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まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

大迷惑!パパは心配性

2018-11-30 | ドイツ、オーストリア映画
 「ありがとう、トニ・エルドマン」
 ブカレスト在住のドイツ人女性イネスは、ワーカホリック気味のキャリアウーマン。そんな娘を心配するイタズラ好きの父ヴィンフリートは、トニ・エルドマンという別人に扮してイネスにつきまとい始める。そんな父に困惑し、ストレスを募らせるイネスだったが…
 世界中で高く評価されたドイツ映画。コメディなのですが、かなり独特の味わいです。大爆笑とか、クスクス笑うとか、そんなんじゃないんですよ。ハリウッドのコメディや日本のお笑いバラエティとは、まったく笑いの性質が違うというか。おかしなシーンや台詞ではなく、父娘のやりとりが生み出す空気感が笑いの源になっています。心配性のパパが、娘の身を案じるあまりにストーカーじみた奇行暴走、という設定は、岡田あーみん先生の漫画「お父さんは心配性」と同じなのですが、あの狂気的なまでにハチャメチャハイテンション炸裂とは真逆で、終始淡々とテンションが低く、何だかわびしささえ漂ってるので、ちらっと観ただけではコメディと受け取れない、でもしっかり観るとじわじわ可笑しい、そんな笑いです。

 ハリウッド映画だと、おバカでノーテンキな笑い+ほのぼのしんみり、なパターン通りの喜劇になってたでしょう。まったくそうしなかったところが、この映画の特異さ、魅力と言えるでしょうか。とにかくヴィンフリートもイネスも、やることなすことすべてが痛々しいんですよ。娘や周囲を何とか笑わせ和ませようとするヴィンフリートのジョークやパフォーマンスが、ことごとく骨折級のスベリまくりで、そのイタさに笑うよりもあちゃちゃ~…と観客も困惑し気まずくなる、その繰り返しなのです。ハリウッド映画だと絶対に、善人だけど空気を読まない自由奔放な天然おじさん、みたいな言動で周囲を振り回して迷惑をかける、みたいなキャラになってたでしょうけど、ヴィンフリートはそんなんじゃないんですよ。単なる迷惑な構ってちゃん爺なら、ただウザくて不愉快なだけですが、彼のいつもゼーゼー言いながら苦しそうな、必死で一生懸命で真剣そのものなスベリ芸は、なぜそこまでしてと心配になるほど悲壮感があります。フツーだとあんな人、怒られたり嘲笑われたりするけど、イネスも周囲もほとんど腹を立てず不快感もあらわにせず、ただもう当惑、狼狽するだけな様子が、大笑いじゃないけどジワっとくる滑稽さ。とにかく、ヴィンフリートが実は余命いくばくもないとか、イネスに何か心の傷やトラウマがあるとか、そんな陳腐なお涙ちょうだいを狙った内容ではないので、感動したい方はご注意を。

 ヴィンフリート以上にイタいイネスの、深刻なメンタル崩壊っぷりもヤバい笑いを誘います。仕事をバリバリこなすキャリアウーマンという表面をギリギリ保ったまま、今にもブッコワレそうなイタい言動をしまくり、何かやらかすイヤな予感を抱かせ、その何かが楽しみになります。劇中、え?ん?は?な言動を、さりげなくチョコチョコやってたイネスが、ラスト近くになってついに!誕生パーティーでの奇行は、かなり衝撃的(笑撃的?)です。特に服を着替えるシーン、あれお茶吹いたわ~。

 ↑ なかなか服が脱げなくて、もがく姿がかなり衝撃的!
 ヴィンフリート役のペーター・ジモニシェックは、ゴツいお爺さんだけど顔はかなりカッコいいです。年老いて太った伊藤英明、みたいな。イネス役のザンドラ・ヒュラーの、近年稀な珍演に瞠目させられました。あれ、アカデミー賞級ですよ。ハリウッドでこの映画がリメイクされるそうですが、ハリウッド女優にはザンドラみたいな静かなる捨て身の演技、無理でしょ。大熱演!な気合いや気負いが全然なく、シレっとトンデモないことをする演技は、ちょっとイザベル・ユペールを彷彿とさせて、さすがヨーロッパ女優だな~と感嘆。
 父と娘の関係について、あらためて考えさせられました。ヴィンフリートはちょっと特殊ですが、ほとんどのお父さんは愛する娘のことを死ぬほど心配してるんでしょうね。私やM子は、今も昔もほぼネグレクトなので、今さら愛情たっぷりに心配されたら、ウザいし気持ち悪いだけです

イケメン転校生に抱かれた僕

2018-10-29 | ドイツ、オーストリア映画
 「僕の世界の中心は」
 サマーキャンプから戻ったフィルは、母と姉のダイアンが冷ややかな関係になっていることに戸惑う。そんな中、フィルは転校生のニコラスと恋に落ちるが…
 同性愛を描いた映画といえば、かつては家族との間や社会の中での苦悩や葛藤がメインテーマでしたが、BLが市民権を得た最近では、LGBTの恋愛はもう異常でも特殊でもなく、男女のそれとほとんど同じ扱いになってる作品がほとんどです。この映画のBLも、いけないことをしているというコソコソした後ろめたさとか禁断感は微塵もなく、堂々と明るく恋してセックスしてます。もはや今までのような同性愛の苦しみや悲しみだけでは、ありきたりな凡作になってしまいます。この映画も、BLを扱いつつもBLよりも家族ドラマに重点が置かれていました。

 ママと姉との間に何があったのか?二人が隠している秘密とは?母と姉に振り回されるフィルが可哀想でした。何なんだよと怒ったりイラついたりせず、無理やり秘密を暴こうともせず、常に優しいフィルなので余計哀れでした。ラストに明かされる真相は、かなり衝撃的。でも人間って、やっぱ強い生き物。特に女は男より神経が太くできてるんです。決してコワレたりしない逞しさが、この映画をジメジメと陰気な悲劇の家族物語にしてません。でも私なら、絶対イジイジと死ぬまで根にもつだろうな~。昆虫と会話できる能力とかファンタジーな設定も異色でしたが、フィルの叔母さんも恋人♀と同棲してるとか、LGBTに寛容な環境が最も私にはファンタジックでした。私の田舎では、さすがに今でも同性カップルが自由に堂々、は難しいですし。

