まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

BL農場

2016-01-31 | 北米映画 08~14
 「トム・アット・ザ・ファーム」
 モントリオールの広告会社で働くトムは、事故で死んだ恋人ギヨームの葬儀に出席するため、ギヨームの実家である田舎の農場を訪れる。ギヨームの兄フランシスは、トムにギヨームとの関係を母には秘すよう暴力で脅し、農場にとどまるよう強制する。憤り戸惑いながらも、トムはフランシスに魅了され…
 カナダの俊英、若き天才として話題のグザヴィエ・ドラン監督の作品を、遅ればせながら初めて観ました。感性が独特すぎて才気走った映画が苦手な私は、ドラン監督もきっとそうなんだろうと決めつけてました。それが彼の映画に躊躇していた理由です。でも、いざ観てみると、ちっとも難解でもなく才気走りすぎてもない、すごく面白いサイコサスペンスだったので驚喜でした。異常なシチュエーション、歪んだ人間関係が、静かに予想不可能な展開で描かれていて、ぐいぐい引き込まれました。ハリウッドのサイコものとはやはり味わいが異なり、カメラワークとか音楽の使い方とかに、やはり若い鋭い感性がひしめいていました。若い感性といっても、大学生の自主制作映画みたいに力任せな荒っぽさや粗がなく、優雅で洗練されてる。それは、ドラン監督が若いだけでなくゲイでもあるからでしょうか。繊細で耽美な空気感は、やはりゲイならではの感性。ドラン監督、まだ20代半ばだとか。末恐ろしい若造ですね

 主役のトムも演じてるドラン監督。聞きしに勝る美青年!というより、可愛らしいイケメン。小柄なので、何だか少年っぽい。若くて美しくて、そのうえ演出と演技の才能もあるなんて、神さまは与える人には2ブツも3ブツも与えるですね~。不公平だな~。わしにも1つぐらいくれえや~。無表情か苦悶顔がほとんどでしたが、たまに笑うと無邪気でキュート。トムのファッションも、革ジャンとかパーカとかセーターとか、ナニゲにオサレだった。ゲイだけどオネエっぽさは皆無。ナイーブで優しいけど勝気で、実はドMなトムを熱演してるドラン監督。俳優としても魅力的ですね。
 この映画、とにかくトムとフランシスのSM関係がイビツかつスリリング。弟がゲイだったことはママに黙ってろ!弟の親友のふりしろ!と言葉や拳でトムを脅し、ママを慰めるためにここにいろ!とトムを帰さないフランシス。すごいマザコンなのかなと思わせつつ、密かにママからの解放、ママの死を願っていたり、心に深い複雑な闇を抱えてるフランシスに、怯えつつも強く惹かれていくトム。これ、男女だったらよくある関係ですよね。DV男を愛してしまい、死ぬような目に遭いながらも逃げられない、逃げない女。危険な男だけど、ほんとは可哀想な人なの!私がそばにいてあげなきゃダメな男なの!的な。それが男同士なのが、この映画の面白いところです。

 支配したいされたい、大事にしたい壊されたい、な男同士の愛憎なのですが、精神的には激しく熱くもつれ合いながら、肉体的には常にストップがかかってて、もどかしい!お!ここでキスする!ここでヤルだろ!なシーンがいっぱいあるけど、一線は絶対に超えないんですよ。男同士の性愛シーンはないけど、そこに至りそうなギリギリ描写のじれったさ、同性愛の甘美で濃厚な匂いが、腐女子にはたまりません。ベッドで眠ってるトムに暗闇の中、フランシスが突然襲いかかってくる二人の初対面シーンや、葬儀の後トムがいるトイレの個室にフランシスが押し入ってくるシーンや、とうもろこし畑で逃げるトムをフランシスが押し倒してボコってツバを飲ませるシーン、そして究極は、納屋で二人がタンゴを踊る妖しくもロマンチックなシーン。何かが起きることを腐女子に期待させる意味深なシーン満載。抱いてくれたらいいのに~♪状態なトムが切ない。

 フランシス、ほんとヤバすぎるサイコ野郎なのですが、トムが彼から逃げられない逃げないのが何となく解かるほど、危険な魅力がある男でもあります。キレたら何しでかすか分からない、どこを踏んだらキレるのか地雷が分からない、まったく読めない不穏すぎる男なのですが、普段は寡黙でママ孝行、有能な農夫で、地元でも評判の男前。逆らわず従順にしてたら、トムにもすごく優しい。孤独で寂しそうなところも、哀れを誘って離れがたくさせる。おまえが必要なんだ!逃がさない!と、トムの車を壊したり、鬼の形相で森の中を追っかけてくる姿は、さすがにキ○ガイの領域でトムもドン引きしてましたが。フランシス役を演じたピエール・イヴ・カルディナルが、なかなかワイルドなイケメンでした。
 フランス語圏であるカナダのモントリオールが舞台、というのも新鮮でした。モントリオールにも行ってみたいな~。

 ↑1989年生まれ、まだ26歳のグザヴィエ・ドラン監督の新作は、ギャスパー・ウリエル、マリオン・コティアール、レア・セドゥ、ヴァンサン・カッセル、そしてナタリー・バイという、よく集めたな~な豪華キャストの“Juste la fin du monde”です。楽しみですね~
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アイルランドの夏⑦ 緑の墓碑銘

2016-01-27 | 旅行、トレッキング
 早朝、トリニティカレッジ周辺を散歩。テンプルバーは、夜の名残でゴミロード。生ゴミや缶、ガラス瓶のかけら、そしてゲロ、さらに血痕!夜の狂騒が目に浮かぶ光景に、朝の爽やかな気持ちも吹っ飛んでしまいました。清掃作業が大変そう。マックでカフェラテを買ってトリニティカレッジに戻る途中、足元に何やらうごめくものが。かがみこんで見てみると、げっ!?何じゃこりゃ!?巨大なナメクジ?!ヌメヌメした不気味な軟体生物が!あんなの初めて見ました。携帯もって出なかったので撮影できんかった。残念!
 その朝は、トリニティカレッジというかダブリン最大の見所のひとつである、有名なケルズの書を見学する。

 カレッジ内にあるカフェテリアで美味しいアイリッシュブレックファストを食べて、早めにケルズの書が納められているオールド・ライブラリーへ。早くもたくさんの人たちが並んでました。30分ほど待って、ようやく開館。冷暗で荘厳な雰囲気の、膨大な蔵書が圧巻の古い図書館。図書館の主要図書室であるロングルームは、「スター・ウォーズ」のジュダイ図書館のモデルになっているとか。

