写真:レイク・テカポの青空の下の“善き羊飼いの教会”
←ニュージーランド星空旅記2009~5、天の河からの続きです
2009年6月17日
レイク・テカポで天空を横切る天の河に圧倒された一夜が明けた。
今日は、いよいよテカポ湖畔に聳えるマウントジョンに自分の足で登り、山頂のマウントジョン天文台を目指す!
ニュージーランドではトレッキングが大人気で、国内各地の景勝地には必ずと云って良いほど素晴らしいトレッキングコースが整備されている、らしい。
ここレイク・テカポにも勿論トレッキングコースが幾つかあり、そのうち2つの路はマウントジョンへと登る登山ルートとなっている。
登山とは言えレイク・テカポから見えるマウントジョンは小高い丘みたいな感じで(それでも実際には標高1000メートル以上もある高山なのだが、麓のテカポ自体がかなり標高が高いので…)、ハイキング感覚で気軽に登って来れそうだ。
マウントジョン天文台には今夜予約している星空ツアーでクルマの送迎付きで行けることになっているのだが、それでも折角だから日中に自力で到達して場所の感覚を摑んでおきたい。
それに、この素晴らしい景色を高いところから一望したらどんなにか気分が良いだろう。
という訳で、普段は山登りなんか全然しない僕も「そこにマウントジョンがあるから登るのだ、山頂に天文台があるから見に行くのだ!」とばかりに出発ー!
しかし、いきなり寝坊してしまい(何しろ昨夜は本当に夜明け近くまで星空を見上げて起きていたからなぁ…)、起きたらもうお昼。
大急ぎで仕度をして、現地調達の手袋と日本から持参した使い捨てカイロで身を固めて、セーターとコートを着込んで、さあ出かけよう!
外に出たら、この天気。
「何だこのどんよりした曇り空は!?昨日の突き抜けるような青空はどこに行ったんだ?」
それでもまぁ雨は降っていないし、山の天気は変わりやすいって言うからそのうち晴れてくるかも知れん。
とにかく行こう。
先ずは湖畔の木立を抜けて行き(昨夜、天の河をクリスマスツリーと見紛うたあの木立だ)、登山道の入り口のアスレチッククラブを目指す。
ここからトレッキングコースは二手に分かれていて、右手に進むとそのまま湖畔を進んでなだらかに山肌を登っていくゆっくりのんびり遠回りルートとなり、左手に進むといきなり急傾斜の山道を駆け登り直接山頂へと続くきつい近道ルートになる、みたい。
きつい思いなんかしたくないので、勿論右に進む。
路沿いの草木は立ち枯れているが、こんな実をつけてる小さな木もあったよ。
たまに野うさぎとすれ違ったりしながら、どんどん進む。
マウントジョンの裾の枯野をどんどん登っていく。
段々と、空が近付いてくる。のんびりルートとは言え、普段の運動不足が響いてか結構きつい。
「ふぅー、急斜面コースに行かなくてよかったぜ」
でも、雲が切れて青空が覗き始めたぞ。
「やった!このまま晴れろ晴れろ!」
高いところから見ると、一段と素晴らしいレイク・テカポとサザンアルプス。
近付いてきそうで、なかなか近くならない山頂。
「麓からだと小さな土山みたいだったが…やっぱり標高千メートルは侮れんな、マウントジョン。」
尾根を越える。
ここで進行方向が180度ターン、ようやく中間点まで到達した訳だ。
しかし、尾根ですれ違って挨拶を交わした白人女性トレッカーがかなりの重装備だったのが気になるな。本格的な登山靴を履いてたし…
「旅行用の靴をそのまま履いて、街に買い物に行く時みたいな格好で登るのはひょっとして無謀だったのかな?」
でも、ここまで何とか無事に登ってきたんだから、何とかなるでしょ。
(※僕は何とかなりましたが、山を舐めると非常に危険です。もし当地で登山をされる場合はちゃんとした装備で臨まれることを強くお薦めします。いやマジで。)
尾根を越えて暫らく登ると…
「うわー!これが、マウントジョンの向こう側かぁー!」
