まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

アラビアの狼少年

2020-08-28 | 北米映画 15~21
 「コードネーム エンジェル」
 中東諸国とイスラエルの対立が深刻化していた70年代初頭。エジプトのナセル大統領の娘婿アシュラフは、イスラエルにエジプトの情報を流そうとする。ナセルが急死し、次の大統領となったサダトの信頼を得て政府高官となったアシュラフに、イスラエルの諜報員が接近してくるが…
 実写版「アラジン」やNetflixの「オールド・ガード」など、アメリカ映画での活躍が目立つオランダ俳優、マーワン・ケンザリ主演のスパイ映画。マーワンが全編出ずっぱりな主演作は初めて観ました。彼がいい男かついい役者であることを再認識できました。若造でもなくおっさんでもない、脂がのる男の最盛期といっていい年頃の男優が好きです。マーワンはとにかく艶っぽくて色気があるんですよね~。最近の人気俳優はみんな見た目はいいけど、色っぽくはないのが残念。なのでマーワンみたいなフェロモン男は貴重。この映画ではセクシーシーンや脱ぎは全然ありませんでしたが、男の色気は香水のように放っていました。若く見えるけど大人の男性って感じが好きです。彼、山下や亀梨と同じ年頃なんですよね~。いい歳して未成年と飲酒や淫行してるタレントとは大違いな大人の魅力です。

 劇中のマーワン、カイロにいる時はスーツ姿なのですが、ロンドン滞在中は70年代のファッションで、それが似合ってて素敵でした。パンチパーマみたいな髪型なので、ちょっと品のある金持ちのヤクザっぽくも見えて、それがまたイケてました。この映画のマーワン、どこかで見たことがあるような、誰かに似てるような、と思って見てたら、あ!ルパン3世だ!もしハリウッドでルパン3世が実写化されるとしたら、マーワンでお願いしたい!少なくとも小栗旬よりは絶対合ってると思う。あと、顔が玉木宏にもたまに似て見えた。玉木を濃ゆく優しそうにした感じ。英語だけでなくアラビア語の台詞も多く、すごく流暢!マーワンの語学力にも感嘆。

 ただのダメ男なのか、卑劣な売国奴なのか、それとも?舅である大統領に軽んじられたり生活費をケチられたりした腹いせで、敵国であるイスラエルに情報を売ろうとしてたアシュラフが、いつの間にか国家間の争いを阻止しようと紛争する英雄なヒーローに、と思いきや、不運で?故意に?偽情報を渡してイスラエルを何度も翻弄するなど、アシュラフの行動は不可解で観客も惑わされます。ダメ男に国家が振り回される滑稽な悲劇なのか、驚くべき深謀遠慮が隠されているのか。ラストの展開で判明されるのですが、ミスリーディングさはなかなか巧みでした。イソップ童話の狼少年が重要なキーワードになってたのも面白かったです。

 スパイ活動と家族の間でデスパレートに追い詰められまくるマーワン、どう見ても悪だくみや非道なことをしそうにない善人オーラがハンパないです。「アラジン」では悪役でしたが、顔が優しいのでアラジンとジーニーより善い人に見えましたし。この映画でも笑顔がスウィートで、彼が何をしても奥さんやイスラエルの諜報員が冷たくできず、つい気を許してしまうのも理解できました。男の魅力を利用して女にスパイ活動に協力させたりもするのですが、007と違って性的には潔癖で据え膳食わず、奥さんに誠実だったのがちょっと物足りなかったです。映画も不倫や情事には厳しくなってるのが、ほんとつまんないご時世です。

 中東の歴史や政情については無知なので、すごく勉強になりました。エジプトやシリアなど中東との険悪な関係や、モサドやヨム・キッパーなど、イスラエルの特殊すぎる存在もあらためて再認識。モサド諜報員役のイギリス人俳優トビー・ケベルもなかなかの男前でした。仲間の中にもクリス・ヘムズワース似のイケメンがいました。物騒だけど、エジプトやイスラエルにもいつか行ってみたいです。でもやっぱ行けるとしたら、この映画の主な舞台となったロンドンかな~。ビッグベンの前や有名な公園で、私もスパイ活動してみたいです

