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まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

慟哭の卍部屋

2023-06-26 | ドイツ、オーストリア映画
 「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」
 ファッションデザイナーのペトラは、親友のシドニーが連れてきたカリンに恋をし、彼女を愛人にして自宅に囲う。しかし、奔放で不実なカリンにペトラは深く傷つき…
 フランソワ・オゾン監督が男女を逆転してリメイクした「苦い涙」を観に行く前に、ドイツの鬼才ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督のオリジナル版を鑑賞することができました。オゾン監督の初期の作品「焼け石に水」も、ファスビンダー監督作のリメイクですね。BL映画は三度のメシより好きな私ですが、女性同士の恋愛ものは苦手…女ってやっぱ男よりシビアで冷酷で意地悪、そういう怖くてイヤな部分が面白いけど、見ていて気持ちのいいものではない。同じ悲劇でも、BLはどこか甘く切ないファンタジーっぽい印象のものが多いけど、レズビアンはイタくて狂ってるものばかりなような。狂ってるけど破滅はしない、現実逃避しない冷めた強さが女にはあるところも、繊細で脆い男との違いでしょうか。

 この映画の女同士の関係も、かなりイタくてキツいです。見ていて居心地が悪くなる女の愛執と残酷さ。増村保造監督の名作、谷崎潤一郎原作の「卍」と、ちょっと女ふたりの関係性ややりとりが似てます。物語はペトラの部屋の中だけで進み、登場人物もペトラとカリン、ペトラの秘書マレーネ、シドニー、ペトラの母&娘の女6人だけ、という舞台劇仕立て。カリンにZOKKON命 by シブがき隊 になったペトラの、若い女を繋ぎとめようとし捨てられまいとする必死な姿の卑屈さ、一方的な愛怨、キレてカリンにぶつける罵詈雑言の狂気的な陰湿さと激しさ、恥も外聞もない愁嘆場、すべてが醜悪でイタすぎる。男はあんなこと言ったりしたりしないもんね。女ってほんと怖いわ。ファスビンダー監督は女が嫌いだったに違いありません。社会的、経済的な立場とは逆なペトラとカリンの力関係、歪なパワーバランスが、緊密に辛辣に描かれています。

 それにしても。恋愛って愛したほうが負けですよね~。愛する者はいつも寛大で、愛されるものはいつも残酷。人間をいちばん残酷にするのは、愛されているという意識…という三島由紀夫の「禁色」にあった一節を思い出しました。ペトラとカリンにぴったり当てはまります。ペトラがどんなに愛しても憎んでも、カリンには暖簾に腕押し。カリンを傷つけようと、どんなに鋭くて毒のある言葉で面罵し侮辱しても、カリンには痛くも痒くもない。目の前を小さいハエが飛んでるウザさ程度のこと。それに比べて、ペトラの心を粉砕するカリンの無関心な様子や軽い冷笑の破壊力ときたら。決して自分を愛してくれない人を愛してしまう苦しみや虚しさが、ここまでくるともう滑稽!な描かれ方をしてるのが、この映画の面白さかも。

 ペトラ役のマルギット・カルステンセンの神経症チックな狂おしい演技、カリン役のハンナ・シグラ(オゾン監督の「苦い涙」では、主人公の母役で出演してますね)のムチムチはちきれそうな豊満さが強烈。ペトラのファッションと部屋の装飾(壁の絵や絨毯など)も奇抜でインパクトあります。ペトラに下女扱いされても従ってる物言わぬ秘書マレーネが、不気味な存在感。ラストの彼女の行動は、どう解釈すればいいんだろう。
 

男ふたり洞窟で…

2022-08-04 | ドイツ、オーストリア映画
 夏のBL映画祭③
 「Orpheus' Song」
 ジムで知り合い親しくなったフィリップとエニスは、旅行先のギリシアで森の中に迷い込んでしまう。ヘラクレスと名乗る不思議な男に、二人は洞窟へと導かれるが…
 ちょっとおとぎ話的なBL、いや、これもゲイ映画でした。BL映画とゲイ映画の違いは、肌露出と性愛シーンの比重でしょうか。男同士のセックスなんてほとんど存在しない扱いな、ライトでファンタジーなBLでは物足りなさを覚えますが、かといって必要以上に裸になって肉体を貪るような生々しいゲイ映画だと、胸やけ食当たり気分になってしまう。このドイツ映画は、男が裸になるシーンがやたらと多い点でゲイ寄りですが、セックスシーンじたいは一回だけで、それも大胆だけどソフトタッチだったので、ゲイにも腐女子にもちょうどいい塩梅になってます。

 フィリップとエニス、はじめは仲良しなだけ、とはいえ、そのイチャイチャ仲良すぎな姿には、友情以上の匂いも濃厚。彼女や嫁といるより親友といる時のほうが楽しく安らぎ、自分らしくいられる。そんな男の友情って、セックスなしの恋愛関係に近いですよね。何かのきっかけ、何かのスイッチが入ると、ノンケでも同性とセックスできるみたいです。すべての男性は潜在的に同性愛者でもあるのだとか。ただそれに気づかない、目覚めない人のほうが多いだけ。気づいて目覚めてしまったフィリップとエニスは、不運で不幸な男たちだったのでしょうか。私にはそう思えません。どっちかが女だったら、なんて思うほうが時代錯誤で狭量。異性愛が健常で正常、同性愛は病的で異常、なんて風呂場のカビのような価値観だけど、こびりついたカビはなかなかとれないのが現実。