 で、かんじんのBLですが。ナイーヴな美少年とエロカッコいいイケメンがフォーリンラヴ、という腐が大好きなBL定番シチュエーション。速攻でエッチな関係になる嬉しい時短。ラヴシーンが、なかなか大胆でリアル、けどすごくロマンティックで美しかったです。ライトなBLは物足りない、でもハードなゲイセックスシーンは苦手、な私にはちょうどいいラヴシーンでした。

 でも。多くの腐がそうだと思いますが、BLに女が絡んでくるのはイヤなんですよね~。性を超えた親友同士、ソウルメイトだったはずの女に、自分の彼氏を寝盗られるなんて。親友づらして、最低の女じゃん。女ってやっぱ汚いわ。嫉妬して二人の仲を裂こうとして、だったらまだ面白い関係になりそうだったけど、ただの無神経なヤリマンという腐が忌み嫌うキャラでしかなかったので残念。

 愛なんて重い!どっちとも楽しくヤりたいんだよ~というニコラスとの関係に、フィルがくだす決断。痛ましいけど、男らしくて爽やかでした。ニコラスみたいな男に愛を押し付けてしがみついても、みじめな醜態をさらすだけになるだろうし、賢い選択でした。
 ポップで甘酸っぱいBLを演じたドイツの若手俳優二人の、大胆さとフレッシュさが素晴らしいです。

 フィル役のルイス・ホフマンは、「ヒトラーへの285枚の葉書」や「レッド・スパロー」など英語圏映画ではチョイ役でしたが、この作品では堂々の主演。色白でほっそり、優しそうで繊細な美少年だけど、ナヨナヨしたところは全然なく、硬質な男らしさを感じさせるところは、さすがドイツ男子。ニコラス役のヤニク・シューマンは、白濱亜嵐を濃ゆくしたような顔。誘惑フェロモンも特濃で、こんな高校生ありえねー!なエロカッコよさ。常にタンクトップか裸で、色気ダダ漏れ。筋肉質な肉体美も眼福です。ルイスもヤニクも、尻どころかチ◯コも丸だしなスッポンポン。脱ぎっぷり、よすぎ!日本の若手俳優も見習ってほしいものです。

 ポップで若々しい演出が楽しかったです。フィル一家が住んでる屋敷とか森とか、美しく深い自然に囲まれたロハスな生活環境が羨ましかったです。

 ↑ 若い男子特有のキラキラ感がまぶしい!ルイスの主演作「ヒトラーの忘れもの」も観ねば!エロカッコいいヤニクの出演作ももっと観たいですね~ 

夢は見える

2018-08-05 | ドイツ、オーストリア映画
 「5パーセントの奇跡 嘘から始まる素敵な人生」
 先天性の病気で視覚の95%を失った青年サリヤは、一流ホテルで働くという夢を諦めきれず、障害を隠しミュンヘンにある五つ星ホテルの見習いとなり、努力と機転で厳しい研修課題を乗り越えていくが…
 網膜剥離の手術をしたばかりの私には、他人事とは思えぬお話でした。こんなにも長く生きてきて、今さら目が見えなくなってしまったら、もう生きる気力を失ってしまうでしょう。サリヤみたいに、若くて美しくて有能なら、まだ頑張ろうという闘志も抱けるでしょうけど、私みたいな何の取り柄もない老いぼれだと、絶望しか残されないでしょう。この年で暗闇の中で生きねばならぬのは、ある意味ガンで余命3か月宣告されるよりも怖いです。

 障害を理由に諦めたりせず、夢をかなえようとひたむきに奮闘するサリヤは、立派としか言いようがありません。健常者と同じ、いや、健常者以上の働きをするための血のにじむ努力は、まさに超人的でした。私なんか目が見えても、皿洗いさえまともにできないでしょうし。でも、かなり無茶しよんな~と思わずにもいられませんでした。障害を隠して就職とか、あかんやろ~。障害者差別に阻まれて仕方なくとはいえ、自分や他人の命に関わるような大変なこと起きたらどうすんの。起きたらそれがまた差別偏見につながってしまうのに。サリヤの必死な頑張りは、けなげというよりかなり自分さえよければ的な感じもしました。まあ、あんなにイケメンで優秀なんだから、自信もプライドも人一倍なのは当然。現実に納得も妥協もせず、独りよがりに“目が見えなくても誰よりも有能な俺”を確認しようとしてるかのようなサリヤの奮闘は、日本の24時間テレビのお涙ちょうだい障がい者、難病ドラマなんかより、応援したいという好感を抱けました。

 もし目が見えてたら、数年でホテルの支配人になれそうな有能さと同じぐらい、サリヤ運の良さも驚異的でした。特に人間関係。家族を捨てる父親以外は、サリヤを傷つけたり憐れんだりする者は出てこず、寄ってたかって善い人オンリー。サリヤをイビる教官だって、実は厳しいだけで悪い人じゃなかったし。いい人のオンパレードの中、特に親友マックスが天使でした。マックスと出会えてなければ、サリヤのサクセスはありえなかったし。障害を負っても、サリヤみたいにみんなから愛され助けてもらえるとはかぎらないですし、そういう面ではかなり非現実的な設定でした。厳しい研修や特訓シーンは、「愛と青春の旅立ち」や「スチュワーデス物語」っぽかったです。何でもテキパキと臨機応変にこなさねばならないホテルマンも、本当に大変な仕事!
 サリヤ役のコスティア・ウルマンが、めっちゃカッコカワイいかった~

 ちょっとガエル・ガルシア・ベルナルに似てる?小柄でがっちりした体格もGGBと共通してます。ドイツとインドのハーフである彼、ほどよく濃ゆい甘口インドカレー風味なイケメンです。頭が良いけどそれをひけらかさない、真面目でシャイで優しそうなところもGGBに似てます。イケメンで、しかも演技とは思えぬいい子オーラは、みんなから愛され守られるのも理解できる説得力が。色気も抜群で、エキゾティックな浅黒い肌がセクシー。ちょっとだけ脱ぐシーンがありましたが、いいカラダしてました。いい男の条件って、やっぱ色気ですよね~。いくら顔やスタイルが良くても、毒にも薬にもならん無味無臭なイケメンばかりな最近なので、コスティアみたいなエロさを備えた俳優は貴重です。

