まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

恋するテロリスト

2015-07-30 | イギリス、アイルランド映画
 お松の独りアイルランド映画祭④
 「クライング・ゲーム」
 IRAのメンバーであるファーガスは、仲間とともに英国軍人のジョディを拉致監禁する。ファーガスとジョディとの間には友情が芽生えるが、ジョディは逃亡中に命を落としてしまう。ファーガスは、生前のジョディに頼まれた通り、ロンドンにいるジョディの恋人ディルに会いに行くが…
 アイルランド出身のニール・ジョーダン監督作品。映画好きな腐女子に人気の名作。もちろん、私も大好きな作品です。ファーガスとディルの恋に、胸キュンキュンしまくりなんですよ~。お互いに秘密を隠した者同士、そっと探るように距離を縮めていく二人の、小粋でロマンティックで切ないやりとりが素敵。あんな大人の会話、私もしてみたいわ。男どもが私と交わしてくれる会話なんて、面白くもなんともない政治の話かエグい下ネタだしとにかく劇中の会話は、アカデミー賞脚本賞受賞も納得の秀逸さ。月9の恋仲とか観てると、そのクオリティの相違、落差に驚かされます。

 で、公開当時話題となった、ヒロインであるディルの正体。観てないかたのために、なるべくネタバレにならぬよう話を進めたいと思いますが…私は彼女が登場した瞬間に分かりましたが、多くの人はファーガス同様、彼女の秘密に衝撃を受けたのではないでしょうか。ファーガスがディルの実態を知った瞬間と、その直後のリアクションって、何とも言えない気まずい、イタいムード。悲痛なのか、はたまた滑稽な場面なのか。もしあんたがファーガスだったら、どうする?と、多くの男に問うてみたいシチュエーションです。
 ショックを受けながらも、ディルを嫌悪したり蔑んだりせず、不器用ながらも彼女を優しく気遣い、だんだん覚悟がすわって彼女を全身全霊で守るファーガスは、まさに騎士のようなカッコよさ!腕力だけが決して男の強さじゃないんですよね。あのファーガスの優しさは、強くないと備えることはできません。彼のディルへの愛は、もはや男女の恋愛を超えた、大きく深い人間愛と言えます。人質のジョディも、そしてディルも、心を許さずにはいられないファーガスの優しさ。なぜ彼みたいな男が、テロリストになんかなったんだろう。優しいといってもナヨナヨしい草食男ではなく、肝のすわった目つきや物腰、ディルにつきまとうストーカー男など瞬殺する腕っぷしの強さ。ディルじゃなくても惚れますわ。

 ショックと困惑で狼狽してるファーガスに、開き直って積極的に迫るディル、可愛い男前ガール!人一倍怒ったり泣いたりしながら、決して挫けない諦めないディルもファーガス同様、強い人間だな~と感嘆。マズいと当惑しつつ、どんどんディルに惹かれて愛を深めていくファーガスも可愛い。どんなカップルよりも幸せになってほしい、と応援したくなる二人なのです。切ないけど、ほのぼのと優しいラブストーリーの傑作。修羅場を乗り越え、ますます困難な状況になったけど、温かい優しい未来が待ってるようなラストも感動的です。
 ファーガスを好演したアイリッシュ俳優のスティーヴン・レアは、決して美男ではないけど、哀愁があって素朴な味わいに好感。ディル役のジェイ・デヴィッドソンは、まさに奇跡のキャスティングと言えるのではないでしょうか。彼女の存在が、この映画の成功のカギを握っていたと言っても過言ではありません。彼女が有名スターではなく、無名の素人だったというのも勝因でしょう。この映画の後は、フェイドアウトしてしまった彼女。まさに一世一代の一発屋です。
 主役の二人以上にインパクトがあったのは、ファーガスの仲間のひとりであるジュード役のミランダ・リチャードソン。

 冷酷でビッチな女テロリスト、怖くてカッコよかったです。女優なら、あーいう役一度はやってみたいと思うものではないでしょうか。ジョディ役は、「ラストキング・オブ・スコットランド」でオスカーを受賞したフォレスト・ウィッテカー。かつては黒い鶴瓶、と言われてた彼ですが、よく見ると全然似てません。フォレストのほうがはるかにイケメン。粗暴だけど人なつっこいジョディを、可愛く悲しく演じてました。笑顔が天使!彼がファーガスに語って聞かせるサソリとカエルの寓話が、なかなか奥深くて心に沁みます。
 ジョディを監禁するIRAのアジトがある森が、すごく美しかった。ジョディが走って逃げるシーンは、まるで絵画のような風景。アイルランドのシーンは前半だけでしたが、その自然の美しさはじゅうぶん伝わってきました。
 
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私より強い男を探してた

2015-07-29 | 北米映画 20s~50s
 お松の独りアイルランド映画祭③
 「静かなる男」
 30年代のアイルランド。アメリカから生まれ故郷に戻ってきた元ボクサーのショーンは、村の金持ちで偏屈者であるダナハーの妹メアリーと恋に落ちる。しかし、ショーンのことが気に入らないダナハーは、二人の結婚を認めようとせず…
 巨匠ジョン・フォード監督が、4度目!のアカデミー賞監督賞を受賞した名作。アイルランドが舞台ということで、さっそく観てみました♪
 フォード監督&ジョン・ウェインのコンビ作といえば、硬派で骨太な男の映画、というイメージですが。意外なことに、この映画はほとんどラブコメなんですよ。男らしい主人公と勝気なヒロインが互いに一目ぼれ、でも気が強い者同士なかなか素直になれなかったり、周囲や環境に邪魔されたりしつつ、ケンカしながらもラブラブになっていき、障害を乗り越えてハッピーエンド。壁ドンや顎クイ、お姫様ダッコとか雨の中のキスとか、胸キュンなLOVEシチュエーションもバッチリあったりします。

