「リリーのすべて」
20世紀初頭のデンマーク、コペンハーゲン。画家のアイナーは、同じく画家の妻ゲルダに絵のモデルを頼まれる。女性の衣装を身につけたアイナーは、今まで気づかなかった本当の自分に目覚めて…
世界で初めて性転換手術を受けた画家の実話の映画化。評判通りの佳作でしたが…涙の感動作!とか、腐的な萌え~とは、ちょっと違うんですよね~。触れてはいけない、できれば触れたくないタブーのような性の問題や苦悩を、目の前に突き付けられたかのようで困惑、狼狽してしまう…ワタシ的には、そんな映画でした。日本人って、性的なことに立ち入りすぎることを忌避しがちじゃないですか。なので、性同一性障害の苦悩や苦痛をかなりリアルに描写しているこの映画を観たら、ショックでドン引きする人って結構いるのではないかと…
昔に比べたら、社会的認知度も高まり、権利も保障されつつあるLGBTですが、実際問題まだまだ道は険しい。特に私が住んでるようなド田舎では、アイナーのように堂々とカミングアウトしたり性転換したりして権利や自由を主張することは、まず無理ですし。劇中のように、LGBTは性的倒錯か精神病と断定され、差別偏見迫害でフルボッコにされますよ。今より理解がなく狭量な価値観や道徳観の中で、苦悩と苦痛を味わいながらも自分に正直に生きたアイナーは、すごく勇敢で幸せな人だな~と感嘆せずにはいられませんでした。
しかしながら…アイナーって、ものすごく自分勝手で冷酷でもあるよな~と反感も覚えました。私は女なの!女にならなきゃ!と、ほぼ自分のことしか考えてないし、自分のしたいようにするだけだし。偽らず生きるため、生まれ変わるためには、何をしてもいいのかよ。彼に翻弄され傷つけられるゲルダが、可哀想すぎる!目覚めてしまったアイナーはゲルダに対して、おいおい~それはないだろ!?ひどい!な言動しまくるんですよ。特に非道いな~と呆れるやらムカつくやらだったのは、性転換手術を終えてコペンハーゲンに戻ってからのアイナー。ちょっとルンルンすぎ、ウキウキすぎじゃね?と、女になれて浮足立って調子ぶっこきすぎ。ヘンリクとデートしたりゲルダの目の前で彼と堂々イチャついたり、心配するゲルダをウザがる態度など、ふざけんな!と殴ってやりたくなった。思いやりなさすぎだろ。自分本位なのに、いざという時はゲルダに甘えて頼ってばかりな甘さ、弱さにもイラっ!身も心も女になっても、あの甘さと弱さは男のままだなと思いました。
女のほうが、やっぱ強い。ゲルダを見ていて、心底そう思いました。ゲルダの強さは、超人的ですが。あそこまで気丈に寛容になれる女は、そうそういないでしょうし。夫が突然、女になっちゃうんですよ。想像しただけでも戦慄。フツーなら、即離婚。でも、ゲルダは女になってゆく夫を、献身的に支え守るんだから、頭が下がるどころの話じゃないです。男女の愛を超越した、まるで聖女、聖母のようなゲルダの愛は、悲しくも美しく崇高。アイナーの苦悩よりも、ゲルダの苦悩のほうが痛ましくて。ゲルダが芸術家で、ちょっと男っぽい性格だったのも、二人の関係にはよかったのかもしれません。それにしてもゲルダ…ちょっとした悪ふざけ、軽い変態プレイが、よもや夫の中に隠されてた変なスウィッチを押すことになるとは。彼女は全然悪くないけど、私のせいでと自責に陥る気持ちは、痛いほど解かってほんと可哀想だった。夫の女性化を戸惑いながらも応援しつつ、心のどこかで男の夫を求めてる、忘れられない彼女も、すごく切なかったです。