 ↑優しそうでエロいマーワン、母国オランダの出演作も観てみたいです
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不死の軍団

2020-08-23 | 北米映画 15~21
 「オールド・ガード」
 数世紀に渡って密かに世界を危機から救うべく戦っている不老不死の戦士アンディ、ブッカー、ジョー、ニッキーは、元CIA諜報員のコプリーから南スーダンでの人質救出の依頼を受ける。だがそれは、4人が不死であることを確認し証拠を入手するための罠であった。一方、アフガニスタンで従軍中の兵士ナイルは、襲撃者に喉を裂かれるが落命せず傷もすぐに完治する。アンディたちは新たなる仲間の誕生を感知し…
 不老不死の戦士たちが悪と戦う、という荒唐無稽な設定ながら、アベンジャーズに勝るとも劣らぬカッコいい、面白いアクション映画の秀作でした。コミカル要素が強く、おんな子どもが観てもOKなアベンジャーズと違い、こちらはハードかつダークで生々しい血まみれ、血みどろな殺戮シーン満載で、戦士たちのキャラも宿命もシリアスなので、いくぶん大人向けのヒーロー映画になってます。怒涛のアクションシーンはスタイリッシュかつ荒々しく、まさに美しい暴力って感じでした。

 何百年、何千年も生き続けて、ひそかに世界の危機を救っているヒーローたち、という設定がユニーク。撃たれても刺されても時間が経つと傷が消えたり、頭吹っ飛ばれてたりビルから落ちてグジャグジャになっても生き返ったり。有名な事件や戦争、革命の裏には彼らの活躍があったんですよ。世界史の勉強にもなりました。不老不死チームのメンバーそれぞれのキャラ立ちも、あくまでクールでどこか虚無的だったのも、異色で斬新でした。見た目は若いけど、実は数世紀も生きてるジジババばかりで、もうしんどい、楽になりたいというボヤキながら死闘を続けている彼ら。早く人間なりたい~という願望は、まるで妖怪人間みたいで笑えた。

 アベンジャーズと違い、オールドガードには不老不死、再生能力以外にこれといった特殊能力はなく、ほぼおのれのの肉体で戦う肉弾派。重症を負ったら死なないけどすごい苦痛は避けられないので、戦いは生き地獄でしかない。しんどいしんどい言いながらも、怠けず律儀に戦い続けるオールドガードの面々、ほんと真面目だな~と感嘆。私が不老不死なら、それを利用して思いっきり楽しく永遠に生きるんだけど。とはいえ、やっぱ死ねないのはしんどい、つらいことですね。命って限りがあるから一生懸命に有意義に生きたいと思うし。

 この映画のいちばんの勝因は、やはりキャスティングでしょうか。リーダーである最年長のアンドロマケ(アンディ)役は、今や世界最強の男前美女シャーリーズ・セロン。「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のフュリオサに劣らぬ激烈女戦士っぷりでした。今回は得意の美貌崩しはあまりしておらず、シャープでクールな美しさは神々しいほど。キャラもファッションもほとんど男、という美女役はもはやシャー子さんの専売特許ですね。屈強な男どもを従え、彼らに慕われる最強の女ボス役なんて、もうシャー子さんしか演じられないでしょ。鬼強だけど優しい、その優しさも女性のものではなく強い男がもつ優しさ、を表現できる美しい女優も、世界広しと言えシャー子さんしか今はいません。40過ぎてあのスタイル、あの動きも、ほんと驚嘆しかない女優です。日本の女優のアクションとか、チャンチャラおかしいです。

 男性メンバー役に、ヨーロッパのいい男たちを起用したキャスティングのハイセンスさにも脱帽!ナポレオン時代の元軍人で、チームの副隊長的なブッカー役は、ベルギー出身のマティアス・スーナールツ。ゴツい風貌、冷酷そうな顔なのでほんと敵に回したくないオーラびんびんなんだけど、実は優しく不器用というのが彼のオハコ役。今回もそうでした。年を重ねて哀愁が出て、大人の優しさがにじむ素敵な熟年に。チームの中で見た目はいちばん年上だけど実は最年少で、たまにする末っ子言動が可愛かったです。