 基本は純愛ラブコメ、そこにフォード監督&ジョン・ウェインっぽい漢(おとこ)らしいシーンや友情人情、そしてアイルランドの美しい自然がトッピングされている、といった感じの映画でしょうか。とにかく、ジョン・ウェイン扮するショーンが、今や絶滅種ともえいる男らしいキャラなんですよ。ハーレイクンとかによく出てくる、ほとんどファンタジーな男。生まれはアイルランドだけど、育ったのはアメリカなヤンキーキャラも素敵。アメリカナイズされたショーンが、アイルランドの風習や因習に戸惑う、というより、そんなん知るか!と男らしく打破していく姿が、めっちゃ痛快豪快でカッコいい。ヒロインだけでなく、周囲の男たちも惚れていく雄々しさ。でも、やみくもに男らしさをひけらかす粗野さはなく、普段は静かで紳士的なところも理想的。そんな強く優しい男に、恋しない女はいないでしょう。ヒロインのメアリーも、ショーンのやることなすことにハートをズキュンバキュンされまくり、でもプライドが高く気が強いので、逆らったり抗ったり、でも好き好き大好きビーム出しまくりな彼女のツンデレっぷりが、かなり笑えます。

 素直になれないメアリーに対するショーンのアプローチが、これまた男らしいんですよ。たいていのことは女に合わせてくれ、女が怒ったりスネたりしても可愛い奴だなと余裕で笑ってる彼ですが、いざという時はめっちゃ強引。その行動力、決断力に女はますますメロメロに。女ってほんとは、自分より強い男に屈したいんだよな~。メアリーみたいな気が強い女は、特にそんな傾向あり。なんとか結婚にこぎつけても、兄が認めてくれない、持参金なしで嫁入りした自分が恥ずかしいと、ショーンにとってはどーでもいいことにウジウジこだわって家出してしまうメアリー。ついにプッツンし、彼女を無理やり家に連れて帰るショーン。ズルズル女を引きずりまわしたり髪の毛掴んだり突き飛ばしたり、DVに近い強引さはちょっと怖かったけど。でも、ワガママな女にはあれぐらいの荒療治は必要!女もナンダカンダで嬉しそうだったし。愛のために手をこまねいたり手を抜いたりしない男って、ほんとカッコいいですよね。あんな風に男に、熱く大切に思われるって幸せなことです。

 ショーン役のジョン・ウェインがカッコよかったです。イケメンとか美男は腐るほどいるけど、彼みたいな男の中の男は今いないですよね~。キャラ的には、高倉健に近い?顔がちょっと國村準に似て見えたのは私だけ?デカくてゴツいところも頼もしい。ラブコメも頑張ってたけど、馬に乗って疾走するシーンや、ダナハーとのファイトクラブも真っ青なガチンコタイマンシーンは、これぞジョン・ウェイン!な漢(おとこ)っぷりです。まさに拳で解かり合う的なショーンとダナハー、ノリはジャンプの漫画っぽくて笑えた。それはそうと…ショーンは、もうちょっと若い俳優のほうがよかったかも。青年役にしては、さすがに見た目はおじさんすぎなジョン・ウェインでした。
 メアリー役のモーリン・オハラも、すごくチャーミングでした。勝気なキャラにピッタリな赤毛も印象的。主役のカップルを取り巻く人々も、みんないい味だしてます。アイルランド人って、のんびりとおおらか、でも血の気が多い、という気質なのでしょうか。私も日がな一日、のんびりパブでほろ酔いしてみたいものです。
 この映画の真の主役は、アイルランドの自然の美しさかも。木々の葉や大地の緑、空の青、涼やかな小川、荒々しい海、のどかな馬や羊etc.すべてがほんと瑞々しくて清らかで牧歌的で、デトックスできそう!シンプルな住民の生活も、いいな~と感嘆。携帯やPCなんてなくても、じゅうぶん生きていけるんですよねホントは。ゴチャゴチャ不必要なものにあふれた、有害な情報にまみれた現代社会が、あたらめて薄汚れた息苦しいものに思われました。
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血の日曜日

2015-07-28 | イギリス、アイルランド映画
 やっとこさ、ダブリン宿泊のホテルを予約しました~。
 それにしても。どこも高くてトホホですわ。B&Bはお手頃というイメージでしたが、全然そんなことなくてビツクリ。イギリスに行った時、そんなに高いと思わなかったんだけど…チェコのホテルも安かった。アイルランド、物価はヨーロッパ屈指の高さと後で知って、ちょっとだけ早まったかなと後悔。でも、ガイドブックや関連本を読んだり、映画を観るとやっぱ行きたくなってきます。ひょっとしたら、最後の海外旅行かもしれないので、贅沢はできないけどあんましケチケチせずに、悠遊と過ごそうかなと考えてます。
 あとはモハーの断崖に行くため、ゴールウェイという町のホテルを予約するだけです。ワクワク気分に、小型機墜落事故のニュースが冷や水ぶかっけてくれましたが飛行機やっぱ怖いよ~万が一のことを考えて、恥ずかしいものは処分しておかねば♪

