一部にしこり(筋硬結:きんこうけつ)ができると筋肉は硬くなって筋肉の両端の距離が縮みます。
股関節周囲の22本の筋肉の両端は股関節をまたいでくっついていますので、その筋肉が縮むということは22本の筋肉が大腿骨を強烈に骨盤に向かって引き上げることになり、結果的として股関節の隙間を狭くしようとする作用が働きます。

 

この股関節の隙間を狭くしようとする作用は、股関節の軟骨に強い圧迫を加えるので、軟骨細胞が減ってしまう軟骨軟化症の原因となることが考えられます。
このように、股関節痛改善の為だけでなく股関節の軟骨の保護のためにも縮んでしまった筋肉はストレッチにて伸ばさなければならないのです。

筋肉が病気になって縮むことで股関節痛が出るのですから、股関節痛を改善するには筋肉をストレッチして伸ばして緩めればいいのです。

一方、筋トレとは筋肉を縮める動作の繰り返しによって筋力をつけようとする運動になります。
筋肉が筋筋膜症候群によって縮むことで股関節痛が出ている筋肉に対して、さらに筋肉を縮ませようとする筋トレを行う事は股関節痛を悪化させ、軟骨の細胞を減少させてしまう可能性が高まるのです。

 

筋トレを一生懸命行った結果、股関節痛は徐々に強くなり、筋肉が縮んで関節の動きが悪くなり軟骨の隙間は徐々に狭くなり、痛みの為に筋力も出にくくなり、変形性股関節症はまるで進行性の病気の様な経過をたどってしまうのです。

その結果が『変形性股関節症は進行性の病気です。』という誤った説明につながっているのです。

 

 

確かに20年ほど前までは筋トレが盛んに指導されていました。

この『20年ほど前まで』というのは私が持っているイメージですが、現在でも『筋トレが一番重要』と考えている医療従事者は多いし、そう信じている患者さんも多いですね。

 

でも、筋トレやらないとどうしても不安だという方もいるでしょう。

そういう方は、筋トレが自分の身体を調子よくしてくれるかどうかを考えてみて下さい。

何となく良い感じがあれば、筋トレの前に準備運動としてしっかり筋肉をほぐしてから筋トレしてみて下さい。

 

ひとり一人、身体も経過も違いますので、筋トレが全ての方に悪いわけでは無いのです。

是非、自分の身体と相談しながら判断してほしいと思います。

 

 


なかなか理解されない筋肉の病気のお話

2020-09-09 09:25:46 | 股関節の基礎

このブログはgooブログ3000000ブログ中で5000位くらいです。

最近さぼり気味なのに多くの方に見て頂き、大変うれしいです。

もっと、もっと記事をアップするように心がけますので、今後ともよろしくお願いたします。

 

 

🍓筋肉の病気の呼び名はいっぱいあるけど、私はある本で勉強したのでその本に使われていた『筋筋膜症候群』という言葉を使います。

この言葉は1990年に書かれた『臨床医のための痛みのメカニズム』という本の中で使われている言葉です。

この本は、今から30年前に滋賀医科大学の医師が、医療の最先端で働く医師に向けて書いた本です。

 

でもね、30年前にこのような本が出ているんだけど、現在の医療現場の医師で筋筋膜症候群について理解している先生はほとんどいないのです。

なぜかというと、そういう教育がなされていないからなんでしょうね。

筋筋膜症候群という病気は、病気だけど病気と認められてはいません。

健康保険適応の疾患ではないということですね。

 

この病気はレントゲン写真に写らないし、血液検査上も異常が出ないからなんですね。

 

最近、ある会社の社長さんがお見えになりました。

1年前から両股関節が痛くて、2つの大学病院を受診したけど「どこも異常がありません。」と言われて痛みを我慢するしかなかったようです。

よく聞いてみると、過去に別の病気の治療で股関節に放射線治療が行われていましたが、放射線により軟部組織が傷んだとしか考えられない状態でした。

触診や簡単な神経の検査をすると、筋肉の異常な硬さだけでなく、2本の神経にも異常がありました。

この異常は、医学の勉強をしている方なら誰でもわかりそうな異常でした。

 