 元十字軍の戦士ジョー役は、最近は「アラジン」実写版や「オリエント急行殺人事件」など英語圏の作品でもよく見るオランダ人のマーワン・ケンザリ。ちょっと濃い目の見た目とセクシーフェロモン、そして優しそうな笑顔が魅力的。チーム内では癒し系の穏やかキャラ。同じく元十字軍の戦士であるニッキー役、「マーティン・エデン」でヴェネツィア映画祭の男優賞を受賞した注目のイタリア俳優ルカ・マリネッリも、ちょっと濃い目のイケメンで、鋭い目つきが印象的。この映画の画期的、かつ最大の魅力、注目点は、ジョーとニッキーがラブラブなBLカップルだったこと。ヒーローとして戦うゲイが出てくる映画、今のご時世でもなかなかお目にかかれませんし。イケメン二人が交わす視線や微笑みには強く深い愛が滲んでいて、腐は胸キュン必至です。敵の前での濃密キスは名場面でした。感動したのかドン引きしたのか、目の前のキスに黙り込んでしまう敵軍団が笑えた。
 
 新たに加わった元米軍兵士ナイル役は、「ビール・ストリートの恋人たち」では可憐な女の子役だったキキ・レイン。肉体改造して強靭な女戦士に変貌してた彼女に、女優魂を感じました。アンディとナイルとの師弟関係なやりとりもなかなか胸熱でした。見た目はイケメンだけど全員おじいさんである男性メンバーが、ルーキーのナイルに優しいところにもほっこり。
 元諜報員でオールドガードに仕事を依頼するコプリー役は、「それでも夜は明ける」でオスカー候補になったイギリスのキウェテル・イジョフォー。真面目そうでシリアスな役が似合う男前黒人俳優、といえば今や彼とチャドウィック・ボーズマンが双璧。彼が大儀のために協力する悪の組織が、ちょっとショボかったのが残念。もっとスケールのでかい悪にしてほしかったかも。

 世界各国をめまぐるしく駆け巡る展開、各地の風景も楽しかったです。敵の本拠地、そして最終決戦地はやっぱりロンドン。巨悪の巣窟で、陰謀が渦巻きヒーローたちが大暴れする街、といえば今も昔もロンドンがお約束。今回もとんでもないことが起きてるのに、ロンドン市民はあまり気にしてなさそうだったのが笑えた。パート2へと続く終わり方でしたが、続編はいつ頃観られるのでしょうか。待ち遠しい!
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

通報!不純同性交遊に堕ちた警官

2020-08-21 | ドイツ、オーストリア映画
 「Freier Fall」
 警察官のマークは訓練合宿でルームメイトとなったカイと親しくなる。ゲイであるカイにキスされマークは動揺するが、やがてカイとの性愛関係に溺れるように。マークには妊娠中の恋人がいたが…
 警官BL!カッコいいおまわりさんや刑事さんのBLも、腐には人気のジャンルですね。漫画や小説にはたくさんあるようだけど、映画はどうでしょうか。アル・パチーノの「クルージング」ぐらいしか思い浮かばないけど。このドイツのBL映画は、主人公が男前だけど屈強でワイルドな野郎系なので、麗しい美男子や可愛いイケメンの絡みが好きな人向けではありません。BL映画というよりゲイ映画?私は女みたいなキレイキレイ男子が苦手なので、この映画のような風貌の男同士のBLは丁度いい具合でした。

 彼女がいるノンケがゲイの男に強引にヤられ、男同士のセックスに目覚めてしまい苦悩、葛藤、悶絶、そして悲劇…という設定は、BL映画の名作「ブロークバック・マウンテン」とちょっとカブります。バリバリのノンケであるマークが、突然同性愛に溺れてしまうのを見たら、きっと多くの男性はそんなんありえん!と失笑したり不快がったりすることでしょう。でも男性って、実は誰でも内に同性愛を秘めているのではないでしょうか。ノンケが男に惹かれる、男とセックスする、というのもあながち腐のファンタジー、妄想ではないはず。ほとんどの男性が同性愛に目覚めるきっかけに出会わないだけなのでは。出会ってしまったマークは、果たして不運だったのか、それとも。