 お松の独りアイルランド映画祭②
 「ブラディ・サンデー」
 1972年の北アイルランド、デリー。下院議員のアイバン・クーパーは、公民権を訴える市民デモ行進を指揮していたが、平和的な運動を目的としていたアイバンの意思とは逆に、一部の市民が過激化。英国軍は暴徒を鎮圧するため武力行使に出てしまい…
 実際にアイルランドで起きた、イギリス軍によるデモ弾圧“血の日曜日”事件を描いた作品。
 かの天安門事件とかもそうですが…こんな非道いこと実際に起こったなんて、唖然、慄然です。武器を持たない一般市民に向かって、躊躇なく無差別乱射だなんて。ほとんど虐殺なんですよ。無抵抗な逃げ惑う老若男女だけでなく、負傷した人を助けようとしてる人たちまで容赦なく狙い撃ち。こんなこと、許されていいわけない。事件後、英国軍の誰も罪を問われず、ウヤムヤにされてしまったとか。怖い…逆らう弱者を、問答無用に圧迫し力で叩き潰す強者…世界中で繰り返されている、終わらない悲劇ですね。集団的自衛権のこととか、不穏な空気が流れている日本も、決して他人事ではありません。

 ポール・グリーングラス監督の出世作としても知られている今作。マット・デーモンのジェイソン・ボーンシリーズや「ユナイテッド93」などでも独特だった、グリーングラス監督の臨場感あふれるドキュメンタリータッチな演出、カメラワークは、事件の実況中継と錯覚してしまうほど。デモを指揮する政治家のアイバン・クーパー、デモに参加する若者たち、そして英国軍の3つの視点から、常に緊張と混沌を孕んだムードの中、悲劇へと突き進んでいく過程が描かれています。目まぐるしい人々の動きは、熱気と殺気の坩堝。まさにいつ爆発するか分からない風船を見ているような感覚に襲われます。ついに爆発すると、もうパニック映画状態。観客もそれに巻き込まれて、かなりしんどい思いをしてしまいます。

 当時のデリー市民の、貧しく沈鬱で劣悪な生活環境もリアルでした。あれじゃあ鬱屈や鬱憤はたまって、どこかでそれを吐き出したくもなるよな~。みんな真剣に深刻に現状を打破したい、英国に抗議したいと思っているのと同時に、特に若者たちは何だかお祭り気分で浮かれてる感じでもあって、それがまさかこんなことになるとは…という嘆きや痛みを深くしています。まさか英軍があそまでやるなんてねえ。英国をナメてしまったシッペ返し、代償はあまりにも高かった…それにしても。いくらなんでも、あんなゾウがアリを踏みつぶすようなこと、非道すぎますよ。イギリスは、なぜあそこまで思い切った蛮行に走ったのでしょうか。憎悪は憎悪を生む、育てる、という愚かさ悲しさは、いつの時代も、どこの国でも人間であるかぎり、断ち切れないのでしょうか。
 70年代のファッションや髪型は、何だかおしゃれに見えました。デモに参加して悲惨な末路を遂げる青年と、軍の暴走を止めようとする若い軍人が、なかなかのイケメンでした。DVD特典の、アイバン・クーパーを演じた俳優と、アイバン・クーパーご本人が事件発生現場を訪れ、当時を振り返るドキュメンタリーも興味深かったです。
 ちなみに。マットのジェイソン・ボーンがついに復活!待望の最新作は、グリーングラス監督が再び手掛けるというのも嬉しいですね。待ち遠しい!
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息子をたずねて三千里

2015-07-26 | イギリス、アイルランド映画
 お松の独りアイルランド映画祭①
 「あなたを抱きしめる日まで」
 英国で娘と暮らす元看護師のフィロミナは、少女の時にアイルランドの修道院で産み、無理やり引き離された息子のことを忘れられずにいた。ジャーナリストのマーティンは、恰好のネタとしてフィロミナの息子探しに協力することになるが…
 「危険な関係」「クィーン」などの名匠スティーヴン・フリアーズ監督作品。
 にわかには信じがたい衝撃的な、悲しい、そして憤りを感じずにはいられない実話。「マグダレンの祈り」でも描かれた地獄の尼さん。望まない妊娠をした少女を修道院に監禁し奴隷のようにコキ使い、ふしだらな罪深い淫売女扱い。生まれた子供は金持ちのアメリカ人に売り飛ばすとか、非道い!神の名のもとに横行する人権蹂躙、精神的肉体的虐待、人身売買!こんなことがフツーにまかり通ってたなんて…アイルランドに行くのが怖くなってきました
 でもこの映画、まったく悲惨さや陰惨さがなく、ベタベタしい辛気臭いお涙ちょうだいでもなく、むしろ人情とユーモアにあふれた優しい温かい映画なんですよ。ヒロインのフィロミナが、超がつくほどの好人物だからでしょうか。フィロミナさん、悲しい過去を背負い、癒えない傷を抱えていても、決して他人を恨んだり憎んだりせず、人の悪いところではなく良いところしか見ない、まさに聖女のような女性なんです。でもフツーのおばちゃんでもあって、ミーハーだったり無知だったり庶民的なキャラに好感。彼女みたいな善い人が、どうしてあんなむごい、悲しい目に遭わなければならないのか。私だったら、神なんか誰が信じるか!と、恨みつらみで暗くトゲトゲしい人生を歩んでしまうことでしょう。でもフィロミナは、他人への思いやりを失わず、信仰心さえ厚いまま。人一倍の苦しみや悲しみを味わったからこそ、フィロミナは誰よりも優しく強くなれたのでしょうか、すべてを許すことができたのでしょうか。息子を探してはるばる渡ったアメリカで、フィロミナが知ることになる息子の行方には、しんみりとさせられます。神さまは、どれだけフィロミナに悲しみを与えるのだろう、と憤慨してしまいました。でも、ここでも優しく強いフィロミナの運命の受け入れかたは、崇高で感動的です。

