まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

幸福の王子を探して

2023-11-27 | イギリス、アイルランド映画
 秋の夜長の国際BL映画祭⑤ イギリス
 「さすらいの人 オスカー・ワイルド」
 人気作家としての華やかな暮らしから一転、男色の罪で投獄され、富も名声も失ったオスカー・ワイルドは、パリで孤独な日々を送っていたが…
 オスカー・ワイルドの人生は、彼が書いた小説に負けず劣らずな数奇と波乱に満ちていたようで、映画化にはもってこいな題材です。この作品は、刑務所から出た後にオスカー・ワイルドがたどった、没落と失意の日々を描いています。

 それにしても。当時のイギリス、「モーリス」とかでもそうでしたが、同性愛が犯罪だったなんて、今では考えられない理不尽さ、非道さです。作家としてみんなからチヤホヤされてたのに、同性愛者と知れると手のひら返しの迫害。人権なんかあったもんじゃない仕打ちに戦慄。今でも芸能人や野球選手など、身の処し方を誤った人気者があっという間に転落、袋叩きに遭う怖さは不変ですが、彼らの才能や活躍同様、スキャンダルで堕ちていく姿もまた関係ない一般人にとっては、面白おかしい話題でしかない。ちょっと調子に乗ってる?と感じられる有名人には、あまり驕慢にならず油断せず活動してほしいです。一寸先は闇、その闇も一般人より深いだろうから…

 オスカー・ワイルドの堕ちた没落の闇も、なかなか深くて痛ましかったです。病身だったのもですが、お金に困ってたのがイタかった。元ファンの女性や旧友、元恋人のボジーにまでお金をたかる姿がみじめ、なんだけど、本人はそんなに気にしてなさそうで、もらうのが当たり前、みたいな感じなんですよ。これが凡人との違いなのでしょうか。自己嫌悪とか自己憐憫とは無縁な自信と超然とした態度。たかりなんて卑しいマネできない、と考えてしまうところがもう卑しい凡人な証拠なのかなと、ワイルドを見ていて思いました。多くの人同様に、もっと卑屈ままでにへりくだったり忖度したりして生きてたら、きっと静かで清い晩年を送れたかもしれないけど、そんなつまんない性格や人生じゃないからこそ、歴史に残る作品を生み出せたんでしょうね。出所後は断筆してたのが惜しまれます。

 天才あるあるですが、敵も多いけど味方も多いワイルド。みじめな没落生活や病床の中でも、献身的に支えてくれる人たちがいる。不幸にした奥さんや子どもたちも、離れ離れでも変わらずに愛してくれている。厄介で迷惑なおっさんだけど、一緒にいたら楽しいし、放っておけない危なっかしさもご愛敬で、確かに憎めない魅力的な人物ではありました。才能にも魅力に愛にも恵まれた幸福な人に、私には思えました。

 オスカー・ワイルド役は、80年代に英国美青年ブームを牽引したルパート・エヴェレット。主演と監督を兼任しています。そのキャリアと私生活が、オスカー・ワイルドと何となくカブる部分があるエヴェレット氏、なかなかの入魂の演技と演出でした。見た目はグロテスクな怪人っぽいけど、ふとした瞬間に往年の美麗さが垣間見える、うらぶれても誇り高く知性は研ぎ澄まされている、それでいてどこか浮世離れしていて、皮肉めいたお気楽さがあるエヴェレットasオスカー・ワイルドでした。落剝しても結構楽しそうに遊んでる姿には、ユーモアと不屈さがあってチャーミングでした。語学が堪能なことで知られるエヴェレット氏、フランス語の台詞もまるでネイティヴのように流暢に。
 ワイルドの友人役で、コリン・ファースが出演してます。エヴェレット&ファースって、伝説の「アナザー・カントリー」コンビじゃん!アナカンファンには感涙ものなツーショット。 