 マークとカイの性愛関係が、とても濃密に甘美かつ悲痛に描かれていました。ドロ沼関係でも、どこか冷ややかで乾いた雰囲気だったのは、舞台がドイツだったからでしょうか。それにしても。狼狽しつつもすぐにゲイセックスを受け入れるマークにも驚きましたが、ノンケであるマークに迫るカイの大胆さ、勇ましさも驚異でした。マークが彼自身も知らなかったゲイの資質を、カイは見抜いたのでしょうか。ゲイって、コイツいける!というセンサーを持ってるのかな。
 カイのちょっと危なげで一途な愛は切なかったけど、マークはすごい卑怯でチキン!彼女も子どもも大事にしたい、そうすることで自分がノーマルだと、世間からはみ出してないと確信したい、でもカイとの関係がくれる快楽と刺激は手放したくない…というユレユレでブレブレな優柔不断さには、ほんとイラっ&ムカっでした。マークの煮え切らなさ、自分勝手さに翻弄され傷つくカイと彼女が気の毒でした。特に彼女は、出産間近であんな裏切りにあうなんて可哀想すぎる。ちょとしたことでピーンとくる勘の鋭さと疑り深さ、寛容さを欠いた意固地さとか、女ってやっぱ怖いなと苦笑も。いちばん可哀想なのは赤ちゃんだけど。

 主演俳優二人の大胆でデリケートなBL演技は、なかなかインパクトあり。マーク役のハンノ・ホフラーは、イケメンじゃなくなったブラッドリー・クーパー、みたいな風貌。カイ役のマックス・リーメルトがクールな肉体美イケメン。でもたま~に、千鳥の坊主頭のほう(超苦手!)に似て見える瞬間があり萎え~。ラブシーンじたいはそんなに激しくはありませんが、二人の脱ぎっぷりがお見事だったので、自然なセックス感はよく出ていました。日本でリメイクするとしたら、誰がいいですかね~。鈴木亮平×市原隼人、とかどうでしょうか

 ドイツの俳優はゴツいけど濃ゆくないところがいいですね

 ↑ マックス・リーメルト、いい男!ドイツってやっぱ地味にイケメン宝庫
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

禁断♡ブラザーインセスト

2020-08-16 | 南米映画
 残暑お見舞い申し上げます!
 お盆ですね。お墓参りに行きました。来年はきっと私、この中に入ってる…そう思いながらもう何年もお参りしています。
 夕方でも猛暑。小高い墓場から臨むK市の港には、戦艦大和の勇姿が。夏の終わりの幻?それとも暑さで蒸れた脳みそのせい?

 皆さま、まだまだ暑さもコロナも続きますが、何とか乗り越えて秋を迎えましょう!

 「Do Começo ao Fim」
 医師のジュリエッタは、先夫との長男フランチェスコと、再婚相手との間にもうけた次男トマシュが親密すぎることを心配していた。大人になった兄弟は、母の急死後に恋人同士となるが…
 禁断愛にもいろいろありますが、究極のタブーといえばやはり近親相姦でしょうか。父と娘、母と息子、兄と妹、姉と弟…近親相姦を描いた映画はたくさんありますが、兄と弟のそれはあまりお見掛けしません。ディープな腐女子には人気ジャンルみたいですが、同性愛+近親相姦だなんてどっちかだけでも濃密なのに、どっちもだなんて盛り込みすぎて聞いただけで臆してしまいそうになります。でもこの映画ったら、そんな禁断感など微塵もないんですよ。映画のタイトル(英訳すると“From Beginning to End”)通り、最初っから最後までスウィートでハッピーな兄弟なのです。あまりにも明るく幸せそうなので、血のつながった兄弟であることを忘れてしまいそうになります。

 兄弟で、男同士で愛し合うことに対して、まったく躊躇も葛藤も苦悩もなく、至極当然のように身も心もLOVE LOVE LOVE状態でイチャイチャしまくるフランチェスコとトマシュに、あんたたちホントにそれでいいの?と心配になるやら呆れるやら。親にも周囲にもコソコソせず堂々としてるのが、私には理解しがたかった。同性愛はまだしも、近親相姦はどこの世界でも禁忌だと思ってたけど、ラテンの国々ではそこまで罪深いことではないのかしらん?子どもができてしまうかもしれないから、男女の近親相姦は危険でおどろおどろしいけど、兄弟だとそれがないからまだ深刻さが希薄なのでしょうか。でも姉妹の近親相姦とか想像しただけでゾっとするけど…