この方の場合、深圧で股関節痛は全く無くなるのですが、筋肉のダメージが強そうで、まだ改善と悪化を繰り返しています。

しかし、股関節痛については絶対よくなる症状だと考えています。

この方のような症状も筋筋膜症候群に含まれるでしょう。

極端な例では、肩こりや腰痛も筋筋膜症候群の一種と言えます。

 

筋肉の断面図を見ると、筋肉は筋線維の束の集まりで、その中の一本の筋線維を細かく見ると筋原線維の集まりになります。

 筋肉の断面図  

この断面は筋線維の束でできています。

 筋線維の束

 

この筋線維をさらに細かく見ると、筋原線維があつまって構成されています。

 筋線維の中の筋原線維

 

この筋原線維をさらに顕微鏡で見ると、筋肉のおおもとはミオシンとアクチンというフィラメントと呼ばれるたんぱく質でできています。

 

  上図:弛緩  下図:収縮

 

上の図は筋肉が緩んでいる状態(弛緩:しかん)で下の図は筋肉が収縮して縮んでいる時のミオシンとアクチンの状態です。

 

力を入れて筋肉を収縮させた状態が下の図で、力を抜いて筋肉が弛緩させた状態が上の図になります。

 

ところがところが、股関節に炎症があったり、股関節を捻挫したり、股関節を傷めたりすると股関節周りに筋肉は反射的(無意識)に硬くなって縮んでしまいます。

 

この状態では、筋肉を収縮した時だけでなく、力を抜いて筋肉を弛緩させても筋肉は縮んだまま硬くなり、その部位の血流が非常に悪くなるのです。

 

この縮んで硬くなった部位は『しこり』と呼ばれ、専門的には『筋硬結:きんこうけつ』と呼ばれます。

筋肉にしこりができると、そこに疲労物質や発痛物質が溜まり、“重い感じ”が出てその後うずくような痛みが出ます。

 

このうずくような痛みが股関節周りの筋肉に起こることも股関節痛の一種になるわけです

でもね、レントゲン写真には写らないもです。

本来なら、そこで股関節を動かして筋肉のつっぱり具合を診たり、触診が必要になってくるのです。

 

以上のように、筋肉が病気になると力を抜いていても筋肉の一部が硬く縮むので、その縮んだ部位を直接ストレッチするのが深圧なんです。


骨に神経はあるの? 2

2020-09-04 09:57:17 | 股関節の基礎

患者さんの多くはこう言います。

「コロナより差別が怖い。」

コロナより怖い物、それは人かもしれません。

このような雰囲気が一日も早く改善するよう祈りながら努力します。

 

🍓人は自分の考え方に沿うような文献を探し求め、自分の考えが優位なように解釈する傾向があるように感じています。

私も同様な傾向があるでしょう。

 

私は『骨に神経は無い。』と言ってきましたので、多くのネット情報に書かれていた『骨の中には神経は存在しない。』という情報をいくつか紹介して、『この様な情報により、私は骨に神経は無いと考えているのです。』と説明しておけば、私の考え方を肯定できたでしょう。

 

しかし、私は『骨に神経は無い。』とは書いていますが、実は骨の中に神経はあるだろうと考えています。

前回の記事に書いた私の妹の経験が有ったからです。

 

その様な経験から、もっと掘り下げて調べようとしてきました。

 

しかし、なかなか情報が無いのです。

 

前の記事では文献(文献A)を取り上げました。


骨の外にある骨膜の神経の量を100とした時、骨の中の骨質(いわゆる骨ですね)にある神経は骨膜の1000分の1の0.1しかないということが書かれていましたね。(Castaneda他  Neuroscience 2011)

 

この文献は人の解剖データではなくマウスの大腿骨についての結果でしたので、100%人でも言えることでは無いかもしれませんが、私の経験上の印象とは実に一致していました。

 