何と、見渡す限り白銀の山稜が続いていたのだ。
「広い広い!何て広大な山脈なんだ…どこまで続いているのか、見当もつかないよ。
それに、空もすっかり晴れてきた。宇宙へつながってる暗い青空が戻ってきたぞ!」
今来た路を振り返ると、テカポ湖の端っこが見える。
テカポ湖の隣の氷河湖が見えてきた。なんていう名前なのかな。
やがてトレッキングコースはクルマが通れる舗装道路に合流。
ここまで来ればあと一息、もうすぐ山頂の天文台に着く筈。
こんな標識も立ってます。
天文台での観測が、クルマのヘッドライトに邪魔されたら困るもんね。
それにしても、ニュージーランドにはフレンドリーな人が多いというか、山道で登山者と出会うとにっこり笑顔で挨拶を交わすのは当然だが、ここではクルマですれ違うドライバーも僕に笑顔で手を挙げて挨拶してくれるのだ。
坂道をヒーヒー云いながら登ってバテ気味になったが、嬉しくて元気が出てくるね。ついでに「ジャパニーズフレンド、乗ってくか?」って山頂まで乗せてってくれたらもっと嬉しいんだけど(笑)
いやいや、折角ここまで来たんだ、こうなったら最後まで自力で登りきるぞー!
いよいよ、山頂に建ち並ぶ観測ドームが見えてきました!
本当にあと一息!
そして…
「着いたー!!ここがマウントジョン南峰の山頂だぁー!!」
レイク・テカポのホテルを出発してから2時間余り、とうとう登頂!
山頂のベンチに腰をおろし、達成感で至福の一時を過ごす。
「ここまで来るのは大変だったけど、テカポの町があんなに近くに見えるよ。善き羊飼いの教会や、泊まってるホテルも見えるねぇ」
さて、一休みして疲れも和らいだ。
早速、マウントジョン天文台を見に行こう!
マウントジョン天文台全景。
奥に見えるガラス張りの建物は観光客向けのカフェ。
名古屋大学などが中心になって進めている「MOAプロジェクト」で使われる望遠鏡の概況を説明するボードも用意されている。
サザンアルプスに擁かれたマウントジョン天文台は、外宇宙への入り口なのだ。
消え去った飛べない巨鳥モアの名を持つ望遠鏡がサザンアルプスの空に羽ばたき、まだ見ぬ星を探している。
昨夜の星空を思い出しながら、ここで遥か彼方の惑星系を目指す天空の大冒険が毎夜行われているんだと思うと、思わず胸が熱くなる。
そろそろ夕方だ、暗くなる前に下山しよう。
今夜はここから星空を見るんだ、テカポの町灯りの中でもあれだけの星空が広がったんだ、太陽系外惑星まで見えるマウントジョン天文台からの星空は、一体どれ程凄まじいものなんだろう?
数時間後の再訪を思いワクワクしながら山を下る。
帰りは急斜面の近道ルートを通って、一気に町まで駆け下りよう。
「成程、えらく急な坂道だ。登るときに通らなくて良かった。」
でも確かに近道で、行きは2時間半かかった道程を1時間もかからず下山できた。
「え?山頂まではこんなに近かったの?でも、この近道ルートだとずっと木立の中を行くから景色は楽しめないね。やっぱり、行きに遠回りルートを通って来たのは正解だったかな。あの景色はやっぱり捨て難いわ」
今後、レイク・テカポからマウントジョンに登られる方は参考にしてみて下さいな。
テカポ湖に太陽が沈んでいく。
もうすぐ、またあの星空の大劇場が空一面に広がるかと思うとワクワクする。
「おや?サザンアルプスの峰に傘がかかってるな。」
まさかこの傘雲が、今夜の悲劇の前触れだったとは…
マウントジョン天文台星空ツアーの集合時刻は午後8時15分だ。
それまでホテルでシャワーを浴びてゆっくり休んでから、ホテルの隣にあるサーモン丼で有名な日本食レストランその名も「湖畔レストラン」に行って腹ごしらえ。
日本人ツアー客の団体さん達が盛大に幕の内弁当を食べていたりしたので尻込みしたが、日本人の店員さん達は親切だ。名物サーモン丼も美味しかったし。
腹もくちくなって、さあ行くぞ星空ツアーだ!