 フィロミナ役は、泣く子も黙る英国の大女優ジュディ・デンチ。重厚で冷厳なイメージのある彼女ですが、今回はフツーの市井のオバチャンを好演。ちょっとトボけた天然キャラ演技が可愛くもありました。悲しみに対峙するシーンも、大げさに嘆いたりしない、静かに万感こもった演技が圧巻。オスカーにもノミネートされるなど、この映画でも高い評価を得たデンチ女史です。
 フィロミナを手伝うジャーナリストのマーティン役は、イギリスではコメディアンとして人気のスティーヴ・クーガン。この映画の企画は、彼の持ち込みなのだとか。知的インテリのマーティンと無教養なフィロミナのアメリカ珍道中、噛み合わない会話、やりとりが笑いを誘います。

 それにしても…ほんと当時の修道院、罪深いことをしてましたね。真実を隠蔽しようと、虚偽とか証拠隠滅とかもしたり。死産した赤ちゃんや出産で死んだ少女の墓を、罪人だから!と荒れ放題にしてたり。ほんま腹立つわ~あの修道院、放火したくなった。やってたことは残酷で醜いけど、修道院のあるアイルランド郊外は、目を洗う美しさ、清らかさでした。やっぱアイルランド、行きたくなりました♪
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信念に殉じた男

2015-07-23 | イギリス、アイルランド映画
 「わが命つきるとも」
 16世紀のイギリス。国王ヘンリー8世は若い愛人アン・ブーリンと結婚するため、王妃との離婚を強行しようとしていた。王の信寵厚いトマス・モアは、離婚への賛同を拒むが…
 アカデミー賞で作品賞など6部門で受賞した名作。
 イギリス王室には、とても興味があります。といっても、今のロイヤルファミリーではなく、権力闘争に明け暮れていた頃の、激情的・激動的な王室ドラマに、です。王位や権力をめぐっての陰謀劇、悲劇は、日本をはじめ多くの国で起きていますが、中でも英国王室は最も有名でドラマティックなのではないでしょうか。とにかくイギリス王宮は、血みどろすぎて怖い&面白い。権力者の浮き沈み、盛者必衰が目まぐるしく、ついこないだまで華やかにこの世の春を驕っていたかと思えば、あれよあれよと凋落し罪人に落とされ、問答無用に断頭台送り。そんな血祭り英国王室の歴史の中でも、この映画のヘンリー8世の治世ほど、ブラッディな時代はないのではないでしょうか。ゆえにいろんなドラマがあって、小説や映画、ドラマになりやすいネタの宝庫。誰でも主人公になれるキャラクターがひしめいているのです。

 TVドラマ「THE TUDORS 背徳の王冠」でも登場した、ヘンリー8世に屈することなく己の信念を貫いたトマス・モアが、この映画の主人公です。このトマス・モアさん、今の時代の感覚からすると、信じられないほどの信念の強さ、誇り高さです。逆らう者はみんな容赦なく殺処分する魔王ヘンリー8世に、王宮の誰もが戦々恐々、保身と出世のために媚びへつらってるのに、トマス・モアだけは王のワガママや横暴を受け入れず、自分の信念に背くぐらいなら死んだほうがまし!と、進んで自滅の道を選ぶのです。その姿、生き様は、高潔で崇高だと思いますが…トマス・モアみたいな人が職場や家族にいたらイヤだな~とも思ってしまいます。
 世の中、生きるため、社会生活を円滑に営むためには、汚いことや誤ったことに手を染めたり見て見ぬフリしたりは不可避で、打算や妥協も必要です。でも、そんな風に生きることを、トマス・モアは全否定するんです。あーだこーだと他人のことを非難したり糾弾したりするのではなく、静かに自分自身の行いで周囲の俗人たちに罪悪感や劣等感を抱かせるんです。そんな人、そばにいたら色々やりにくいでしょうね~。厳しい清廉さゆえに、王や貴族、召使たちから尊敬されながらも煙たがられ、憎まれ疎まれてしまうトマス・モア。まさに水清ければ魚住めず。家族の安全や幸せよりも、自分の信念を大事にする男って、どうなんでしょう。他人ならカッコいいけど、夫や父親だったら、おいおい~カンベンしてよ~ですわ。あの時代ではなく、いま彼みたいな政治家がいたらと思わずにはいられません。日本を悪くしている今の老害政治家に、ぜひ観て欲しい映画です。

 TVドラマ「THE TUDORS」のトマス・モアは、高潔だけど宗教き○がいなヤバい人でしたが(演じるジェレミー・ノーザムは男前でした♪)、この映画のトマス・モアは常に悠然としていて、苦境に陥っても冷静沈着さと知的なユーモアを忘れない人間味のある人物って感じです。トマス・モアを名演し、アカデミー賞主演男優賞を受賞した英国の名優ポール・スコフィールドの、威風堂々としつつ颯爽と理知的な風情がカッコいいです。
 トマス・モアの妻アリス役は、「オリエント急行殺人事件」のドラゴミロフ侯爵夫人役が強烈だったウェンディ・ヒラー。慎ましく献身的で耐える美しい妻、なんてありきたりなキャラではなく、非美人でズケズケと皮肉をかましまくる、でも情味のある奥さんを、小気味よく演じています。トマス・モア夫妻の夫婦愛が、ベタベタしいお涙ちょうだいじゃなかったのが良かったです。