 金持ちのぼんくらボンボンで、すごいテキトーでチャラいけど、友だち思いで頼りになる、最高にいい奴で理想の親友なマックスを好演したヤコブ・マッチェンツは、ちょっとトーマス・クレッチマン+ベネディクト・カンバーバッチ÷2、みたいな風貌?ちっちゃいコスティアと長身な彼との凸凹コンビが微笑ましかったです。仲の良さにBLっぽさがなかったのが、ちょっと残念でした。女性客とヤリまくってたマックスですが、一流ホテルではああいうサービスもあるの?(笑)サリヤと恋に落ちるシングルマザー役のアンナ・マリア・ミューエは、ダニエル・ブリュール主演の「青い棘」のヒロインでしたね。すっかりおばさんになってて、コスティアがかなり年下に見えた。実際にはコスティアのほうが一歳上と知りビツクリ。女のほうが老けて見えますね。
 それにしても…この映画しかり、西日本豪雨しかり、普段は当たり前のように思ってるものの大切さを、あらためて痛感させられてます。粗末にしたり軽んじたりしてはいけないと思い知りました。

↑注目のドイツイケメン、コスティア・ウルマン。ヨーロッパとアジアの血が混じると、エキゾティックな美貌が生じることが多いそうですが、イザベル・アジャーニとこのコスティアが、その最高の典型ではないでしょうか。コスティアの作品、もっと観たいです(^^♪

パパのBL

2018-08-01 | ドイツ、オーストリア映画
 「Jonathan」
 末期がんで余命いくばくもない父に代わって、叔母マーサとともに農場を切り盛りしている青年ヨナサンの前に、ロンという男が現れる。彼が父の恋人であったことを知り、ヨナサンは激しく動揺するが…
 久々にMYイケメンレーダーが激しくビビビ!なかなか佳さそうなBL映画だな、と軽い気持ちで観たのですが…内容よりも、主人公ヨナサンのイケメンっぷりに目も心もクギヅケ!この子、誰?!と、疾風のごとくチェキラー(^^♪

 ヤニス・ニーヴナーくん、1992年ドイツのクレーフェルト生まれ、現在26歳!この映画のヤニスくん、めちゃんこカッコカワイかったです清々しい短髪、185㎝の長身、愁いある瞳、端正だけどどこか少年っぽくもある甘いマスクは、童顔だけど無精ひげが男らしく、少女漫画の王子さまみたいに非現実的にキレイすぎない素朴さ。でもそのへんにゴロゴロいる一般人レベルのイケメンでは決してない、まさに濃すぎず薄すぎずイケメン。イギリスやフランスの美青年と違って、飾らない骨太な清潔感がドイツ人らしいです。

 可愛くて爽やかだけど、すごく男らしいところが魅力的でした。若々しくナイーヴな演技にも感銘を受けましたが、やたらと脱ぐサービス精神も特筆に値します。色白で引き締まった筋肉質な肉体美が眼福でした。ラブシーンでは、あっぱれなスッポンポンに。丸だしにした可愛い色白ケツを、元気よく動かしてました

 生まれたままの姿で草原や森を走りまわり転がりまわるという、ジョイフルすぎるシーンもあり。大胆だけど、全然イヤらしくありません。すごく清々しく自然な微笑ましくさえある全裸とセックスシーンでした。私もあんな風に、真昼間から美しく静かな自然の中で、ヤニスくんみたいなイケメンとアオカンしてみたい~ヨナサンと恋に落ちる看護婦が、どう見てもかなり年上だったのも、羨ましさを増大させました

 爽やかで可愛くて男らしいヤニスくんが演じる主人公ヨナサン、けなげで切ないキャラでした。ヨナサン、いい子すぎ。あんなできた息子、ちょっといませんよ。デザインの才能があるのに、夢を諦めてド田舎の農場で朝から晩まで働くだけでなく、献身的に病んだ父の介護もしているヨナサン。文句ひとつ言わず、黙々と青春を犠牲にしてる彼が可哀想で仕方がなかったです。

 涙ぐましいヨナサンに比べて、彼の父やその妹マーサ、父の元カレであるロンなど大人たちの意固地さ、身勝手さには腹が立ちました。特に親父。いくら余命短しとはいえ、自由すぎるだろ~。みんな彼のせいで傷つき不幸になってるもん。ロンがいきなり家に上がり込んで、ヨナサンを差し置いて父の介護をしだすのも不愉快だったわ~。ヨナサンが怒り悲しむのも当然。無神経すぎるやろ~。ヨナサンの気持ちや苦労を無下にしすぎ。もう死ぬんだから何してもええんや!と言わんばかりなパパの暴挙の数々、私が子どもならヨナサンみたいに我慢したり受け入れたりできるだろうか。結局は何もかも赦すヨナサンの優しさが、悲しくて愛おしかったです。親が子どものために苦しむのは当たり前かもしれないけど、子どもが親のために傷つくのは見ていて辛いです。

 BL映画なのですが、おっさんずラブです本家の日本のドラマと違って正真正銘のオヤジBLなので、ライトな腐女子はご注意を。おっさん同士、しかも片方は死の淵にある病身。二人のセックスシーン、かなりキツいです。今さらヤらんでええやろ~とドン引きしました。ヨナサンにBLしてほしかった!!BL、農村で若い主人公がハードワーク、扱いにくい父親の介護、と設定は「God's Own Country」とかなりカブってます。イケメン度はヨナサンのほうが断然上ですが、かんじんのイケメンがBLしないなんて、まるで詐欺に遭ったようなガッカリさです。でも映像は清らかで美しく、田舎で暮らしたいな~と憧れをかきたてられました。

 イケてるヤニスくんの画像、集めてみましたわいな~か、可愛い!カッコいい!日本では、WOWWOWで放送された若者向けファンタジー映画シリーズ「タイムトラベラーの系譜」や、ドイツ映画祭で上映された「クリスマスの伝説 4人の若き王たち」、SFパニック映画「ザ・グラビティ」といった出演作がお目見えされてます。どの映画のヤニスくんも、カッコカワいい!どれも観たい!観ねば!

