竹下景子の芝居を初めて観た。
デヴューは彼女が女子大在学中のころであったと思うが、女優の吉永小百合以降の久々の清純派女優の出現という感じのものであった。
知的で好感度の持てる女優であった。
しかし、器用貧乏というか卒がなさ過ぎるというか、男性(少なくともアサノヴィッチ)から見ると、いわゆるセックスアピールが希薄な女優であった。
しかし、再度になるが好感度の高い女優ではあった。
アサノヴィッチにとって竹下景子の初めての芝居は「朝焼けのマンハッタン」(7月25日:ちばし演劇をみる会)だった。
戦前の日本の軍国主義的な状況下に居たたまれなくなった知識人や芸術家がアメリカに流れ、マンハッタンの一角の竹下景子・夏八木勲夫婦のアパートに寄り添うように集まるようになる。
そんな所に社会主義者の高田恵篤も出入りしている。高田恵篤はかって竹下と恋仲であった。
アメリカを経由してソ連に渡ろうとしている。
夏八木もそんな二人の関係を知らない訳ではない。そっと二人だけの時間をと思い、用もないのに出かけてしまう。
部屋に残された二人はほんの一瞬、昔の恋人同士にもどる。
竹下は待ちかねたように、ソファーに座っている高田恵篤にすっと寄り添い、腕に抱かれ甘える。
そこにあるのは、好きだった男を慕う、一個のまごうことのない女なのである。
無いと思っていた清純派女優の竹下景子に、純度最高の女の色気を感じさせられた。