再び使い捨てカイロと手袋とマフラーで身を固め(何しろ、昨日予約の再確認に行ったら「とにかく暖かい格好で来て下さい」と念を押されたからな)、灯りの点いているツアーの事務所に行くと…
「ああmさん、今夜は雲が出てきたので、ツアーはキャンセルされちゃいました」
何ですとーーー!?キャンセルとなーーー!!??
「ええ、残念ですが…先程から急に雲が流れてきましてね」
「そうですか…アア、ナンテコッタイ。。。でも、自然が相手じゃ仕方がないですね…」
「ええ、本当に残念ですが」
「うん、僕、絶対再チャレンジしますよ!いつかまたレイク・テカポに来て、絶対マウントジョン天文台で星を見ます!
その時は、また宜しくお願いしますね!」
元気にリベンジを誓ったものの、ホテルの自室に戻ったら暫らく座り込んだきり起き上がる気力もなかった。
ベッドに放り出したままになっていた「銀河鐡道の夜」を手に取り、ページをめくってみる。
「あなた方は、どちらへいらつしやるんですか。」
「どこまでも行くんです。」
「それはいいね。この汽車は、じつさい、どこまででも行きますぜ。」
~宮澤賢治「銀河鐡道の夜」より~
そのまま数時間は本を読み耽っていただろうか。もう日付が変わる頃になっている。
本を置いて、そのまま(防寒着も脱がず着込んだままだった)窓を開けて、凍える外に出てみた。
「昨夜は、この湖畔の道から星を見たなぁ。凄い星空だった。」
そう思って見上げると…
「えっ!?洪水!?」
そこには、昨夜以上に凄まじい天の河の流れがあった。それは最早、激流といった方がいい程の。
「いつの間にか、雲が晴れたんだ!凄い、凄いぞ!!星空がこんなに明るかったなんて。」
僕は“善き羊飼いの教会”まで歩いていった。天の河に照らされて、街灯もない道でもそのまま歩けるのだ。
教会の庭に置かれた石に腰をおろし、空を見上げる。
天の河は天頂をぶった切って轟々と流れ、濁流の先はテカポ湖に注ぎ込んでいる。湖と空が、完全につながっているのだ。
それは、凶暴なまでの星空だった。恐るべき星空だった。
「これが、本当の宇宙か…」
僕は夜明け近くまで、ただただ圧倒されながらそれに見入っていた。
翌朝。
青空の下のマウントジョン。
昨夜は出ていなかった月が青空に白く淡く光っている。「あっ!日本を出るときに見た月とは、欠けている部分が左右逆に見える!」
南半球にいるんだから、考えてみれば当たり前のことなんだけど何とも奇妙な感覚。
今日はレイク・テカポを離れ、昼過ぎのバスでクライストチャーチへと戻る。
名残りのテカポ湖畔を暫し散策してからバスストップに行くと…
「オオ~、モシモシ~!」
またあのモシモシおっちゃんがバスの中で待っていた。
→ニュージーランド星空旅記2009~7、サザンアルプスを越える鉄路に続く
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2009年6月17日
レイク・テカポで天空を横切る天の河に圧倒された一夜が明けた。
今日は、いよいよテカポ湖畔に聳えるマウントジョンに自分の足で登り、山頂のマウントジョン天文台を目指す!