 謎の男ヘラクレスの魔法?洞窟で禁断の果実と酒を食べて飲んだフィリップとエニスは、誰もいない海辺で愛し合うのですが。それも衝動的とか魔術にかけられた状態でといった感じではなく、今までそうしなかったのが不思議なほど自然に、体でも愛を確かめ合っているように見えました。魔法は二人をいきなりホモにしたのではなく、本当の彼らへと解放してくれたように思えました。それにしても、ヘラクレスはいったい何者だったのでしょう。ゲイの妖精?二人が本当にただの友人同士だったら、おそらく現れなかったかも。

 エッチした後は、魔法が解けたかのように動揺し、ぎこちなくなる二人。特にエニスは露骨にフィリップを避け始め、そんなエニスにフィリップは傷つくという旅の終わりがホロ苦い。苦悩や葛藤を経て二人が選んだ道、その過程をもっと丹念に描けてれば、ラストはもっと感動的になったはず。
 主演俳優二人は全然知らない人たちでしたが、どっちもなかなかイケメンでした。フィリップはポール・ウォーカー、エニスはジェラルド・バトラーにちょこっと似てる感じ。二人とも脱ぎっぷりがよすぎ。バキバキ筋肉ではないけど、ドイツ人らしく体が大きく骨太なソフトマッチョでした。趣ある町の風情や美しい海!ギリシアにも行ってみたいな~。
 

私の彼はテロリスト

2022-02-11 | ドイツ、オーストリア映画
 「カールと共に」
 ドイツのベルリンでアパートが爆破され、多くの民間人が犠牲となる。父以外の家族を失った女子高生のマキシは、マスコミの追求から救ってくれた青年カールと親しくなる。カールに誘われプラハで開かれるサマーキャンプに参加したマキシは、そこに集ったヨーロッパ改革のための団結を呼びかける若者たちの熱気や真摯さに共鳴し、カールが率いる運動に貢献しようとするが…
 大好きなドイツイケメン、ヤニス・ニーヴナー目当てで観ました~ああ~ヤニヴ、やっぱカッコかわいい~彼が演じるカールは、若々しく情熱的で巧みな弁舌、そして爽やかなイケメンぶりでカリスマ的人気の若き政治運動家。こんな男が立候補したら、よほどのトンデモ思想じゃないかぎり、もう見た目だけで投票しちゃいますよ。熱く、かつ爽快な演説シーンのヤニヴは、マキシじゃなくても惚れてまうカッコよさでした。初めてマキシと出会うシーンなんて、もう女の妄想の産物的な王子さまっぷり。マキシの悲しみや苦しみを癒す明るさ、優しさもso sweet!心臓に負担なほどの胸キュンなヤニヴでした。

 毎度毎度、こんな彼氏ほしい~と心底思わせるヤニヴ。カールも理想的な(表向きは)恋人。脱ぎ男なヤニヴですが、今回はラブシーンでちょこっとだけで、あまり肌露出はありません。スウィートなだけでなく、ダークなヤニヴもチョベリグ(死語)でした。カールにはもうひとつの恐るべき顔があって、その悪魔のような冷酷さに戦慄!爆弾テロをイスラム系組織の犯行と思わせるため、髪や目の色を変え髭をつけて中東の男に成りすますヤニヴ、これまたイケメンなんですよ!イケメンは何してもイケメン!爆弾テロだけでなく、テロの被害者であるマキシを騙して利用して移民排斥の気運を煽ろうとするなど、卑劣!なんだけど、そんな風には全然見えないんですよね~。カールみたいな、自分たちの価値観や信念に反する者どもはみんな敵、な人たちって悪人より怖い。損得とか関係ない、利益なんかまったく求めておらず、ただもう純真に真剣に世の中を変えたいと熱望し、そのためには手段を選ばない、自分の命をも捨てるカールとその仲間たちの考え方と行動は、私なんかからしたらただもう狂気の沙汰。その妄信による凶行は、アメリカの同時多発テロや地下鉄サリン事件、古くは連合赤軍事件などとカブります。

 ヤバい役だけどヤバくは見えないヤニヴ、鬼気迫る狂気とかといった感じはないけど、だから怖かったと言えるかも。よほどのトンデモ思想じゃないかぎりイケメンならOKと先述しましたが、カールはまさしくトンデモ思想のヤバい人、だけど正体を知らないとマキシのように無警戒にコロっと術中にハマってしまう。トンデモ人と思わせないカール役を、ヤニヴは巧みに魅力的に演じていました。英語とフランス語の台詞も多かったヤニヴ。ドイツ俳優の語学力ってすごいですね~。
 マキシ役のルナ・ヴェドラーは、ぽっちゃり系の美人で、気丈だけど悲しみや怒りを抱えて心の中で悲鳴をあげている痛ましさが伝わる好演でした。ヤニヴとはお似合いの、若々しく可愛らしいカップルでした。それにしても。傷ついてる人や生真面目すぎる人って、洗脳されてしまいやすいのでしょうか。ついできてしまう心の隙が怖い。知らず知らずのうちに、どこかおかしなこと、間違ったことを正しいと信じてしまう恐怖を、マキシを見ていて感じました。

 アメリカも非道いけど、ヨーロッパの分断も深刻で怖いわ~。ラストの暴動は、まさにカオスな地獄絵図。あながち非現実とも思えぬ不穏さが、今の欧州にはあります。ドイツやフランスの極右なんて、ほとんどナ〇スでしょ。カールとかがあまりにも堂々と、理路整然と移民排斥を主張するので、ああそうなのかなと納得しそうになって、危ない危ないby 福田和子!私は極右なんかじゃない、人種差別主義者なんかじゃない!と思ってるけど、果たして本当にそうなのかなと、日本でも増加する外国人に不安を覚えてる自分を顧みてしまいました。プラハでのサマーキャンプが、すごくポップで知的で活気に満ちていて楽しそう!あんなにフレンドリーで魅力的な人たちに囲まれたら、私も確実に洗脳されますわ