 ヘンリー8世役のロバート・ショウは、見た目も演技も吉田鋼太郎!豪快で風格があって、「THE TUDORS」のヘンリー8世ことジョナサン・リース・マイアーズが小僧っこに思えてしまいます。自分に逆らうトマス・モアが憎い!けど、尊敬する彼に理解してほしい、認めてほしい、という本音が切なかった。アン・ブーリンとの結婚お披露目パーティで、トマス・モアが来てくれた!と大喜び、でも人違いだったと知ってガッカリ…のシーンが、何だか悲しかったです。それにしてもヘンリー8世、非道すぎる困ったちゃん男。彼のせいで周囲は屍の山!
 トマス・モアが小舟に揺られて自邸と王宮を往復するシーンとか、英国の美しい風景も印象的です。「地上より永遠に」や「尼僧物語」など名作を撮った名匠フレッド・ジンネマン監督作。今の映画にはない気品ある骨太さが秀逸です。
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煉獄の痴情

2015-07-22 | 韓国映画
 来月のお盆明けに、久々の海外旅行
 行先は、さんざん迷って色々リサーチした結果、アイルランドにしました~
 以前から、あの有名なモハーの断崖に行ってみたいな~と思ってたのです。いろんな映画やドラマで見た、アイルランドの自然の美しさ、素朴な街並みに、身を置いてみたいと夢見てました。でも最近は、ミャンマーになぜかスピリチュアルな魅力を妖しく強く感じてしまってました。なので最初は、ミャンマーに行く予定だったのです。でも、今ミャンマーは雨季で、毎日土砂降りらしい。有名な観光地も、雨季は交通の便が良くないらしい。そして、ビザを習得しなければならない。と、ネガティヴな点が多すぎて、行く気は萎えてしまいました。いつか、きっと…
 というわけで、アイルランドに決定地球の歩き方も買って、ウキウキと計画を立ててるのですが…ホテル宿泊費とか食費とか、物価が高いんですよ数年前に行ったチェコは、そんなに高いとは思わなかったんだけど…でもまあ、あんましケチケチしたら面白くないので、適度に悠遊したいと思います。もっと時間があれば、ロンドンにまた行ってみたいんだけどな~…
 乗り継ぎのドバイ空港も楽しみ。皆様、何か情報、おすすめとかありましたら、乞御教示!
 情報収集、英語の勉強がてらに、アイルランド関係の映画を観まくってみようと思います。おすすめ作品があれば、ぜひ教えてたもれ~。

 「愛のタリオ」
 女性スキャンダルで職場を追われた大学教授で作家のハッキュは、移り住んだ田舎町でドクという純粋な娘と出会う。やがて二人は情事に溺れるが、復職の叶ったハッキュはドクを捨て、妻子が待つソウルへと戻ってしまう…
 韓国のイケメンスター、チョン・ウソンの大胆な濡れ場初挑戦が話題となった作品。
 あわわ…ウソンさん、あんたも随分と思い切ったね~最近では、「情愛中毒」のソン・スンホンにも驚かされましたが、チョン・ウソンも噂通り期待通りの脱ぎっぷり濡れっぷりでしたとにかく、日本やハリウッドの人気男優は絶対やらない(できない)組んずほぐれつっぷりです。すげ~と感嘆するやら、よーやるわ~と呆れるやら、何でここまでヤる気になったんだろうと心配になるやら。

 売り出し中の新人イケメンでもなく、売れなくなった元スターでもなく、今や男ざかりにさしかかった、容姿も演技も脂がのろうとしている人気俳優のウソンが、どうしてAV男優も真っ青な全裸ズコバコに挑まねばならなかったのでしょうか。おそらく、俳優として男として、最も魅力的で色気がある今こそ!最盛期の自分をスクリーンに刻んでおかねば!という、自信とナルシズムが彼にそうさせたのではないでしょうか。衰えてから脱いだり濡れたりされても、誰得なイタさだし。まあ、いろんな大人の事情もあったのかもしれませんが…ファンを困惑させるほどのリスキーなチャレンジ、役者魂は、賞賛に値します。いまだに若者ぶってる日本のイタい加齢アイドルとかを見慣れてると、韓国のアラフォー男優は果敢で刺激的です。

 んで、ウソンの濡れっぷりですが…頑張ってましたね~
 全編ヤリまくり!というわけではなく、濡れ場は劇中2回だけ。最初のドクとの合体シーンが圧巻です。アソコも尻の穴さえ見えそうなスッポンポン、際どいアングル!激しい腰使いで、女をガンガン攻めるウソン。着衣だと長身でスラっとしてるウソンですが、脱ぐと韓流男優の御多分にもれず、ガッチリムッチリなモムチャン!厚い胸板、太い腕、形のよい引き締まった美ケツが、ぐわんぐわんと躍動!
 おお!?と瞠目してしまったのは、行為の真っ最中にいきなり女を軽々と持ち上げて、立位で貫く駅弁!あれ、軟弱なモヤシ男じゃできない力技ですよね。男ってでも、あれやりたがりますよねしんどかろうに。
 ウソンの、ベロチューしながら『いいか?いいだろう?』と囁く声、表情がエロかった。ちっとも気持ちよさそうじゃなく、苦しそう辛そうな顔しながらヤってるのがいいんですよ!