 チェキってみたら、面白そうな映画やTVドラマにいっぱい出てるヤニスくん。若く凛々しい王さま役の史劇“Maximilian”では、コスチュームプレイもイケてることを証明してます。ラブコメの“High Society”ではイケメンおまわりさん役で、制服姿に萌え~。“So auf Erden”では、何と!BL!でも相手はおっさん、いや、お爺さんでちょっと萎え~。イギリスやフランスのイケメンもいいけど、ドイツのイケメンもクオリティ高い!ヤニス、Ich bin in dich verliebt!

娘を探して三千里

2017-12-26 | ドイツ、オーストリア映画
 師走のbeau garçon映画祭⑤
 「消えた声が、その名を呼ぶ」
 1915年のオスマントルコ。少数民族であるアルメニア人への弾圧が暗い影を落とす中、妻子と幸せに暮らしていた鍛冶職人のナザレットは、突然憲兵によって家族と引き離され、砂漠で奴隷のような労働を強いられる。瀕死の傷を負い、声を失いながらも虐殺を生き延びたナザレットは、死んだと思い込んでいた双子の娘が生存していると知り…

 生き別れた肉親を探して遠い異国へというお話は、「ライオン 25年目のただいま」と似ていますが、こちらの作品のほうが壮大で激動に満ちた波乱万丈映画でした。社会や生活、自然の過酷さや厳しさに心身ともボロボロになりながらも、挫けずに果敢に立ち向かい乗り越えるナザレットの姿は、まるでゲームオーバーのない冒険ものRPGみたいでした。

 トルコからリビア、レバノン、キューバ、そしてアメリカへと、気が遠くなるような移動を繰り返すナザレットの遥かなる旅路には、見ていて旅心を誘われるよりも、重い疲労を覚えました。苛烈で悲惨なことばかり起こるので、旅気分ではなく悪夢の追体験をしてしまうみたいな。とにかく気が滅入る展開、シーンのてんこ盛りな映画でした。

 壮絶な艱難辛苦の中、双子を探して三千里の旅を続けるナザレット。やっとたどり着いた外国の町で、不運なすれ違い。なかなか出会えないもどかしさもさることながら、絶対にあきらめないナザレットの執念深さは、崇高であると同時に狂気じみてもいました。私の親なら、すぐにあきらめてるでしょうし不屈の精神以上に、超人的な気力体力が必要。そして、運の良さも。まさに神も仏もない生き地獄を、神も仏もいる運の良さでサバイバルしてたし。神さまを呪いたくなる、神さまを信じたくなる人生です。傷ついたナザレットに手を差し伸べてくれる人たちの、掛け値なしの善意と優しさが心に沁みました。外国で優しくされたためしのない私には、羨ましいかぎりでした。優しくされる、愛されるって、やはり天性のものが必要なんですね。

 アルメニア人虐殺とか、本当にあったこととは信じたくない、世界最大の黒歴史のひとつです。虐殺と同じぐらい怖かったのが、ナザレットがアメリカで受けたいじめ。基本的には明るくておおらかなアメリカ人だけど、移民や異人種に対する狭隘で暴力的な差別偏見を目の当たりにすると、アメリカ人が世界で一番醜く愚かに思えてしまいます。トランプさんって、こういった連中に支持されてるんだろうな~。まさに憂国のアメリカです。すぐに弱い女性を輪姦しようとする、アメリカ映画ではお馴染みな、アメリカ人のレイプ好きなところも不愉快。
 ナザレット役は、お気にのボーギャルソンの一人、タハール・ラヒム。

 どの作品でも魅力的なラヒムくんですが、この映画の彼が今までいちばんイケメンに見えたかも!たくましくもナイーヴな役がオハコなラヒムくんなので、その究極系みたいなナザレット役は、まさに適役と言えましょう。台詞がほとんどない演技、エモーショナルな表情と仕草が切なかった。どんな時も悲しみに潤んだ瞳が美しくて胸キュン。若々しすぎて、あんな大きな双子のパパには見えませんでした。どう見てもお兄ちゃん。ピュアな少年っぽいところも彼の魅力です。チャップリンの映画を観て笑顔になるシーンのラヒムくんが、可愛いくて悲痛でした。

 フランス映画でパリに住む移民とか演じてるラヒムくんは、アラブっぽさが濃厚なのですが、この映画で生粋の中東人に囲まれれた彼は、西洋人っぽく見えたのが面白かったです。薄くない、でも濃すぎない、というのも彼の魅力です。不幸で悲しい役ばかりのラヒムくん。数少ないコメディ「サンバ」の時みたいな(といっても、この映画でもかなり逆境に苦しんでる役でしたが)明るくハッピーな彼にも会いたいものです。
 今年のカンヌ映画祭で、ダイアン・クルーガーが女優賞を受賞した「女は二度決断する」も楽しみな、ドイツの俊英ファティ・アキン監督の作品。過去の作品も高く評価されたものばかりみたいなので、機会があればぜひ観たいものです。

 ↑他のボーギャルソンに比べれば、日本で公開されてる出演作が多いタハール・ラヒム。そのほとんどが名匠の作品で、クオリティが高いのもボーギャルソンの中では群を抜いてます。最新作は、ルーニー・マーラとホアキン・フェニックス主演のキリスト映画“Mary Magdalene ”です

友だちが上九一色村にいました

2017-12-08 | ドイツ、オーストリア映画
 「コロニア」
 1973年のチリ。ジャーナリストのドイツ人ダニエルは、勃発した軍事クーデターにより反体制分子として連行されてしまう。ダニエルの恋人レナは、拷問の果てにコロニアと呼ばれる宗教施設に強制収容されたダニエルを救い出すべく、入信を装ってコロニアに潜入するが…
 実話だとは、にわかに信じがたい…と言いたいところですが、あのオウム事件を体験した私たち日本人にとっては、嫌な既視感を覚えずにはいられない悪夢映画でした。上九一色村のサティアンとか、ヘッドギアをした信者とか、奇怪で異様な光景を、この映画を観たら思い出してしまいます。拷問としか思えない修行や、教団幹部に支配・管理された非人間的な生活、そして欲望にまみれた邪悪な教祖…おぞましさ、非情さはオウムと酷似しています。オウム以上に非道だったのは、教団施設内で行われていた人体実験や毒ガス(サリン!)製造が、国家がらみだったこと。「NO」とかでも描かれてたけど、チリの軍事政権の極悪さには戦慄せずにはいられません。どこの国にも忌まわしい恥ずかしい黒歴史はありますが、チリのそれは世界最悪のひとつなのでは。あんなメチャクチャなことがまかり通ったのが、そんなに遠い昔じゃないという事実にも暗澹となってしまいます。

