まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

2017年my cinema lifeを総括する

2017-12-30 | 映画雑記
 いよいよ明日は大晦日。皆さま、いかがお過ごしでしょうか。早いもので、もうすぐ2017年も終わりですね。やれなかったこと、やっちまったこと、今年もたくさんありました…年齢と同様に失敗と後悔を重ねても、なかなか人格も人生も深まらないのがイタいけど、せめて優しい人間になれますように、穏やかな日々を送ることができますように、という祈りを抱いて、新年を迎えたいです。
 今年もいろんな映画を観ましたね!私が今年、劇場に足を運んで観た映画は…

 1月  -
 2月 「沈黙 サイレンス」 
    「マグニフィセント・セブン」
 3月 「マリアンヌ」
    「ラ・ラ・ランド」
 4月 「たかが世界の終わり」
 5月 「ムーンライト」
    「ライオン 25年目のただいま」
    「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」
 6月 「たたら侍」
    「夜空はいつでも最高密度の青色だ」
 7月 「ハクソー・リッジ」」
 8月 「ザ・マミー 呪われた砂漠の王女」
    「ワンダーウーマン」
 9月 「ダンケルク」
10月 「エル ELLE」
11月 「マイティー・ソー バトルロイヤル」
12月 「オリエント急行殺人事件」
    「婚約者の友人」
 
 18本!ガーン!去年より少ないじゃん!今年も映画ファンとは名乗れぬテイタラクですねそんなにたくさん観てないくせに、今年もおこがましくマイ・ベスト映画、男優、女優を発表したいと思います(^^♪今年日本公開作で、DVD観賞も含みます。

best 5 movies in 2017

 1位 「エル ELLE

 ヴァーホーヴェン監督×イザベル・ユペールの、まさに混ぜるな危険!コンビが放った、猛毒&劇薬お笑い映画。私のツボにストライク!不謹慎すぎて、いい子さんが多い日本ではあまり受けなかったみたいですが、私にとっては映画史に残る傑作です。

 2位 「哭声 コクソン

 ガーン!年の瀬になって、ファン・ジョンミン目当てで何の気なしにDVDで観たのですが、いろいろスゴすぎて他の作品をふっ飛ばしてしまいました。やっぱ韓流、あなどれん!

 3位 「マイティー・ソー バトルロイヤル

 アメコミ大好き!コテコテなコメディになっていて、楽しさも倍増!いい男度の高さもアメコミ映画の中では屈指!

 4位 「沈黙 サイレンス

 ショッキングかつ美しい映画でした。日本への敬意と賛美が端々で感じられたのも好印象。

 5位 「ワンダーウーマン

 強く美しいヒロインって、ホント素敵ですよね!カッコいい女性映画が、もっと観たくなりました。
 
 ちょっと世間の絶賛とは温度差があるけど、「ラ・ラ・ランド」も「ムーンライト」も好きです。「マンチェスター・バイ・ザ・シー」「ネルーダ」「MASTER マスター」「新感染」「ゲット・アウト」「パターソン」など、劇場でもDVDでも観られなかった作品が多いのが心残り。

best 3 actors in 2017

 1位 クリス・プラット 「マグニフィセント・セブン」「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス」「パッセンジャー」

 明るくてオチャメ、優しくタフでセクシー。今や理想のオールアメリカンナイスガイNO.1なクリプラ。今年は3作も日本で公開され、来日も果たしてますます人気と知名度をアップさせました。私生活でも離婚!という話題を提供するなど、スターらしさを遺憾なく発揮。来年も人気シリーズが公開予定。たまにはシリアスなドラマとか恋愛ものにも挑戦してほしいな。

 2位 アンドリュー・ガーフィールド 「沈黙 サイレンス」「ハクソー・リッジ」

 問題作、話題作に主演し、オスカー候補にもなるなど、いい仕事したな~。今年もっとも輝いていた俳優と言えるガーくん。いい男、いい役者に成長しました。

 3位 ピエール・ニネ 「婚約者の友人」

 オゾン姐さんも手を出さずには(起用せずには)いられなかった、その唯一無二な個性と魅力!繊細すぎる脆い美男、というのがハマリ役になってるみたいだけど、本来はコメディが得意なニネっち。悲劇的な男の役を演じてる新作も楽しみだけど、また楽しい喜劇にも出てほしいものです。