 二人が一緒のシーンは、どうしてもアナカンと比較してしまうので、二人ともじいさんになったな~と隔世の念。気難しそうだけど実はとっても善い人な英国紳士、というコリンといえばな役でしたが、出番は少なく友情出演っぽかったです。ワイルドの妻役はエミリー・ワトソン。彼女も少ない出演シーンながら、印象に残る好演でした。
 ワイルドを囲む若い男たちは、みんなイケメン!さすがエヴェレット氏、お目が高いボジー役のコリン・モーガンは、「ベルファスト」にも出てましたね。ベネディクト・カンバーバッチを優しく可愛くした感じの顔?友人(元カレ?)ロビー役のエドウィン・トーマスも、優しく誠実そうな好男子でした。ワイルドがパリで親しくなる花売りの少年ジャン役は、何と!「Summer of 85」前のバンジャマン・ヴォアザン!

 可愛い!当時22歳ぐらいなので、まだ少年って感じ。底辺社会でたくましく生きてる、スレてるけど優しい男の子役で、チョイ役かなと思ったけど結構出番は多く、なかなか美味しい役をもらってました。ちゃんとお金払って彼と援助交際してるところが、さすがワイルドでした。バンジャマンくん、堂々としたすっぽんぽん姿も披露。男たちの全裸シーンは多いけど、性的なシーンは全然ないです。

 ↑ アナカンの頃のルパート&コリン

 ↑ アナカンから34年後

 両手にイケメンでご機嫌なエヴェレット氏

コメント (4)
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君の拳に恋してる

2023-11-19 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 秋の夜長の国際BL映画祭④ ニュージーランド
 「Punch」
 ニュージーランドの田舎町で父スタンと暮らす高校生のジムは、元ボクサーであるスタンの厳しい指導を受けながら、ボクシングのプロテストに向けトレーニングを重ねていた。そんな中、学校で変わり者扱いされているゲイのウェトゥと親しくなるジムだったが…
 ニュージーランド映画も普段あまり観る機会がありません。同じ田舎の風景でもニュージーランドは、イギリスやアメリカといった馴染みのある国と違い、どこか原始的な趣きが感じられました。お隣のオーストラリアは明るく開放的なイメージですが、ニュージーランドはどこか寂寥とした閉塞感が。ニュージーランドにはカンガルーもコアラもいないんですね。

 BLが特殊な恋愛じゃないのはフィクションの中だけで、今も現実では人間として異常な誤った“逆さまの世界”と見なされているのではないでしょうか。私の周囲でも、おじさんとかおばさんは平然と当たり前のように、女性っぽい人を“おかま”呼ばわりしたり、ホモとか気持ち悪いなんて言ってますし。この映画でも、同性愛、というか、自分たちとは相容れない、自分たちの理解を超えた価値観を持った人に対する無知な凡人たちの差別偏見と迫害が、あまりにも低能かつ暴力的で戦慄。心が貧しいと、人間が狭くて卑しくなってしまう怖さ。そうならないためには、もっと視野を広げて勉強しなきゃいけないと、あらためて痛感しました。

 異性愛者、もしくは白人なので自分たちは正しい、同性愛者、もしくは有色人種は異常かつ汚いので自分たちより下、なので虐げたり排除してもいいという、もうおなじみかつウンザリするような低能すぎる差別主義者が大手を振るってる国に生まれなくてほんとよかったと、この映画を観ても思いました。ニュージーランドも差別偏見がかなりキツくて野蛮。驚いたのは、女の子まで積極的にウェトゥをいじめてたこと。女の子があんな風にゲイに対して悪意ある言動をするシーンってあんまり見たことがないので、ちょっと衝撃的でした。

 いじめに屈せず、堂々と自分らしさを貫くウェトゥの誇り高さと勇気は称賛に価しますが、ちょっと自分らしさを貫きすぎというか、意地になって開き直ってる言動は挑発的で露悪的でもあって、不快感や反感を買うのも仕方がない部分が。自分に正直に生きることは大切、私も見習いたいけど、遠慮とか慎ましさといったものも失いたくないと思いました。学校ではヒエラルキーの上層部にいて、男女の取り巻きに囲まれ、将来はプロボクサー、という勝ち組DKなジムが、ウェトゥとの関りを通して本当の自分、本当に望んでいる生き方に気づかされるのですが、イジイジコソコソ独りで悩んで葛藤してるだけで、愛のために闘う姿勢はあまり見せなかったのが、ちょっと物足りなかったです。あんな田舎ですべてを失う覚悟でカミングアウトは、まあ確かにリングの上で戦う以上の不安と苦痛でしょうけど…