 オウム信者もそうでしたが…コロニアに自ら進んで入信して、あんな奴隷生活に黙従する信者たちが、不気味で不可解すぎ。理解できない自分に安堵です。宗教き◯がいって、ほんとヤバいですよね~。オウムと違って、外部の無関係な人に害を及ぼすことがなかったのが、せめてもの救いでした。コロニアの教祖は、オウムのグルに比べたら一見フツーのおっさんでしたが、女嫌いで女に暴力的なサドで、少年を性的に弄ぶ変態、とか麻原以上に醜悪でした。
 決死の脱出劇がこの映画の見どころとなってるようですが、結構あっさり逃げることができて肩すかしでした。助かると分かってはいても、もっとハラハラドキドキな演出にしてほしかったかも。
 レナを演じたエマ・ワトソンが、なかなか好演してました。教祖やババアシスターから、男を惑わす危険な女!と目される設定に???でしたが、「美女と野獣」よりは可愛く見えた。スッチー姿もキュートでした。ラブシーンや下着姿になるシーンがあるのですが、ぜんぜん色気なし。美女設定には甚だ疑問ですが、気が強そうだけど性悪っぽさはなく、若い女優にありがちな媚や自意識過剰もなく、聡明そうで毅然としたところには好感。キラキラなプリンセス系ヒロインだと何か違う…だけど、気丈で不屈な戦うヒロインだとピッタリ。
 ダニエル役は、大好きなダニエル・ブリュール。

 可愛い!大きい犬みたい!優しい熊みたい!ムチムチした体つきも好き。抱かれ心地よさそう!裸エプロン姿など、明らかにファンサービス。セクシーなケツでしたダニブリュももう40になるというのに、若く見えますね~。まだまだ青年っぽいです。誠実で真面目そうだけど、タフで情熱的な役が似合うのは、やはりドイツとスペインのハーフだからでしょうか。この作品でも、流暢な英語、ドイツ語、スペイン語を駆使してました。コロニア内で生き延びるために、脳に障害を負ったフリをしてるダニブリュの幼児退行演技が、めっちゃ可愛かったです。

 極悪教祖役は、「ミレニアム」シリーズで知られる、ハリウッドやフランス映画でも活躍していたスウェーデンの国際俳優ミカエル・ニクヴィスト。憎々しい悪人、キモい変質者っぷりでした。善人役も悪役もハマる名優。残念なことに、今年亡くなってしまいました。あらためてご冥福をお祈りします… 
 極悪教祖が、実はナチスの残党で、戦後も外国でのうのうと、さらに残虐なことをしていた、という史実には、本当に驚かされました。しかもこの悪魔の変態教祖、捕まっても死刑にならず、病院のベッドで安らかに死んだとか。悪はいつか滅びるなんて嘘?正義って、いったい?

 ↑可愛かったダニブリュも、すっかり大人のいい男に成長。いつの間にか一児のパパになってました。「ユダヤ人を救った動物園」が、もうすぐ日本公開!

Mehr Licht!もっと光を✨

2016-11-21 | ドイツ、オーストリア映画
 「ゲーテの恋~君に捧ぐ 若きウェルテルの悩み」
 1772年のドイツ。23歳のゲーテは、詩作に夢中で学業に身が入らず、法学の博士号試験も落第。父の計らいで地方の裁判所に実習生として勤務することになったゲーテは、パーティで出会ったシャルロッテと恋仲になる。しかし、シャルロッテはゲーテの上司ケストナーと婚約してしまい…
 ドイツの文豪、ゲーテの若き日の恋と、名作「若きウェルテルの悩み」誕生秘話を描いた作品です。
 恥ずかしながら、ゲーテの作品はウェルテルはじめ、一作も読んだことがない私ですそういえばイザベル・ユペール主演の「ある貴婦人の恋」は、ゲーテの「親和力」の映画化なんですよね。高名な文豪、天才的な作家、ということで、凡人には理解できない縁がない、もっとワケワカメなグダグダしい高尚な恋愛かと思い込んでいましたが、意外にもごくフツーの若者でも経験するような、オーソドックスなまでにビタースウィートな青春ものでした。今どきの若者のほうが、もっと波乱万丈でワケアリな恋愛してますよ。あんなフツーの恋愛を、世界的な文学作品に昇華できるところが、やはり凡人とは違うのですね~。

 若きゲーテが、明るくて爽やかな、ひとの善い好青年だったのも予想外でした。もっと天才ぶった、エキセントリックで破滅的な人なのかと思ってました。そのへんの大学生と何ら変わらぬゲーテのキャラ、言動は親しみやすくて好感。でも、ちょっと肩すかしというか、不快でもいい共感できなくてもいいから、これぞ天才!な人なほうが、映画的には面白かったはず。生きるか死ぬかの命がけな恋とか、心身を毒すまでの創作への情熱とか、そんなのを期待してましたので…天才と言われる人が必ずしも破滅的、破天荒なのではないのですね~。創作や恋に悩み苦しみながらも、世間のルールとか常識を破ることはなく、大きく脱線することもなく、自殺する勇気もなく、やがては作家として、そして政治家としても大成し、長寿をまっとうするゲーテ。理想的な人生とも言えますが、悲劇的な天才のほうがやはり心惹かれるものがあります。

