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2015夏 ドイツ/クロアチア/ボスニア・ヘルツェゴヴィナ紀行 10:ザグレブ発サラエボ行き397列車の旅 前編

2015-10-04 | 旅行記:2015 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ
Photo:朝のザグレブ中央駅で発車を待つサラエボ行き397列車


9:ザグレブ散歩~トラムに乗って現代美術館へからの続き

2015年8月10日

朝9時、駅前のビジネスホテルをチェックアウト。
今日は丸一日列車移動のハードな日程となるので、ホテルの朝食ビュッフェをたっぷり食べて腹ごしらえを済ませた。
気合を入れて、ザグレブ中央駅に向かう。




ザグレブ中央駅のコンコース列車発着案内板に表示された、9:18発の列車にこれから乗車する。列車種別はBrziとあるが、これは特急や急行より格下の「快速列車」というような位置付けらしい。
SISAK・DOBOJ経由のSARAJEVO(サラエボ)行き…
そう、クロアチアの首都ザグレブとボスニア・ヘルツェゴヴィナの首都サラエボを結ぶ国際列車だ。

現在、ザグレブとサラエボを直通運転する列車は1日に1往復のみ。この9:18発サラエボ行き快速列車は“唯一の隣国の首都行き国際列車”ということになる。


これが、そのサラエボ行き「国際快速列車」、特に列車名や愛称は付いておらず単に列車番号で397列車と称している。
昨日の朝にミュンヘンから国際寝台列車LISINSKI号でザグレブ中央駅に到着した時にも見たが、今朝も昨日と同様に電気機関車が牽引する古びた客車の3輌編成で発車を待っていた。

乗車券は既に昨日の朝にザグレブ―サラエボの往復切符を購入してあるので、そのまま397列車に乗り込む。

昨日、切符を買う時にザグレブ中央駅の窓口の中年女性職員氏は「サラエボ行きの列車は2等車だけみたいよ。」などと言っていたが、実際には3輌の客車のうち真ん中の1輌が1等と2等の合造車でその両隣りはどちらも1等車だった。だが、別に座席指定されている訳でもないし、他の乗客も等級の違いを気にしている様子もないので「これはおそらく、古い1等車を格下げして2等車扱いで運用しているのだろう」と判断して、適当に空いていた1等の客席に腰を下ろす。客室は全て6人個室のコンパートメントだった。

午前9時18分、397列車は定刻通りにザグレブ中央駅を発車、一路サラエボを目指し走り始める。



ザグレブ中央駅を出た直後は市街地を慎重にゆっくりと通り抜けるように走っていたが、やがてサヴァ川の鉄橋を渡ると周囲の風景がひらけて田園地帯となり、397列車も一気に加速してかなりの高速走行で駆け抜けていく。



列車が本腰入れて走り始めるのと同時に、車掌氏が巡回してきて車内検札が行われた。

さて僕は1等車のコンパートメントに座っているのに持っているのは2等の切符で、しかも難解なクロアチア語で手書きされているので何と書かれてあるのか全く解らないという状況なので、「あっ、なんだかこれって宮澤賢治の『銀河鉄道の夜』でジョバンニが車掌に検札を受けるシーンみたいだ」などと思いつつ、ちょっと緊張しながら昨日買った切符を手渡すと、車掌氏は別に「これは三次空間の方からお持ちになったのですか?」などとは言い出さずに何やら切符の台紙の裏にチェック印を記入しただけで返してくれた。