今回の記事では、2018年に書かれた日本のある整形外科の先生がホームページ内に書かれた『変形性関節症は、どうして痛い?』という説明文(文献B)を紹介します。

 

 

この先生は次の事に疑問を感じていました。

 

 

『関節軟骨内には神経も血管も存在しません。従って、たたいても、割れても、擦り減っても、軟骨だけの傷害であれば痛みは生じないはずです。

一方、軟骨が擦り減ると、遊離した軟骨摩耗片が、関節包という関節を包む袋の滑膜に取り込まれて炎症を生じます。

炎症を起こした滑膜(関節包の一部です)内には知覚神経があり、炎症により過敏となっているため、通常では痛みを生じない動作でも疼痛を生じます。

このような事から変形性関節症の痛みは滑膜から生じると言われてきました。膝の屈伸などの動作時に感じる痛みの一部は滑膜から生じていると私も思います。

でも、立っている時や、膝を軽く曲げて体重をかけただけで生じる痛みはどうでしょうか?

体重が直接にかかる場所に滑膜は存在しないのに荷重時に起こる痛みが滑膜に由来していると言えるのかという疑問があります。』

 

 

以上の疑問から書かれた文献Bによると、軟骨の下には血管と神経が一緒にあって、軟骨が欠損した時その欠損場所に血管が伸びるのですが、その時に神経も一緒に伸びてきて、骨と骨に挟まれることも骨の痛みの原因ではないかと書かれていました。

 


一般的に言われている軟骨下骨にある神経による痛みですね。

 

確かに、私にもレントゲン写真を見た時に軟骨下神経による痛みが股関節痛の原因かな?と思った患者さんがいました。
しかし、その方の場合、半年後には股関節痛は無くなりました。
股関節痛が無くなった時のレントゲン写真では、新しくできた骨が大腿骨の表面を覆っているのがわかりました。
新しく覆った骨は単なるカルシウムですので、その中に神経が無いから痛みが取れたものと考えています。

この方の場合、レントゲン所見だけでの判断ですので、股関節痛があった時に痛かったのは関節包の痛みだったのかもしれませんが判断は難しいところでした。

 

 

骨と骨が当たるとは、大腿骨骨頭の皮質骨(骨質)と、骨盤側の寛骨の皮質骨(骨質)が当たるという意味です。

 

文献Aで考えると、骨の外の骨膜(股関節では関節包)には非常に神経が多い、一方、骨と骨が当たる場所である皮質骨(骨質)には、骨膜の1000分の1の神経しか存在しないということでした。

 

文献Bで考えると、文献Aで非常に少ないと書かれていた骨質(皮質骨)にある軟骨下骨の神経の痛みであり、それも一時的な痛みとも考えられ、どちらかというと非常に稀なケースであると私は考えています。

 

股関節周りの神経のほとんどは、骨の外周りにある骨膜と関節包(骨の外周りの骨膜は股関節では関節包という名前になります)にあるというのは事実ですね。

 

文献Bではまとめとして次のように書かれていました。

OA(変形性関節症)では 、関節軟骨に侵入した神経 、炎症を起こした滑膜(関節包の一部)が痛みを感じさせているようです。

つまり、変形性股関節症の股関節痛の原因は、一般的には炎症を起こした滑膜の痛みと考えられているけれども、関節軟骨に侵入した神経による痛みもあるということでした。

 

文献Bを読んでみてびっくりしたのは、私達が今まで訴えてきたように股関節痛の原因が関節包の炎症であるという考えは一般的に考えられていることであると書かれていたことです。

 

・・・なにそれ~? おったまげ~~!!!!!!!

 

じゃ、「骨と骨が当たるから痛いのです。」と説明する先生が一般的ではないということなのですか?

皆さんは、どのように説明されましたか?