 ヤニヴ~今年に入ってNetflixではもう一本、「ミュンヘン 戦火燃ゆる前に」も配信開始となり、ヤニヴファンには嬉しい年始めとなりました(^^♪でもそろそろ、大きなスクリーンでヤニヴと会いたい

 
 

恋するおまわりさん

2021-08-20 | ドイツ、オーストリア映画
 イケメンオリンピック 金メダル🥇 ドイツ
 「High Society」
 金持ちの娘アナベルは、赤ちゃんの時に病院で取り替えられたことを知る。実の母親とその家族が住む団地で暮らし始めるアナベルだったが…
 セレブな女と庶民な男との美女と野獣系ラブコメ。大好きなドイツイケメン、ヤニス・ニーヴナー目当てで観ました(^^♪おまわりさん役のヤニヴ、カッコかわいすぎるぞ!わしもあんなイケメンおまわりさんに職務質問、いや、逮捕されたい!見た目は爽やかで清々しけど、ちょっと元ヤンっぽいやんちゃなヤニヴ巡査が可愛い!制服フェチ、特に警官の制服が好きなので、好きなイケメンのおまわりさん姿とか、ほんまたまらんわ。少年っぽいので高校生といっても通用しそう。アナベルと一緒だと年下彼氏にしか見えなかったです。

 童顔で可愛いけど、♂!なところもヤニヴの魅力。金持ちのバカ娘を軽くあしらったりからかったり、いざという時は助けたり守ったり。ひょうひょうと余裕たっぷりな庶民派スウィート騎士っぷりが素敵でした。笑顔が超可愛い!

 「タイムトラベラーの系譜」シリーズでもラブコメ演技がイケてたヤニヴ。やはりラブコメにはそれが似合うイケメンが必須ですね。とにかくカッコカワいいヤニヴでしたが、やんちゃなおまわりさん役なのでもうちょっと暴れたりワイルドなシーン、演技があってもよかったのではないかとも。ヤニヴといえばなかなかの脱ぎ男、ほとんどの出演作で脱いでますが、当然この作品でも。アナベルを車で迎えに来るシーンで、なぜか上半身裸。無駄な肉のない体脂肪率低そうな鋼の筋肉質ボディがまぶしい!細マッチョの理想形ですね。何でこのシチュエーションで裸なの?だけど、いかにもなサービス無駄脱ぎが微笑ましく好感。

  ヤニヴファンは必見ですが、それ以外の方々にはあまりおすすめできません。映画じたいは、他愛もないというか、かなりくだらないです。正直、ヤニヴがもったいないと思った。コメディなのに、あまり笑えるシーンがないというか。セレブ一家が仲良く古いファミリー8ミリフィルム観てたら、ご先祖さまがヒトラーと仲良くしてる場面が出てきて一同固まる、のシーンは笑えたけど。ナチスを笑いのネタにするとか、日本人からすると驚異なドイツ人の感覚です。

 ヒロインのアナベルが下々の生活を経験し、社会格差の理不尽な現実やお金では買えない人情を知り成長、人もなげなセレブどもはギャフンと言わされる、みたいなありきたりだけど馴染みのある内容、展開ならまだよかったのですが、アナベルは大した苦労も悩みもせず最初から最後までノーテンキなバカ女のままで不快でした。それにしても。韓国の財閥や成金もだけど、この映画のセレブたちも悪趣味で無神経で社会の害虫みたいな連中だった。上流社会って、少なくとも上辺はもっと優雅で気品がある世界だと思うのですが。

 コロナやオリンピックを通して、今まであまり意識してなかった日本の格差社会や上級国民の存在について、イヤというほど考えさせられました。こんな連中が好き勝手に、私たちが必死に働いて納めてる税金を使っていると思うと、虚しさや絶望感でやりきれなくなります。次の選挙は絶対に行く!と心に誓いました。
 閑話休題。映画はつまんないけど、ヤニヴの他にもイケメンが出てくるのでひとつおまけ。アナベルの弟役は、「僕の世界の中心は」でBL好演したヤニク・シューマン。薄口イケメンのヤニヴとは真逆の濃ゆい美男子。アホぼんぼん役でしたが、もっとおバカやってほしかったです。ヤニヴとの絡みが全然なかったのも、この映画のダメな点。青年実業家役のマルク・ベンヤミンもイケメン。クールだけど実は変態ドM男で、ボンテージ着てアナベルとSMプレイしようとするところが笑えた。

 ↑ ヤニヴ~新作の“Munich”は、名優ジェレミー・アイアンズ主演の第二次世界大戦中のミュンヘンを舞台にしたドラマ。たぶんまたナチス役?英語圏映画でのドイツ人俳優はそういう宿命。