どうやら僕の予想通り、この列車では2等の切符でも1等車のコンパートメントに乗って構わないようだ。


397列車は十数分おきにザグレブ郊外の小さな駅にこまめに停車しながら走っていく。
国際列車とはいえ、ザグレブ都市圏の近郊輸送も担うダイヤとなっている。





のどかで美しいクロアチアの田園風景を眺めながら快調に飛ばしてザグレブから約40分、午前10時にSISAKに到着。


SISAKはかつては大規模な機関区がある鉄道の要衝だったようで、駅構内には立派な扇形庫を備えた転車台が残り、雨ざらしだがSLも静態保存されている。

SISAKからさらに走ること約1時間、午前11時にVolinjaに到着。



ここがクロアチア領内での最後の停車駅となり、車内に出国審査官が乗り込んできて乗客のパスポートのチェックが行われ、出国のスタンプが捺された。

Volinja駅では乗客の出国手続きが行われるのと同時に、397列車の越境準備も行われる。
ザグレブからここまで397列車を牽引してきたクロアチア鉄道の電気機関車が切り離されて、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ鉄道の機関車に付け替えられた。



真っ赤で派手なクロアチアの電気機関車から、くすんだ朱色のボスニア・ヘルツェゴヴィナの電気機関車に交換したが、見たところ機関車の形状が全く同じなのでどうやら同型式同士での機関車交換のようだ。

これが日本のJRのブルートレインなら、鉄道会社の管轄が変わっても運転士が交代するだけで、同じ機関車が直通で乗り入れて牽引ということになるのだが…
国が変わるとなるとそういう訳にもいかないらしい。
だが、ここVolinjaでも国境など関係無かったかつてのユーゴスラビア連邦時代は、機関車が交換されずに直通で運行を行っていたのだろうか?
…などと、ふと思う。

30分足らずで乗客の出国審査と機関車交換を終えて、国境の駅Volinjaを出発。

やがて397列車は、おそらくクロアチアとボスニア・ヘルツェゴヴィナの国境となっていると思われる川を鉄橋で渡る。



ボスニア・ヘルツェゴヴィナの国境地帯には、現在でも内戦時に埋められた地雷が処理されること無く大量に残されていると聞く。
一見のどかで風光明媚なこの風景の中にも、恐ろしい戦争の遺物が今も隠れているかも知れないと思うと背筋が寒くなる…


戦争の記憶に少し緊張もしたが、397列車はどうやら何事も無くボスニア・ヘルツェゴヴィナ国内に入ったようだ。
車窓には山すそに、とうもろこし畑が続いている。どことなく日本の農村を走るローカル線に似た雰囲気の車窓が広がる。











さてザグレブを出てからここまでほぼ定刻のダイヤ通りに走ってきた397列車だが、ボスニア・ヘルツェゴヴィナの国境地帯で急に走りが鈍り始めた。
Volinja国境駅を出ると10分足らずでボスニア・ヘルツェゴヴィナ側の入国駅に到着する筈なのだが、なかなか駅にたどり着かない…



結局、定刻より10分程度遅れて11時40分頃にボスニア・ヘルツェゴヴィナ領内での最初の停車駅Dobrljinに到着。



Dobrljin駅ではボスニア・ヘルツェゴヴィナの入国審査が行われる。
入国審査官が車内に乗り込んでくるがパスポートチェックは車内では行われず、乗客のパスポートをすべて回収すると列車を降りて、駅にある国境事務所に持って行ってしまった。

パスポートが手元に戻ってくるまで、何もすることがない。真昼の田舎の駅で、静かでのんびりとした時間が過ぎていく…
そんなことを言っているうちに、とっくに発車時刻を過ぎてしまった。
これが『ボスニア・ヘルツェゴヴィナ時間』って奴か。同じ旧ユーゴスラビア同士でも、時間にきっちりしていたクロアチアとは随分勝手が違うな…

まぁ焦っても仕方がない。それに、郷に入れば郷に従えだ。これがボスニア・ヘルツェゴヴィナの流儀だろうし、こういう呑気な旅も悪くない。
そのうちパスポートも戻るだろうし、列車も再び走り始めるだろう…


ザグレブ発サラエボ行き397列車の停車駅と走行ルート表

11:ザグレブ発サラエボ行き397列車の旅 後編に続く


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