この映画、深刻でデリケートなテーマを扱ってるのですが…私だけでしょうか?何か笑えるシーンが多かった。笑っちゃいけないはず、なのに、ここは笑いを狙ってるのかもしれない、と当惑しつつ内心クスっみたいな。アイナーの女物のドレスや下着、化粧に対する恍惚&ハっと我に返る焦りの表情は、リアクション芸人も真っ青の面白さ。夜メイクラブしようとゲルダがアイナーの服を脱がせたら、彼が女物の下着着てたり。さっきまでアイナーだったのに、知らん間にリリーになってたり。変身早っ!で笑えた。あと、女装してるアイナーに男たちが色目使ってくるところ。どっからどー見ても女装オカマかニューハーフなのに、美女と思い込むなんてありえない~。 舞踏会で出会ったヘンリクが、自分が男だと知ってて求愛してきたことにショックを受けるアイナーも、かなり笑止でした。バレてないと思ってたなんて。どんだけ自信あったんだよ。でもまあ、あんな風貌の女性、いないこともないですけど。ジェシカ・チャステインとか
アイナー/リリーを熱演、いや、怪演したのは、ホーキング博士を演じた「博士と彼女とセオリー」でオスカーを受賞、今年もこの作品で2年連続ノミネートされた、今や英国映画界のホープとなったエディ・レッドメイン。
いや~エディ、スゴいですわ。堂々たるヒロインっぷりが、チャーミングかつグロテスクで強烈です。もうノリノリで女になりきってましたね。過剰すぎて、女はそこまでしないよ!と笑えるぐらい女でした。やっぱ女じゃないよな~という未完成っぽさが、悲しくも不気味。全裸シーンも多く、鏡の前でポーズをとりながらアソコ(結構デカかった)を…のシーンも、悲壮なはずなのに笑えたわ~。とにかく、日本の男優には絶対できない衝撃的な演技でした。女房に苦労をかける純真な自分勝手夫って、ホーキング博士もそんなキャラでしたよね。
ゲルダ役のアリシア・ヴィキャンデルは、今年のアカデミー賞助演女優賞を受賞しました
最近メキメキ頭角をあらわしているスウェーデン女優のアリシア。すごい美人じゃないけど、親しみのもてる可愛さ、素朴さに好感。苦悩する妻役を、暑苦しい大熱演ではなく、自然に爽やかに演じてた彼女の存在が、一歩間違えたらグロくてエグくなるところだった物語を救っていたように思われます。ラストの、悲しみや苦しみから解き放たれたような、恨みも後悔もなく誰かを愛しきった充足感あふれる彼女の笑顔が感動的でした。彼女の脱ぎっぷりも見事でした。それにしても…この映画の主役は、どちらかといえばアイナーよりもゲルダだったような。「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズは主演女優賞候補で、この映画のアリシアが助演女優賞、というのは???大人の事情?
リリーに一目ぼれしてアプローチしてくるヘンリク役は、売れっ子のベン・ウィショー。
ゲイ役でこの安定感、今やベンの右に出る者なしです。舞踏会でリリーをロックオンするヘンリクの熱く静かな視線、知的に詩的なヘンリクの口説き文句、リリーの唇の奪い方が情熱的でロマンティック、なんだけど、相手が女装オカマ、ニューハーフにしか見えないエディなので、かなり滑稽なんですよエディにブチューっとするベンですが。ラブシーンは女優と女装男優とどっちがキツいか、ちょっと訊いてみたいです『どっちもキツいよ!フツーの男がいい』と答えそうですね女として見てほしいリリーと、あくまでリリーが男だから惹かれるヘンリク。性同一性障害と同性愛は違うことを、二人は教えてくれます。ゲイ役を避けずに、むしろ積極的に演じてるベンが好きです。出番が少ないのが残念。
アイナーの幼馴染の画商ハンス役を、ベルギーの男前ゴリマッチョ、マティアス・スーナールツが好演。
ゴツっ!デカっ!相変わらずヌオオオ~と偉容なマティアス。とても画商には見えません。リリーとゲルダを見守る善い人役なのですが、ちょっともったいないような気もした。別にマティアスじゃなくても、イギリスあたりのイケメン俳優(マシュー・グードとかサム・クラフリンとか)でよかった役だし。フツーに善い人役にそぐわない、あのメガトン級の重量感と冷酷な目を活かした役を演じてほしいです。
デンマークの街並みや当時の衣装、インテリアなども、美しく趣があって目に楽しいです。デンマーク行きたい!リリーとゲルダのファッション、例えばスカーフとか、今してもオシャレかも。