 ↑ ヤニス&ヤニク。よく見かけたヤニヤニなツーショット画像、この映画での共演によるものだったのですね。私生活でも仲良しっぽい。今度はヤニヤニでBL映画を(^^♪

運命から瞳そらさないで

2021-01-12 | ドイツ、オーストリア映画
 「ある画家の数奇な運命」
 ナチス政権下のドイツ。少年クルトは美しい叔母の影響で芸術になじむが、精神を病んだ叔母はナチスの安楽死政策によってガス室送りとなる。戦後、クルトは美術学校で出会ったエリーと恋に落ちる。エリーの父は、クルトの叔母のガス室送りを決定した元ナチスの医師だった…
 「善き人のためのソナタ」のフローリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督作。数年前のアカデミー賞で、外国語映画賞と撮影賞にノミネートされたドイツ映画。ずっと気になって観たいと思ってたのですが、上映時間が3時間以上あると知り、ちょっと引いてしまいました。長い映画が苦手なんです私。迷った末に観に行ったのですが、観に行ってよかったです!3時間が全然苦痛じゃなかったです。それは、2時間でもキツい映画が多い中、この作品が稀有な佳作である証です。
 主人公が愛と芸術に生きるのが、ナチスと冷戦というドイツの暗黒時代。本当に起きたこと、同じ人間同士がやったこととは信じられない、信じたくない悲劇の数々に暗澹となってしまいましたが、この映画は不思議と暗くも重苦しくもなく、とにかく物語を進める演出と映像がめくるめく流麗さ。オスカー候補も納得の撮影の素晴らしさに感嘆。ヨーロッパの風景って本当にフォトジェニック。暗い時代を感じさせない美しさ、輝きに魅せられました。建物も趣深くて、病院とか大学も由緒と歴史を感じさせます。美しい演出も少なくなく、夜空から銀の神が降ってくる爆撃シーンが特に好き。死と恐怖が、あんなにも幻想的で神秘的に。青年クルトが初登場する草原を走るシーンも印象的でした。

 激動の時代を生き抜く人物たちも、それぞれ個性的で魅力的でした。主人公のクルトは、芸術家にありがちなエキセントリックすぎ、破滅的なキャラではなく、ほどよく情熱的でかなり常識的、現実的な若者だったのがよかったです。壮絶な時代で少年、青年期を送ったクルトですが、クルト自身にはそんなに不幸も悲劇も起こらず、愛にも芸術にもわりと順風満帆。大した辛酸もなめず、苦労といえば病院で掃除のアルバイトするぐらい。彼の代わりに周囲の人々が残酷な時代の生贄になってた、そのコントラストが悲しかったです。特にクルトの若く美しい叔母の末路ときたら、あまりにも無残でトラウマ級です。断種とか淘汰とか、おぞましすぎる狂気の沙汰。今の時代に生まれて本当によかった、と痛感しました。
 
 ナチス時代ほどの残虐さはないけど、冷戦時代もかなり非道。とにかく窮屈で不自由。西ドイツに亡命するシーンが、なかなかスリリングでした。意外とあっけなく成功したけど、あれはベルリンの壁ができて厳しくなる前のことだったからですね。その点でもクルトは幸運でした。クルトが学ぶ美術大学で行われてるアート活動や作品が、凡人には理解不可能だけど珍奇で面白かったです。
 クルトが光の主人公なら、ゼーバント教授は影の主役でしょうか。二人の因縁こそ数奇。とにかくゼーバントの生きざまと所業が罪深く忌まわしかった。本当に恐ろしい男。悪いと思ってないところが怖い。暗黒時代における彼なりのサバイバルでもあったんだろうけど、本性は真性ナチス。あんな人が戦後も社会的に高い地位を保ち権力を振るい、安らかに天寿をまっとうするなんて、ほんと不公平で理不尽。そんな自分たちの暗部を映画やドラマのネタにし続けるドイツ人、そのたくましいメンタルに畏怖。

 クルト役のトム・シリング、初めて知りましたがいい役者ですね!はじめは地味だな~ヤニス・ニーヴナーだったらよかったのに、なんて不満だったけど、見慣れてくるとすごくカッコカワいい♡たま~に、若い頃のブノワ・マジメル、ゴツくなった山崎賢人に見えたり。山崎賢人ほどイケメンではないけど、山崎賢人には絶対にできない役と演技でした。とにかく脱ぎっぷりがよかった。ラブシーンでのすっぽんぽんっぷりは、お見事の一言。恋人の部屋の窓から外の木に飛び移って逃げるシーンの、全裸猿っぷりが可愛かった。画家にしてはマッチョすぎ、でも私好みのガチムチ裸体は眼福。
 恋人役のパウラ・ベーアは、オゾン監督の「婚約者の友人」でヒロインを演じた女優ですね。すごい美女ではないけど、媚び媚なブリっこ女優にはない人間味と怜悧さ、そして大胆さに好感驚嘆。トム・シリングに勝るとも劣らない脱ぎっぷりで、ラブシーンだけでなく大学の階段で全裸モデルになるシーンには圧倒されました。何度かある全裸ラブシーンは、大胆だけどイヤらしさは全然なく、愛し合ってる感が温かく優しく伝わる素敵なメイクラブでした。ゼーバント役は「善き人のためのソナタ」にも出ていたセバスチャン・コッホ。鬼畜なのに立派な人物然としている複雑な演技もインパクトあり。ちょっとアントニオ・バンデラス似?クルトの子ども時代を演じてた子役が、か、可愛い!あと、クルトのアート仲間たちがみんなイケメン!その中で非イケメンな、芸術家には見えないゴツい野郎系男がいて、どっかで見たことあるな~と思ったら、「Freier Fall」で同性愛に溺れる刑事役を演じたハンノ・ホフラーでした。すごくイイ奴な役でした。

 ↑ トム・シリング、1982年生まれの現在38歳。嵐とかと同世代ですね。松じゅんとか二宮とか、今後役者を自称するならトム・シリングぐらいの役者魂見せてほしいものです

未来永劫の罪!

2020-11-23 | ドイツ、オーストリア映画
 「コリーニ事件」
 ドイツの高名な実業家マイヤー氏が殺害される事件が起きる。新米弁護士のカスパーが被告人のイタリア人コリーニの弁護を担当することになるが、コリーニは頑なに黙秘を続ける。事件の調査を開始したカスパーは、やがてナチスに関わるマイヤーとコリーニの過去を探り当てるが…
 第二次世界大戦が終わってから80年近くも経っているというのに、いまだに消えることも癒されることもない戦禍の傷跡や痛み。特にナチスドイツの罪は未来永劫の、人類史上最悪の汚点でしょうか。ナチスの非道さを描いた映画やドラマは枚挙にいとまなしですが、当時の悲劇に加えて長い年月を経ても晴れない遺恨、という現代の悲劇にも胸が塞がります。今回もですが、ナチスの悪魔の所業を見て思ったのは、戦争を知らない世代のドイツ人が、自分たちの国と国民がかつて犯したあやまちを突きつけてくる映画を、どんな気持ちで観ているのか…ということです。加害者側にせよ被害者側にせよ、ナチスに関わった祖父母や父母をもつドイツ人たちの心境はいかばかりか。

 この映画でも、裁判でマイヤーとコリーニの関係が暴かれた時の裁判官と傍聴者のショックや困惑など、何ともやりきれなさそうな様子が印象的でした。断罪したくても簡単にはできない複雑で重すぎる真実。ナチスに蹂躙されたフランス人やイタリア人のように、堂々と声高に憎悪や怒りを訴えられない、なるべく沈黙するしかないドイツ人もまた苦しいだろうな~。日本もドイツに負けず劣らず非道いことをしたようですが、それをガンガン突きつけてくるような映画は、これでもか!とばかりに量産されるナチスドイツのそれほどはお目にかかることはない。ハリウッドやヨーロッパ各地で絶えることなく作られる極悪ナチス映画。言い方は不適切かもしれませんが、格好のネタになってる感じです。

 事件を調査する主人公、やがて明るみになる社会の闇や悪…松本清張みたいな社会派ミステリー映画なのですが、わりとあっさりと新事実や衝撃的事実を見つけちゃうのが、ちょっと肩透かしでした。もっと真相が深く埋もれてたり、主人公に危機が、みたいな設定にしてほしかったです。怖かったのは、元ナチスが戦後も狡猾に生き残って、重要人物として戦後の政界や経済界でも権力を握っていたという事実。法律まで自分たちを守るために改悪してたんですね。魔物とは死滅せず形を変えて、弱い人間を不幸にし続けるものなのですね。

 主人公のカスパー役は、ドイツでは人気俳優らしいエリアス・ムバラク。いかにもトルコ人系な濃ゆい風貌。イケメンではないけど、真面目そう優しそうな好男子って感じ。ドイツには黒人よりも中東系、インド系のスターが多いみたいですね。コリーニ役は、かつてマカロニウェスタン映画で人気を博したフランコ・ネロ。イケジジ(イケてる爺)!今でも全然カッコいいです!シブい!哀愁!抱かれるなら嵐とかよりもネロ爺です。シワも年齢を重ねた男の魅力です。残酷な運命の辛酸をなめつくした重さ、悲しみにが静かに悲痛でした。おっさんなのにいつまでも若者ぶってて軽薄なキムタクとか、ネロ爺を見習ってほしいものです。
 私がこの映画を観たのは、もちろんヤニス・ニーヴナー目当てです(^^♪大きな銀幕で初めてヤニヴとランデヴー

 ヤニヴ、後半になってやっと出てきます。コリーニが少年の時に、イタリアのモンテカティーニで虐殺を指揮するナチス将校役のヤニヴ。白人のドイツ人俳優が避けて通れない仕事であるナチス役に、ヤニヴもついに挑みました。仕事とはいえ、演じてて気が滅入ることだろうな~。絵に描いたような冷酷非情な役。ほとんどサイコパスでしたが、軍服が似合っててとにかく見目麗しい!なかなか鬼気迫る演技、凄みがありました。悪魔のような役は、やはりブサイクよりも美男子のほうが怖くて魅力的。特にナチス軍人役は、ブサメン禁止なイケメンだけに許される役。悪魔なヤニスの登場時間が短かったのは、物足りなかったようなホっとしたような。それにしても。ヤニヴが年取ってあんなフィリップ・シーモア・ホフマンみたいな老人になるとか、ありえんわ~。例えて言うなら、山崎賢人が西田敏行になるに近い違和感でした。

 ヤニヴ同様に出番は少ないけど、おや♡誰?♡と目を惹くイケメンが。マイヤー氏の孫息子フィリップと、カスパーの友だちの一人が、薄くて涼しげで長身骨太という典型的なドイツイケメンで、チョイ役ながら目立ってました。
 裁判所がまるで貴族の館みたいな壮麗さで、さすがヨーロッパな歴史を感じさせる美しさ。日本とはかなり違う法廷内の様子も興味深かったです。

 ↑ ヤニヴ~バリバリの主演映画、早く日本でも公開されないかな~
 
 ↑ 左がフィリップ役のルドウィック・サイモン、右がカスパーの友人役のフレデリック・ゲッツ。ドイツも探せばザクザクと出てくるイケメン大国

イケメンと時間旅行

2020-10-25 | ドイツ、オーストリア映画
 「タイムトラベラーの系譜 ルビー・レッド」「タイムトラベラーの系譜 サファイア・ブルー」「タイムトラベラーの系譜 エメラルド・グリーン」
 ロンドンで家族と暮らす女子高生のグエンドリンは名家の一員ながら、冴えないはみ出し者扱いされていた。そんな中グエンドリンは、一族の秘密であるタイムトラベルの能力を持つ者が、いとこのシャーロットではなく自分であることに気づき戸惑う。ひそかに憧れていた美青年ギデオンも自分と同じタイムトラベラ-であり、彼と協力して秘密結社“監視団”からの任務を遂行することになるグエンドリンだったが…
 ファンタジー小説3部作の映画化。宇宙とか魔法とか妖精とか苦手なので、SWとかハリポタとかLOTRとかもいちばん最初の作品しか観てないんですよね~。この三部作も本来ならばスルー系なのですが、がっつり観てしまいました。愛しのドイツイケメン、ヤニス・ニーヴナー目当てであることは言うまでもありません(^^♪

 ヤニヴ~予想以上に、期待以上に、めちゃんこカッコカワイかったです!爽やかで優しそう、かつ男らしく精悍でもあって。名家の文武両道美青年お坊ちゃま、時空戦士でもあるギデオン役のヤニヴ、ルビー編では長い髪を後ろで束てていて、まるで少女漫画から飛び出してきたかのような風貌。万能で自信満々、冷たくて傲慢な俺様ヤニヴも素敵ケンカしながらもだんだんグエンと惹かれ合うようになり、ツンデレ化してゆくヤニヴも可愛かったギデオンみたいなスーパー男子、日本や韓流ドラマでもよく出てきますが、爽やかで清々しい野性味、引き締まった骨太な感じはドイツ人ならではな魅力。スウィートだけど甘っちょろいナヨっちい優男じゃないヤニヴが好きです。

 my老母も観たのですが、誰この子きれいじゃねえ~と老い萌えしてましたサファイヤ編、エメラルド編では短髪になってるヤニヴ、それがまた男らしくていっそうカッコいいんですよJohnathan」の彼を彷彿とさせました。エメラルド編とJohnathanは同年の作品みたい。道理で。髪型のみならず、品よくもチョイワルっぽい現代ロンドン男子ファッションや、タイムスリップ先の時代の衣装(中世のフランス貴族風、イギリス紳士風、アメリカンなモダンボーイ風など)でヤニヴ七変化なコスプレも目に楽しかったです。ラブシーンでは眼福な肉体美もサービス見せしてます。とにかくヤニヴファン必見、ヤニヴを知らない女子(もちろんイケメン好きな殿方も)も観たらヤニヴにfall in love間違いなしよ!ファンタジーな物語は苦手でも、ファンタジーなイケメンは大好物(^^♪ヤニヴこそこのシリーズ最大のファンタジーでした。これでもか!とばかりに女子が夢見る、いや、妄想する“イケメンにやってほしい、イケメンとこうなりたいシチュエーション”が。学校まで迎えに来てくれる、カッコいいオートバイに二人乗り、プロムパーティでパートナーに、夜中に窓から入ってくるetc.だいたいが人前でやってくれるので、羨望と嫉妬を一身に浴びて高揚感&優越感、なんて使い古されてる王道設定なんだけど、やっぱ憧れるわ~。

 とにかくヤニヴしか見てなかったので、ぶっちゃけ彼以外に特筆すべき感想が思い浮かばないタイムトラベルの他にも悪魔や幽霊が出てきたり、いろんなファンタジー要素をぶっこみ過ぎてて、わしみたいなおっさんにはかなりキツいオコチャマ映画でした。壮大ぶってたわりには、すごいショボい結末だったし。ハリポタと何となくカブる部分があるので、ハリポタファンは楽しめるかも。舞台はロンドンで、登場人物もイギリス人なのに、ドイツ人の俳優がドイツ語で演じているので、すごい違和感。ロンドンの名所がいっぱい出てきて、ますます行きたくなりました。

 ヒロインのグエンが、見た目もキャラも全然可愛くなかったのが、ちょっと…冴えない女子がイケメンに愛されてシンデレラガールに、なキラキラ感がゼロ。ふてぶてしくて性格が悪いので、何でギデオンが惚れるのか納得できなかった。とても処女とは思えないような男慣れした初エッチとか、とにかく少女っぽくない。まあ、清純ぶったぶりっこよりはマシだとは思ったが。グエンの意地悪ないとこのシャーロットはすごい美人でした。ギデオンの弟がブサイクで、兄同様イケメン設定だったのが???でした。成仏できずグエンの通う高校でさまよってる貴族の幽霊役で、コステア・ウルマンも出演してます。意味不明で不必要な役で、せっかくのコステアがもったいなかった。

 ↑ヤニヴ好きすぎてとうとう主演時代劇“Maximilian ”のDVD買っちまっただよ!秋の夜長はヤニヴと(^^♪「コリーニ事件」も早く観たい~
 

通報!不純同性交遊に堕ちた警官

2020-08-21 | ドイツ、オーストリア映画
 「Freier Fall」
 警察官のマークは訓練合宿でルームメイトとなったカイと親しくなる。ゲイであるカイにキスされマークは動揺するが、やがてカイとの性愛関係に溺れるように。マークには妊娠中の恋人がいたが…
 警官BL!カッコいいおまわりさんや刑事さんのBLも、腐には人気のジャンルですね。漫画や小説にはたくさんあるようだけど、映画はどうでしょうか。アル・パチーノの「クルージング」ぐらいしか思い浮かばないけど。このドイツのBL映画は、主人公が男前だけど屈強でワイルドな野郎系なので、麗しい美男子や可愛いイケメンの絡みが好きな人向けではありません。BL映画というよりゲイ映画?私は女みたいなキレイキレイ男子が苦手なので、この映画のような風貌の男同士のBLは丁度いい具合でした。