 最後の最後になって、ついに結ばれるジムとウェトゥですが。それまでフツーの友だちレベルな感じだったので、いきなりセックスとか唐突感が。そこに至るまで、互いに性的な欲望を抱いてしまう戸惑いや焦りなどの描写が、もっときめ細やかにあればよかったのですが。セックスシーンは、大胆だけど全然イヤらしくありません。あんな真昼間のビーチで全裸で絡み合うとか、羞恥心も人目を気にすることもないアオカン、私には無理ジム役のジョーダン・オオスターホフは、マット・デーモン+日本ハムの清宮、みたいな顔?小柄なゴリマッチョ。脱ぎっぷりがよく、すっぽんぽんになってビーチを走るシーンとかもありました。ウェトゥ役のコナン・ヘイズは、なかなかの美人さんでした。ジムのパパ役は、懐かしのティム・ロスでした。うらぶれたアル中の負け犬おやじっぷりが痛ましかったです。
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シネマみたいなBLをした

2023-11-13 | イタリア映画
 秋の夜長の国際BL映画祭③ イタリア
 「ニュー・オリンポスで」
 1970年代のローマ。映画館で出会ったエネアとピエトロは、すぐに激しい恋に落ちる。しかし、思わぬ事態により二人は離れ離れになってしまう。会いたいと願いながら年月は過ぎ、エネアは映画監督、ピエトロは医師としてそれぞれの人生を歩んでいたが…

 BLといっても多種多様で、腐にとっても好みが別れます。私も三度の飯よりBL好きですが、男同士の恋愛ものなら何でもOK!ではなく、かなり偏ってます。まず絶対条件は、イケメンや男前の俳優主演好きな俳優がBLしてくれた時の至福ときたら。次は、適度な性愛シーンがあること。セックス?何それ?な乙女すぎるBLはダメ。かといって、生々しすぎるポルノみたいなBLも苦手。そして、ありえなさすぎる設定やキャラのファンタジー系BLも個人的にはNGです。社会問題を描くことに重きを置いてるBLもしんどい。このイタリア映画は、そういった私の要求をかなり満たしているBLになっていました。

 まず、主人公の二人がイケメンです。イタリアはほんと美男の国。互いに一目ぼれ、どっちかがブサイクだと成り立たない話は、ルッキズムだ!と不快に思う人もいるかもしれませんが、現実世界はともかく、映画の中の美しい人たちを崇め讃えることまで批判するのはお門違いのように思われます。とにかくエネアとピエトロ、どこで何をしていても絵になる美しいカップル!ゲイのハッテン場である映画館のトイレでさえ、ロマンチックな恋の舞台にしてしまうイケメンマジック!

 大事なポイントその2である、適度な性愛シーン。この映画ぐらいのラブシーンが、ほんと丁度いいんですよね~。全裸での絡みや行為はかなり大胆なんだけど、全然いやらしくなくて、求め合ってる愛し合ってる姿は若々しい情熱と優しさにあふれていて素敵でした。主演の二人の脱ぎっぷりがスゴすぎ。ボカシなし、デカいアソコ丸出しなのは、セックス中、セックス後の姿としては自然なんだけど、ちょっと目のやり場がばっちり見せるのは、お尻だけでいいかもそれにしても。コンプラ、ポリコレの悪しき風潮が、どんどん映画をつまんなくしてると、あらためて思いました。いやらしく撮らなければ、全裸も濡れ場も映画を美しく感動的なものにする大事な要素ですよね。