 

 

 

文献Bを書かれた先生が普段疑問に思っている変形性関節症による痛みに、筋肉の痛みへの考察が全く欠如していると私は感じました。

 

膝を曲げて立った時、膝の関節包に負荷がかかっていないにもかかわらず膝周辺が痛いのはおかしい、というのがこの文献を書いた動機だと書かれていたのです。

 

膝を曲げて立った時には膝周辺の筋肉に強い負荷がかかるけど、筋肉への考察は全くありませんでした。

また、膝を曲げて立った時にも十分膝の関節包には負荷がかかるだろうにな、とも思いました。

筋肉が痛みを出すという考え方の無い整形外科の先生は非常に多いですね。

 

また、骨に修復力という自然治癒力があるという考察も欠けていると私は感じました。

 

しかし、軟骨欠損部への血管と神経の侵入という現象は解剖と顕微鏡検査ではっきりと報告されているようですので、この事実は否定できないと考えていますが、軟骨欠損部へ侵入する神経の数がもともと非常に少ないことは文献(A)で実証されていますね。

 

この先生の説明文を読んでいると、この先生は原因を追究する姿勢のある素晴らしい先生であることは間違いないと感じました。

 

 

 

私は患者さんを診て考えることが多いので、骨と骨が当たるから痛いという説明にはほとんど同意できません。
その理由は以下の通りです。

1、骨と骨が当たっていても痛くない人がいるので、骨と骨が当たって痛いという説明にならない。
2、骨と骨が当たると痛いのであれば一歩一歩足を着く度に痛いはずなのに、『歩き出しは痛くないけど、歩き疲れると痛みが出ます。』『歩き出しは痛いけど、歩いているうちに痛くなくなります。』と言う方々が多いので骨と骨が当たって痛いという説明にならない。
いかがでしょうか?

骨と骨が当たるから痛いと言いうのは、多くの患者さんで説明できません。

 

この説明を誰かが明快に解説してくれて、股関節痛の原因は骨と骨が当たっている確率が高いことを明確に説明してくれれば、私も「骨と骨が当たって痛いのです。」と言うかも知れません。

しかし、現状では『一時的にそういうこともあるかもしれませんが、股関節痛の主な原因は骨と骨が当たるからではありません。』としか言いようがありません。

 

画像や検査結果だけを見るのではなく、患者さん(臨床症状)を診るとわかることは多いものなんです。

 

 

私は、このような理由で『骨に神経はない』と書いてきました。
『骨と骨が当たるから痛い』とレントゲン写真を見せられながら説明された患者さんはどうなると思いますか?

 

おそらく、怖くて足に体重がかけられなくなるのではないでしょうか?

その結果、筋力は低下して骨密度も低下するのです。

 

私は今後も『骨に神経無し!』と訴え続けます!

軟骨に神経無し、骨にも神経無し。
神経の無いところに痛みなし。
皆さん、可能な範囲で足に体重をかけてみて下さいね。

 


骨に神経あるの?

2020-09-01 11:20:12 | 股関節の基礎

昨日の夜、今朝は秋の気配を感じました。

残り少ない残暑を楽しむザンショ。

 

 

🍓皆さんが爪と爪をこすり合わせたとします。

爪には神経がありませんので、爪と爪をこすり合わせても痛くありません。

大変有名な股関節専門の先生に「爪と爪が当たるから痛いのです。」と言われても、「そんなわけな~いじゃん。」と考えるでしょうね。

それは、皆さんが爪には神経が無いと知っているからです。

 

 

次に、皆さんがある物をハサミで切ります。

もし皮膚をほんの少しでも切ったら激痛ですが、髪をバッサリ切っても痛みはありません。

 

身体の各組織には神経の有る組織と、神経の無い組織があるのです。

 

 

股関節は、大腿骨と骨盤側の寛骨(かんこつ)の間にできた関節です。

その大腿骨側と寛骨側共に軟骨があります。(CとD)

この軟骨に神経が無いことはいろいろなところで書かれて有名な事実です。

 

では、もしも、軟骨が全て無くなって、骨と骨が当たったとしましょう。

この状態は痛いのでしょうか?