 シャルロッテがゲーテと別れて他の男と結婚する経緯は、日本の時代劇でもよくあるパターン。貧乏娘が金持ちのおじさんに見初められて、家族のために仕方なく若い恋人を捨てる、というもの。ゲーテとシャロッテが駆け落ちとか心中とかしなかったのは、理性的でエラい!と感心はしましたが、面白くないな~とも思った。もっと二人だけの世界で燃え上って、まわりに迷惑かけてもよかったのでは。落ち込んで自暴自棄になるゲーテと違い、冷静で現実的なシャルロッテ。崖っぷちに立つと、男より女のほうが肝が据わるんですよね~。二人を引き裂いたケストナーは、フツーなら馬に蹴られて死ぬべき恋の邪魔者なのですが、すごく善い人だったので可哀想だった。彼の心の傷のほうが、二人より深そうだったし。
 ゲーテ役は、「顔のないヒトラーたち」でMYイケメンレーダーをビビビとさせたアレクサンダー・フェーリング。 

 いや~今回の彼も、めっちゃ爽やかで清々しいイケメンっぷりでした!色白で金髪碧眼と長身は、まさに王子さま的風貌。でも美男子って感じではなく、優しそうだけどドイツ男らしくゴツさイカつさもあって、硬派な骨太さも魅力。いきいきと躍動感ある演技も、若さにあふれていて好感。イケメンなのにスカしたところがなく、絶対いい人!と思わせる善良ムードも素敵です。ヒャッホ~とすっぽんぽんになって湖で泳ぐシーンと、シャルロッテとのラブシーンで、サービス脱ぎしてます。昼間っから小雨の中、泥まみれになっての野外アオカン、ワイルドだぜぇ~(死語)。風邪ひくよ~と心配になった(笑)。

 ↑アレクサンダー・フェーリング、感じのいいイケメン!英語も堪能だという彼は、アメリカの人気ドラマ「ホームランド」にも出演。ハリウッド大作にも出てほしいな~。でもどうせ、ドイツ人俳優の御多分に漏れず、悪いナチス将校役とかやらされるんだろうけど 



悪い男は美しい

2016-02-28 | ドイツ、オーストリア映画
 「快楽の悪の華」
 不祥事を起こし弁護士資格を剥奪されたダヴィッドは、妻子を養うため密かに男娼をしていた。そんな中、指名してきたゲイの客が女性政治家の夫であることに気づいたダヴィッドは、密会現場の盗撮写真で金を脅しとろうと企むが…
 妻に隠れて男娼をしている夫…隠微で背徳な設定からは、美味しそうな匂いがプンプンしてたのですが…期待はずれでガクッ宝箱を開けたら、10円玉が3枚しか入ってなかった、みたいな映画でした。エロくもないし、ドロドロでもない。サスペンス、ミステリーとしても、すごい中途半端で出来損ない感がハンパないです。もうちょっと何とか工夫できたはずなのにな~。とにかく、脚本が雑でユルいです。売春、しかも妻子ある男が…これって、妖しい後ろ暗さとか切実な悲壮感を期待しちゃうじゃないですか。そういうのが全然なかったし。主人公が巨悪の陰謀に巻き込まれて絶体絶命、というのが一応の筋書きなのですが、悪が水戸黄門の悪代官レベルのショボさで、スケール感ゼロ。

 主人公ダヴィッドの魅力の乏しさが最大の敗因。弁護士資格を剥奪されて無職、でもヘンなプライドの高さゆえに女房には言えず、てっとり早く稼げるバイト感覚で男娼。欲求不満のスケベな金持ち熟女専門だった彼が、売春のマネージャーに上客だからと初めて男を回され、そんなん無理!と拒否しようとしたら、その男客が女性政治家の夫と知って、しめた!金づるになる!と引き受けて現場を盗撮し脅迫…やることがセコくて卑劣すぎる。悪だくみに失敗し、のっぴきならぬ事態に陥るダヴィッドですが。もっと非道い目に遭えばいいのに!と思った。あの程度ですんで、返って腹立ちました。コンクリート詰めにされて海に沈められる末路が似合う小悪党、誰にとっても迷惑なゴキブリみたいな男でした。あんな夫、最低最悪。ぜったいイヤ!とことん堕落した冷血男として描いてたら、まだ悪の魅力を放ってたかもしれないけど、そういうキャラに作り上げられてもおらず、とにかく浅はかで愚かな男にとして終始してました。バカすぎて、とても元エリート弁護士とは思えなかった。だいたい、いい年して売り専しようなんて発想からして、頭おかしいです。ダヴィッドの嫁も、気づけよ!と呆れた。どう考えても不審な夫の言動に、あの鈍い反応。騙され上手もいいとこです。

 まっとうに生きるよりも、悪の道のほうが性に合っている、善良になりたいのに図らずも悪いことしちゃう、みたいなダヴィッドの葛藤や苦悩、怖さとか、「SHAME」のマイケル・ファスベンダーみたいな抑えられない病的な性欲ゆえに、みたいな闇と深淵を深く掘り下げた内容だったら、面白い映画になってたかもしれません。
 内容はトホホでしたが、イケメン映画としてはハイレベルでした。ダヴィッド役のドイツ人俳優、トーベン・カストゥンスがビツクリするほどイケメン、いや、美男子!

 カッコいい、可愛い、という男はゴマンといますが、美しい男となると絶滅状態な現在の映画界。ハリウッドやイギリスの人気有名俳優にはない冷ややかな美貌に目を奪われます。白い肌、ブロンド、色素の薄い瞳は、善い人役よりも悪い男、非情な役に向いてます。ヴィスコンティ監督の名作、「地獄に堕ちた勇者ども」でヘルムート・グリームが演じた冷酷美男なナチス官僚役とか似合いそう。同じくヴィスコンティ監督の「ルートヴィヒ」の美しき狂王役もハマりそう。劇中、美しい裸体もさらして、熟女たちとアンなことコンなことしちゃってます。濡れ場やヌードじたいは大したことないのですが、アヘアヘな色狂い熟女たちにビンタや意地悪な言葉攻め、ロウソクプレイなど、冷たい美しさに似合うドSっぷりが素敵でした。ダヴィッドにハニートラップされる熟年紳士も、なかなかいい男でした。男二人の絡みも大したことなくて、つくづく残念すぎる映画です。
 それにつけても。トーベン・カストゥンスの美男ぶりに、つくづく思った。やっぱ悪い男は美しくなきゃね~。悪という甘美な言葉は、ブサメンには似合わない。ブサイクは、悪事を働いても悪い男じゃないんです。ただの醜い男、頭のおかしい男なんです。

↑トーベン・カストゥンス、1979年ドイツのハンブルク生まれ、というプロフィール以外不詳な彼。情報求ム!

