酸化クロム(Cr2O3)は緑色の粉末で、緑を発色する時に使います。尚、還元焼成で
「クロム赤釉」と呼ばれる、赤やピンク色の釉を作る金属でもあります。
1) 酸化クロムは釉に熔けない。
① 鉄や銅と異なり、クロムは釉にほとんど熔けず、釉中に浮遊した状態で存在します。
その為、釉に透明感がなく、同じ緑色とは言いながら、銅釉では透明感のある緑色とは
見た目にも大きな違いが生じます。
② 酸化クロムの含有量に応じて、安定した若草色から濃い緑色になります。
即ち、1%程度(外割り)を添加し還元焼成で、若草色になり、5%では、濃い緑色に
なります。
但し、マグネシウムが入っている釉は、緑にならずやや暗い茶色に成ります。
2) 酸化錫を添加した、クロム赤釉に付いて。
① 酸化クロムと酸化錫(すず)を混合して、灼熱するとピンク色になり、ピンクの顔料
としても使われています。
又、酸化錫を含む釉に酸化クロムを入れると、ピンク色または、マロン(えび茶)になり
ます。
添加する量は100g当たりの外割りで、クロムが0.3g、錫が6.0g程度です。
② 酸化焼成で、綺麗な濃い赤釉になります。
特にCaO釉で透明感の無い綺麗な赤釉になり、BaO釉では鮮やかさが減少したやや
「どぎつい」赤釉となる傾向があります。添加量は1.5~3g位が適量です。
還元焼成では、酸化錫でやや乳濁した、綺麗な萌黄(もえぎ)色になります。
中性炎では、赤茶色風になります。但し、いずれも透明感は有りません。
③ 基礎釉の影響。
CaO釉よりも、BaO釉の方が濃くて綺麗な赤釉になります。又、マグネシウムの
入ったMgO釉では、赤い釉には成らず、白又は白い結晶釉になります。
3) アルミナと酸化クロムとでピンクの顔料を作る。
酸化錫は高価な金属で赤釉を作りますが、錫を使わずに以下の方法でピンク釉を作る方法
が有るとの事です。
カオリンなどのアルミナを酸化クロムと焼(か しょう)すると、ピンクの顔料ができ
ます。この顔料を基礎釉に添加して、ピンク釉を作ります。
注: 焼とは、鉱物の固体を加熱して、熱分解や相移転を起こしたり、揮発成分を
除去したりする熱処理の方法です。
・ 相移転とは: 同一の物質でも、温度や圧力の変化により、物理的な性質が明確に
異なる状態に変化する現象です。この場合、アルミナの結晶構造が変化すると
思われます。
例えば、水(H2O)は、氷→水→水蒸気の様に別の性質や状態に変化します。
4) 酸化錫を含む釉を、酸化クロムの釉の近くに置くと、酸化クロムの蒸発により、
酸化錫を施した作品が、ピンクに染まる場合がありますので、窯詰めの際、置く位置に
注意が必要です。
以下次回(マンガン、ニッケル、その他)に続きます。
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