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2015夏 ドイツ/クロアチア/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紀行 14:サラエボ発ザグレブ行き396列車の旅 後編

2015-10-11 | 旅行記:2015 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
Photo:日の暮れた終着駅ザグレブに到着した396列車



サラエボ発ザグレブ行き396列車の停車駅と走行ルート表

13:サラエボ発ザグレブ行き396列車の旅 前編からの続き

真夏の午後の陽もすっかり傾いて、西陽に照らされながら396列車はひた走る。



午後5時45分、定刻より30分ばかり遅れてボスニア・ヘルツェゴヴィナ領内で最後の停車駅Dobrljinに到着。



この駅でボスニア・ヘルツェゴヴィナの出国審査が行われる。

車内に乗り込んでコンパートメントを巡回してきた審査官が乗客全員のパスポートを預かって、駅のプラットホーム上にあるプレハブの国境事務所に持って行ってしまうのを眺めて、暫しぼんやりと車内で手続きが終わるのを待つ。

数十分後、乗客の手元にパスポートが返されると列車は出発。
無事に戻ってきたパスポートのページをめくってみたが、どういう訳だかボスニア・ヘルツェゴヴィナ出国のスタンプはどのページを探しても見つからなかった。
ひょっとしたら、無害な日本人のパスポートにまで一々スタンプを捺すのが面倒になって省略したのかも知れない。





国境地帯を走り、国境の川を渡って…


午後6時10分頃、クロアチア領内で最初の停車駅Volinjaに到着。

駅構内にはザグレブ中央駅行きの行き先電光表示を出した最新型の近郊電車が停車しているが、東ドイツ製の30年選手の中古オンボロ客車で編成された我が396列車と比べたら乗り心地も良さそうだし速そうだし、何より冷房完備で涼しくて快適そうなので、思わず暑苦しいコンパートメントから飛び降りてあちらの電車に乗り換えたくなる…

だが、Volinjaではクロアチアの入国審査が行われるので、不用意に不審な行動を取らずに入国審査官が車内に巡回して来るまでおとなしく待っていないといけない。




スルプスカ共和国鉄道の朱色の電気機関車とも、ここでお別れ。
すぐに、クロアチア鉄道の機関車が代わりに連結される。

コンパートメントまでやって来たクロアチアの入国審査官にパスポートを見せて、入国スタンプを捺してもらったら、定刻より約30分遅れのままで18:45にVolinjaを発車。






今朝サラエボに昇った太陽が、クロアチアの大地に沈もうとしている。
長い長いバルカン半島の、旧ユーゴスラビア横断の鉄道の旅の一日が終わろうとしている…


遠きクロアチアの山野に日が落ちて、自転車で家路を急ぐクロアチアの人。
今日もお疲れさま…


ザグレブ行き396列車も、車体を夕陽に染められながら家路を急ぐ。




午後7時過ぎ、最新型近郊電車と並走しながらSunja駅に到着。




流線型の最新型電車と、SL時代の古めかしく重厚な給水塔の組み合わせが鉄道好きには楽しい。


駅構内に、日本のJR貨物の最新鋭ハイブリッド機関車HD300形そっくりの入れ替え用ディーゼル機関車を発見。

Sunja駅では所定のダイヤでは1分停車ですぐ発車する筈なのだが、接続する近郊列車が遅れていたらしく15分ほど停車して結局定刻より50分遅れで発車。
こうして、ボスニア・ヘルツェゴヴィナから引きずっている遅れはクロアチアでもどんどん拡大していく…


午後8時頃、Sisak駅を発車。
駅構内の扇形庫を備えた転車台には、SLの保存機も顔を覗かせているのが見えた。
状態が非常に良さそうなので、動態保存機で復活運転も行っているのかもしれない。





さぁ、終点のザグレブまであと少し。夕陽を追いかけてラストスパート!







すっかり日の暮れた午後8時50分、396列車は定刻よりちょうど1時間遅れで、夜の終着駅のザグレブ中央駅に到着した。
サラエボ駅からおよそ10時間の列車の旅だった。




すぐに入れ替え用のディーゼル機関車が連結され、396列車だったボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦鉄道とスルプスカ共和国鉄道の客車たちはザグレブ中央駅裏の操車場に引き上げていく。
ザグレブで一晩休んで束の間の休息を取ったら、明日には再びサラエボ行きの397列車になってボスニア・ヘルツェゴヴィナに戻る旅に出るのだろう。

お疲れさま、サラエボとザグレブを結ぶ唯一の国際列車…今日はありがとう。

さて、僕も一昨日泊まった駅前のビジネスホテルに戻って休むとしよう。
シャワーを浴びて一晩ぐっすり眠ったら、僕もまた明日の朝にはザグレブを発って新しい旅に出る事になる。

15:国際列車MIMARA号の旅に続く

2015夏 ドイツ/クロアチア/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紀行 13:サラエボ発ザグレブ行き396列車の旅 前編

2015-10-11 | 旅行記:2015 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
Photo:朝のサラエボ駅で発車を待つザグレブ行き396列車


12:束の間のサラエボ~戦争の記憶からの続き

朝のサラエボ駅のプラットホームには、ザグレブ行きの396列車が据え付けられて発車を待っている。

駅構内の切符売り場に張り出された時刻表によると、どうやら2015年8月現在ではサラエボ駅に発着している列車の殆どが近郊の町までの短距離列車ばかりで、国境を越えて運行される長距離列車はこのザグレブ行き系統のみらしい。

かつてはハンガリーのブダペストや、ユーゴスラビアの連邦首都であったベオグラードまで行く列車もあったらしいのだが、内戦による線路の破壊や戦後の混乱によって運行を取りやめてしまったのだろうか。





ザグレブ行きの396列車を牽引する電気機関車。
車体にはボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦鉄道の所属であることが表記されている。





牽引される3輌編成の客車は、昨日ザグレブ中央駅からサラエボ駅まで乗ってきた397列車と全く同じ。
やはり同じ編成が毎日、ザグレブとサラエボの間を行ったり来たりしているようだ。

ちなみに3輌の客車はボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦鉄道とスルプスカ共和国鉄道の所属の車輌を混結して運用している模様で、塗装が車輌ごとに異なっていてとても賑やかな外観の編成となっている。


客車に乗り込む為にデッキのタラップを登ろうとしたら、客車のメーカーズプレートを発見。
1984DRとあるので、1984年に製造された元・東ドイツ国鉄(DR)の中古車であることが判った。

396列車は10:43、定刻にサラエボ駅を発車。
再びザグレブに戻る一日がかりの鉄道の旅が始まる。






サラエボ駅を発車後、しばらくすると操車場と車輌基地の隣を通るのだが、そこに思わぬ車輌がいるのを発見!
車体長が極端に短く寸詰まりで天井高が低い、この独特な形状の車体…
スペイン製の高性能な振り子式連接車輌、タルゴだ!

数年前、ドイツ鉄道の夜行列車として使用されていたタルゴが引退してどこかに売却されたらしいという話は聞いていたが、何とボスニア・ヘルツェゴヴィナにやって来ていたとは。
それにしても、サラエボからどこまで行く系統の列車でタルゴが使用されているのか気になる。今度ボスニア・ヘルツェゴヴィナに来るときは是非とも乗ってみたいものだ。

…さてサラエボに別れを告げて、396列車は一路クロアチアを目指し真夏のボスニア・ヘルツェゴヴィナの青空の下をひた走るが、どういう訳だか停車駅に着く度にさして理由もないのに遅れが生じていて、しかもそれがどんどん拡大していくのがいかにもボスニア・ヘルツェゴヴィナ流(笑)

まぁどうせザグレブに帰るだけだし、急ぐ旅でもない。ここはのんびり時間を忘れて、南欧バルカン半島の夏休みのローカル線の旅を満喫することにしよう。


サラエボ近郊の、時刻表に記載されていないような小さな駅にもこまめに停車していく。


車窓にはモスクもよく見かける。

かつてオスマン帝国による影響を多く受けた歴史的経緯もあって、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦はイスラームを信仰するムスリムであるボシュニャク人が多数を占めており、イスラーム文化のエキゾチックな雰囲気が漂っている。




駅にしばらく停車して、ローカル列車と行き会うこともしばしば。


駅名表記にキリル文字が見られるようになると、列車がボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦からスルプスカ共和国に入った事がわかる。





心和む山里の風景にも、よく見ると内戦の悲劇の傷跡が…

この地には夥しい数の墓標だけでなく、今なお処理されていない危険な地雷が山中に多く残されている為、迂闊に山を歩くのは非常に危険だという。
風景が平和で美しいだけに、そこに残されたあまりにも深い戦争の傷跡が心に痛い…



午後2時過ぎ、396列車は昼下がりのDoboj駅に到着。
Dobojはスルプスカ共和国の鉄道の要衝、らしい。
この時点で既に定刻ダイヤから20分以上遅れているが…


広いDoboj駅構内には客車が放置されているだけで、特に行き合い列車も無かったようだが、396列車は何故かきっちり10分間停車して出発。
日本の鉄道のように、駅の停車時間を切り詰めて回復運転を行うなどということは全く無い(笑)





次に停車したどこかの駅では、しっかり列車交換。
…やって来たこの行き合い列車、なんだか編成内容からして昨日乗ったザグレブ発サラエボ行きの397列車のような感じだがサボが見えず、はっきり確認することは確認は出来なかった。


その次に見かけた列車は、なんと客車と無蓋貨車を併結した混合列車!?
でもよく見たら機関車も重連だし、何だかいかにも不自然な編成なのでひょっとしたら回送列車かも。

その後、396列車はBanja Luka駅でスルプスカ共和国鉄道所属の客車を1輌切り離し(おそらくここで運用を終えて車庫に入る「たすき掛け行路」が組まれている模様)、代わりの車輌を増結したり機関車を交換したりと何やかやと作業をこなしてから発車。

もちろんその都度、列車の遅れは拡大していく訳だが、もう今さら何も気にならない。
「なぁに、どうにかなるさ。今日中にザグレブに着ければ、それでいいさ!」(笑)

行けども行けども、車窓は緑のボスニア・ヘルツェゴヴィナの森…



「あっ、腕木信号みたいな形の信号機だ!…でも肝心の腕木が無いね」


列車のコンパートメントから開け放した窓を見上げると、そこには青い空と白い雲。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナの夏の旅…


サラエボ発ザグレブ行き396列車の停車駅と走行ルート表

14:サラエボ発ザグレブ行き396列車の旅 後編に続く