 ありえないファンタジーBL、男女の恋愛と変わらないようなBLではなく、ゲイならではの困難や苦悩と直面するBLだったのも、私の好みに合ってました。ライトでハッピーなBLも悪くないのですが、やっぱ男同士の愛には秘してこそ花な禁断感、深い悲しみと苦しみを求めてしまうんですよね~。でもこの映画、ドラマティックな展開と切ない悲恋が、ちょっと韓流ドラマっぽいんですよ。生き別れとか偶然すぎる再会とか、もろに韓流でした(笑)。ラストはイタリア映画の名作「ひまわり」へのオマージュみたいでした。70年代に吹き荒れた政治運動や映画撮影の現場なども、ラブストーリーの背景に巧く活用されていました。

 エネア役のデミアン・カヴィーノ、ピエトロ役のアンドレア・デイ・ルイジの好演を讃えたい。イケメン俳優がBLに挑戦するならこれぐらいは、と思える理想的な演技でした。どちらも存じ上げなかった俳優さんたちですが、二人とも美男子!そして大胆!デミアンはスマートで可愛いイケメン。アンドレアは朴訥な感じの男前。どっちもさすがイタリア男な色気。どっちもちょっと濃ゆいので、濃密系が苦手な人は胸やけ注意かも。エネアとピエトロは同い年という設定なのですが、そうは見えないのが気になった。出会った25歳の時のパートでは、ピエトロが老けて見えたけど熟年になってからは自然なイケオジに。逆にエネアは熟年になってからの老けメイクがちょっと不自然だった。実際のデミアンは現在22歳、アンドレアは28歳だって。若っ!二人の70年代ファッションがおしゃれでした。

 映画館の受付熟女、エネアの親友、ピエトロの妻、女性キャラも印象的でした。よく考えたらBLに関わる女性たちのほうが、より深刻な苦痛を味わってるんですよね~。男たちは恋に酔ってるだけでいい気なもんだよ。怒りや悲しみ、屈辱に苛まれても、地に足をしっかりつけて生きる女たち。女性のほうが現実的で、精神が強靭!
 ローマの街並みも魅力的!ピエトロとエネアが愛を交わす家も素敵だった。家のベランダから見渡せる風景が美しかった。「異人たちの棲む館」や「ナポリ 熟れた情事」など、イケメン映画の名手であるフェルザン・オズペテク監督、今回もオープンゲイならでの作風でした。日本でぜひリメイクしてほしいわ。ピエトロは竹内涼真か吉沢亮、エネアは横浜流星か山崎賢人がいいかも。「アキラとあきら」やキングダムシリーズよりも、断然こっちのほうがファンにとってはジョイフルですし
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男のコになりたい

2023-11-10 | ドイツ、オーストリア映画
 秋の夜長のBL国際映画祭② ドイツ
 「Romeos」
 トランスジェンダーのルーカスは、ホルモン療法を受けながら性適合手術の日を待っていた。そんな中ルーカスは、魅力的なゲイの不良青年ファビオと出会う。互いに強く惹かれ合う二人だったが…
 これも厳密に言えば、BL映画ではないかも。同性愛よりもさらにハードルが高いテーマ。トランスセクシャルの恋愛と人生、その心身や社会的な苦労と苦悩、苦痛は重すぎて、同性愛が何でもないことに思えてしまうほど。ノーテンキにBLを楽しんでる自分が軽薄に思えて罪悪感。心は男なのに女の体で生まれてしまったルーカスの、体も人生も男として生きようとする奮闘が涙ぐましく痛ましく、それを見て居心地の悪さを覚えてしまう自分にまた罪悪感。心と体の性の不一致だなんて、神さまって何で残酷なことをするんだろう。不一致のまま生きていくのも、ルーカスのように一致させようとすることも、私なんかに分かるわけもない辛さです。

 筋トレや髭などの体毛、体臭など、何とか男らしくなろうと日々努力を怠らないルーカスのルーティーン描写が、これまでトランスジェンダーには無知、そして無関心だった私にはかなり衝撃的でした。努力の甲斐あって男にしか見えないルーカスですが、体はまだ女性のまま。ギュウギュウにキツく巻いたサラシを解き裸になると大きな乳房が!男性器はまだないので、ゴム製のペニスを着用してる!トランスジェンダーのリアルな身体もショッキングでした。まだ女性だからと女子寮に入れられたり、公共のトイレとか更衣室とか、法律や設備などもトランスジェンダーのために整っているとは言えない現状にも、もっと関心を持たねばならないと痛感させられました。都合のいいキレイキレイなファンタジーBLばっか貪ってる腐には、かなり強烈なカウンターパンチ映画かも。