 交歓のクライマックス、汗だくで顔を真っ赤にして昇天するウソンの、イケメン崩壊なイキ顔が、これまたリアルで実際にはセックスしてないのに、してるような表情や演技って大変なんだろうな~。
 2回目は、カキタレの愛人とホテルでガンガン。これも全裸で立ったままバックからズコバコ。とまあ、めでたくエロデビューを果たしたウソンに拍手!おそらく、これが最初で最後でしょう。韓国のイケメン俳優は、兵役同様すっぽんぽんエロも一度は経験、という法律を成立させてほしいものです。さあ、次は誰がヤるかな?私の韓流3王子、コン・ユ、ヒョンビン、チョン・ジョンミョンに期待。
 話は、とんでもなく非道い悲惨な痴情のもつれ地獄。身勝手な男に純真おぼこ娘が身も心もズタズタボロボロにされちゃうんですよ。ハッキュ、ほんと最低最悪な女の敵野郎。ドクだけでなく、彼のせいで妻子も不幸のドン底。女を騙そうとか傷つけようとかいった悪意は全然ないところが、返ってタチが悪いんですよ。優しそうなところが魔性な毒男。でも、あんないい男と理性を失くす破滅的な情痴って、ちょっと憧れるかもボロボロにされて、天使から夜叉になるドクの、女の情念、執念も怖かったけど、愛したもの負けなラストには、女って愚かで悲しい生き物…と沈鬱な気分に。

 後半、盲人になってしまうウソンの、虚ろな目つきや表情もインパクトあり。それにしてもウソンって、やっぱ福山雅治に似てますよね~。福山さんも、ぜひハッキュみたいな優しい鬼畜男役に挑戦してほしいものです。

 ↑最近日本公開された「神の一手」でも、自慢の肉体美を披露してるウソンさん。これから撮影に入る新作映画は、どうやらアクション時代劇みたい?  
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逆鱗の王宮

2015-07-19 | 韓国映画
 旅立ちを決めたのは勢いだけじゃないから~♪by trf
 来月下旬に、10日ほど休みをもらいました。部屋に引きこもるのも悪くないけど、せっかくの夏休みなので、海を渡る旅に出ることにしました
 どこに行こうか、すごく悩みました。候補は、
 ミャンマー 何かに会える気がする…誰かが私を呼んでる気がするんです…
 アイルランド 有名なモハーの断崖に立って、独り火サスしたい
 イスラエル 死海でプカプカ浮かんでみたい
 長年行きたいと思ってた憧れの異国。さんざん悩んでリサーチしまくった結果、ついに決定!思いたったらじっとしておられず、衝動的にもう格安航空券買ってしまった楽しみ半分、今になっていろいろ問題も見つかって、ちょっと後悔&不安、な心境です。
 どこに行くかは、次回発表♪もったいぶってんじゃねーよ!でしょうか

 「王の涙 イ・サンの決断」
 若き国王イ・サンは、父を無残な死に追いやった祖父の后とその一派への怒りを胸に秘め、彼らによる陰謀と暗殺に警戒する日々を送っていた。そんな中、王宮では密かにクーデターが決行されようとしていた…
 TVドラマにもなった朝鮮の賢王イ・サンが、クーデターと対峙する24時間を描いたドラマ。イ・サン役は、私の韓流3王子のひとりであるヒョンビン兵役を終えた彼の復帰作、そして初めての時代劇ということも話題になりました。

 いや~ビニ、カッコよかったです精悍かつシブくなってました。男らしい猿顔と肉体美の持ち主であるビニは、まさに私にとってはド・ストライクに近い男、なのですが。ルックス的にはパーフェクトなんだけど、彼の場合は演技に少し難が…どんな作品でも、同じような役で同じような演技。要するに大根でも、カムバック作ということで気合いが入ったのか、いつものワンパターンさと大根さを払拭する熱演、好演でした。ラストのクーデター勃発まであまり動きがなく、出ずっぱりというわけでもなかったのですが、憎悪や怒り、恐れや闘志を胸に秘めたビニの抑えた演技が、彼の役者としての成長をうかがわせました。以前のビニなら、ただもうカッコいいだけのウドの大木になってたでしょうし。威厳と知性、静かなる気炎とオーラも出てて、堂々たる主演として映画に君臨してました。

 劇中、長い台詞もこなしてたビニ。その威風堂々とした体躯と美声は、舞台でもイケそうだと思いました。ビニのハムレットとか見てみたい。後半になると、劇的な展開に合わせてアクティヴになってくビニ。騎馬シーンや弓で敵を倒すシーンの彼は、まさにヒーローって感じで惚れ惚れしてしまいます。
 そして、韓流男優のお約束といえばの、無駄脱ぎ眼福モムチャンもバッチリあります冒頭の初登場シーンに目がクギヅケ。上半身裸で筋トレしてるビニ。おお~すげーカラダ

 昔の人って、あんな風に筋トレしてたんですね。明らかなファンサービス脱ぎ。ビニ、コマウォヨ~。それにしても…どーやったらあんなカラダになれるんだろ。日本の肉体美と言われてる俳優やタレントとは、筋肉の厚みのみならず骨格まで違う感じ。ライ○アップで結果にコミットしてる的なビニの肉体美です。脱ぐだけじゃなく、いつか来るエロデビューの際にも有効活用してほしいものです。
 脇役も韓流ファンにはおなじみのメンツ。