 ロングルームで見学できるケルズの書は、アイルランドの至宝と言われている古~い福音書です。豪華できめ細やかな装飾が興味深い。そんなお宝よりも、私が気になって仕方がなかったのが、アイルランドに来て初めて遭遇した日本人!5、6人ぐらいの中年女性のグループで、高価そうな装い、上品な口調の標準語から察するに、お金持ちの白金台、田園調布マダム。日本語なんか理解できない貧乏なアジア人観光客を装い、さりげなく奥様たちのおしゃべりを盗み聞きする私。みんなドラマ「THE TUDORS」にハマってたとか聞いて、わしもわしも~と割り込んでいきそうになった。リーダー格らしき初老の女性はどうやらダブリン在住らしく、マダムたちにケルズの書について説明してました。私もタダで日本語の説明が聞けてラッキー♪流暢な英語で図書館職員と談笑してるリーダー女性がカッコよかったです。アイルランド滞在中の日本人との邂逅は、これが最初で最後となりました。

 ↑トリニティカレッジの正門前にいた謎のギャルたち。快く撮影に応じてくれました
 館内のショップでケルズの書の絵葉書や、お土産用の可愛いトリニティカレッジマスコットの小熊のキーホルダー、エコバッグなど購入し、ダブリン街ブラ。またアヴォカに寄ってしまい、カープ応援にピッタリな可愛い赤のカットソーを買っちゃいました。
 午後に参加する予定の、ダブリン郊外にあるグレンダーロッホ半日観光ツアーのリコンファームのため、ネット予約してた旅行会社に寄ります。受付のお兄さんがイケメンな上に親切でした。でも…午後13時、集合場所であるモリー・マローン像前で待っていても、迎えが来ない。待てど暮らせど来ない。どーいうこと!?どうやら私と同じツアーに参加するアメリカ人らしき女性が、イライラした様子で携帯電話に向い怒鳴っている。その剣幕といい、ブリトニー・スピアーズが老化劣化したみたいな見た目といい、怖い…ので離れた場所で様子をうかがう私。

 14時半過ぎになってやっと、迎えが来ました。人の善さそうな陽気なおじさんに、さっきの怖そうなアメリカ人女性が噛みつく。おじさんはどこ吹く風で適当にあしらってます。そして、ツアー参加者の確認。私の名前がリストにない!?そんな!午前にわざわざ旅行会社でリコンファームしたばかりなのに!順番を待ってたあの怖い女性が、レシートは!とツッケンドンに私に言ってきました。レシートなんかもらってない(涙)。リコンファームの件を説明しようとすると、ガイドのおじさんが大丈夫大丈夫♪と、またテキトーに対処。無事?に私はバスに乗れたのですが…観光前なのに、もうどっと疲れが…
 総勢10人ぐらいの半日ツアー。ミニバスに乗り込んだ客は、ほとんどがアメリカ人で日本人は私だけ。2時間近くも遅れて出発するという、日本ではありえない事態ですが、ガイドのおじさんはいたってのんびりしてます。ガンガン猛スピードでバスはダブリンを離れ、鄙びた田舎へと向かいます。途中、トイレ休憩。でも、例の似非ブリちゃんを含めた猛牛のようなアメリカ人女性軍団に先んじらてしまいました。列の最後尾にオドオドと並ぶ私は、みすぼらしい独りぼっちのイエローモンキー。煙草プカプカ吸いながらブリちゃんたちは、私に冷たい蔑みの視線をくれるのでした。怖かったよ~

 ダブリンから約2時間、美しい湖や森林を通り、グレンダーロッホに到着。ひっそりと清涼な雰囲気の、古い教会跡がある谷間の集落です。1時間の自由時間、やっと独りになれた安心感、開放感が心を充たします。古めかしい石積みの門をくぐり、長い時間を経てゆっくりと朽ちていった修道院の跡や鐘楼だったというランドタワーなど見て回ります。観光客は多いけど、場所柄なのかすごく静かで心落ち着きます。洋画でよく見る古い墓地が、ちょっと怖い。火葬の日本と違い土葬だから、足元に無数の朽ち果てた白骨が埋まってるのかと思うと…

 1時間後、バスはダブリンへの帰路につきます。途中、ドーキーという小さな港町を通る。この町には、エンヤやU2のボノなどアイルランドの有名人、クリントン元大統領やピアース・ブロスナンの屋敷や別荘があるのだとか。
 19時過ぎにダブリンに到着。アイルランド最後の夜、もうアレコレ欲張らず、ゆっくり過ごそう。海外に行ったら、その国の映画館にも行ってみたい。オコンネルストリートにある映画館に寄ってみました。「コードネーム UNCLE」が上映中。人が多かったので、怖くなって観るのはやめました。テンプルバーへ向かいます。お腹がすいたので、地球の歩き方にも載ってるオシェイズというアイルランド料理店に入りました。

 夜のとばりが下りて、すっかり酔っ払い横丁と化してる外の喧騒とは違い、静かでこじんまりした入りやすい店でした。アイリッシュシチューとギネスビールのハーフパイントを注文。お肉はちょっと堅めでしたが、ボリュームがあって美味しかったです。
 トリニティカレッジに戻り、いよいよ明日は帰国!と、アイルランドへの名残よりも日本恋しの気持ちで帰り支度をし、ベッドに潜り込んで眠りについたのでした…
 次回はいよいよ最終回だっちゅーの♪
 to be continued…
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ニュースの男

2016-01-25 | 欧米のドラマ
 イギリスのTVドラマ「THE HOUR 裏切りのニュース」を観ました。全6話。
 1956年のロンドン。BBCが新たに制作するニュース番組「THE HOUR」のプロデューサーに抜擢されたベルは、親友の政治記者フレディやキャスターのヘクターらとチームを組む。目下、イギリスはエジプトとスエズ運河をめぐって不穏な関係に陥っていた。そんな中、大学の教授が殺される事件が起き、続いて貴族議員の娘でフレディの幼馴染であるルースが謎の死を遂げる。真相を究明するため捜査を開始したフレディは、やがて恐ろしい陰謀の渦に巻き込まれて…
 最近ますます人気の英国イケメン男優軍団ですが。中でも出演作目白押しの売れっ子なのが、007のQ役でおなじみのベン・ウィショー。この陽春だけでも、「白鯨との闘い」「ロブスター」「リリーのすべて」が日本で公開される、ちょっとしたベン祭なのです。そんなベンに熱い注目と期待を寄せるファンは、他の英国男優のファンとはちょっと毛色が違います。彼のファンは、たいてい腐ってるのですゲイ役が多く、私生活でも同性婚をしているベンを、腐った女子が支持するのは当然の成り行きと言えましょう。そこがベンを、独特で異色のイギリス男優にしています。
 今や腐女子の星ベンが、社会の暗部に鋭く切り込む政治記者役、しかも!ゲイ役じゃない!