ニュージーランドではトレッキングが大人気で、国内各地の景勝地には必ずと云って良いほど素晴らしいトレッキングコースが整備されている、らしい。
ここレイク・テカポにも勿論トレッキングコースが幾つかあり、そのうち2つの路はマウントジョンへと登る登山ルートとなっている。
登山とは言えレイク・テカポから見えるマウントジョンは小高い丘みたいな感じで(それでも実際には標高1000メートル以上もある高山なのだが、麓のテカポ自体がかなり標高が高いので…)、ハイキング感覚で気軽に登って来れそうだ。
マウントジョン天文台には今夜予約している星空ツアーでクルマの送迎付きで行けることになっているのだが、それでも折角だから日中に自力で到達して場所の感覚を摑んでおきたい。
それに、この素晴らしい景色を高いところから一望したらどんなにか気分が良いだろう。
という訳で、普段は山登りなんか全然しない僕も「そこにマウントジョンがあるから登るのだ、山頂に天文台があるから見に行くのだ!」とばかりに出発ー!
しかし、いきなり寝坊してしまい(何しろ昨夜は本当に夜明け近くまで星空を見上げて起きていたからなぁ…)、起きたらもうお昼。
大急ぎで仕度をして、現地調達の手袋と日本から持参した使い捨てカイロで身を固めて、セーターとコートを着込んで、さあ出かけよう!
外に出たら、この天気。
「何だこのどんよりした曇り空は!?昨日の突き抜けるような青空はどこに行ったんだ?」
それでもまぁ雨は降っていないし、山の天気は変わりやすいって言うからそのうち晴れてくるかも知れん。
とにかく行こう。
先ずは湖畔の木立を抜けて行き(昨夜、天の河をクリスマスツリーと見紛うたあの木立だ)、登山道の入り口のアスレチッククラブを目指す。
ここからトレッキングコースは二手に分かれていて、右手に進むとそのまま湖畔を進んでなだらかに山肌を登っていくゆっくりのんびり遠回りルートとなり、左手に進むといきなり急傾斜の山道を駆け登り直接山頂へと続くきつい近道ルートになる、みたい。
きつい思いなんかしたくないので、勿論右に進む。
路沿いの草木は立ち枯れているが、こんな実をつけてる小さな木もあったよ。
たまに野うさぎとすれ違ったりしながら、どんどん進む。
マウントジョンの裾の枯野をどんどん登っていく。
段々と、空が近付いてくる。のんびりルートとは言え、普段の運動不足が響いてか結構きつい。
「ふぅー、急斜面コースに行かなくてよかったぜ」
でも、雲が切れて青空が覗き始めたぞ。
「やった!このまま晴れろ晴れろ!」
高いところから見ると、一段と素晴らしいレイク・テカポとサザンアルプス。
近付いてきそうで、なかなか近くならない山頂。
「麓からだと小さな土山みたいだったが…やっぱり標高千メートルは侮れんな、マウントジョン。」
尾根を越える。
ここで進行方向が180度ターン、ようやく中間点まで到達した訳だ。
しかし、尾根ですれ違って挨拶を交わした白人女性トレッカーがかなりの重装備だったのが気になるな。本格的な登山靴を履いてたし…
「旅行用の靴をそのまま履いて、街に買い物に行く時みたいな格好で登るのはひょっとして無謀だったのかな?」
でも、ここまで何とか無事に登ってきたんだから、何とかなるでしょ。
(※僕は何とかなりましたが、山を舐めると非常に危険です。もし当地で登山をされる場合はちゃんとした装備で臨まれることを強くお薦めします。いやマジで。)
尾根を越えて暫らく登ると…
「うわー!これが、マウントジョンの向こう側かぁー!」
何と、見渡す限り白銀の山稜が続いていたのだ。
「広い広い!何て広大な山脈なんだ…どこまで続いているのか、見当もつかないよ。
それに、空もすっかり晴れてきた。宇宙へつながってる暗い青空が戻ってきたぞ!」
今来た路を振り返ると、テカポ湖の端っこが見える。
テカポ湖の隣の氷河湖が見えてきた。なんていう名前なのかな。
やがてトレッキングコースはクルマが通れる舗装道路に合流。
ここまで来ればあと一息、もうすぐ山頂の天文台に着く筈。
こんな標識も立ってます。
天文台での観測が、クルマのヘッドライトに邪魔されたら困るもんね。
それにしても、ニュージーランドにはフレンドリーな人が多いというか、山道で登山者と出会うとにっこり笑顔で挨拶を交わすのは当然だが、ここではクルマですれ違うドライバーも僕に笑顔で手を挙げて挨拶してくれるのだ。
坂道をヒーヒー云いながら登ってバテ気味になったが、嬉しくて元気が出てくるね。ついでに「ジャパニーズフレンド、乗ってくか?」って山頂まで乗せてってくれたらもっと嬉しいんだけど(笑)
いやいや、折角ここまで来たんだ、こうなったら最後まで自力で登りきるぞー!