 両親もほぼ公認、誰はばかることなく熱く見つめ合ったり密着して踊ったり、さすがにキスとセックスをするのは二人きりの時ですが、何の障害も障壁もなく愛し合うフランチェスコ&トマシュなので、別に兄弟設定にしなくてもいいのでは?とも思った。せっかくの近親相姦同性愛という特殊すぎる設定なので、そこでしか見られないような背徳感や罪悪感、苦しみや痛み、家族や世間との軋轢とか描いてほしかったです。あまりにもヘヴィでディープなBLは苦手ですが、フツーの男女とそんなに変わらないようなBLは味気なくつまんないです。同性愛のように、いずれは近親相姦も特別なことじゃなくなる時代が来るのかな。それ、嫌かも。最低限の道徳観とかやってはいけないことも、人間には必要だと思うのだけど…

 兄も弟も非一般人な美形男子で、BLというファンタジーに相応しい容貌です。兄のフランチェスコは色っぽく優しい美男子で、弟のトマシュは明るく可愛いイケメン。二人ともキャマっぽいところが全然なく、男らしいところが男同士で愛し合ってる感を濃厚にしていました。演じている俳優二人、ゲイじゃないのにあんなに男を愛しげに見つめたり触れたり、情熱的な口吸いや全裸で絡む性交演技とか、よくできるな~と感嘆。二人とも脱ぎっぷりが良すぎ。どっちも眼福の肉体美の持ち主です。アソコまで平然とポロンポロンしてます。自然だとは思うけど、目のやり場にも困りますブラジルのリッチなブルジョア生活の様子も興味深かったです。兄弟の子ども時代を演じてた子役が可愛かった!
 
 

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

教会で少年が汚された…

2020-08-07 | フランス、ベルギー映画
 「グレイス・オブ・ゴッド 告発の時」
 少年の頃に神父から性的虐待を受けたアレクサンドルは、加害者のプレナ神父が今も子どもたちに聖書を教えていることを知り、彼を告発する決意をする。やはりプレナ神父の被害者だったフランソワは、被害者の会を立ち上げプレナ神父を庇護するカトリック教会を糾弾する運動を始めるが…
 フランソワ・オゾン監督の社会派映画って、珍しい、てういか、初?これまでの作品とは毛色が違っていたのが、意表を突いていて興味深かったです。常に新しいジャンルや手法に挑みながらも、その独特さ特異さは保っているところに、オゾン監督の豊かな才能を感じます。この新作は実話ベースの内容であるためか、いつものような現実と妄想がスタイリッシュに入り混じった作風ではなく、ごくごく真面目な正統派テイストに仕上がっていて、オゾン監督こんな映画も撮れるのねとそのオールマイティぶりに感嘆。私はいつものオゾン監督の、あのちょっと洗練された珍妙さが好きなので、それが排除されてたのはちょっと寂しく物足りなかった、けれども、現実的な人間関係や社会事情を描いたドラマにとしては上質で、あらためてオゾン監督の非凡さを証明した映画と言えるでしょう。

 この作品、オスカーを受賞した「スポットライト 世紀のスクープ」と同じ題材を扱っているのですが、記者視点のスポットライトと違い、こちらは被害者視点なので、起こった悲劇がより生々しく痛ましく伝わってきました。プレナ神父に狙われ怯える子ども、プレナ神父に選ばれ逆らえず連れていかれる子ども…はっきりとした虐待シーンはありませんが、これから起こるだろう忌まわしい出来事を想像させるシーンの数々に、やめて!逃げて!と叫びたくなるほどの緊迫感と恐怖に襲われ、さながらサスペンス映画、いや、心理ホラー映画な要素も。とにかくプレナ神父がおぞましくて不快!いたいけな子どもを性的いたずら、強姦だなんて、殺人より許せんわ。畜生以下ですよ。小児愛者がよりによって聖職者になるとか、ほんと信じられません。百歩譲って、小児愛は病気で罪ではないと認めるとしても、自ら小児愛と気づいていて子どもと深くかかわる仕事をするとか、もう子ども目当てとしか思えません。糾弾するほうが非情なのでは、と勘違いしてしまいそうになるほど、プレナ神父がおどおどと弱々しい哀れな老人風なのも腹が立ちました。自分の行為は認めても、それは病気のせいだから悪事ではない、神父も辞めない、という彼の言い分には心底吐き気がしました。