 ベンがフツーのストレート役だなんて。何だか意外…いや、違和感さえ感じてしまいました。これまでは、ゲイの役しかオファーが来ないのか?はたまた彼ご自身がゲイ役を好んで選んでるのか?と憶測してしまうほど、ほぼゲイ役専門俳優みたいだったベンなので、彼が女とロマンスとか情事とかしてる姿には、居心地の悪さを覚えてしまいました。え~こんなのベンじゃない~…みたいな。

 もちろん、決してストレート役を演じてるベンを否定しているわけでもなく、ゲイ役じゃないとダメ!なんて勝手なことを望んでるわけでもありません。むしろ、ゲイじゃないベンはすごく新鮮でした。ゲイ役じゃないけど、決して男らしくはないんですよ。女より華奢だし。なにげない表情とか歩き方に、そこはかとなくあだっぽいシナがあったり。そこにちょっと安堵でも、カマっぽくもないんです。男でも女でもないというか。そこがベン独自の魅力、個性でしょうか。
 政治記者フレディは、007のQにちょっと近いキャラ?こだわりが強い仕事オタク、皮肉屋で自信家、みんなと仲良くよりも個人プレーが好きなところとか、Qに似てます。ボンドにツンデレなQちゃんのように、フレディも好きな女やライバル男に意地悪だったり傲慢だったりしつつ、気になって仕方がないのでついちょっかい出したり助けたりする、素直じゃない男子で可愛かったです。才気煥発で勝気、信念と正義のためには巨大な力の圧力や脅しにも屈しない反骨精神がカッコいい、でも感受性が強すぎてガラス細工の脆さと繊細さが危なっかしいフレディと、堂々と同性婚を公表はしても決して私生活の切り売りはしないデリケート&ミステリアスなベンが、どことなくカブります。

 フレディとベルの、恋人未満友だち以上な関係の心地よさ、じれったさは、大人の理性と臆病さ、ズルさがないまぜになってて共感。フレディとベルは、どちらかといえば仲良し姉弟みたいでしたが。わがままでマイペースで偏屈なフレディに振り回されながらも、キーキー怒ったりせず好きなようにやらせてあげるベルの大人の女の包容力、寛容さがカッコよかったです。イチャイチャしても同じベッドで寝ても、決して色っぽいムードや展開にならない二人が微笑ましい。生々しくない男女の愛って、何か素敵。複雑な感情や思惑、事情が交錯するけど、決してキーキーキャーキャーと小娘やガキみたいに騒いだりせず、他人にも自分にも抑えを求める。これが大人の恋愛ですよね。いい年したおばさんがウジウジメソメキャーキャー言ってるオトナ女子とか、気持ち悪いだけです。

 ベルと妻帯者のヘクターの不倫ロマンスは、よくあるシチュエーションでしたが。ヘクターって、決してゲスの極みではないけど…男ってほんと勝手だな~ズルいな~。つくづく女って損!と噴飯。現在でも決して働く女性の立場や地位は向上、改善しているとは言えませんが、当時のキャリアウーマンはほんと大変だったんだろうな~と、ベルの奮闘苦闘を見ていて思いました。でも、恋も仕事もバリバリなベルは、幸せな女性だな~と羨ましくもなりました。ベル役は、「エンジェル」や「つぐない」のロモーラ・ガライ。久々に見ましたが、ケイト・ウィンスレットをソフトに優しそうにした感じの美人になってました。ムチムチした体つきは、すでに熟女のエロさが。ヘクター役のドミニク・ウェストも、シブいダンディでカッコよかったです。番組制作チームの姐御的存在の熟女特派員役の女優さんは、どっかで見たことあるな~と思ったら、ドミ公の「フレミング」でも気風のいい熟女MI6職員を演じてた人でした。ベン、彼女と酔った勢いでヤっちゃうシーンがあるのですが、女らしい美女よりも男みたいな風貌の熟女が相手で、やっぱベン的にはやりやすかったことでしょうか

 当時のスエズ運河をめぐる英国の外交問題や、緊迫の国際情勢に関わる連続殺人事件の謎。真相を追うフレディたちに迫る危険。サスペンス・ミステリーとしても面白かったです。スパイがらみなところが、いかにもイギリス。当時のTVニュースの制作過程、制作風景も興味深かったです。イギリスといえばの貴族の館、優雅な上流社会の晩餐会とか正装も目に楽しかったです。

 THE HOURチーム再結成のシーズン2も楽しみ。それ以上に、ベンの最新主演ドラマ「LONDON SPY」が待ちきれない~!こっちはガチゲイ役だもんね。やっぱベンはそうでなくっちゃね
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橋と壁

2016-01-21 | 北米映画 15~21
 「ブリッジ・オブ・スパイ」
 東西冷戦真っただ中の50年代。保険専門の弁護士ドノヴァンは、ソ連のスパイ容疑で逮捕された老人アベルの弁護人に選任される。ドノヴァンの奔走でアベルは死刑を免れるが、数年後にソ連でもアメリカの軍人パワーズがスパイ容疑で拘束される。アベルとパワーズの交換実現のため、CIAはドノヴァンにその交渉を依頼。ドノヴァンは東ドイツへと赴くが…
 今年最初の劇場鑑賞映画♪
 スティーヴン・スピルバーグ監督×トム・ハンクス主演、というお馴染みかつ鉄板のタッグです。加えて、脚本がこれまた大物のコーエン兄弟。これで駄作になるはずがありません。期待通り、すごく面白かったです!スピルバーグ監督とハンクス氏のコンビ作の中では、いちばん好きかも。ご存知の通り、トム・ハンクスは私の幼心をときめかせた洋画初恋男、かつてのマイ・アメリカン・スウィートハート男。「ビッグ」のトム・ハンクスのカッコカワイさ、名演は神がかってたよな~と、すっかり、ますます恰幅のよすぎるおぢさんと化してた今作の彼を見て、しみじみと昔日に思いを馳せてしまいました…

 もちろん、現在のハンクス氏も大好きです。2度もオスカーを受賞し、数々の大ヒット作、名作に出演、今やハリウッドの大御所でありながら、偉そうにふんぞり返ってないし、二枚目役とかヒーロー役を演じるなんて勘違いも甚だしいこともしないので、私の中では好感度は高いままです。ただね~…往年のカッコカワイさを知ってる者からすると、男ってほんと変わるんだな~と、その変貌に愕然としちゃいます。特にハンクス氏の場合は、成熟とか老成という美しい形容詞を使うには、ちょっと憚りがあるんですよね~熟年とかダンディとかじゃなくて、おやぢ、おっさんって感じで。ランニングシャツ&トランクス姿で、ソファに寝ころんでビール飲んでるのが超似合いそう。この映画でも、ブヨブヨ感、デップリ感がハンパないです。でも、弁護士とか大学教授とかいった役がミスキャストにならないのは、実際にも頭が良くて頼もしく、人望があるハンクス氏の人柄の成せる技でしょうか。恰幅よすぎな体つきも、背が高く大柄なので、醜い中年太りではなく重厚な貫禄にもなってるし。徹底したオヤヂ化を嘆きつつ、見てると安心するというか親しみがわくという感覚は、新婚当時はスマートなイケメンだった夫が、数十年後には別人のようなおっさんになった、でも中身は変わっておらず、相変わらず面白くて頼もしい、みたいな幸福感に近いものが。

