天燈茶房 TENDANCAFE

さあ、皆さん どうぞこちらへ!いろんなタバコが取り揃えてあります。
どれからなりとおためしください

2015夏 ドイツ/クロアチア/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紀行 13:サラエボ発ザグレブ行き396列車の旅 前編

2015-10-11 | 旅行記:2015 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
Photo:朝のサラエボ駅で発車を待つザグレブ行き396列車


12:束の間のサラエボ~戦争の記憶からの続き

朝のサラエボ駅のプラットホームには、ザグレブ行きの396列車が据え付けられて発車を待っている。

駅構内の切符売り場に張り出された時刻表によると、どうやら2015年8月現在ではサラエボ駅に発着している列車の殆どが近郊の町までの短距離列車ばかりで、国境を越えて運行される長距離列車はこのザグレブ行き系統のみらしい。

かつてはハンガリーのブダペストや、ユーゴスラビアの連邦首都であったベオグラードまで行く列車もあったらしいのだが、内戦による線路の破壊や戦後の混乱によって運行を取りやめてしまったのだろうか。





ザグレブ行きの396列車を牽引する電気機関車。
車体にはボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦鉄道の所属であることが表記されている。





牽引される3輌編成の客車は、昨日ザグレブ中央駅からサラエボ駅まで乗ってきた397列車と全く同じ。
やはり同じ編成が毎日、ザグレブとサラエボの間を行ったり来たりしているようだ。

ちなみに3輌の客車はボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦鉄道とスルプスカ共和国鉄道の所属の車輌を混結して運用している模様で、塗装が車輌ごとに異なっていてとても賑やかな外観の編成となっている。


客車に乗り込む為にデッキのタラップを登ろうとしたら、客車のメーカーズプレートを発見。
1984DRとあるので、1984年に製造された元・東ドイツ国鉄(DR)の中古車であることが判った。

396列車は10:43、定刻にサラエボ駅を発車。
再びザグレブに戻る一日がかりの鉄道の旅が始まる。






サラエボ駅を発車後、しばらくすると操車場と車輌基地の隣を通るのだが、そこに思わぬ車輌がいるのを発見!
車体長が極端に短く寸詰まりで天井高が低い、この独特な形状の車体…
スペイン製の高性能な振り子式連接車輌、タルゴだ!

数年前、ドイツ鉄道の夜行列車として使用されていたタルゴが引退してどこかに売却されたらしいという話は聞いていたが、何とボスニア・ヘルツェゴヴィナにやって来ていたとは。
それにしても、サラエボからどこまで行く系統の列車でタルゴが使用されているのか気になる。今度ボスニア・ヘルツェゴヴィナに来るときは是非とも乗ってみたいものだ。

…さてサラエボに別れを告げて、396列車は一路クロアチアを目指し真夏のボスニア・ヘルツェゴヴィナの青空の下をひた走るが、どういう訳だか停車駅に着く度にさして理由もないのに遅れが生じていて、しかもそれがどんどん拡大していくのがいかにもボスニア・ヘルツェゴヴィナ流(笑)

まぁどうせザグレブに帰るだけだし、急ぐ旅でもない。ここはのんびり時間を忘れて、南欧バルカン半島の夏休みのローカル線の旅を満喫することにしよう。


サラエボ近郊の、時刻表に記載されていないような小さな駅にもこまめに停車していく。


車窓にはモスクもよく見かける。

かつてオスマン帝国による影響を多く受けた歴史的経緯もあって、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦はイスラームを信仰するムスリムであるボシュニャク人が多数を占めており、イスラーム文化のエキゾチックな雰囲気が漂っている。




駅にしばらく停車して、ローカル列車と行き会うこともしばしば。


駅名表記にキリル文字が見られるようになると、列車がボスニア・ヘルツェゴヴィナ連邦からスルプスカ共和国に入った事がわかる。





心和む山里の風景にも、よく見ると内戦の悲劇の傷跡が…

この地には夥しい数の墓標だけでなく、今なお処理されていない危険な地雷が山中に多く残されている為、迂闊に山を歩くのは非常に危険だという。
風景が平和で美しいだけに、そこに残されたあまりにも深い戦争の傷跡が心に痛い…



午後2時過ぎ、396列車は昼下がりのDoboj駅に到着。
Dobojはスルプスカ共和国の鉄道の要衝、らしい。
この時点で既に定刻ダイヤから20分以上遅れているが…


広いDoboj駅構内には客車が放置されているだけで、特に行き合い列車も無かったようだが、396列車は何故かきっちり10分間停車して出発。
日本の鉄道のように、駅の停車時間を切り詰めて回復運転を行うなどということは全く無い(笑)





次に停車したどこかの駅では、しっかり列車交換。
…やって来たこの行き合い列車、なんだか編成内容からして昨日乗ったザグレブ発サラエボ行きの397列車のような感じだがサボが見えず、はっきり確認することは確認は出来なかった。


その次に見かけた列車は、なんと客車と無蓋貨車を併結した混合列車!?
でもよく見たら機関車も重連だし、何だかいかにも不自然な編成なのでひょっとしたら回送列車かも。

その後、396列車はBanja Luka駅でスルプスカ共和国鉄道所属の客車を1輌切り離し(おそらくここで運用を終えて車庫に入る「たすき掛け行路」が組まれている模様)、代わりの車輌を増結したり機関車を交換したりと何やかやと作業をこなしてから発車。

もちろんその都度、列車の遅れは拡大していく訳だが、もう今さら何も気にならない。
「なぁに、どうにかなるさ。今日中にザグレブに着ければ、それでいいさ!」(笑)

行けども行けども、車窓は緑のボスニア・ヘルツェゴヴィナの森…



「あっ、腕木信号みたいな形の信号機だ!…でも肝心の腕木が無いね」


列車のコンパートメントから開け放した窓を見上げると、そこには青い空と白い雲。
ボスニア・ヘルツェゴヴィナの夏の旅…


サラエボ発ザグレブ行き396列車の停車駅と走行ルート表

14:サラエボ発ザグレブ行き396列車の旅 後編に続く


コメントを投稿