 プレナ神父を守る、庇うというより、のらりくらりと波風を避けようとするカトリック教会の体質にはイラっとさせられます。決して強権的になったり圧をかけてきたりはせず、優しげに理解ある風を装って自分たちの不利になることはしない、という教会の欺瞞、偽善には神も仏もない絶望を覚えます。
 主人公3人の癒えないトラウマに胸が痛みましたが、彼らの苦悩をひたすら暗く重く描くのではなく、正義のため誇りを失わないために戦う彼らの姿は、勇ましく快活でさえありました。立ち上げた被害者の会での集会とか、知的かつ和気あいあいとした雰囲気で、ワインとか軽食とかフレンチな小粋さ。ちょっと不謹慎なほど楽しそうだったり。激しい口論、討論もフランス人らしかったです。

 3人の奥さんたちがみんな協力的で、アレクサンドルの長男と次男が少年とは思えないほど冷静に理解を示す様子に感銘を受けました。逆にアレクサンドルの両親とエマニュエルの父の無関心さにはゾっとしました。自分の子どもが傷つけられたのに、あの冷淡さはないだろ~。あの親たちが怒って行動してくれてたら、トラウマもちょっとは軽減されてたでしょうに。
 主演の3人がそれぞれ素晴らしい演技!4部構成みたいになっていて、1部がアレクサンドル、2部がフランソワ、3部がエマニュエル、最終部が3人一緒、という感じ。アレクサンドル役は、「ぼくを葬る」以来のオゾン監督作主演となったメルヴィル・プポー。

 美青年だったメルヴィルもすっかりおじさんになりましたが、今でも美しいしカッコいい。素敵な熟年になりました。フランスの中年俳優にしては珍しく、スレンダーな体型を維持してます。5人の子持ち役にしては生活感が希薄なところもトレビアン。フランソワ役は、「ジュリアン」での怪演が忘れ難いドゥニ・メノーシェ。今回は正義感と活気あふれる役。アメリカならブサイク役か悪役専門な風貌の彼が、キレイな奥さんが当たり前のようにいて仕事もデキるいい男の役、も違和感なく演じてる。役者も見た目よりも実力重視なフランス映画らしいキャスティング。スカーフを小粋に巻いてるのもフランス男って感じでした。

 メルヴィルもドゥニも好演してましたが、やはり最優秀だったのはエマニュエル役のスワン・アルロー。虐待のせいで身も心も人生もズタボロになってしまった男の荒廃と絶望には、同情よりも不気味さを覚える。そんなザワつく演技が強烈でした。発作を起こしてバタリ&ブルブル姿がリアルすぎ。この人ほんとに大丈夫なのかな、と不安にさせる見た目、表情、言動など、デリケートすぎる演技に目がクギづけ。すごい個性的な顔(佐々木蔵之介を鋭く超神経質にした感じ?)は、役のせいもあって怖いのですが、アップになった時とかハっとなるほど美しくも見える不思議な顔でもあります。特にプレナ神父との対面シーンでは、痛ましくも美しく見入ってしまった。だんだん心を開いて明るくなっていく様子がすごく可愛かったり。今やフランス映画界屈指の演技派としての評判は耳にしていたけど、予想以上のすぐれものだった。彼はこの作品でセザール賞の助演男優賞を受賞。主演男優賞を獲得した旧作「ブラッディ・ミルク」の彼も素晴らしいと評判なので観たい!