 

 

多くの先生方は『骨と骨が当たっているから痛いのです。』と説明します。

ということは、骨(骨質)の中に神経があるという前提で話をされているということになります。

 

下の図は大腿骨の断面の図です。  

 A 骨質(皮質骨)  B 骨髄

皆さん、骨の中に神経があるのかどうか、あらゆる情報をネットや本で調べてみて下さい。

はっきり書かれた情報は皆無でしょう。

 

一方、骨の中に血管があるのかどうかを調べると、いとも簡単に明確な説明を調べることができるでしょう。

 

このことから、骨の中の血管の事は詳しくわかっているのに、骨の中の神経の事はまだあまりわかっていないということがわかります。

 

痛みを感じる神経のおおもとは脳です。

脳は脊髄となって下降し、脊髄からは枝分かれして脊髄神経が手足に伸びます。

その神経の末端が骨(骨質や骨髄)の中に入らない限り、骨の中に神経は存在しません。

 

血管の場合のおおもとは心臓で、心臓から出た太い血管は枝分かれして細くなり骨を覆う骨膜に至ります。

骨膜からは、骨の表面に開いた小さな穴(栄養孔:えいようこう)を通して血管が骨の中に入ります

このことは、どんな解剖学の本にも詳しく書かれています。

それでは、神経(痛みを感じる知覚神経)はどこから骨の中に入るのでしょうか?

これは、いくら調べてもわかりません。

おそらく、骨の中に神経があるのだとしたら、血管が入る骨の穴から神経も一緒に骨の中に入っているのでしょう。

 

実は、私は骨の中に神経はあるだろうと考えています。

少なくとも、骨の中の骨髄には神経があると考えています。

私の妹が、大腿骨の中の骨髄に腫瘍ができた時は、足が痛いと言っていました。

しかし、彼女は普通に歩いていました。

骨髄の中には神経があるものの、激痛を起こすものではないということを妹が教えてくれました。

 

 

私は骨の中のどこかには脳からつながった神経はあると考えていますが、『骨に神経は無い』とブログや本には書いてきました。

なぜかというと、レントゲン写真で骨と骨が当たっていても全く痛み無く走れる方がいるからなんです。

 

画像だけを見るのではなく、患者さんを診るとわかることは多いものです。

 

以前、ある股関節専門の先生に「先生、骨の中に神経はあるのでしょうか?」と質問しました。

その先生は「ありますよ。参考となる資料を送りますね。」と言って資料を送ってくださいました。

 

しかし、その股関節専門医のために書かれたような本の中には神経について詳しく書かれていました。

ところが、残念なことに骨の外にある骨膜や関節包に神経が多く存在するということは書かれていましたが、骨の中の神経については全く書かれていませんでした。

 

ネットで調べると『骨の中(骨質の中)に知覚神経はありません。』と堂々と書いている情報も目にします。

例えばここです。

 

ある文献(文献A)によると、骨組織に分布する感覚神経(知覚神経)の量(volume)の比率は骨膜を100とした時骨膜:骨髄:皮質骨(骨質):軟骨100:2:0.1:0と書かれています。

 

骨膜は骨の外を覆っている膜ですので、骨の中ではありません。
軟骨も骨の外にありますので骨の中ではありません。
骨の外にある骨膜の神経の量を100とした時、骨の中の骨質にある神経は0.1、さらに中にある骨髄にある神経は2しかないということが書かれていました。(Castaneda他  Neuroscience 2011)

 

 

文献Aで考えると、骨の外の骨膜(股関節では関節包)には非常に神経が多い、一方、骨と骨が当たる場所である皮質骨(骨質)には、骨膜の1000分の1の神経しか存在しないということになります。

私は、股関節の神経の分布量については、このCastaneda氏の論文の内容が非常に正解に近いのではないかと感じています。

 

そう考えた時、股関節痛の原因が「骨と骨が当たるから痛い」と考えるよりも、股関節関節包の炎症と考えた方がはるかに現実味があるのではないでしょうか?

 

 

 

 

次回は、骨と骨が当たるから痛いんですよという文献(文献B)を取り上げて考察してみましょう。