わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
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新釉の話23 混ぜて作る釉11 色釉2(クロム釉)

2013-08-20 21:12:12 | 新釉(薬)の話

酸化クロム(Cr2O3)は緑色の粉末で、緑を発色する時に使います。尚、還元焼成で

「クロム赤釉」と呼ばれる、赤やピンク色の釉を作る金属でもあります。

1) 酸化クロムは釉に熔けない。

 ① 鉄や銅と異なり、クロムは釉にほとんど熔けず、釉中に浮遊した状態で存在します。

  その為、釉に透明感がなく、同じ緑色とは言いながら、銅釉では透明感のある緑色とは

  見た目にも大きな違いが生じます。

 ② 酸化クロムの含有量に応じて、安定した若草色から濃い緑色になります。

  即ち、1%程度(外割り)を添加し還元焼成で、若草色になり、5%では、濃い緑色に

  なります。

  但し、マグネシウムが入っている釉は、緑にならずやや暗い茶色に成ります。

2) 酸化錫を添加した、クロム赤釉に付いて。

 ① 酸化クロムと酸化錫(すず)を混合して、灼熱するとピンク色になり、ピンクの顔料

  としても使われています。

  又、酸化錫を含む釉に酸化クロムを入れると、ピンク色または、マロン(えび茶)になり

  ます。

  添加する量は100g当たりの外割りで、クロムが0.3g、錫が6.0g程度です。

 ② 酸化焼成で、綺麗な濃い赤釉になります。

  特にCaO釉で透明感の無い綺麗な赤釉になり、BaO釉では鮮やかさが減少したやや

  「どぎつい」赤釉となる傾向があります。添加量は1.5~3g位が適量です。

  還元焼成では、酸化錫でやや乳濁した、綺麗な萌黄(もえぎ)色になります。

  中性炎では、赤茶色風になります。但し、いずれも透明感は有りません。

 ③ 基礎釉の影響。

  CaO釉よりも、BaO釉の方が濃くて綺麗な赤釉になります。又、マグネシウムの

  入ったMgO釉では、赤い釉には成らず、白又は白い結晶釉になります。

3) アルミナと酸化クロムとでピンクの顔料を作る。

 酸化錫は高価な金属で赤釉を作りますが、錫を使わずに以下の方法でピンク釉を作る方法

 が有るとの事です。

 カオリンなどのアルミナを酸化クロムと焼(か しょう)すると、ピンクの顔料ができ

 ます。この顔料を基礎釉に添加して、ピンク釉を作ります。

  注: 焼とは、鉱物の固体を加熱して、熱分解や相移転を起こしたり、揮発成分を

  除去したりする熱処理の方法です。

 ・ 相移転とは: 同一の物質でも、温度や圧力の変化により、物理的な性質が明確に

  異なる状態に変化する現象です。この場合、アルミナの結晶構造が変化すると

  思われます。

  例えば、水(H2O)は、氷→水→水蒸気の様に別の性質や状態に変化します。

4) 酸化錫を含む釉を、酸化クロムの釉の近くに置くと、酸化クロムの蒸発により、

  酸化錫を施した作品が、ピンクに染まる場合がありますので、窯詰めの際、置く位置に

 注意が必要です。

以下次回(マンガン、ニッケル、その他)に続きます。

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