わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

釉の失敗と対策 7 (釉の厚み、施釉1)

2009-02-04 22:05:56 | 失敗と対策

1) 釉の厚さに付いて

  施釉する際、釉の種類によって、厚みを代える必要が有ります。

  必要な厚みにしないと、所定の色や、結晶が出ません。

  ① 施釉時の、標準的な釉の厚みを、以下に示します。

   透明釉:0.6 m m  不透明釉: 1.2 m m  艶消し釉:2.0 m m  結晶釉:2.0 m m

   流紋釉:2.0 m m 。 一般に 2.0 m mを超えてはいけません。

   尚 焼成した後の釉の厚みは、施釉時の半分です。

  ② 釉が薄い場合。

    どんな釉でも、釉が薄いと、光沢が無く、「ざらついた」肌となり、色は茶色や、

    オレンジ色になります。

  ③ 施釉の際、厚みを調整する方法。

   a) 釉自体の濃度を、調整する方法

    ・ 素地が粗い場合や、素焼温度がやや低い場合、釉の濃度をやや薄く

     します。素地の吸収性が強く、釉が厚くなり易い為です。

    ・ 筆や刷毛で塗る場合や、スプレー掛け、流し掛けは、やや濃度を厚く

     します。尚、刷毛塗り等は、素地が水分を、直ぐに吸収する為、釉が

     伸びず、塗りづらいです。

     釉にアラビアゴムや、デキストリン、C M C(化学のり)等を添加します。

    ・ 浸し掛け、ガバ漬け、等は標準の濃さにします。

      (これは、次の時間による、調整が出来る為です。)

     尚、浸し掛け、ガバ漬けは、大きな作品には、向きません。

     釉の量が大量にいるからです。

   b) 施釉時間で、調整する方法

    ・ 私の場合では、一般の食器や、花瓶などは、浸し掛けで、普通の厚みで

     3秒で、4~5秒と長くなるに従い、釉が厚くなります。

     但し、6秒以上浸すと、反って釉は薄く成ります。

     (釉が塗れるのは、素地が水を吸収する事により、釉も素地に張り付く

     からです。6秒以上に成ると、逆に水を吐き出す事になり、釉が薄く

     成ります。) 又、釉を厚く掛けたい時は、濃い釉を一度掛けする

     よりも、薄めの釉を、時間を置いて、二度掛けした方が、安全に、

     濃く掛かります。

   c) 釉を良く撹拌してから、使う。 

     釉は沈殿し易いです。それ故、撹拌直後に使用します。

     釉の容器の上部と、底部で、濃度が異なれば、施釉に濃淡が出ます。

     作品が複数個有る場合、作品1個毎に、撹拌が必要な釉も有ります。

    ・ 沈殿防止剤が、市販されていますが、効果は疑問です。
 
2) 釉は混合して、使わない事。

   釉の色は、単独で使う様に、調合されています。

   絵の具の様に、二色の中間色が出ることは、稀です。思わぬ色が出ます。

   大抵の場合、汚い色に成ることが多いです。

  ① 釉を二重に掛ける。

   a)  二色以上の釉を、重ねて塗る事は、問題有りません。

    但し、どの色を先に掛けるか(下に成る色)によって、重なった部分の

    色が、大きく変わります。 後に塗った色が、優先して出ます。

   b) 収縮率の違う釉を、二重掛けすると、「釉はげ」などが起こる場合が

    有りますから注意。

   c) 重ね塗りをすると、釉の乾燥が遅く成ります。

    一般に、乾いた素地に、施釉すると、30数秒で持てる状態に成ります。

    重ね塗りをすると、素地の吸収が悪く成り、乾燥が遅れます。

    (底に付いた釉を、刷毛で落す場合、先に、底の釉を落してから、重ね

    塗りした方が、時間の節約に成ります。)

   d) 複数の釉を、一つの作品に、上手に、塗り分ける事は、かなり難しい

    事です。基本的には、筆や刷毛で、塗る事に成りますが、釉の濃淡が出易

    く、均一に塗れません。簡単な方法は、生の時(制作時)に色土や、

    色化粧土で、表面に色を付けるか、素焼後、下絵付けをし、透明釉を塗る事です。

    (但し、出来上がった作品の、風合いは、大分異なります。)


 陶芸釉薬の失敗と対策 
釉の厚み

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2 コメント

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Unknown (アールドットナーノ)
2020-05-10 15:52:04
はじめして。
わたしは最近陶芸の絵付けを始めた者です。
自宅に電気窯を設置し、自分で釉薬を掛け焼成しています。
・素地は、有田土
・絵の具はアメリカの1100~1250℃に適しているもの
・釉薬は、透明の石灰釉。こちらも高温に対応するもの
上記を使っています。

釉薬が、いまいちうまくいきません。

どぶ漬で施釉しています。

全体的な厚みはいいと思うのですが、どうしても、一方向が分厚くなってしまうのです。
浸けて出すときに、下になる部分がどうしても分厚くなってしまうと思うのですが、どう処理したら良いのでしょう?

また、絵のあるところが少し窪み(釉薬が薄く)、全体的に絵の箇所とそうでないところがボコボコとします。

全くの素人であるため、知識がありません。

何かアドバイスがありましたら、ぜひ教えてください。
よろしくお願いいたします。
返信する
絵付けと施釉に付いて (明窓窯)
2020-05-13 11:15:55
アールドットナーノ様よりの質問に付いて当方の見解を、質問41として本文に記載しました。
参考にして下さい。

以上
返信する

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