 その他、「アシュラ」「哭声 コクソン」のファン・ジョンミン、「ライオン 25年目のただいま」のデヴ・パテル、「ラ・ラ・ランド」のライアン・ゴズリング、「たかが世界の終わり」のギャスパー・ウリエル、「マイティー・ソー バトルロイヤル」のクリス・ヘムズワーストム・ヒドルストンマーク・ラファロ、「エル ELLE」のローラン・ラフィットジョナ・ブロケ、「ダンケルク」のトム・ハーディ、が印象的な演技と存在感でした。


best 3 actresses in 2017

1位 イザベル・ユペール 「未来よ こんにちは」「エル ELLE」

 彼女以外の誰が、ですわ。まさに世界最強、無双の大女優!来年もまた、冷酷にシレっとスットボケた彼女に度肝を抜かれることでしょうか。

2位 ガル・ガドット 「ワンダーウーマン」

  美!強!映画史に残るヒロインを快演!媚ないカッコよさ可愛さに、同性からの評価も高かったのではないでしょうか。

 この二人以外、強烈で鮮烈な女優ってパっと思いつかないのですが、強いて挙げれば「マリアンヌ」「たかが世界の終わり」のマリオン・コティアール、「ラ・ラ・ランド」のエマ・ストーン、「婚約者の友人」のパウラ・ベア、の好演が印象に残ってます。

 皆さまのベスト映画は?ぜひお聞かせください!
 来年も元気に楽しく、たくさん映画を観たいですね!Let's enjoy cinema life together!
 皆さま、よいお年を~
コメント (6)
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娘を探して三千里

2017-12-26 | ドイツ、オーストリア映画
 師走のbeau garçon映画祭⑤
 「消えた声が、その名を呼ぶ」
 1915年のオスマントルコ。少数民族であるアルメニア人への弾圧が暗い影を落とす中、妻子と幸せに暮らしていた鍛冶職人のナザレットは、突然憲兵によって家族と引き離され、砂漠で奴隷のような労働を強いられる。瀕死の傷を負い、声を失いながらも虐殺を生き延びたナザレットは、死んだと思い込んでいた双子の娘が生存していると知り…

 生き別れた肉親を探して遠い異国へというお話は、「ライオン 25年目のただいま」と似ていますが、こちらの作品のほうが壮大で激動に満ちた波乱万丈映画でした。社会や生活、自然の過酷さや厳しさに心身ともボロボロになりながらも、挫けずに果敢に立ち向かい乗り越えるナザレットの姿は、まるでゲームオーバーのない冒険ものRPGみたいでした。

 トルコからリビア、レバノン、キューバ、そしてアメリカへと、気が遠くなるような移動を繰り返すナザレットの遥かなる旅路には、見ていて旅心を誘われるよりも、重い疲労を覚えました。苛烈で悲惨なことばかり起こるので、旅気分ではなく悪夢の追体験をしてしまうみたいな。とにかく気が滅入る展開、シーンのてんこ盛りな映画でした。

 壮絶な艱難辛苦の中、双子を探して三千里の旅を続けるナザレット。やっとたどり着いた外国の町で、不運なすれ違い。なかなか出会えないもどかしさもさることながら、絶対にあきらめないナザレットの執念深さは、崇高であると同時に狂気じみてもいました。私の親なら、すぐにあきらめてるでしょうし不屈の精神以上に、超人的な気力体力が必要。そして、運の良さも。まさに神も仏もない生き地獄を、神も仏もいる運の良さでサバイバルしてたし。神さまを呪いたくなる、神さまを信じたくなる人生です。傷ついたナザレットに手を差し伸べてくれる人たちの、掛け値なしの善意と優しさが心に沁みました。外国で優しくされたためしのない私には、羨ましいかぎりでした。優しくされる、愛されるって、やはり天性のものが必要なんですね。

 アルメニア人虐殺とか、本当にあったこととは信じたくない、世界最大の黒歴史のひとつです。虐殺と同じぐらい怖かったのが、ナザレットがアメリカで受けたいじめ。基本的には明るくておおらかなアメリカ人だけど、移民や異人種に対する狭隘で暴力的な差別偏見を目の当たりにすると、アメリカ人が世界で一番醜く愚かに思えてしまいます。トランプさんって、こういった連中に支持されてるんだろうな~。まさに憂国のアメリカです。すぐに弱い女性を輪姦しようとする、アメリカ映画ではお馴染みな、アメリカ人のレイプ好きなところも不愉快。
 ナザレット役は、お気にのボーギャルソンの一人、タハール・ラヒム。

 どの作品でも魅力的なラヒムくんですが、この映画の彼が今までいちばんイケメンに見えたかも!たくましくもナイーヴな役がオハコなラヒムくんなので、その究極系みたいなナザレット役は、まさに適役と言えましょう。台詞がほとんどない演技、エモーショナルな表情と仕草が切なかった。どんな時も悲しみに潤んだ瞳が美しくて胸キュン。若々しすぎて、あんな大きな双子のパパには見えませんでした。どう見てもお兄ちゃん。ピュアな少年っぽいところも彼の魅力です。チャップリンの映画を観て笑顔になるシーンのラヒムくんが、可愛いくて悲痛でした。

 フランス映画でパリに住む移民とか演じてるラヒムくんは、アラブっぽさが濃厚なのですが、この映画で生粋の中東人に囲まれれた彼は、西洋人っぽく見えたのが面白かったです。薄くない、でも濃すぎない、というのも彼の魅力です。不幸で悲しい役ばかりのラヒムくん。数少ないコメディ「サンバ」の時みたいな(といっても、この映画でもかなり逆境に苦しんでる役でしたが)明るくハッピーな彼にも会いたいものです。
 今年のカンヌ映画祭で、ダイアン・クルーガーが女優賞を受賞した「女は二度決断する」も楽しみな、ドイツの俊英ファティ・アキン監督の作品。過去の作品も高く評価されたものばかりみたいなので、機会があればぜひ観たいものです。

 ↑他のボーギャルソンに比べれば、日本で公開されてる出演作が多いタハール・ラヒム。そのほとんどが名匠の作品で、クオリティが高いのもボーギャルソンの中では群を抜いてます。最新作は、ルーニー・マーラとホアキン・フェニックス主演のキリスト映画“Mary Magdalene ”です
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黒く煌めく男

2017-12-24 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭④
 「汚れたダイヤモンド」
 強盗団の一員ピエールは、長年音信不通だった父が、精神を病み野垂れ死にしたことを知る。葬儀で父の兄ジョセフ、その息子ガブリエルと初めて会ったピエールは、代々続く宝石商の生家から父を追い出し、財産を奪った彼らへの復讐を誓うが…
 逆境の中で育ち、反社会的な人生を歩んでいた主人公が、その魅力と才能を使って金持ち一族に近づき獅子身中の虫となって復讐する、というお話は韓流ドラマの定番ですが、よくある設定でもフランス映画だと、味わいに深いコクと苦みがあります。

 陳腐な復讐ものと違っていたのは、犯罪者や冷徹な者はいても悪人は誰ひとりいない、ということ。破滅させたいはずの相手が、しだいに自分にとってかけがえのない存在になっていくことで狼狽、葛藤し苦悩するピエールの揺れる心理が、丁寧に繊細に描かれていました。ピエールと彼に関わる男たちとの関係が、まるでシェイクスピアのように残酷で悲劇的。みんな決して真人間ではなく、社会的にも人格的にも欠点はあるけど、不器用ながら優しさと愛情を秘めている。ジョセフと強盗団の親方がピエールに示す父性が、切なくて泣かせます。ピエールにとって憎むだけなら、復讐を遂げるだけなら、どんなに楽だったことでしょう。愛のほうが憎しみよりも、はるかに重く破壊力があるのですね。憎しみが愛に変わろうと、いったん狂った歯車は止まらず、後戻りできずに予期せぬ皮肉すぎる、恐ろしい破局へと向かう展開は、なかなかドラマティックで引き込まれます。まさに人を呪わば穴二つですが、悲しい結末ながらも暗闇から抜け出したピエールの旅立ちに、救いのような小さな光が見えました。それにしても。誤解と思い込みって怖い。復讐のみならず、行動する際には短絡的で衝動的にならぬよう気をつけたいものです。
 ピエール役は、グザヴィエ・ドラン監督のお気に俳優で、この作品でセザール賞新人賞を受賞したニールス・シュナイダー。

 イケメンとか美男と形容するにはちょっと躊躇してしまう、独特な顔をしてます。オーランド・ブルームをすごくダークにデリケートにした感じ?私好みではないけど、個性は強烈です。変わった顔だけど、時おりハっとしてしまうほど美しく見えることも。見る者の目を奪う磁力があるところ、しっとりとした濡れたような若い男の潤いがあるところが、オーランド・ブルームとの決定的な違いでしょうか。ヘンに激烈に熱演せず、復讐の鬼というより愛に戸惑うピュアな青年って感じだったのが可愛くて好感。ほっそりとスレンダーな身体と、何着てもオサレに見える雰囲気が、さすがフランス男(パリ生まれのカナダ育ちですが)。彼の他の出演作はまだ見てないのですが、画像などを調べてみると、この映画とは別人みたいな風貌で驚きました。どれが本当の彼なの?なかなかのカメレオン俳優なのかな?そんな謎めいた魅力も、凡百な俳優とは一線を画してるかも。今後が大いに期待できる新星です。

 ガブリエル役は、「青い棘」などで知られるドイツ俳優のアウグスト・ディール。流暢なフランス語で、気のいいちょっとおバカな従兄を好演してるのですが、彼がもうちょっと若いイケメンだったら、さぞや香しいBLムードが出てたかも。BL漫画だったら絶対に、ピエールとガブリエルはセクシュアルな愛憎関係に堕ちてるのにな~。せっかく女っけがほぼゼロな、男だらけ男祭り映画なのに。微かでもBLの匂いが欲しかったところです。ダイヤモンドを買い取ったり、工場で削ったりする過程が、興味深く描かれていました。
コメント (4)
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ママの秘密

2017-12-22 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭③
 「ミモザの島に消えた母」
 アントワーヌとアガット兄妹の母は、彼らが幼い頃にノワールムーティエ島の海で謎の死を遂げていた。中年になってもそのことを引きずり、真実を語ろうとしない父に不満を抱くアントワーヌは、長年封印されていた母の秘密を探り出そうとするが…
 ママの死は事故?自殺?それとも?なミステリーと、父と息子、兄と妹の葛藤や絆を描くファミリードラマが、巧みにブレンドされた佳作です。ミステリーといっても、奇異な連続殺人が起こったり、大ドンデン返しがあったり、華麗なる謎解きがあったりするわけではなく、時の流れで氷が解けていくように真相が見えてくる展開が、地味ながら不自然な作り物っぽさがなく好感。家族愛も、フランス人らしくベタベタしてなくて、それでいて優しさに包まれていて、温かな感銘を受けました。

 ママの秘密、死の真相は、そんなに意外でもショッキングでもなく、でも悲しくて切ないものでした。本当に愛する人との出会いが遅すぎた悲劇ですね。私がママと同じ立場なら、いったいどうしただろう…と考えさせられました。そして、子どもの立場からも。ママの選択を受け入れることができるだろうか。そのような運命とは縁のない私の人生は、本当に幸せで凡庸です。
 日本の2時間ドラマや刑事ドラマだと、死に関する重要な人物は必要以上に怪しく意味深な言動をするけど、この映画ではかなりあっさりとした存在になってました。あくまでアントワーヌ目線で話が進むので、話が散漫にならずにすんでました。誰ひとり悪人はおらず、ママを死に追いやってしまった人たちの心情や立場も、罪深いとは思えませんでした。むしろ人間的というか、当たり前のことと理解できた。もうちょっと寛容さと広い視野があったら、あんな悲劇は起こらなかったんだろうな~。ママにももうちょっと冷静さがあったら、死なずにすんだことだろうに。歯車が悪いほうへと動き出したら、もうどうしようもないものなんですね。たくさんの人たちが苦しんだけど、いちばんの被害者はやっぱアントワーヌとアガットです。どんな事情があるにせよ、子どもを悲しませ傷つけることは罪です。
 アントワーヌ役は、「エル ELLE」でヒロインの隣人を演じてたローラン・ラフィット。

 ええ~!?な役だったエルとは打って変わって、優しそうで温かみがある雰囲気、大人の男だけど少年のようなナイーブさが可愛かったです。エルでは気づかなかったけど、アラブ系なのかな?繊細で不器用だけど誠実な善人キャラ、ちょっと濃い目の風貌は、何となくマーク・ラファロを彷彿とさせました。マークもアントワーヌみたいな役、似合いそう。いい男で、いい役者なローラン・ラフィットは、名門コメディ・フランゼーズの座員で、フランスでは国民的な人気俳優みたいです。73年生まれだから、キムタクより年下!うう~ん、大人ですね~。キムタクも、この映画やエルみたいな作品で、ローラン・ラフィットが演じたような役に挑戦すればいいのに。