20世紀初頭のデンマーク、コペンハーゲン。画家のアイナーは、同じく画家の妻ゲルダに絵のモデルを頼まれる。女性の衣装を身につけたアイナーは、今まで気づかなかった本当の自分に目覚めて…
世界で初めて性転換手術を受けた画家の実話の映画化。評判通りの佳作でしたが…涙の感動作!とか、腐的な萌え~とは、ちょっと違うんですよね~。触れてはいけない、できれば触れたくないタブーのような性の問題や苦悩を、目の前に突き付けられたかのようで困惑、狼狽してしまう…ワタシ的には、そんな映画でした。日本人って、性的なことに立ち入りすぎることを忌避しがちじゃないですか。なので、性同一性障害の苦悩や苦痛をかなりリアルに描写しているこの映画を観たら、ショックでドン引きする人って結構いるのではないかと…
昔に比べたら、社会的認知度も高まり、権利も保障されつつあるLGBTですが、実際問題まだまだ道は険しい。特に私が住んでるようなド田舎では、アイナーのように堂々とカミングアウトしたり性転換したりして権利や自由を主張することは、まず無理ですし。劇中のように、LGBTは性的倒錯か精神病と断定され、差別偏見迫害でフルボッコにされますよ。今より理解がなく狭量な価値観や道徳観の中で、苦悩と苦痛を味わいながらも自分に正直に生きたアイナーは、すごく勇敢で幸せな人だな~と感嘆せずにはいられませんでした。
しかしながら…アイナーって、ものすごく自分勝手で冷酷でもあるよな~と反感も覚えました。私は女なの!女にならなきゃ!と、ほぼ自分のことしか考えてないし、自分のしたいようにするだけだし。偽らず生きるため、生まれ変わるためには、何をしてもいいのかよ。彼に翻弄され傷つけられるゲルダが、可哀想すぎる!目覚めてしまったアイナーはゲルダに対して、おいおい~それはないだろ!?ひどい!な言動しまくるんですよ。特に非道いな~と呆れるやらムカつくやらだったのは、性転換手術を終えてコペンハーゲンに戻ってからのアイナー。ちょっとルンルンすぎ、ウキウキすぎじゃね?と、女になれて浮足立って調子ぶっこきすぎ。ヘンリクとデートしたりゲルダの目の前で彼と堂々イチャついたり、心配するゲルダをウザがる態度など、ふざけんな!と殴ってやりたくなった。思いやりなさすぎだろ。自分本位なのに、いざという時はゲルダに甘えて頼ってばかりな甘さ、弱さにもイラっ!身も心も女になっても、あの甘さと弱さは男のままだなと思いました。
女のほうが、やっぱ強い。ゲルダを見ていて、心底そう思いました。ゲルダの強さは、超人的ですが。あそこまで気丈に寛容になれる女は、そうそういないでしょうし。夫が突然、女になっちゃうんですよ。想像しただけでも戦慄。フツーなら、即離婚。でも、ゲルダは女になってゆく夫を、献身的に支え守るんだから、頭が下がるどころの話じゃないです。男女の愛を超越した、まるで聖女、聖母のようなゲルダの愛は、悲しくも美しく崇高。アイナーの苦悩よりも、ゲルダの苦悩のほうが痛ましくて。ゲルダが芸術家で、ちょっと男っぽい性格だったのも、二人の関係にはよかったのかもしれません。それにしてもゲルダ…ちょっとした悪ふざけ、軽い変態プレイが、よもや夫の中に隠されてた変なスウィッチを押すことになるとは。彼女は全然悪くないけど、私のせいでと自責に陥る気持ちは、痛いほど解かってほんと可哀想だった。夫の女性化を戸惑いながらも応援しつつ、心のどこかで男の夫を求めてる、忘れられない彼女も、すごく切なかったです。