 男の体を手に入れた後も、問題は山積。社会的な立場や権利もですが、切実なのはやっぱ恋愛です。好き人なった男性(ゲイ)へのカミングアウト。果たしてゲイは元女性の男性を受け入れ愛せるのか。ファビオと親密になっても、彼の反応を恐れてセックスも告白できないルーカスを臆病者呼ばわりはできません。求め合っても一線は越えられず、逃げるルーカスにイライラモヤモヤするファビオ。思わぬ形でファビオに真実を知られてしまうのですが、それがまたイタいシチュエーションでショックと怒りにかられ、ルーカスに結構イケズな仕打ちをするファビオなのですが、必ず最後に愛は勝つ~♬ by KAN な二人だったので安心しました。でも、現実はあんな風にスウィートには行かないんだろうな。ルーカスだって、もしファビオが元女性だったら彼を愛せただろうか。


 ルーカス役のリック・オコンは内気そうな地味イケメン、ファビオ役のマクシミリアン・ベフォートはヤンチャなエロイケメン。二人とも難しい役を魅力的に演じてます。特殊メイクで胸など体を女性にしてのリックの演技、大変そうでした。マクシミリアンは小柄で猿みたいな童顔が可愛く、全裸で夜道をウロウロするなど脱ぎっぷりがすごいです。ルーカスの親友でレズビアンのイネが、素敵な女性でした。彼女みたいな理解者がいて、ルーカスは幸せ者だと思いました。トランスジェンダー、シスジェンダーの違いも今さらながら学ぶことができました。心と体の性が一致していないルーカスはトランスジェンダーで、一致してるけど同性が好きなファビオはシスジェンダーのゲイ、イネはシスジェンダーのレズ、ということですね。

 ↑ マクシミリアン・ベフォート、可愛い(^^♪ドイツはイケメンの宝庫ですね
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BLブートキャンプ!

2023-11-08 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 おほかたの秋をば憂しと知りにしをふり捨てがたき鈴虫の声

 深まりゆく秋、皆さまいかがお過ごしでしょうか。日中と夜との寒暖差のせいか、ちょっと風邪気味な私です。早く寝ればいいのに、チビチビと酒を飲みながら、大好きなBL映画で秋の夜更かしを楽しんでます。BL映画もいろんな国のものがありますね。各国のお国柄も楽しめるBL国際映画祭を開催しちゃいますよ(^^♪
 
 秋の夜長のBL国際映画祭① 南アフリカ  
 「Moffie」
 1981年、人種隔離政策下の南アフリカ。軍隊に徴兵された同性愛者の青年ニックは、目立たぬようにしながら過酷な訓練に耐え続けるが…
 普段あまり観る機会がない南アフリカの映画。ビル・ナイがオスカーにノミネートされた「生きる LIVING」のオリヴァー・ハーマナス監督作。
 軍隊って、BLでは人気のジャンルですよね。屈強なイケメンたちの、カッコいい軍服姿と美しい肉体。この作品もビジュアル的には、ミリタリーマニアな腐女子にとっては美味しい映画だと思います。ただ、かんじんのBLが、腐女子のニーズにあまり応えてないかも。男同士の恋愛や性愛シーンが、ほとんどないんですよ。同性愛そのものよりも、隠れゲイの目を通して描く当時の南アフリカ、その地獄のような軍隊生活と、セクシャリティや政治思想を表に出せない国で生きる恐怖や息苦しさをメインテーマにした映画かも。南ア出身でオープンゲイであるハーマナス監督が、主人公のニックと重なります。