 ドノヴァン役も、ハンクス氏の地に近い役だったのでは。ちょっと神経質で皮肉屋、ネガティヴなユーモアの持ち主で、有能で行動力があるところなどは、往年の可愛いトムの頃と不変。酷い目に遭ってボヤいたりプッツンしたりする独特の表情や声も、私が恋をしていたトムと重なり懐かしいときめきを覚えました。非現実的なスーパーヒローじゃない、フツーのおぢさんが世界を揺るがす危機に挑み、命がけで奔走する勇姿は、多くの人に勇気と感動を与えます。ドノヴァンのキャラ、トム・ハンクスの演技もですが、映画じたいも国家間の政争に翻弄される人間の悲劇を描きつつ、シリアス一辺倒ではなくクスっと笑えるコミカルな風味も効いていて(ドノヴァンとロシア・東ドイツのお偉いさんとのやりとりは、かなりコメディ調)、ヒューマニズムも重苦しく押し付けがましい説教臭いものではなく、優しさと温かさがあるところも、スピルバーグ監督の傑作「E.T」や「未知との遭遇」同様に爽やかな感動を呼びます。
 ハンクス氏も好演してましたが、やはり最も目立ってたのは、アベル役のマーク・ライランスでしょう。オスカー候補も納得の名演、存在感でした。特に変わった言動をするわけではなく、終始淡々と静かなフツーのお爺さん風なのですが、醸し出してる悲哀が強烈。Mr.オクレを知的に上品にした感じが微笑ましくもあって。ドヴァノンへの信頼、友情を示す橋のシーンの彼には、ちょっとホロっとしてしまいました。アベルが贈ったドノヴァンの肖像画、カッコよく描きすぎだったのが笑えた。

 豊かで自由で平和なアメリカから一転、別惑星のように殺伐と峻厳な東ドイツの風景や人々、複雑な国情なども興味深く描かかれていました。当時の東ドイツにおける不自由さ、不安定さ、危険さは、筆舌に尽くしがたいものがあります。今の日本に生まれてよかった~と、あらためて痛感。厳冬の寒々しさも、効果的でした。ベルリンの壁が築かれるシーンとか、ラストのスパイ交換の橋とか、大がかりなセットにも瞠目させられます。さすがハリウッド映画。金のかけ方が、他の国の映画とは桁違い。
 アメリカ国民の、アベルへの憎悪、アベルを弁護するドノヴァンへの敵意は、確かに過激で近視眼的、無知蒙昧かもしれませんが、理解できないわけではない。地下鉄サリン事件や、山口の光市母子殺人事件を思い出してしまいました。あと、ソ連で捕虜になったパワーズへの、おめおめと捕まって!なぜ自殺しない!という厳しい非難と、東ドイツにスパイ容疑で拘束されたアメリカ人大学生を、CIAが自業自得と迷惑がってたことには、イスラム国の問題を想起ぜずにはいられませんでした。世界中が平和に豊かになるまでには、まだまだ長い橋、高い壁がありますね…
 
 
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ウィークエンド闘争の女

2016-01-20 | フランス、ベルギー映画
 「サンドラの週末」
 病気で長期療養していたサンドラに、会社は解雇を通達。同僚たちがボーナスをあきらめれば、サンドラの職場復帰が認められることに。サンドラは週末、同僚たちを説得して回るが…
 偶然ですが、続けてマリオン・コティアール主演作。ベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟監督作品です。この映画での好演で、マリ子はオスカーにノミネートされました。
 これまでのダルデンヌ監督の作品同様、これといってドラマティックな出来事も事件も起きず、特殊な人間も出てきません。最初から最後まで、淡々とした話と人間模様がドキュメンタリータッチで描かれています。でも、ぜんぜん退屈しないんですよね~。ハリウッドのド派手なブロックバスター映画のほうが、つまんねえな~早く終わんないかな~と苦痛になることが多い。奇をてらわず淡々としてるけど、いったいどーなっちゃうの?!という先の読めなさ、そして突きつけられるリアルでシビアな現実で観客を引き込む手腕が、相変わらず巧みなダルデンヌ兄弟です。

 ボーナスをあきらめて、と同僚たちを説得して回るサンドラ。不安と安堵、絶望と希望を行ったり来たり、息も絶え絶えな彼女の姿に身につまされ、こっちまで胸苦しくなりました。サンドラも悲痛でしたが、同僚たちにも同情を禁じ得ませんでした。悪人なんていない、みんな善き人たち。できればサンドラを助けたい、味方になってあげたい、でも生活のためにはお金が要る…サンドラの復職に投票できないと告げる彼らの、気まずそうで心苦しそうな様子も、観客の心をザワつかせます。サンドラにNoと言う同僚たちを、非情だと責めることはできません。お金、友人関係、夫婦関係、生活苦…ああ、哀しみの小市民。決して絵空事ではない、他人事ではない世界は、現実的すぎてイヤな共感、親近感を抱かせます。

 サンドラがこれまた、アクションやサスペンスのヒロイン以上に、見ててハラハラする女なんですよ。理不尽な解雇や不当な扱いに、激しい闘志を燃やしたり涙で窮状を哀訴したりするキャラではなく、常にどよよ~んとしんどそう。どうやら鬱を患って仕事を休んでたみたいですが、安定剤がぶ飲みしたり、衝動的に自殺未遂をしたり、おいおい~まだ治ってないじゃん?!もうちょっと休んでたほうがいいよ~と、心配になります。あれじゃあ復職は無理ですよ。本人のためにも、周囲のためにもならない。会社側の対応は、あながち不当とは言えないのでは、とも思った。
 とはいえ。こいつが辞めないとおまえらにボーナスやらん!とか言う会社、最悪だわ~。復職させないだのボーナスくれないだの以前の問題。労働基準法違反!と、私なら訴えるわ。もしくは、ボーナスがナンボのもんじゃ!バカにすんな!と啖呵きって辞めるわ。他の仕事探します。でも、それは上から目線的な考え方でしょうか。簡単に仕事を辞めることはできない、酷い扱いを受けてもしがみつかねばならない。日本人が思ってる以上に深刻で厳しい、ベルギーの社会の現実をあぶり出している映画です。

 疲れ果て、打ちひしがれ、何度も諦めそうになっても、小さな希望を信じて前に進むサンドラに、つらい社会生活を送る者として私も勇気づけられました。わたし頑張る!わたし負けない!的な、ポジティヴすぎないところに好感。一寸の虫にも五分の魂というか、自分はどうでもいい人間、どう扱われても仕方ない人間、なんて自己否定せず、小さな形でもいいから自分の存在証明、存在意義を確かめる必要が、生きるためには時には必要だな~と、サンドラを見ていて我が身を顧みました。ラストのサンドラの決断も、爽やかで小気味よかったです。困難や苦難だらけのままだけど、小さな希望の光が見えてプツンと終わり、もいつものダルデンヌ調。
 マリオン・コティアールの、情緒不安定なメンヘラ演技、ダメ女演技が秀逸。こんな人、いるよな~なリアルさです。ハリウッド女優なら、もっと感情的にオーバーな熱演になってたところを、デリケートにナチュラルに演じてたマリ子は、さすがフランス女優です。いろんな感情に揺れる大きな瞳は、台詞以上に饒舌。どよよ~んとした中、たまに見せる少女のように繊細な微笑みが可愛かった。
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奇皇后(11)~(40) 女帝への階段

2016-01-18 | 韓国のドラマ
 「奇皇后」第11話から40話まで一気に観たニダ!

☆ヤンデレ将軍
 スンニャンにとっては憎き母の仇タンギセは、スンニャンが女であることを誰よりも早く見破り、以来彼女に邪恋。スンニャンに鋭い目でにらまれたり、手厳しく拒絶されればされるほど興奮?して執着を募らせるタンギセが、何か可愛いですね~。脇役の中ではかなり美味しい役なタンギセを好演しているのは、「善徳女王」でミシルのバカ息子だった人ですね。あのバカ息子もいい味だしてたし、なかなかの役者ですね。顔がちょっと草なぎ+千原ジュニアなのが残念だけど…

 ↑ドラマの中と違い、仲良しなタンギセ&タルタルに癒されます
☆カモン♪
 壁に隠れながら、スンニャンに来い来いと笑顔で手を振るワン・ユ。え!何このシーン!超可愛いんですけど!いつもは憂愁で重苦しげなワンユが、ふいにこんな無邪気なことするとキュンキュンして心臓に負担が。
☆猿モムチャン
 ワン・ユの腹心の宦官、パン・シヌ役のイ・ムンシクさんが相変わらずの名脇役ぶり。坊さんに化けて町で噂話を流布するシーン、半裸がセクシー!おっさんなのに、いいカラダしてます。松じゅんとムンシクさんなら、躊躇なく後者を選ぶわ~。
☆ザコキャラもチェキラー
 元で迫害されている高麗人が住む村。村長の後ろにいつもいる男の子が、なかなか可愛いイケメン。
☆愛人惨殺!
 嫉妬に狂ったタナシルリは、兄タンギセに側室パク・オジン抹殺をおねだり!外出したパクオジン一行を皆殺し!という凄惨な展開に。か、可哀想~。巻き添えを食った女官たちも非業の最期すぎますが、パク・オジンの薄幸さには涙。貢女として元に連れて来られ、皇太后に無理やり皇帝の側室にされ、皇帝は孕ますために一回ヤっただけであとは知らん顔だし、あげくは臨月で惨殺されるとか…
☆洞窟出産!
 命からがら逃走し、洞窟で独り出産するスンニャン。出産経験のある女性が見たら、あまりにもリアリティに欠けるシーンだったのでは。生まれたばかりの赤ちゃん、湯船につけたばかりみたいだったし。出産直後、すぐに走り回ったりするスンニャン、どこまで剛健なんだ!

☆尼僧惨殺!
 ええ~?!な展開で、スンニャンの産んだ赤ちゃんは、妊娠したふりしてたタナシルリが棚ぼたでゲット!赤ちゃんを拾った尼僧たちは、口封じのために毒殺、放火して証拠隠滅!タナシルリ、バチあたりすぎ!
☆奴隷オークション
 謎の商団メバクに捕まり、奴隷市に出品されたスンニャン。現代の美術品オークションみたいな競り合いが笑えた。
☆ヘタレ皇帝
 愛するスンニャンが失踪、ヨンチョルのプレッシャーなど、ストレスで皇帝テファンは喋れなくなる。おまけに昼間っから泥酔。なんかね~テファンってイライラするわ~。いつまで経っても甘ちゃんで、イケメンな見た目以外に魅力を感じないんですよね~。
☆料理対決!
 側室選びコンテストで、側室候補たちが料理対決。くだらないとは思いつつ、出来上がった各料理はすごく美味しそうでした。

 ↑鬼女な皇太后&タナシルリですが、中の人たちは可愛い
☆ジュンスの兄?
 テファンの後ろにいつも控えている、二人の台詞なしな護衛官。背が高いほうは、元東方神起のジュンスに激似。劇中の挿入歌をジュンスが歌ってるし、もうジュンスにしか見えないのだけど。何年か前にデビューした、ジュンスの兄ちゃん?他人にしてはそっくりすぎる。
☆イケメン拷問
 メバクに潜入する護衛長。正体がバレて、拷問される。フツーの人なら死んでるだろうけど、救出された護衛長は傷跡ひとつなく何もなかったかのように、いつも通りにワン・ユに仕えてます。

☆教えて!タルタル先生
 ペガン将軍の養女として側室になるスンニャン。彼女の教育係となったタルタルは、いつしかスンニャンにとって頼もしいアドバイザーに。性格が似てるからか、なかなかウマが合っていい感じな二人。中二病のテファンより、タルタル先生のほうがスンニャンとお似合いです。

 ↑護衛長役のクォン・オジュンさんがカッコいい!ハ・ジウォン、イ・ムンシクとの3ショットは、懐かしの「チェオクの剣」同窓会
☆お恵みを~
 変装が得意なパン・シヌは、ワン・ユの新しい部下となった高麗村の元村長マンソクと共に、乞食に化けてスパイ活動。乞食っぷりが堂に入りすぎてて笑える!乞食やらせたら世界一?なムンシクおじさんです。
☆犬蠱術!
 策略家なスンニャンに歯が立たず、くやぴー!!な日々のタナシルリ。とうとう呪術に頼るところまできた。犬の悪霊でスンニャンを呪怨!化け猫じゃなくて化け犬なところが、いかにも韓国。

 ↑タナシルリ可愛い
☆スクールウォーズ?!
 烏合の衆を軍隊に鍛えるワン・ユ。鬼特訓!友情と信頼!血と涙の汗の感動!ワン・ユが山下真司に見えた…
☆タコ部屋で再会!
 朝鮮といえばの強制収容所での苦役。スパイとして潜り込んだマンソク。彼と高麗村で一緒だったイケメンくんが再登場!よかった!生きてたんだね!
☆尼僧惨殺!again
 タナシルリに殺されたはずの尼僧が生きていた!マハ王子がタナシルリの本当の子ではないことを知る彼女は、スンニャンにそれを証明すると確約した直後、また襲われて…可哀想~。スンニャンもさあ、大事な証人なんだから自分のもとで匿えよ~。
☆さよならヨンチョル一家
 栄枯盛衰…巨星ヨンチョルも、ついに。そして、娘のタナシルリも。タファンを操り、容赦なく敗北者を血祭にあげてゆくスンニャンが怖い。
 タナシルリの公開処刑は、「The Tudors」のアン・ブーリンみたいで悲痛でした。タナシルリ、確かに極悪でしたが、見た目が可愛かったし何か憎めないところもあって好きだったなあ。ヨンチョルが市中引き回しになるシーンや、タナシルリの処刑シーンもですが、民(エキストラ)が少なすぎてショボい~。

☆また悪女皇后
 新しい皇后は、ペガン将軍の姪バヤンフト。美人ですが、ハーフモデル系?タナシルリのほうが可愛くて好き。バヤンフト、こいつがまた絵に描いたような性悪女。激情型のタナシルリと違い、陰険陰湿悪女。今のところ、女子高生、OLレベルの悪さしかしてませんが。
☆拷問コント
 このドラマ、悲惨な拷問シーンが多い。主要キャラのほとんどが、拷問経験者。うぎゃー!ぐわー!と、何だかみんな楽しそう。どれだけ苦しそうに悶絶できるか競ってる感じ。次は私、俺!と、俳優たちは順番を待ってそう(笑)。
☆かまってちゃん夫
 冷たいスンニャンの気を惹こうと、影絵を催すタファン。また影絵かよ。芸がないな~。案の定、興もなげなスンニャン。それでまた不安になったり怒ったりする幼稚な構ってちゃん皇帝に、スンニャンじゃなくてもイラっとします。いくらイケメンでも、あんなにベタベタしてくる男、ウザいですよね~。
★総括
 いや~おもろすぎてBSの週一放送が待ちきれず、レンタルで一気に観てしまいました。
 チャンバラ、宮廷陰謀劇、純愛メロドラマ、ラブコメがいい配分でブレンドされてるのが楽しい。最初の頃はかなりあったラブコメ要素が、終盤にさしかかってほとんどなくなってるのは、しょーがないにしても、ちょっと寂しい。
 ヨンチョル一家とワン・ユ組が、みんないい味だしてます。面白い韓ドラは、脇役が秀逸ですよね。タンギセが特に好きです。
 だんだん恐ろしい妖婦と化してるようなスンニャンが、凄絶でスリリング。ハ・ジウォン、やっぱ素晴らしい女優。あの鋭さと貫禄、日本の同世代の女優には無理でしょうし。
 チュ・ジンモのカッコよさも神。でも、ハ・ジウォンの存在感と脇役の濃さのせいで、かなり印象が薄いのが気になる…
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シャチに足を食いちぎられた女!

2016-01-17 | フランス、ベルギー映画
 「君と歩く世界」
 失業者のアリは、幼い息子サムを連れて姉の家に転がりこむ。クラブの用心棒の職を得たアリは、ステファニーというシャチのトレーナーと出会う。その直後、ステファニーは事故で両足を失ってしまうが…
 「真夜中のピアニスト」や「預言者」などの名匠ジャック・オディアール監督の作品
 「Far From The Madding Crowd」でmy イケメンレーダーをビビビ!とさせたベルギーの男前、マティアス・スーナールツの出世作を、やっと観ることができました~♪
 マティアスといえば、ゴリマッチョ。この映画の彼も、とにかくゴツい!イカちー!素敵なゴリマッチョぶりに、こっちまでウホウホですわ。もうね、きれいなだけのヒョロい草食男子など、マティアスの前では軟弱なオカマにしか見えません。

 ゴツいゴリマッチョですが、暑苦しさのない汗臭くない冷ややかなところが、これまたいいんですよね~。悪役じゃなくても、何か冷酷そうで怖いところも、マティアスの独特さ、魅力でしょうか。危険を常に身にまとってる男。関わると無事でいられないと知りつつ、惹かれてしまう。そういう男にハマっちゃう女、多いですよね。甘い優しい平穏な幸せを望むなら、マティアスを選んではいけません。
 この映画のマティアスもね~。アリって悪い男じゃない、、むしろ善人なんですが…無頼漢オーラ、ろくでなしムードが全身からムラムラ出てるんですよ。ちょっとオツムがアレなのかな?と思ってしまう言動が、微笑ましかったりシャレになんなかったり。飼いならせない野生動物の獰猛さと、嘘やズルさとは縁のない純真さがない交ぜになったアリを、マティアスが台詞よりも饒舌な肉体を駆使して、ワイルドに可愛らしく演じてます。

 抑えきれない荒ぶる血潮を、ストリートファイトで発散させるアリ。本物の格闘家のようなマティアスのヘヴィな肉体、リアルなファイターぶりは圧巻。こんな役、演技、日本のヘナチョコイケメンには無理です。暴れてるマティアスはヤバいのですが、ヒロインへの不思議な優しさ、息子への不器用な愛は、邪気や悪意がなくてピュアそのもの。ステファニーには何の恩も負い目もないというのに、足を失って自暴自棄、うつ状態のステファニーの要求やわがままに従順に応えたり、もうセックスできないかもと不安がるステファニーに、じゃあヤってみる?と無邪気に提案するところとか、ステファニーじゃなくても心がほっこりします。ステファニーとのやりとりでは、ちょっとトボけた味わいも出してて、巨大な子どもみたいに可愛いマティアスです。

 ステファニーとアリのラブシーンも、生々しくも温かみがあって、いいセックスしてるな~って感じ。肉布団なマティアスが素敵。マティアス敷いて寝たら、よく眠れそう。見事すぎる全裸すっぽんぽんシーンもあり。デカいのブラブラさせてます
 ステファニー役は、オスカー女優のマリオン・コティアール。日本の24時間テレビだったら、可哀想だけどけなげに頑張る障害者、みたいなお涙ちょうだいヒロインになってただろうステファニーを、メソメソ湿っぽくなく、でも押し付けがましい頑張り屋さんでもなく、力みのない、しなやかなヒロインとして演じてたマリ子でした。情感にあふれたステファニーの再生にも共感、好感。
 お金がなくてヒッチハイク、列車の中で他の乗客が残した残飯を食べるアリ親子。賞味期限切れの食べ物を職場から持って帰るアリの姉。シビアな就職難とリストラ。社会の底辺で生きる人々のくたびれた姿も、切実でリアルでした。

 ↑1977年生まれの同い年、ヤバいけど可愛いゴリマッチョ、というキャラがちょっとカブってるトム・ハーディとは、“The Drop”という作品で共演してるマティアス。仲良しな二人に萌え~マティアスは今春、「フランス組曲」と「リリーのすべて」が日本公開
コメント (2)
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カエルの王子さま

2016-01-15 | 日本映画
 アカデミー賞のノミネーションが発表されましたね!
 衝撃的な番狂わせのない、大方の予想通り、無難な顔ぶれでした。そして、例年以上に華やかで、日本の映画ファンにも馴染のある顔ぶれでした。特に主演助演男優は、私の大好きなスターがキラ星のごとく犇めいています。いよいよ初受賞の勢いなレオナルド・ディカプリオと、今やハリウッドNo1のスターであるマット・デーモン、新・英国俳優王のマイケル・ファスベンダーの候補入りは当然の結果ですが、ギリギリラインだったトム・ハーディとマーク・ラファロも選ばれて狂喜&安堵!とにもかくにも、これだけのメンツがそろう授賞式が楽しみ!
 女優では、レジェンド女優のシャーロット・ランプリングの初ノミネートが、映画ファンにとっては嬉しいですね。あんた誰?な女優や、まだ若くて今後もチャンスがいっぱいある女優、またあんたか~な女優よりも、ここはランプリングおばさまに花をもたせてあげたいです。
 候補作品の中では、「レヴェナント 蘇えりし者」と「スポットライト 世紀のスクープ」が特に観たいです!
 ぜんぜん関係ない話ですが。いまTVでMステ観てるのですが、出演者の中に槇原敬之と平井堅が。画面的にこれOKなのかな~な、濃厚すぎるゲイゲイしさに胸焼けが。しかもトークのコーナーで、堅子さんが冗談で歌詞をパクリとか拝借とか言ってる後ろに、笑顔のマッキー姐さん、苦笑いしてる他の出演者、という場面がスリリングすぎ。歌より美味しかったです。

 「箱入り息子の恋」
 市役所勤務の健太郎は、30過ぎても親と同居中の独身男。恋人も友だちもいない健太郎の将来を心配する両親は、息子の結婚相手を求めて婚活。一方、健太郎は雨の中で出会った女性に恋をするが…
 最近とても気になる男、去年の紅白にも出演するなどミュージシャンとしても人気の星野源主演作。
 源ちゃんの演技、初めて見ましたが…なかなかの役者じゃないですか!見た目も演技も、個性的で味がある、でも独特すぎない強烈すぎない、いい感じに地味なところにも好感。

 決してイケメンではない、どちかかといえばブサイクなんだけど、何か可愛いんですよね~。ブサカワいい。たまに森山未來に似て見えたのは私だけ?小柄で、ちょこんとした風貌もキュート。声も好きです。眼鏡も似合ってて、ダサ男なはずなのにオシャレに見えてしまった。

 ルックスも好きですが、演技もチャーミングでした。几帳面で規律正しく、知的レベルは高いけど他人に関心がなくコミュニケーションが苦手、自分ルールを厳守して生きている、ちょっとアスペルガー症候群っぽい健太郎を、キモ可愛く演じてた源ちゃんです。昼休みは家に戻ってランチ、夜は自室で黙々とゲーム、ペットのカエルと無言の対話、というコミュ障&ぼっちシーンの源ちゃんは、かなり不気味、でもやっぱ何か可愛らしい。源ちゃんみたいに可愛い男が演じてなかったら、健太郎ってかなりヤバい男になってたかも。婚活用の写真の健太郎、まるで5人ぐらい殺した通り魔のまともだった頃、みたいな感じで笑えた。

 健太郎を心配して、息子のために婚活する両親。親子のぎこちなくもほのぼのしたやりとりが、コミカルで微笑ましいです。健太郎と似たような境遇(笑)の私は、ちょっぴり身につまされちゃったが。仕事以外はほとんど家から出ない、浪費が嫌い、結婚や恋愛に興味がない、他人と必要以上に関わりたくない、という健太郎と私の共通点がイタいですでもまあ私は、昼休みに家に戻ったりはしないし、会社の連中にも調子よく適当に合わせてるし、たま~にだけど夜遊びもするし、ゲームもしない、カエルと対話もしませんが。

 確かに、私だって健太郎みたいな息子がいたら、すごく心配したり不安にもなるだろうけど…彼や私みたいな人間って、そんなに不幸で哀れな存在なのでしょうか?いい年して引きこもりだったり、DVやアル中ヤク中、無職だったりしたら問題ですが、健太郎は真面目に働いてるし(しかも公務員!)、老後独りで生きるための貯蓄もしてるし、おかしな趣味も性癖もない。誰にも迷惑かけず、静かに孤独に安住することって、いけないことでしょうか。孤独に安住してた健太郎に私は共感を抱いてたので、恋を知って生まれ変わろうとする健太郎の変貌には、ちょっと寂しい気持ちにも。孤独に安住することは間違いだと君も気づいて!と彼に言われたようで。

 恋を知って、見た目もキャラも変わっていく健太郎のビフォーアフターも、源ちゃんは可愛く巧みに演じてました。コンタクトにして、若者らしい服を着た源ちゃんは、フツーにイケてる男子。初恋にモジモジウキウキドキドキしてる源ちゃん、少年のような初々しさでキュンキュンしちゃいましたわ。
 驚いたことに、源ちゃんのHシーンもあり。

 ガリガリで非セクシーですが、キスとか童貞とは思えぬ慣れた感じが。さすが、aikoを捨てて二階堂ふみに乗り換えた男!奈緒子の部屋でHの最中、彼女の両親が乱入するシーンで、すっぽんぽんも披露!滑稽だけど悲痛な全裸熱演が切なかったです。ケツ出して頑張ってました。 

 奈緒子役の夏帆は、うう~ん…歯茎が気になって…奈緒子、いくら盲目という障害があるとはいえ、大人の女なのに乙女すぎ。もうちょっと自己や自立心があってもよかったのでは。健太郎の両親役の平泉成と森山良子、奈緒子の両親役の大杉連と黒木瞳も好演してました。特に黒木さんの、娘の恋を応援するきれいで優しいママが素敵でした。

 可愛い上に多才な源ちゃん、モテモテなのも当然ですね。笑顔が好き!ミュージシャンな彼も素敵ですが、もっと俳優の彼が見たいです。ドラマにもっと出てほしい。「コウノドリ」観ればよかったな~。
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鶯の初音きかせよ

2016-01-13 | 映画雑記
 今年はいっぱい劇場で映画を観たい!いつになく私、本気(マジ)です!
 この冬~早春にかけて絶対に観たい映画を、どどーんとリストアップしてみました~

  白鯨との闘い

 ロン・ハワード監督、クリス・ヘムズワース主演。ベン・ウィショー出演その1です。

  メモリーズ 追憶の剣

 イ・ビョンホン久々の時代劇。華麗なる殺陣と男前ぶりに期待。

 インサイダーズ 内部者たち

 もひとつビョンホン主演作。ヤーさん役も久々で楽しみ。

  ドリームホーム 99%を操る男たち

 ちょっと大人の男っぽくなってるアンドリュー・ガーフィールド主演の社会派ドラマ。 

  ビッグマッチ

 イ・ジョンジェが久々に肉体美を解禁してます。

  オデッセイ

 これが今春の真打!マット・デーモン主演の大ヒットSF大作です。

  キャロル

 名匠トッド・ヘインズ監督の百合映画。百合より、やっぱ薔薇のほうがいいな~…

  スティーブ・ジョブズ

 マイケル・ファスベンダーがカリスマを渾身の熱演。

  ロブスター

 コリン・ファレル主演のファンタジー映画。ベン・ウィショー出演その2です。

  リリーのすべて
 
 エディ・レッドメインがノリノリで女になりきってます。ベン・ウィショー出演その3です。

  無伴奏

 小池真理子原作の映画化。池松壮亮と斉藤工が共演。
 
  背徳の王宮

 チュ・ジフンとキム・ガンウが、スキャンダラスでエロチックな時代劇に挑戦。

 皆さまのマスト映画、イチオチ映画は何でしょうか?
 陽春も、いい映画、いい男で充実したcinema lifeをLet's enjoy together!
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ブラッディキャッスル

2016-01-11 | 日本映画
 ゴールデングローブ賞が発表されましたね!
 
 作品賞(ドラマ) 「レヴェナント 蘇えりし者」
 作品賞(コメディ)「オデッセイ」
 監督賞 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
 主演男優賞(ドラマ) レオナルド・ディカプリオ
 主演女優賞(ドラマ) ブリー・ラーソン
 主演男優賞(コメディ)マット・デーモン
 主演女優賞(コメディ)ジェニファー・ローレンス
 助演男優賞 シルベスター・スタローン
 助演女優賞 ケイト・ウィンスレット
 外国語映画賞 「サウルの息子」

 まずはレオ、おめでと!

 これで一気呵成にオスカーも受賞ですね!初受賞で感極まるレオが見たい!
 マット・デーモンの受賞も嬉しい!

 レオとマット、また共演してほしいな~。意表を突いて、コメディとかで。
 助演女優賞が、最大のサプライズだったケイト・ウィンスレット!

 おケイさんご自身もビツクリだったご様子。レオと彼女のタイタニックコンビ、久々の再会にもファンは狂喜!
 そしてそして!TV部門の主演男優賞に、何と!ガエル・ガルシア・ベルナル!

 メキシコのスターが、アメリカのテレビドラマでまさかの受賞。「モーツアルト・イン・ジャングル」早く観たい!
 その他の受賞者も、レディガガとかスタローンとかジェニファー・ローレンスとか、例年以上に派手でミーハーな結果だったGG賞。来たるオスカーノミネーションはどうなるか、ドキドキワクワクで発表を待ちたいですね

 レオ&おケイ、久々のツーショット。そろっての受賞に、タイタニック以来のファンは嬉しさと隔世の念。それにしても。いつ見てもこの二人、姉弟にしか見えんのお。レオのほうが年上なのにね。ハリウッドの大スターとして貫禄も恰幅も備えたレオが、今でもおケイの前では可愛い男の子に見えるところが、何か微笑ましく温かい気持ちにさせます。今をときめく演技派マイケル・ファスベンダーも、おケイにとっては可愛い舎弟も同然!

 「蜘蛛巣城」
 戦国時代。謀反を鎮圧した鷲津武時は、森で出会った妖婆から蜘蛛巣城の主になるという予言を受ける。それを知った武時の妻浅茅は、迷う夫を唆し主君を殺させる。予言通り、武時は城主となるが…
 「リア王」が原案の「乱」同様、シェイクスピアの「マクベス」をアレンジした黒澤明監督の1951年の作品。スピルバーグ監督や宮崎駿監督に多大なる影響を与えたことでも知られる名作です。
 いや~。聞きしに勝る傑作でした!今まで観た黒澤監督作品の中では、いちばん好きかも。なかなかお目にかかれない、異色の時代劇ですよね~。本格的時代劇の骨太さとダークファンタジーの妖しさが融合していたのが、独特かつ斬新でした。印象的なシーンはたくさんあるのですが、特に強烈で好きなのは、森での妖婆の予言シーンと、ラストの矢浴びシーンです。あの怒涛の矢のシャワー、実際に三船敏郎に向かって放ってるとか。大胆で無謀すぎる演出に驚嘆。サクっと手軽にできるCGとにはないリアリティと迫力。この2シーンは、圧巻の映像美と演出です。50年以上も前の作品なのに、いま観てもスタイリッシュでユニーク。黒澤監督の偉大さを、今さらながら思い知った私です。最近のドラマや邦画の時代劇は、お花畑系か軽薄系ばかりでトホホ。本格的な時代劇を作るための人材が、絶望的に不足してるんでしょうか。

 美しいモノクロが、荒々しく血みどろな内容や場面を、耽美的なヴェールで包んでいるようで素晴らしい。演出や演技に色濃く出ている能のテイストが、妖しく強烈です。
 主演の二人、戦国時代のマクベスとマクベス夫人である武時と浅茅夫妻を演じている三船敏郎と山田五十鈴が、凄絶でディープインパクト!

 猛々しいけど、実は小心者で優柔不断、重要なことは自分ひとりでは決定できず、流されやすくて操られやすい武時は、今の時代の政界や経済界にもいそうな男。こういう人が権力を握ってはいけないんですよね~。三船敏郎の、今の時代の俳優にはない男くささ、スケールの大きさ、重厚さが素敵です。その三船敏郎を圧倒、子どものような存在にしてしまっているのが、浅茅役の山田五十鈴。こ、怖い!あの白塗りメイク顔、仕草、歩き方、声音、すべてがまさにもののけ!妖怪じゃないのに、妖怪以上の禍々しさ、面妖さ。放ってる妖気、凄気がハンパない。子どもが見たら泣きますよ。座って喋ってる時の、あの人形のように身じろぎもしない姿が、おどろおどろしい~。不気味な衣擦れの音、すうっと暗闇の中に消えてゆき、すうっと再び現れるシーンも、妖女じみてて恐ろしい。ハイライトはやはり、マクベス夫人といえばの血がとれぬ~と狂ったように手を洗うシーン。黒澤明監督も絶賛したという山田五十鈴の名演には、目がクギヅケです。希代の大女優と、きれいなだけ可愛いだけ自称女優との違いを、まざまざと思い知ってしまいます。
 マクベスといえば。マイケル・ファスベンダー主演の「マクベス」が、今年日本で公開!マクベス夫人役は、マリオン・コティアール。うう~ん?マリ子は美人だし女優魂もあるので好きですが、悪女役や狂女役は似合わないような。マクベス夫人といえばの毒々しさ、貫禄、狂気はマリ子にはないし…まあ、山田五十鈴の強烈な名演怪演を凌駕できる女優って、なかなかいないとは思いますが…
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