この映画、深刻でデリケートなテーマを扱ってるのですが…私だけでしょうか?何か笑えるシーンが多かった。笑っちゃいけないはず、なのに、ここは笑いを狙ってるのかもしれない、と当惑しつつ内心クスっみたいな。アイナーの女物のドレスや下着、化粧に対する恍惚&ハっと我に返る焦りの表情は、リアクション芸人も真っ青の面白さ。夜メイクラブしようとゲルダがアイナーの服を脱がせたら、彼が女物の下着着てたり。さっきまでアイナーだったのに、知らん間にリリーになってたり。変身早っ!で笑えた。あと、女装してるアイナーに男たちが色目使ってくるところ。どっからどー見ても女装オカマかニューハーフなのに、美女と思い込むなんてありえない~。 舞踏会で出会ったヘンリクが、自分が男だと知ってて求愛してきたことにショックを受けるアイナーも、かなり笑止でした。バレてないと思ってたなんて。どんだけ自信あったんだよ。でもまあ、あんな風貌の女性、いないこともないですけど。ジェシカ・チャステインとか
アイナー/リリーを熱演、いや、怪演したのは、ホーキング博士を演じた「博士と彼女とセオリー」でオスカーを受賞、今年もこの作品で2年連続ノミネートされた、今や英国映画界のホープとなったエディ・レッドメイン。
いや~エディ、スゴいですわ。堂々たるヒロインっぷりが、チャーミングかつグロテスクで強烈です。もうノリノリで女になりきってましたね。過剰すぎて、女はそこまでしないよ!と笑えるぐらい女でした。やっぱ女じゃないよな~という未完成っぽさが、悲しくも不気味。全裸シーンも多く、鏡の前でポーズをとりながらアソコ(結構デカかった)を…のシーンも、悲壮なはずなのに笑えたわ~。とにかく、日本の男優には絶対できない衝撃的な演技でした。女房に苦労をかける純真な自分勝手夫って、ホーキング博士もそんなキャラでしたよね。
ゲルダ役のアリシア・ヴィキャンデルは、今年のアカデミー賞助演女優賞を受賞しました
最近メキメキ頭角をあらわしているスウェーデン女優のアリシア。すごい美人じゃないけど、親しみのもてる可愛さ、素朴さに好感。苦悩する妻役を、暑苦しい大熱演ではなく、自然に爽やかに演じてた彼女の存在が、一歩間違えたらグロくてエグくなるところだった物語を救っていたように思われます。ラストの、悲しみや苦しみから解き放たれたような、恨みも後悔もなく誰かを愛しきった充足感あふれる彼女の笑顔が感動的でした。彼女の脱ぎっぷりも見事でした。それにしても…この映画の主役は、どちらかといえばアイナーよりもゲルダだったような。「博士と彼女のセオリー」のフェリシティ・ジョーンズは主演女優賞候補で、この映画のアリシアが助演女優賞、というのは???大人の事情?
リリーに一目ぼれしてアプローチしてくるヘンリク役は、売れっ子のベン・ウィショー。
ゲイ役でこの安定感、今やベンの右に出る者なしです。舞踏会でリリーをロックオンするヘンリクの熱く静かな視線、知的に詩的なヘンリクの口説き文句、リリーの唇の奪い方が情熱的でロマンティック、なんだけど、相手が女装オカマ、ニューハーフにしか見えないエディなので、かなり滑稽なんですよエディにブチューっとするベンですが。ラブシーンは女優と女装男優とどっちがキツいか、ちょっと訊いてみたいです『どっちもキツいよ!フツーの男がいい』と答えそうですね女として見てほしいリリーと、あくまでリリーが男だから惹かれるヘンリク。性同一性障害と同性愛は違うことを、二人は教えてくれます。ゲイ役を避けずに、むしろ積極的に演じてるベンが好きです。出番が少ないのが残念。
アイナーの幼馴染の画商ハンス役を、ベルギーの男前ゴリマッチョ、マティアス・スーナールツが好演。
ゴツっ!デカっ!相変わらずヌオオオ~と偉容なマティアス。とても画商には見えません。リリーとゲルダを見守る善い人役なのですが、ちょっともったいないような気もした。別にマティアスじゃなくても、イギリスあたりのイケメン俳優(マシュー・グードとかサム・クラフリンとか)でよかった役だし。フツーに善い人役にそぐわない、あのメガトン級の重量感と冷酷な目を活かした役を演じてほしいです。
デンマークの街並みや当時の衣装、インテリアなども、美しく趣があって目に楽しいです。デンマーク行きたい!リリーとゲルダのファッション、例えばスカーフとか、今してもオシャレかも。