いよいよ、山頂に建ち並ぶ観測ドームが見えてきました!
本当にあと一息!
そして…
「着いたー!!ここがマウントジョン南峰の山頂だぁー!!」
レイク・テカポのホテルを出発してから2時間余り、とうとう登頂!
山頂のベンチに腰をおろし、達成感で至福の一時を過ごす。
「ここまで来るのは大変だったけど、テカポの町があんなに近くに見えるよ。善き羊飼いの教会や、泊まってるホテルも見えるねぇ」
さて、一休みして疲れも和らいだ。
早速、マウントジョン天文台を見に行こう!
マウントジョン天文台全景。
奥に見えるガラス張りの建物は観光客向けのカフェ。
名古屋大学などが中心になって進めている「MOAプロジェクト」で使われる望遠鏡の概況を説明するボードも用意されている。
サザンアルプスに擁かれたマウントジョン天文台は、外宇宙への入り口なのだ。
消え去った飛べない巨鳥モアの名を持つ望遠鏡がサザンアルプスの空に羽ばたき、まだ見ぬ星を探している。
昨夜の星空を思い出しながら、ここで遥か彼方の惑星系を目指す天空の大冒険が毎夜行われているんだと思うと、思わず胸が熱くなる。
そろそろ夕方だ、暗くなる前に下山しよう。
今夜はここから星空を見るんだ、テカポの町灯りの中でもあれだけの星空が広がったんだ、太陽系外惑星まで見えるマウントジョン天文台からの星空は、一体どれ程凄まじいものなんだろう?
数時間後の再訪を思いワクワクしながら山を下る。
帰りは急斜面の近道ルートを通って、一気に町まで駆け下りよう。
「成程、えらく急な坂道だ。登るときに通らなくて良かった。」
でも確かに近道で、行きは2時間半かかった道程を1時間もかからず下山できた。
「え?山頂まではこんなに近かったの?でも、この近道ルートだとずっと木立の中を行くから景色は楽しめないね。やっぱり、行きに遠回りルートを通って来たのは正解だったかな。あの景色はやっぱり捨て難いわ」
今後、レイク・テカポからマウントジョンに登られる方は参考にしてみて下さいな。
テカポ湖に太陽が沈んでいく。
もうすぐ、またあの星空の大劇場が空一面に広がるかと思うとワクワクする。
「おや?サザンアルプスの峰に傘がかかってるな。」
まさかこの傘雲が、今夜の悲劇の前触れだったとは…
マウントジョン天文台星空ツアーの集合時刻は午後8時15分だ。
それまでホテルでシャワーを浴びてゆっくり休んでから、ホテルの隣にあるサーモン丼で有名な日本食レストランその名も「湖畔レストラン」に行って腹ごしらえ。
日本人ツアー客の団体さん達が盛大に幕の内弁当を食べていたりしたので尻込みしたが、日本人の店員さん達は親切だ。名物サーモン丼も美味しかったし。
腹もくちくなって、さあ行くぞ星空ツアーだ!
再び使い捨てカイロと手袋とマフラーで身を固め(何しろ、昨日予約の再確認に行ったら「とにかく暖かい格好で来て下さい」と念を押されたからな)、灯りの点いているツアーの事務所に行くと…
「ああmさん、今夜は雲が出てきたので、ツアーはキャンセルされちゃいました」
何ですとーーー!?キャンセルとなーーー!!??
「ええ、残念ですが…先程から急に雲が流れてきましてね」
「そうですか…アア、ナンテコッタイ。。。でも、自然が相手じゃ仕方がないですね…」
「ええ、本当に残念ですが」
「うん、僕、絶対再チャレンジしますよ!いつかまたレイク・テカポに来て、絶対マウントジョン天文台で星を見ます!
その時は、また宜しくお願いしますね!」
元気にリベンジを誓ったものの、ホテルの自室に戻ったら暫らく座り込んだきり起き上がる気力もなかった。
ベッドに放り出したままになっていた「銀河鐡道の夜」を手に取り、ページをめくってみる。
「あなた方は、どちらへいらつしやるんですか。」
「どこまでも行くんです。」
「それはいいね。この汽車は、じつさい、どこまででも行きますぜ。」
~宮澤賢治「銀河鐡道の夜」より~
そのまま数時間は本を読み耽っていただろうか。もう日付が変わる頃になっている。
本を置いて、そのまま(防寒着も脱がず着込んだままだった)窓を開けて、凍える外に出てみた。
「昨夜は、この湖畔の道から星を見たなぁ。凄い星空だった。」
そう思って見上げると…
「えっ!?洪水!?」
そこには、昨夜以上に凄まじい天の河の流れがあった。それは最早、激流といった方がいい程の。
「いつの間にか、雲が晴れたんだ!凄い、凄いぞ!!星空がこんなに明るかったなんて。」
僕は“善き羊飼いの教会”まで歩いていった。天の河に照らされて、街灯もない道でもそのまま歩けるのだ。
教会の庭に置かれた石に腰をおろし、空を見上げる。
天の河は天頂をぶった切って轟々と流れ、濁流の先はテカポ湖に注ぎ込んでいる。湖と空が、完全につながっているのだ。
それは、凶暴なまでの星空だった。恐るべき星空だった。
「これが、本当の宇宙か…」
僕は夜明け近くまで、ただただ圧倒されながらそれに見入っていた。
翌朝。
青空の下のマウントジョン。
昨夜は出ていなかった月が青空に白く淡く光っている。「あっ!日本を出るときに見た月とは、欠けている部分が左右逆に見える!」
南半球にいるんだから、考えてみれば当たり前のことなんだけど何とも奇妙な感覚。
今日はレイク・テカポを離れ、昼過ぎのバスでクライストチャーチへと戻る。
名残りのテカポ湖畔を暫し散策してからバスストップに行くと…
「オオ~、モシモシ~!」
またあのモシモシおっちゃんがバスの中で待っていた。
→ニュージーランド星空旅記2009~7、サザンアルプスを越える鉄路に続く
雄大な自然の中でも最後(22枚目)の傘雲がすごい。被りすぎ(笑)
6枚目のレイク・テカポとサザンアルプスのコンビがいいです。
15枚目のテカポの町は山の高さが分かります。
19枚目の天文台も外せません。どの写真も状況説明に必要ですが、お気に入りは4枚です。
景色が素晴らしく良いと、年代物の低そ画素コンデジでも「水平」と「手振れ」にさえ気を付ければそれなりの「絵葉書の様な写真」が撮れてしまうので楽チンですwww
傘雲の写真、今見直すと我ながら凄いと思います。実際、これの実物を見た時は余りの異様さにギョッとしました。
さあダラダラ続いた旅行記もいよいよ終盤、あとは観光列車「トランツアルパイン」乗り鉄を残すのみです。もう暫らくお付き合い下さい。