罪と罰の迷宮

2015-11-12 | ドイツ、オーストリア映画
 「顔のないヒトラーたち」
 1958年の西ドイツ、フランクフルト。ジャーナリストのグルニカは、元ナチス親衛隊員が小学校の教師をしている事実を突き止める。グルニカの告発に心揺さぶられた若き検事ヨハンは、周囲の反対を押し切り調査を進めるが…
 ナチスドイツの非道さ、残虐さを描いた映画は枚挙にいとまがありせんが、この映画も悲痛で重苦しい内容でした。アウシュヴィッツの悲劇、人間がやったこととは信じられない、信じたくない。日本人の私でさえ耐えがたい気持ちに襲われるのに、当事者のドイツ人にとっては…と察するに余りある。恐ろしい恥ずべき過ちは、どこの国も背負っていますが…ナチス時代のドイツ人のユダヤ人虐殺は、人類史上最大級の禍根。この映画では、ドイツ人がドイツ人を断罪しなければならない悲劇を描いていて、時間が経っても決して忘れられない、癒えない傷の深さ、痛みに暗澹となってしまいました。
 アウシュヴィッツの真実が、おぞましすぎて…それを再現するシーンとかはなかったのが、少し救いになりましたが…収容所の生き残りであるシモンが語る、彼の双子の娘に施された悪魔の人体実験とか、やめてー!と耳を塞ぎたくなった。ナチスの残虐行為だけでなく、罪を問われることなく平然と社会生活を送っている元ナチスの人たちと、彼らによって生き地獄を味わった被害者が、戦後の社会で表面的には何事もなかったように共生しているという事実にも、衝撃と恐怖を覚えました。悪魔の所業に及んでいた元ナチスが、金持ちの実業家とか尊敬される教師とか親切なパン屋さんとか、平和で豊かな生活を送っていたり。あんな地獄を体験して、気も狂わずに生きてる被害者もそうですが、厚顔無恥という表現では足りないような元ナチスも、人間って強い生き物なんだな~と戦慄。

 怖かったのは、そんなに遠い昔のことではないのに、戦後のドイツ人の多くがナチス時代に関して無知無関心だったこと。主人公のヨハンや若い人たちが、アウシュヴィッツのことを知らなかったのがショッキングでした。そして、ナチス時代をよく知る人たちの、臭いものには蓋をしろ!的な考え方や生き方にもゾっとしました。あまりにも重い辛い過去ゆえに、蒸し返したくない、ほじくりかえさないで!という気持ちは解からないでもないけど、隠蔽や忘却するにはあまりにも大きく深い罪業。無知無関心、そして沈黙することの罪深さも、あたらめて思い知りました。
 表面的には平和な世の中になってるけど、ナチスは決して根絶されておらず、影のようにそこかしこに存在している…ヨハンや仲間たちが受ける妨害や圧力に、戦後ドイツ社会の暗部を思い知らされました。信じがたかったのは、ナチスの高官や人体実験を指揮した医師が、手厚く保護されていたこと。“死の天使”と恐れられていた悪魔の人体実験ドクター、メンゲレの追跡劇もサスペンスフルに描かれていますが、スルリと堂々と追尾をかわすメンゲレに、いったい世の中どーなってるの、とヨハン同様に観客も絶望感に苛まれてしまいます。

 メンゲレのような大物は逃しながらも、小物はじゃんじゃか捕まえていくヨハンたち。捕えても反省どころか罪悪感のかけらもなく、ナチスの面影をうかがわせる被告人たちは、悪人を成敗してる!という勧善懲悪気分にさせてくれません。ガス室に送ってやる!と罵る元ナチスの老教師とか、三つ子ならぬナチスの魂百まで、みたいで怒りよりも虚しさを覚えました。元ナチスがみんな絵に描いたような極悪人という描写は、ハリウッドのサスペンス映画っぽい分かりやすさですが、ほんとはもっと複雑で悲しい事情が被告人側にもあったんだろうな~。もし私が当時のドイツでフツーのドイツ人として生まれてたら、果たしてナチスを全否定して生きられたでしょうか…ヨハンだけでなく、当時のドイツ人、そして観客も出口が見つからず踏み迷ってしまう歴史の闇は、この映画のオリジナルタイトル通りラビリンス(迷宮)のようです。
 主人公の若き検事ヨハンを演じたのは、アレクサンダー・フェーリング。いま注目の独逸イケメン

 いや~めっちゃカッコいい、ていうか、可愛かったです!ブロンドで長身で優しく端正な顔立ちは、昔話の王子さま風。ちょっとアーミー・ハマー似?アーミーくんをさらに爽やかにスウィートにした感じ?背が高いけど、スラ~っとスレンダーではなく、ドイツ人らしくガッチリ骨太なイカちー体格なのもポイント高し。ちょっとだけ脱いでましたが、いいカラダしてました!すごい優しそうで誠実な雰囲気、困難にも屈せず突き進むタフネスも、まだ世の中の汚さ醜さに染まってない青年の若さ、美しさと強さであふれていて、年寄りには眩しい爽やかなキラキラ感。

 スーツも似合ってましたが、カッコいい車ではなく原チャリ!乗り回してるのが可愛かった。どのシーンも爽やかでカッコいいのですが、家族や恋人までナチスと無関係ではなかった事実に打ちのめされ、ボロボロになってしまう姿が切なくて胸キュン。もうあかん!というところまで落ち込みながらも、正義と希望を信じて立ち上がる勇姿も、清々しくて感動的でした。それにしても。あんなイケメン検事が裁判に出廷したら、法廷はザワつくだろうな~。毎日傍聴に行っちゃいそう

 ↑アレクサンダー・フェーリング、1981年生まれの34歳。「ゲーテの恋」も好評みたいでしたが、何と!彼は現在、アメリカの人気TVシリーズ「ホームランド」に出演中!クレア・デーンズの恋人役なんだとか。くわー!デーンズさんよぉ~!実生活ではヒュー・ダンシー、仕事ではフェーリングくんかい!?何か腹立つわー

終わりにできる愛

2013-03-14 | ドイツ、オーストリア映画
 冬に戻ったかのような寒々しい春の宵ですが、皆さまご機嫌いかがですか?
 歓迎会や送別会で、夜の街に繰り出すことが多くなる季節ですね。私も三連チャンで酒盛りでした。胸は焼けるわ腹こわすわ肌は荒れるわで、もう最悪です…年々、回復力が低下してます。それだけでなく、自己コントロール力やコミュニケーション能力も甚だしく低下してます。頃合いをつけて体力気力が許すうちに、楽しいうちにさっさと帰ることができなくなってます。面白いことを言わなきゃいけないというプレッシャーを無視できず、テンパって発狂言動に。自己嫌悪…
 明日も飲み会があるんですが、一次会で帰ります!私にはやっぱ、自室で独りまったり引きこもるほうが性に合ってます。
 皆さまも、飲み過ぎ食べ過ぎにご注意を♪

 「愛、アムール」
 カンヌ映画祭パルムドール、アカデミー賞外国語映画賞を受賞したミヒャエル・ハネケ監督の話題作を、ようやく観に行くことができました。
 音楽家夫婦のジョルジュとアンヌは、パリのアパルトマンで穏やかな老後を送っていた。しかし突然、アンヌが病に倒れ右半身麻痺となってしまう。献身的な介護を続けるジョルジュだが、アンヌの心と体は絶望的なまでに衰えていくばかりだった…
 “老い”は人間にとって、決して避けることのできない宿命と試練です。痴呆症や寝たきり、介護の負担など、老いることへの不安や恐怖は募るばかりな高齢化社会を私たちは生きています。老いて死ぬことじたいは、怖くない。怖いのは、老いて心身ともに自由と尊厳を失ってしまうこと。代わりに苦痛と恥辱を与えられ、無理やり生かされること。その恐怖と痛みを、この映画は静かに冷徹に描いています。
 老々介護の苦しみや悲しみを切実に訴えたり、福祉制度を非難したり、長年連れ添った老夫婦の愛情を感動的に描いて涙を誘うような作品ではありません。最初から最後まで、ドラマチックな演出もシーンもいっさいなく、不穏なまでに淡々と静謐に、時にショッキングなまでにリアルに、老夫婦の“終わりの始まり”と“終わり”を追った内容で、優しさとか温かさとか、いや、悲しささえ排除したような、センチメンタリズムなど微塵もない冷酷な映画です。怖いくらいイタい映画です。私は観てる間、不安と沈痛さしか感じませんでした。愛があっても、金があっても、才能があっても、美しい思い出があっても、ほとんどの人間の末路は惨めで醜悪なのだ。ああ~何もない私だって、いつかは…愛する人も、いずれは…屈辱や苦痛のない安らかな死を熱望せずにはいられない…
 ジョルジュとアンヌがたどる夫婦愛の顛末は、日本でも頻繁に三面記事になる悲劇で、決して目新しいものではありません。ストーリーもほぼアパルトマン内だけで静かにゆっくりと展開されるため、ここのところハリウッド映画と韓流ドラマに偏っていた私は、寝るなー!寝たら死ぬ!な雪山遭難状態に陥っちゃうかな?と、映画の冒頭あたりでは心配になりましたが、先述した通り、この映画って何だか人を不安にさせて落ちつかなくさせる静かな不穏さに満ちてて、眠らせてくれませんでした(笑)。ジョルジュが介護士や実の娘までも遠ざけて、アンヌと二人きりの孤立生活を選ぶようになってからは、これまたイヤな緊張感が静電気のようにチクチク心を刺激して、居心地悪く最後まで引きつけられられました。ジョルジュが、え!?というような瞬間に、唐突にある行動に出るのですが…それを見て絶望とかやるせなさを感じず、ああ良かった!というハンパない解放感や安堵を覚えた観客は、私だけではないはず。そういう人間の暗部を、冷たく突きつけるように自覚させる手法は、やっぱハネケ監督らしい意地悪さ冷酷さだなあ、と怖くなりました。
 老夫婦を演じたフランスの名優ふたりが、スゴい…ていうか、怖いです…

 ジョルジュ役は、「男と女」や「Z」「暗殺の森」「トリコロール 赤の愛」など、数々の名作で知られるジャン・ルイ・トランティニャン。若い頃の彼、シャープないぶし銀の男前で、ほんと素敵でしたよね。すっかりおじいさんになり、ますます重く深い演技と存在感。何かやらかしそうな危ういムードも漂わせて(部屋に入ってくる鳩との絡みとか)、ハラハラさせられました。
 アンヌ役のエマニュエル・リヴァは、今年のアカデミー賞主演女優賞に史上最高齢でノミネートされ話題に。美しく気品ある誇り高い老婦人が、心身ともに衰え壊れていく生き地獄を、ご老体にムチ打って凄絶に演じています。80半ばの女優が、ここまですべてをさらす演技、前代未聞なのでは。肉体的にも精神的にも、ご本人もさぞや辛苦だったことでしょう。オムツを替えられるシーンとか、全裸での入浴介助シーンとか、ここまでやるか、ここまでやらせるか、と慄然となりました。オスカーは、やっぱ彼女に受賞してほしかったです。それほど強烈痛烈なインパクトのある演技です。病に倒れる前、そしてジョルジュの思い出や幻覚の中の彼女は、ピアノを弾くのがよく似合う優美で気高い老婦人で、素敵だなあ、理想の年の取り方だなあと感嘆させられます。

 ジョルジュとアンヌの一人娘役を、イザベル・ユペールが好演。ハネケ監督とユペりんといえば、超絶ぶっとび怪作「ピアニスト」ですが、今回のユペりんは変態女教師エリカ先生とは違って、両親を心配するごくフツーの女性役でした。
 ジョルジュとアンヌの弟子役を演じた、実際にも高名なピアニストであるアレクサンドル・タローが、なかなかのイケメンでした。

 ハネケ先生、オスカー受賞おめでとうございます!賞なんか興味ない気難しい偉い人、という勝手なイメージを抱いていましたが、アメリカでの賞レースや映画の宣伝にはマメに協力してたご様子。次回作が待たれます。
 エマニュエル・リヴァさんは、オスカー授賞式当日に86歳!になられたとか。受賞してたら、驚きでポックリ…なんてこと、なくてよかった!