 彼女がいるノンケがゲイの男に強引にヤられ、男同士のセックスに目覚めてしまい苦悩、葛藤、悶絶、そして悲劇…という設定は、BL映画の名作「ブロークバック・マウンテン」とちょっとカブります。バリバリのノンケであるマークが、突然同性愛に溺れてしまうのを見たら、きっと多くの男性はそんなんありえん!と失笑したり不快がったりすることでしょう。でも男性って、実は誰でも内に同性愛を秘めているのではないでしょうか。ノンケが男に惹かれる、男とセックスする、というのもあながち腐のファンタジー、妄想ではないはず。ほとんどの男性が同性愛に目覚めるきっかけに出会わないだけなのでは。出会ってしまったマークは、果たして不運だったのか、それとも。

 マークとカイの性愛関係が、とても濃密に甘美かつ悲痛に描かれていました。ドロ沼関係でも、どこか冷ややかで乾いた雰囲気だったのは、舞台がドイツだったからでしょうか。それにしても。狼狽しつつもすぐにゲイセックスを受け入れるマークにも驚きましたが、ノンケであるマークに迫るカイの大胆さ、勇ましさも驚異でした。マークが彼自身も知らなかったゲイの資質を、カイは見抜いたのでしょうか。ゲイって、コイツいける!というセンサーを持ってるのかな。
 カイのちょっと危なげで一途な愛は切なかったけど、マークはすごい卑怯でチキン!彼女も子どもも大事にしたい、そうすることで自分がノーマルだと、世間からはみ出してないと確信したい、でもカイとの関係がくれる快楽と刺激は手放したくない…というユレユレでブレブレな優柔不断さには、ほんとイラっ&ムカっでした。マークの煮え切らなさ、自分勝手さに翻弄され傷つくカイと彼女が気の毒でした。特に彼女は、出産間近であんな裏切りにあうなんて可哀想すぎる。ちょとしたことでピーンとくる勘の鋭さと疑り深さ、寛容さを欠いた意固地さとか、女ってやっぱ怖いなと苦笑も。いちばん可哀想なのは赤ちゃんだけど。

 主演俳優二人の大胆でデリケートなBL演技は、なかなかインパクトあり。マーク役のハンノ・ホフラーは、イケメンじゃなくなったブラッドリー・クーパー、みたいな風貌。カイ役のマックス・リーメルトがクールな肉体美イケメン。でもたま~に、千鳥の坊主頭のほう(超苦手!)に似て見える瞬間があり萎え~。ラブシーンじたいはそんなに激しくはありませんが、二人の脱ぎっぷりがお見事だったので、自然なセックス感はよく出ていました。日本でリメイクするとしたら、誰がいいですかね~。鈴木亮平×市原隼人、とかどうでしょうか

 ドイツの俳優はゴツいけど濃ゆくないところがいいですね

 ↑ マックス・リーメルト、いい男!ドイツってやっぱ地味にイケメン宝庫

イケメン&コンスピラシー

2020-08-04 | ドイツ、オーストリア映画
 「ブレイム・ゲーム」
 ドイツ連邦情報局の諜報員マーティンは、アメリカが追っていたテロ組織の情報を入手する。その直後に起きた報復テロの犠牲者の中には、マーティンの恋人で記者のオーリスも含まれていた。危険なネタを握っていたらしいオーリスの死の裏に隠された真相を追うマーティンは、やがて巨悪の陰謀に巻き込まれ…
 ヨーロッパにおけるイケメンパラダイスといえばイギリス、と相場が決まってますが。ひそかに地味に穴場なのがドイツなのです。ドイツにも素敵なイケメン、男前がぎょうさんいるんですよね~。最近のmyお気にNo.1はヤニス・ニーヴナーくんですが、このドイツ映画でまたまたいい男を発見しました!主人公マーティンを演じたロナルト・ツェアフェルトです。いわゆるイケメン、美男子ではないのですが、男前です。ラッセル・クロウにそっくり。ラッシーをもっと長身にして、顔を優しく可愛くした感じ?ふとした瞬間には、大森南朋に似て見えることも。ほどよく濃くて、柔らかに男くさい風貌は私好みです。

 有能で経験豊富な男だけど完璧ではなく、ダメなところも多い。そういう大人の男が好き。ロナルトはそんな役が似合う俳優。仕事はデキるのに私生活では失敗ばかり、陰謀に巻き込まれて満身創痍で奮闘する勇ましさ、油断や隙もあるので酷い目にも遭う姿の情けなさ。いい男はカッコいいだけじゃダメ。可愛さもないとね。190㎝もある巨体は頼もしいけど威圧感はなく、ぬいぐるみの熊さんみたいな温かさにもほっこりさせられます。デカくて強そうな彼が上司や元妻、恋人などキツそうな女たちにやいのやいの言われて困惑したりしょんぼりしてる様子も胸キュンでした。若者でもなく熟年でもない、どっちの良い部分も併せもった、男としては最も魅力的な時期にある彼みたいな俳優が好きです。

 この映画にはもう一人、いい男が出演しています。「ゲーテの恋」や「顔のないヒトラーたち」での好演も忘れ難いアレクサンダー・フェーリングです。爽やかで優しそうなイケメンである彼が、今回は鼻もちならないエリート役。マーティンにイヤミったらしい態度をとる役なのですが、全然ヤな男には見えません。やっぱすごい優しそう。ゲスやクズ、悪い役はできそうにない風貌です。犬猿の仲だったマーティンと彼が、中盤になってタッグを組んでいい感じな相棒になった矢先に、えええ~!?悲惨すぎる末路を遂げてガーン

 企業や中東のテロリストとの関係や陰謀など、ドイツのお偉いさんたちも随分と腐ってますね~。テロを防ぐのではなく、テロを利用するやり口も怖い。一般人なんか犬猫も同然なんですね。ドイツといいイギリスといいフランスといい、テロが起こりやすいヨーロッパの不穏で危険な土壌に比べ、日本ままだまだ安全で安心して暮らせるな~としみじみ思いました。

 ↑ ロナルト・ツェアフェルト、1977年生まれの現在43歳。「アイヒマンを追え!」「あの日のように抱きしめて」も観ねば!

 ↑ アレクサンダー・フェーリングは、巨匠テレンス・マリック監督の「名もなき生涯」にも出演してるみたいですが、マリック監督苦手なんですよね~。ぜったい眠くなるから。愛しのヤニヴ(ヤニス・ニーヴナー)主演のTVドラマ“Beat”にも出てる!ヤニヴとアレクサンダーの競演、美味しすぎるでしょ!Netflixあたりで放送してくんないかな~

イケメンに授乳

2019-10-04 | ドイツ、オーストリア映画
 「スリーブラザーズ&ベビー」
 亡き両親から受け継いだ洋裁店を営む兄サミ、ミュージシャンを目指す弟メセトと暮らす無職のセラルは、交通事故で意識不明の重体となった元恋人アナの赤ん坊を預かり面倒を見るハメに陥る。兄弟で育児に悪戦苦闘する中、滞納した家賃を払うため母の貴金属を売って工面した金を、セラルはギャンブルに使ってしまい…
 大ヒットした懐かしのフランス映画「赤ちゃんに乾杯!」そのハリウッドリメイク「スリーメン&ベイビー」のドイツ版。前2作は優雅な独身男たちが主人公でしたが、この作品はサエないトルコ系3人兄弟になってました。

 可愛い赤ちゃんにも動物にもあまり興味がないので、その手の映画はあまり観ない私。仏版も米版も未見なのですが、この独版はスルーできませんでした。赤ちゃんではなく、イケメンに食いついてしまいました次男セラル役のコスティア・ウルマンが、めっちゃイケメンインドとドイツのハーフであるコスティアですが、どこからどう見てもインド男って感じではなく、それでいて適度に濃ゆいスウィートスパイシーなイケメンで、口当たりのよいカレーみたいな男なのです。「5%の奇跡」の彼は真面目で優しい善い子な役でしたが、今回の彼はちょっとロクデナシなチョイワルキャラで、そんな彼もなかなかチャーミングでした。

 大きな美しい瞳、小柄なところとか、やっぱちょっとガエル・ガルシア・ベルナルに似てるコスティア。兄と弟がブサイクなので、よけいコスティアの美男ぶりが際立ってました。カジノでのタキシード姿、カッコよすぎ!ロクデナシどころか、インドの貴公子にしか見えんかったぞ。それにしても兄弟間顔面格差、ありすぎ!私が兄か弟だったら、親を恨むわ。美男なだけでなく、濃ゆいエロフェロモンもガエルと共通してます。浅黒い肌がセクシー。小柄だけどいいカラダしてます。濡れ場とかはないけど、衝撃(笑撃?)の全裸シーンあり。

 銀行から金を借りるため、意を決して言われるがままストーリーキング、すっぽんぽんで白鳥の湖を踊ったり、卑猥に腰を振るコスティア。あれ、よくやったな~。お笑い芸人だってあれは易々とはできませんよ。日本のイケメン俳優にはまず無理でしょう。コスティアのイケメンぶりと役者魂に、ファンは感激するのみ。

 でも、セラルのキャラには共感も魅力も感られず残念。切羽詰まったらギャンブル、ババア相手の男娼、あげくは泥棒とか、まっとうに生きるという選択肢がないクズっぷりが不愉快だった。兄と弟も笑えないアホ男で、とにかく他人の迷惑とか事情なんかどうでもよく、常に自分たちのことだけな思考回路と言動。3人そろって知人の家に転がりこみ、遠慮も恐縮もしない厚かましさにも不快感しか覚えませんでした。人種ネタが多かったけど、インド人やトルコ人のそういった図々しい国民性を皮肉ってたのかな。ドイツの白人からしたらインド人もトルコ人もアラブ人も同じで、テロリストかカレー屋のどっちか、みたいな扱いがブラックな笑いを。

 あと、下品な下ネタも多かったです。そういうの好きなので、私は笑えました。金持ちのエロばあさんとセラルの、お下品な言葉攻め会話がなかなか愉快でした。ラスト近くにこのバアさんが意外な形で兄弟に幸運をもたらすのですが、それもこれもセラルがイケメンだったおかげ。イケメンってやっぱ得!セラルが怠惰で不真面目になったのは、イケメンゆえにいろいろ甘い汁を吸うこともあったからでしょうか。肝心の赤ちゃんは、可愛いし演技ができることに驚異!だったのですが、意外と早くママの元へ戻ってしまい、3兄弟がドタバタと育児に奮闘したりとか、赤ちゃんによって心も人生も変化が、みたいな笑いや感動はあまりなかったです。

 ↑ ドイツのコスティア・ウルマンと、イギリスのリズ・アーメッドが、いま私の中でのインド系イケメンの双璧です