 真面目な社会派映画でしたが、脇役やチョイ役、モブに至るまで目を惹くイケメンや男前が散りばめられていたのが、やっぱマドモアゼル・オゾンらしくニヤリ。アレクサンドルの友人役は、ちょっと濃い目のいい男エリック・カラヴァカ。アレクサンドルの息子二人も可愛いイケメンだったし、アレクサンドルが告訴をすすめる元被害者のイケメン青年や、フランソワの兄もシブい美男だった(弟と似てなさずぎ!ほんとに兄弟?!)子役もみんな可愛くて、演技とは思えぬほどナチュラル。厳かで美しい教会や儀式、心温まるクリスマスの風景には、おぞましい悲劇を忘れてしまいそうになります。 


コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

イケメン&コンスピラシー

2020-08-04 | ドイツ、オーストリア映画
 「ブレイム・ゲーム」
 ドイツ連邦情報局の諜報員マーティンは、アメリカが追っていたテロ組織の情報を入手する。その直後に起きた報復テロの犠牲者の中には、マーティンの恋人で記者のオーリスも含まれていた。危険なネタを握っていたらしいオーリスの死の裏に隠された真相を追うマーティンは、やがて巨悪の陰謀に巻き込まれ…
 ヨーロッパにおけるイケメンパラダイスといえばイギリス、と相場が決まってますが。ひそかに地味に穴場なのがドイツなのです。ドイツにも素敵なイケメン、男前がぎょうさんいるんですよね~。最近のmyお気にNo.1はヤニス・ニーヴナーくんですが、このドイツ映画でまたまたいい男を発見しました!主人公マーティンを演じたロナルト・ツェアフェルトです。いわゆるイケメン、美男子ではないのですが、男前です。ラッセル・クロウにそっくり。ラッシーをもっと長身にして、顔を優しく可愛くした感じ?ふとした瞬間には、大森南朋に似て見えることも。ほどよく濃くて、柔らかに男くさい風貌は私好みです。

 有能で経験豊富な男だけど完璧ではなく、ダメなところも多い。そういう大人の男が好き。ロナルトはそんな役が似合う俳優。仕事はデキるのに私生活では失敗ばかり、陰謀に巻き込まれて満身創痍で奮闘する勇ましさ、油断や隙もあるので酷い目にも遭う姿の情けなさ。いい男はカッコいいだけじゃダメ。可愛さもないとね。190㎝もある巨体は頼もしいけど威圧感はなく、ぬいぐるみの熊さんみたいな温かさにもほっこりさせられます。デカくて強そうな彼が上司や元妻、恋人などキツそうな女たちにやいのやいの言われて困惑したりしょんぼりしてる様子も胸キュンでした。若者でもなく熟年でもない、どっちの良い部分も併せもった、男としては最も魅力的な時期にある彼みたいな俳優が好きです。

 この映画にはもう一人、いい男が出演しています。「ゲーテの恋」や「顔のないヒトラーたち」での好演も忘れ難いアレクサンダー・フェーリングです。爽やかで優しそうなイケメンである彼が、今回は鼻もちならないエリート役。マーティンにイヤミったらしい態度をとる役なのですが、全然ヤな男には見えません。やっぱすごい優しそう。ゲスやクズ、悪い役はできそうにない風貌です。犬猿の仲だったマーティンと彼が、中盤になってタッグを組んでいい感じな相棒になった矢先に、えええ~!?悲惨すぎる末路を遂げてガーン

 企業や中東のテロリストとの関係や陰謀など、ドイツのお偉いさんたちも随分と腐ってますね~。テロを防ぐのではなく、テロを利用するやり口も怖い。一般人なんか犬猫も同然なんですね。ドイツといいイギリスといいフランスといい、テロが起こりやすいヨーロッパの不穏で危険な土壌に比べ、日本ままだまだ安全で安心して暮らせるな~としみじみ思いました。

 ↑ ロナルト・ツェアフェルト、1977年生まれの現在43歳。「アイヒマンを追え!」「あの日のように抱きしめて」も観ねば!

 ↑ アレクサンダー・フェーリングは、巨匠テレンス・マリック監督の「名もなき生涯」にも出演してるみたいですが、マリック監督苦手なんですよね~。ぜったい眠くなるから。愛しのヤニヴ(ヤニス・ニーヴナー)主演のTVドラマ“Beat”にも出てる!ヤニヴとアレクサンダーの競演、美味しすぎるでしょ!Netflixあたりで放送してくんないかな~
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする