お松のフランス大女優映画祭②
「ラ・ファミリア」
20世紀初頭のローマ。ブルジョアの家に生まれたカルロは、両親や弟、3人の叔母や使用人たちに囲まれ成長する。青年になったカルロは、家庭教師の生徒ベアトリーチェの姉アドリアーナと恋に落ちるが…
イタリアの名匠エットーレ・スコラ監督の作品。主人公が生まれてから老人になるまでの80年間が、ローマの邸宅からカメラが一歩も出ずに描かれています。舞台劇のようで、映画ならではなカメラワークや演出が出色です。二度の世界大戦が起こるなど、80年間はかなり激動の時代なのですが、屋敷内ではドラマティックな異変や悲劇などは起こらず、家族や男女の愛や絆が明るく楽しくにぎやかに、時にホロ苦さやペーソスをもって描かれています。戦死とか病気とかいった、お涙ちょうだいものでおなじみのネタで感動を誘うあざとさは全然ありません。この世に生まれて生きて愛して愛されて、命をまっとうしてそっと消えていく、そんなごく当たり前の人生模様、時の流れの優しさと深さが心に沁みる、そんな映画でした。時代や人が移ろっても、姿を変えずそれらを見守っている家が人間以上の存在感です。
とにかく明るく騒々しいイタリア人!その楽天的で激情的な気質は、見ているだけだと面白いけど、関わるとなるとかなり疲れそう。喜怒哀楽が激しいところは、ちょっと韓国人とカブるところがありますが、どことなく粘着質で執念深く狂乱めいた韓国人の激情と違い、イタリア人のほうはカラっと後に引かず切り替えが早いので、イヤな感じはしません。登場人物が多く、みんな個性的でいい味だしてます。特にカルロの三人のオールドミス叔母が強烈で笑えます。ものすごい罵倒やビンタ、怒るたびに花瓶割ったりとか、かなり凶暴。私なら一緒に暮らせませんが、カルロ一家にとっては日常の風景になってて、やがて年月が経ち叔母さんたちも一人一人屋敷からいなくなってしまうのですが、家族だけでなく観てるほうもそれが寂しくなる愛すべき存在でした。
叔母さんたちだけでなく、カルロの妻となるベアトリーチェや、その姉アドリアーナ、家政婦のアデリーナなど、女性たちがすごく魅力的でした。姉妹とカルロの三角関係も、ドロドロだったり悲痛だったりな描き方をしておらず、そっと胸に秘めながらも消えない恋だったのが切なくも優しい、大人のビタースウィートさでした。夫と姉が愛し合ってることを知りつつ、死ぬまでそれをおくびにも出さなかったベアリーチェの強さにも感銘を受けました。心優しく逞しいアデリーナも素敵な女性でした。
イタリアのブルジョアジーの生活風景も興味深かったです。贅沢はしないけど、ガツガツ働かずとも豊かな生活ができる身分。戦時中に食糧難はあったけど、それ以外は特に困った様子はなかったカルロ一家。カルロのパパ、後にカルロも、学校の先生の給料だけで大家族を養ったり、大邸宅の維持や大勢の使用人の雇用とか無理だもんね。地味だけど、アンティークな家具やインテリア、衣装も歴史や上流社会の趣味の高さを感じさせて素晴らしかった。映画のためのセットではなく、本物の貴族の家で撮影したのかな。
キャストもイタリア・フランス映画ファンには嬉しいメンツをそろえてます。壮年期から老年期のカルロ役は、イタリアの名優ヴィットリオ・ガスマン。大柄で立派な堂々とした体躯、一見いかめしいけど、同時にすごく優しそうで繊細そうでもあって。頼もしくも時々少年っぽくもあって、可愛く思えることも。アドリアーナ役は、フランスの大女優ファニー・アルダン。
当時38歳ぐらい、おんな盛りだった頃のファニーおばさま、そのクールな佳人ぶりは男だけでなく女も惚れる!見た目も演技も女おんなしておらず、どちらかといえば剛毅で男性的なところが、時代や男に流されない自立した女性役にぴったり。理知的でエレガントという彼女の魅力は、いつかは褪せて失ってしまう若さとか美貌とは違う、永遠に輝く宝石のようなもの。モデルのような長身、そして美脚で颯爽と闊歩する姿のカッコいいこと!でも、フランス人のファニーおばさまがなぜイタリア女性役を?彼女のイタリア語は吹き替えなのかしらん?
ベアトリーチェ役は、数々のイタリアンエロス映画で男たちのリビドーを刺激したステファニア・サンドレッリ。今回はエッチな美女役ではなく、明るく家族思いな奥さん役を好演。家政婦のアデリーナ役は、「わが青春のフロレンス」や「愛すれど哀しく」などで知られるオッタヴィア・ピッコロ。彼女の素朴な可愛さ、すごく好き。老年期パート、老けメイクでも可愛いおばあさんでした。アドリアーナの交際相手のフランス人男性役で、名優フィリップ・ノワレがちょこっとだけ出てます。
「ラ・ファミリア」
20世紀初頭のローマ。ブルジョアの家に生まれたカルロは、両親や弟、3人の叔母や使用人たちに囲まれ成長する。青年になったカルロは、家庭教師の生徒ベアトリーチェの姉アドリアーナと恋に落ちるが…
イタリアの名匠エットーレ・スコラ監督の作品。主人公が生まれてから老人になるまでの80年間が、ローマの邸宅からカメラが一歩も出ずに描かれています。舞台劇のようで、映画ならではなカメラワークや演出が出色です。二度の世界大戦が起こるなど、80年間はかなり激動の時代なのですが、屋敷内ではドラマティックな異変や悲劇などは起こらず、家族や男女の愛や絆が明るく楽しくにぎやかに、時にホロ苦さやペーソスをもって描かれています。戦死とか病気とかいった、お涙ちょうだいものでおなじみのネタで感動を誘うあざとさは全然ありません。この世に生まれて生きて愛して愛されて、命をまっとうしてそっと消えていく、そんなごく当たり前の人生模様、時の流れの優しさと深さが心に沁みる、そんな映画でした。時代や人が移ろっても、姿を変えずそれらを見守っている家が人間以上の存在感です。
とにかく明るく騒々しいイタリア人!その楽天的で激情的な気質は、見ているだけだと面白いけど、関わるとなるとかなり疲れそう。喜怒哀楽が激しいところは、ちょっと韓国人とカブるところがありますが、どことなく粘着質で執念深く狂乱めいた韓国人の激情と違い、イタリア人のほうはカラっと後に引かず切り替えが早いので、イヤな感じはしません。登場人物が多く、みんな個性的でいい味だしてます。特にカルロの三人のオールドミス叔母が強烈で笑えます。ものすごい罵倒やビンタ、怒るたびに花瓶割ったりとか、かなり凶暴。私なら一緒に暮らせませんが、カルロ一家にとっては日常の風景になってて、やがて年月が経ち叔母さんたちも一人一人屋敷からいなくなってしまうのですが、家族だけでなく観てるほうもそれが寂しくなる愛すべき存在でした。
叔母さんたちだけでなく、カルロの妻となるベアトリーチェや、その姉アドリアーナ、家政婦のアデリーナなど、女性たちがすごく魅力的でした。姉妹とカルロの三角関係も、ドロドロだったり悲痛だったりな描き方をしておらず、そっと胸に秘めながらも消えない恋だったのが切なくも優しい、大人のビタースウィートさでした。夫と姉が愛し合ってることを知りつつ、死ぬまでそれをおくびにも出さなかったベアリーチェの強さにも感銘を受けました。心優しく逞しいアデリーナも素敵な女性でした。
イタリアのブルジョアジーの生活風景も興味深かったです。贅沢はしないけど、ガツガツ働かずとも豊かな生活ができる身分。戦時中に食糧難はあったけど、それ以外は特に困った様子はなかったカルロ一家。カルロのパパ、後にカルロも、学校の先生の給料だけで大家族を養ったり、大邸宅の維持や大勢の使用人の雇用とか無理だもんね。地味だけど、アンティークな家具やインテリア、衣装も歴史や上流社会の趣味の高さを感じさせて素晴らしかった。映画のためのセットではなく、本物の貴族の家で撮影したのかな。
キャストもイタリア・フランス映画ファンには嬉しいメンツをそろえてます。壮年期から老年期のカルロ役は、イタリアの名優ヴィットリオ・ガスマン。大柄で立派な堂々とした体躯、一見いかめしいけど、同時にすごく優しそうで繊細そうでもあって。頼もしくも時々少年っぽくもあって、可愛く思えることも。アドリアーナ役は、フランスの大女優ファニー・アルダン。
当時38歳ぐらい、おんな盛りだった頃のファニーおばさま、そのクールな佳人ぶりは男だけでなく女も惚れる!見た目も演技も女おんなしておらず、どちらかといえば剛毅で男性的なところが、時代や男に流されない自立した女性役にぴったり。理知的でエレガントという彼女の魅力は、いつかは褪せて失ってしまう若さとか美貌とは違う、永遠に輝く宝石のようなもの。モデルのような長身、そして美脚で颯爽と闊歩する姿のカッコいいこと!でも、フランス人のファニーおばさまがなぜイタリア女性役を?彼女のイタリア語は吹き替えなのかしらん?
ベアトリーチェ役は、数々のイタリアンエロス映画で男たちのリビドーを刺激したステファニア・サンドレッリ。今回はエッチな美女役ではなく、明るく家族思いな奥さん役を好演。家政婦のアデリーナ役は、「わが青春のフロレンス」や「愛すれど哀しく」などで知られるオッタヴィア・ピッコロ。彼女の素朴な可愛さ、すごく好き。老年期パート、老けメイクでも可愛いおばあさんでした。アドリアーナの交際相手のフランス人男性役で、名優フィリップ・ノワレがちょこっとだけ出てます。