 とにかく軍隊の訓練が過酷、ていうか異常!1981年って、そんな大昔じゃないですよね。ちょっと前まであんなことがフツーに行われていたなんて、ただもう絶句です。訓練なんかじゃない、ただの虐待でしたし。人権なんてないも同然。サディスティックな上官に、肉体的にも精神的にもコレデモカ!と虐げられ痛めつけられる若い兵士たち。私なら30分ももたずに死亡します。心身共に壊された兵士が、みんなの前で自殺するシーンは衝撃的でした。何事もなかったかのように訓練を続けるのも狂ってる。アパルトヘイトなんて信じられないことが長い間、堂々と行われていた南アフリカの、日本人には到底理解できない人権無視と人命軽視には、ただもう戦慄。

 白人たちの有色人種差別も非道すぎ。列車の窓からホームに立ってる黒人に罵声を浴びせ、汚物を投げつけるなんてことが嬉々として公然と。似たようなことは、今のアメリカでも起きてますよね。人種差別同様、性的マイノリティへの暴力的な嫌悪や排斥も異常。同性愛者だとバレたら人生終了、みたいな世情も。白人の異性愛者が、そんなにエラいの?自分たちの低能丸出しな蛮行を見ても何とも思わないのでしょうか。何とも思わないから怖いし、悲劇は終わらないんでしょうね。とにかく暴力的で理不尽な南アフリカ、徴兵や国境争いのない日本に生まれてよかった!と、心底思わせてくれるヤバい蛮国のひとつです。

 ニック役のカイ・ルーク・ブラマーが、なかなかカッコカワイかったです。ちょっとベネディクト・カンバーバッチに似てる?バッチさんを小柄にして可愛くした感じ?脱ぎっぷりもよく、細マッチョな肉体美でした。ニックと仲良くなるディラン役のライアン・デ・ヴィリアースも、なかなかイケメンでした。訓練が終わった野外の夜、濡れて冷えたニックをディランが温めるシーンが、ドキドキ胸キュンでした。二人とも裸、でも見つめ合ったり頬に触れる以外は何もしない、二人の秘めて抑えた想いがもどかしくて切ない。初めてのキスシーンも、軽くそっとだけどカップル成立!でキュンとなりました。後にゲイバレしたディランが、WARD 22と呼ばれる矯正施設送りになるのですが。この施設、ナチスドイツも真っ青な人体実験をしてたらしいですね。ラスト、除隊し再会した二人が海でハッピーエンド…と思いきや。そう簡単に恋人になれない、希望よりも絶望を感じさせる現実が、シビアな余韻を残します。

 ちなみにタイトルのMoffieとは、オカマ野郎とかいった意味の、ゲイに対する蔑称だそうです。ニックは英語を喋るのですが、他の兵士や上官はアフリカーンス語という英語と現地語が混ざった言語?で話していたのが興味深かったです。それはそうと。南アフリカ軍の軍服って、ちょっと可愛いかも。帽子とか女子が被ってもおしゃれかも。

 ↑ オリヴァー・ハーマナス監督の新作“The History of Sound”は、ポール・メスカルと「ゴッズ・オウン・カントリー」のジョッシュ・オコナー共演のBL映画!これは楽しみすぎるぞ!
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さらわれてサランヘ

2023-11-05 | 韓国のドラマ
 韓流ドラマ「誘拐の日」を観たニダ!全12話。
 しがない中年男のミョンジュンは、失踪していた妻から大富豪の医者の娘ロヒを誘拐する計画を持ち掛けられる。白血病の娘の手術費のため、仕方なく誘拐を実行しようとするミョンジュンだったが…
 大好きなユン・ゲサン主演、ということで観ました。ゲサンといえば、翳りのあるクールな切れ者の男前、というイメージですが、このドラマの彼はそれとは真逆、ほとんどアホなお人よし、妻に逃げられ病気の娘の治療費も捻出できない貧しい社会底辺者、というかつてないポンコツ男役、ダメ男役のゲサンが衝撃的、かつ可愛かったです。コメディ演技もお上手ですね~。