 イ・サンが幼い頃から心を許している唯一の人間である尚冊役は、「殺人の告白」などのチョン・ジェヨン。いい俳優だし好演だったのですが、もうちょっとイケメン俳優だったら腐的には美味しかったんだけどなあ。女との寒イボな純愛要素がほとんどなく、イ・サンと尚冊がかなりBLっぽい関係だったので。
 イ・サンの命を狙う刺客役は、最近売れっ子なチョ・ジョンソク。やっぱ杏の夫に似てるな~。前作の「観相師」ではハイテンションでアホっぽい役でしたが、今回は「キング」の時みたいに寡黙な不幸キャラでした。彼、だんだんカッコよくなってきてますね。
 刺客の元締め爺役は キム・キドク監督作の常連だったチョ・ジェヒョン。不気味老けメイクで、はじめ誰か分かんなかった。冷酷な悪人を怪演。権力を握る大妃役は、ユチョンの「屋根部屋のプリンス」のハン・ジミン。若くて庶民的な彼女よりも、もうちょっと貫禄と毒のある妖艶な美熟女のほうが、あのラスボス的な悪女役には合ってたのでは。女官にしか見えないシーンもあったし。王に忠実な近衛隊長役は、「栄光のジェイン」とかイ・ジョンジェの「新しき世界」でも印象的だったパク・ソンウン。ミヤネ屋の中山レポーターをカッコよくした感じの彼、結構好きなんです。

 「チェオクの剣」を彷彿とさせるフュージョン活劇シーンも、スタリッシュでカッコよかったです。あと、衣装やセット、ロケの風景も美しく目に楽しい映画です。それはそうと…イ・サンの父が米櫃に入れられて死ぬ、というトンデモ刑に唖然。あーいう死刑が朝鮮にはあったんですね。韓流ファンの間ではおなじみ?の牛で引き裂き刑とかもゲロゲロ(死語)ですが、米櫃もイヤすぎる~ちなみに、イ・サンの父の悲劇を描いたソン・ガンホ&ユ・アイン主演の新作映画が、もうすぐ韓国で公開されるみたいですね。日本でも観られるかな?
 この映画、日本でリメイクするとしたら。理想妄想イルボンリメイクは…
 
 イ・サン … 池松壮亮
 尚冊 … 加瀬亮
 刺客 … 東出昌大
 近衛隊長 … 平山広行
 悪将軍 … 吉田鋼太郎
 イ・サンの母 … 壇れい
 大妃 … 鈴木京香
 刺客の元締め … 渡辺謙

 こんなん出ましたけど~?
 どよよ~んな役もいいけど、そろそろ凛々しい壮亮が見たいので、ぜひイ・サンみたいな役を!もちろんフンドシ姿の筋トレシーンもあり。
 チョ・ジョンソクは杏の夫にしか見えないので、彼しか思いつかない。彼の義父がサポート特別出演。

 ↑カッコカワイかったビニも、早や三十路。殻を破って大人の俳優へと進化してほしいものです。TVドラマでの復帰作は、大コケしたとか確かにつまんなそうだし、ビニもいつものビニに戻ってたみたいだし。もうそろそろ冒険、挑戦しよう!自分より格上の大物男優と共演とかしてほしい
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私が消える…

2015-07-07 | 北米映画 15~21
 「アリスのままで」
 幸せな家庭と順調なキャリアに恵まれていた言語学者のアリスに、言葉や記憶が覚束なくなるという症状が。彼女は若年アルツハイマー病を発症していた…
 ううう~ん…身につまされる映画を観てしまいました。若年アルツハイマー、怖すぎます劇中、『まだ癌のほうがまし』というアリスの台詞があるのですが、ほんとその通りだよな~と深く頷いてしまいました。癌なら、辛いけど周囲の理解も同情もケアも得られるし、何より命を終えるための準備や心づもりも自分でできる。最期まで自分自身でいられるけど、アルツハイマーのような痴呆症は…迷惑なボケ老人!と疎まれ蔑まれ、介護も大変。何より、記憶だけでなく自分自身まで失っていく怖さ、悲しさは癌の比ではありません。自分の意思に反して誇りや尊厳を失くしてしまうのは、命を失うことより恐ろしいです。アリスの場合は、知性もルックスも人柄もすぐれていたから、よけい悲惨に思えました。

 私の祖母も、亡くなる前の数年間は痴呆状態で、それはそれは大変でした。本人よりも、周囲が。言い方は悪いけど、ボケたもん勝ちというか…完全に恍惚のひと化してしまえば、本人は返って楽になれるように思えます。でもアリスは、いちばん悲惨なパターン。正気と痴呆の行ったり来たりの、いわゆるまだらボケ。私がおかしい、周囲に迷惑をかけている、怖い、助けて、という自覚からくる不安や苦痛、羞恥や罪悪感…自分がどんどんコワレていくのが分かるのに、どうしようもない。なすすべもなくてコワレていくしかない、自殺したくてもできない、という生き地獄!セッションやマッドマックスとかの恐怖は、私にはありえないので面白おかしく笑いとばせるけど、アリスの恐怖は明日は我が身なリアルな恐怖。アルツハイマーは遺伝(!!)と医者から告げられ、アリスの家族がショックに打ちひしがれる姿も、戦慄を禁じ得ない悲劇でした。家族の苦悩はわりとサラっと描かれていて、ほんとなら生活や家族関係にはもっと破綻や不和が生じたり、醜態をさらしたりするはずなんだけどな、という物足りなさも否めませんでしたが、見苦しくイタい修羅場が展開されなかったので、ちょっと安堵しました。

 アリスを演じたジュリアン・ムーアは、念願のオスカーを初受賞。美しく知的で優しいヒロインがじわじわ壊れていく過程を、髪振り乱しての大熱演!ではなく、繊細に美しく演じていたのが返って胸を衝きました。症状が出ているシーンもすべてが悲痛ではなく、何となく軽やかにトボケた感じがすることもあって、名女優の余裕と実力を再認識。彼女のシンプルかつフェミニンなファッションも素敵でした。
 アリスの次女役は、「トワイライト」シリーズのクリステン・スチュワート。人相悪いな~と常々思ってたけど、この映画でもそれは不変。優しそうなジュリアン・ムーアとアレック・ボールドウィン(も、すっかり枯れた初老おじさまに。今もカッコいいけどね)から、クリステンみたいな娘が生まれるもんかね?彼女の魅力がいまだに理解できてない私。ヒロインだと違和感あるけど、脇役だと悪くなかったです。アリスの長男がイケメン!誰?と、さっそくチェキラー!ハンター・パリッシュくん、人気TVドラマにも出ているとか。今後の活躍が期待されます。

 ↑シャネルのショーに出席したジュリアン・ムーアをエスコートしてるのは、超大物俳優&大女優を両親にもつウルトラサラブレット!現在モデル、ラッパーとして活動してるとか。もうこんなに大きくなってたんですね~。隔世…
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You make me MAD☆

2015-07-05 | 北米映画 15~21
 「マッドマックス 怒りのデス・ロード」
 荒廃した近未来の世界。砂漠をさまよう元警官のマックスは、人々を支配するイモータン・ジョーの一味に囚われる。そんな中、ジョーの配下であるフュリオサが組織を裏切り、ジョーの妻たちを連れて逃亡するが…
 メル・ギブソンのオリジナルは未見なので、比較はできないのですが…ニューバージョン、すごく面白かったです!が、すごく疲れました~この映画、かなり気力体力が必要ですよ。仕事帰りにはキツかったわ。心身ともに余裕のある時に観たほうがいいかも…
 もう最初っから最後まで、めちゃくちゃハイテンション。怒涛のハチャメチャっぷりに、もうあかん、ついていけん、とギブアップしようとしても、そうはさせない強引さ、パワーが漲ってて、モミクチャにされながら連れて行かれる感覚。アル中とヤク中のパーティにまぎれこんだかのようなヤバさとか、とにかくもう狂気のどんちゃんお祭り騒ぎです。

 話も、逃げるマックスたち、追う悪の軍団、ただそれだけ、みたいなシンプルさ。内容なんかないけど、細かいことはあまり気になりません、いや、気にさせてくれません悪の軍団のわけのわからん狂悪ぶりが笑えます。世紀末な舞台設定とか、ちょっと北斗の拳っぽかったです。悪キャラも、北斗の拳に出てくる外道どもとカブるし。悪の親玉ジョーとか、この人たち人間?!な奇怪な風貌とかは、何かワンピースっぽいかも?ワンピースにもあーいうバケモノキャラ、出てきますよね。アクロバットすぎるアクションシーンとか、すべてが漫画チックです。残虐なシーンてんこもり、シリアス調だけど、ノリはお笑いです。かなり笑いも狙ってるところが好きです。激走、激闘中も狂ったように、火を吹くギターや和太鼓?ガンガンドンドン演奏してるクレイジーロックなバンドとか。
 この映画が待ち遠しかったのは、言うまでもなく新マッド・マックスを襲名したのがトム・ハーディだから♪

 いや~トムハ、めっちゃカッコよかったですまさに肉弾バトル!格闘もアクションも、すごく泥くさくてリアルなところが素敵。ゴツくて屈強なゴリマッチョさがたまりません。ワイルドで男らしいけど、顔は薄くて可愛いところが女子受けもするトムハ。台詞が少なく無表情な役ですが、困惑したり焦ったりする顔や仕草がso cute!ちょっと魔裟斗に似て見えたのは、わしだけ?

 期待通りイケまくりなトムハでしたが…この映画の真の主役って、マックスよりも彼と共闘する女戦士フュリオサなのでは?

 フュリオサが、めっちゃカッコいいんですよ!クールでニヒルで、それでいて熱い。女たちを守り抜く姿は、まさにヒロイン、いや、ヒーローです。

 フュリオサを激演したのは、オスカー女優のシャーリーズ・セロン。漢(おとこ)らしい役ながらも、女が背負う痛みとか悲しみとか重さも伝わってくるフェミニストなキャラは、いかにもシャー子さんらしかった。自分の美貌と、世の中の男を憎んでるような役が多いシャー子さんにピッタリとも言える役でした。その貫禄と存在感のせいか、トムハが弟分にしか見えなかった。身体的にも、小柄なトムハと並ぶとシャー子さんの長身さが際立ってました。マックスとフュリオサの、互いに共感、敬意は抱きつつも馴れ合いに陥らないタッグ、漢(おとこ)の友情がカッコよかったです。
 仮面ライダーで言えば、ショッカーみたいな立ち位置?の兵隊ウォーボーイが、わらわらとゾンビみたいで笑えます。その一人で、マックスたちにしぶとく食いついてくるニュート役は、ジェニファー・ローレンスの元カレとしても有名な英国俳優ニコラス・ホルト。子役からイケメンに成長した素顔は全然わからないメイク、はっちゃけまくりつつ、凶暴なんだけど何かアホでドヂなところが笑いと悲哀を誘う、なかなか美味しい役で目立ってました。
 マックスが悩まされていた少女の幻覚とか、???な謎を残したまま終わったのは、やはり続編への布石なのでしょうか。トムハ続投なら、もちろん観ます!

 ↑チョイワル風ゴリマッチョ男だけど、何か可愛いところがトムハの魅力。今年はマッドマックス、「チャイルド44」「オン・ザ・ハイウェイ」が日本公開、そしてトムハのゴリマッチョぶりが最高に炸裂している「ウォーリアーズ」が、待望のDVDスルー!今年はトムハの年になりそう♪

 ↑シャー子さん、デカっ!やっぱこの二人、姉弟にしか見えませんね~。カッコいい姉弟ですね~
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