わ! かった陶芸 (明窓窯)

 作陶や技術的方法、疑問、質問など陶芸全般 
 特に電動轆轤技法、各種装飾方法、釉薬などについてお話します。

大物を作る10(手捻ると轆轤を併用1)

2011-06-24 21:40:44 | 失敗と対策
大きな作品(大物)を作る話を、続けます。

 5) 手捻りと轆轤の共同作業で、背の高い作品を作る

    轆轤だけで、背の高い作品を作るのは、かなりの熟練を要します。

    手捻りの紐作りで、高く巻き上げる事は、さほど困難ではありません。

    又、タタラを筒などに巻きつけ、背の高い筒を作る事も、さほど困難ではありません。

    そこで、手捻りで、ある程度の高さまで、筒状の作品を作り、その後轆轤挽きして、綺麗な筒状に

    仕上げてから、形作りに入れば、背の高い作品を、より容易に作る事出来ます。

    但し、それなりの、手順を踏んで、作陶しないと、思った様にはいきません。

    更に、この作り方ではの作品もあります。異なる色土をある順序で、積み上げる事により、

    色土による模様が、表現できる事です。(練り上げの技法)

  ① 紐を巻き上げて、背の高い作品を作る

   ・ 巻き上げる方向には、右(時計)回転方向と、左(反時計)回転方向があります。

     轆轤の回転方向(一般には右回転)との関係で、二通りの方法があり、人により差があります。

     即ち、巻き付けた方向に更にまき付ける方向と、巻き付けを緩める方向に成る場合です。

   ・ 前者ならば、左回転方向に、後者ならば右回転に、積み上げます。

     即ち、右回転での轆轤作業では、土は左上がりに捩れ(ねじれ)ます。

   ・ 同じ方向に成る様にすると、強度が増しますが、乾燥や焼成で、形が狂い易くなると言う

     人もいます。巻き戻す方向にすると、土の歪(ひずみ)や撚れを、少なくする効果がありますが、

     巻きつきが弱くなる(ひびが入り易い等)と、言う人もいますので、一長一短です。

   a) 巻き上げると、繋ぎ目と段差が生じますから、繋ぎ目を指などで上下の土を、移動させて

     消します。紐の太さにも差があると、肉厚にも差が出ます。

     しかし、少々の肉厚の差や、表面の凹凸は、轆轤挽きによって、解消されますので、

     この段階では、気にする必要はありません。

   b) 轆轤挽きするには、土の表面から「ドベ」を出す必要があります。

     布切れを水に濡らして、下から上に撫ぜる様にすれば、「ドベ」が出ます。

     まず、表面の凸凹を無くしてから、綺麗な円を出し、本格的に轆轤挽きします。

   c) 紐は太めになっていますから、轆轤挽きする事により、若干薄くする事が出来、背も上に

     伸びます。又、土も固めに、巻き上げられているはずです。

   d) 徐々に胴の部分を膨らませて、作品を形作りします。

   e) 筒状にしてから、形作りに入ると、折角高く巻き上げても、高さが低くなってしまいます。

     そこで、最初から、おおよその形に土を積み上げる方法が、背の高さを保持し易いです。

   f) 練り上げの技法は、この方法で数種類の色土を、計画的に積み上げて、模様を出します。

     但し、轆轤挽きを行うと、模様が変化してしまいますので、轆轤作業は、削りのみにします。

   g) 余談ですが、5世紀~中世までの、釉薬が掛かっていない陶器を、須恵器(すえき)と呼びます。

     (須恵器は、我が国において、最初に窯で焼成した焼き物です。)

     粘土で紐を作り、積み上げて形を作ります。叩いたり、削ったりして形を整え、仕上げに

     轆轤を用いていました。作品の種類も多く、貯蔵用の壷や甕(かめ)皿や瓶類、食器など

     大きな作品も存在しています。

    即ち、今回お話した技法は、1500年以前より、用いられていた方法と、まったく同じ事に

    成ります。尚この技法は、5世紀中葉に、朝鮮半島からの、渡来した陶工集団によって、

    伝えられた物だそうです。

  ② タタラ板を、筒に巻きつけて、背の高い作品を作る

以下次回に続きます。


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