 もっさい髪型、貧乏くさい服装、無精ひげという風貌と、いつもオタオタオロオロしてる情けない挙動で、寡黙でミステリアスなこれまでとは別人みたいな冴えないおっさんになりきってるゲサンですが、やっぱカッコいいんですよね~。もしミョンジュンがブサイクなキモい見た目だったら、ロヒもきっと心を許さなかったはずです。アホみたいな情けない顔ばかりするんだけど、ふとした瞬間の真顔とかめっちゃ男前!全然カッコつけてないんだけど、いい男ってことは全然隠せてないゲサンでした。ヘタレで鈍重な感じに見せてるけど、長身で逞しい体つきが屈強そうなので、体を張った格闘シーンも自然な迫力が。日本の貧相な俳優が同じことやったら、すごい違和感あるだろうし。

 幼い女の子が相手役なので、もちろん甘く熱いロマンスも色っぽいシーンもなし。男の色気あふれるゲサンなので、そこは惜しいドラマでした。超天才少女のロヒが主導権を握り、ミョンジュンを従えて事件の真相を追ったり警察や悪者から逃げたりするのですが。ケンカしながら協力し合っているうちに本物の父子のようになってゆくプロセスややりとりが、コミカルかつ感動的でした。

 二人の主従関係、勝ち気なドS女と心優しいM男は、ちょっと「猟奇的な彼女」を思い出させた。猟奇的な彼女のヒロインは嫌いだけど、ロヒは子どもながらになかなかカッコいいキャラで好きです。天才だけど社会性ゼロな女の子、という設定は「梨泰院クラス」のイソと似てます。見た目は子ども、中身は大人な、名探偵コナンみたいな子でもある。冷徹でプライドが高いロヒが終盤、ミョンジュンと引き離されそうになり、孤独な幼い少女に戻って号泣するシーンは、韓流ドラマってこういうのやっぱ巧いよな、あざといよな、と苦笑しつつもウルルンとなりました。ロヒ役の女の子が、めちゃくちゃ演技巧いんですよ。韓国の子役、ほんとすごいですよね~。

 主人公二人のコンビネーションはコミカル&感動系なんだけど、殺人事件の真相と秘密の人体実験はかなりおぞましいです。特に孤児院の子どもの扱い。韓流ドラマではもうおなじみの非道さですが、こんなことありえんわ~でも韓国ならありえるかも、と毎度戦慄。人々の生活や言動から感じられる民度の低さ、これもまた韓流ドラマや映画における怖さと面白さです。あと、こんなところが今の時代まだあるの?!と目を疑うような貧しい居住区の風景も。ミョンジュンが娘と暮らしてた町とか、怖くて私なら住めません。残虐な殺人や暴力シーンのエグさも、まさに韓流。子役を使ってこんなドラマ、今はもうコンプラやポリコレにがんじがらめにされてるアメリカや日本では不可能かも。

 あと、韓流あるあるといえば、警察の無能さ。アメリカや日本だったら、早期解決しそうな誘拐事件と殺人事件なのですが、韓国の刑事さんたちダメダメすぎるでしょ~。ロヒに出し抜かれすぎ!数々の失態の中でも、真犯人が警察官に変装し、現場検証中のロヒの家に入り込んで証拠品を盗み出すくだりには唖然。あと、ラスト近くのロヒと真犯人の対決シーンも。天才少女VSサイコパスの心理戦はスリリングだったけど、幼い少女に警察があんな危険なことさせるとか、ありえなさすぎ!ミョンジュンの妻が、顔もキャラも薄気味悪くてすごい存在感です。終盤の彼女の衣装も強烈。奇異なセンスのファッションも、韓流ではお約束のお楽しみですね。
 韓ドラ完観恒例、イルボンリメイク理想妄想キャスティング(^^♪

 ミョンジュン ・・・ 永山瑛太
 刑事さん ・・・ 松下洸平
 ミョンジュンの妻・・・・・・ 江口のりこ
 ジェイデン ・・・ 竜星涼
 ジェイデンの手下 ・・・ 笠松将
 警備会社のおじさん ・・・ 六角精児 
 モ博士 ・・・ 鈴木保奈美

 こんなん出ましたけどぉ~?
 ユン・ゲサンがどうしても瑛太に似て見えるのはわしだけ?最重要なロヒ役は可愛いだけの子役では無理なので、慎重に選ぶ必要が。

 ↑ ユン・ゲサン、チョアチョア~♡
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