 アガット役のメラニー・ロランも、クールだけど芯は優しい感じが素敵でした。メガネっ娘なのが知的ながらも可愛かった。何げないたたずまいやポーズが、すごく絵になるのもフランス女優ならでは。気合いの入ってない、けどセンスのいいファッションも参考になりました。アントワーヌの娘役の子が美人。彼女がアントワーヌのママと同じ秘密と悩みを抱えていて、カミングアウトすることで父との関係が好転する展開が、観客にとって救いのような安堵感を与えてくれます。アントワーヌがママの残した手紙を娘に見せることで、彼女を大人扱いするシーンがすごく好きです。
 ミステリーの舞台となるノアールムーティ島の風景が、とても美しくて行ってみたくなりました。私も島の別荘で暮らしてみたいわ~。アントワーヌ一族のブルジョア生活も、アメリカや韓国の派手で品のない成金と違って、慎ましくありながらもさりげなく贅沢、なところに憧れます。
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イケメンDQNの悲劇

2017-12-20 | フランス、ベルギー映画
 師走のbeau garçon映画祭②
 「Je ne suis pas un salaud 」
 妻子と別れ、荒んだ生活を送っていたエディは、不良グループに絡まれ暴行を受ける。エディの証言で容疑者の男が逮捕されるが、彼はまったく事件には関わりがなかった…
 最近、世界各国で多発している銃乱射や暴走車突っ込み事件。被害者にとっては悪夢としか言いようがない、理不尽で理解不可能な惨劇に、もうどこにも安全な場所などないと絶望的になってしまいます。理解とか同情など拒んでいるかのような加害者の心理には、ただもう戦慄するだけです。加害者たちの立場や身分が特異なものではなく、ごくフツーの一般人、事件前までは善良な市民として私たちの隣で生きていた、という事実にもゾっとさせられます。どんな事情や問題があったにせよ、彼らの犯行を許すことなど到底できませんが、なぜこんなことを?いったい何が彼らを蛮行へと駆り立てたのか?と、その昏い心の深淵をのぞいてみたくはなります。この映画の主人公エディも、そんな闇を抱えた人物でした。

 エディもこれといって特別な人間ではなく、いるよね~こんなドキュン男、程度。ドキュンだけど根は善人で、まっとうに生きたいとは思っている。家族も大事にしたい。けど、気づかないうちに心の病や荒びが深刻になっていて、他人や社会とうまく折り合えなくなってしまってる。自分の思い通りにならないと暗い怒りをためこんで、抑えきれなくなるとプッツン大暴れするエディって、自分勝手とか短気とかではなく、精神的に障害があるように思えました。たいていの人ならできる努力や我慢ができないエディには、イラっとさせれつつ、本人的にはどうしようもないんだろうな~と、気の毒にもなってしまいました。しかるべき治療とかカウンセリングを受けるべきでした。

 そして、冤罪という災厄も怖すぎる。いきなり犯罪者にされてしまう恐怖。濡れ衣を着せられた側ではなく、着せたほうが主役というのが珍しかったけど、冤罪の怖さを訴える内容ではなく、あくまでエディの人生崩壊のきっかけに過ぎない扱いになってました。それにしても…エディ、ほんとに罪深い男でしたわ。冤罪だけでなく、妻子までも不幸のどん底に陥れて。あんなに良い奥さん、良い息子なのに、可哀想すぎ。エディがこれまた妻子をすごく愛していて、彼らを幸せにしよう、守ろうとしているのに、心の闇のせいで自ら幸せをブチ壊してしまう姿が、愚かで哀れでした。衝撃的で悲痛すぎるラストには、暗澹とした苦い後味が。
 エディ役のニコラ・デュヴォシェルの熱演とイケメンぶりに瞠目!

 久々に見たニコラ。「White Material」以来かな?可愛かった彼もアラフォーに。でも、今でもカッコカワいい!童顔なので、実年齢より若く見えます。やつれて荒んだ不健康そうな顔でも、美しさは隠せません。うらぶれてショボくれている中、不意打ちのように見せる美しさに何度もハっとなった。フランス人にしては薄口な美しさ。ちょっとイギリス美青年っぽい?きれいで可愛いけどドキュン、これがニコラの個性と魅力でしょうか。全身刺青だらけ、暗く淀んだ雰囲気と目つき、触るものみな傷つける刺々しさ、荒ぶる魂。まさにドキュンの鏡です。世界一美しいドキュンかも。激情的なプッツン演技のヤバさも強烈でしたが、あまりにもみじめで哀れな風情に胸キュンさせる、ヒリヒリした繊細な演技も素晴らしかった。しばらく見ぬ間に、役者としてすごく成長してたニコラ。ただの美男俳優では終わりたくないという、彼の気概に感服です。彼はこの作品でセザール賞の主演男優賞にノミネートされました。受賞は「たかが世界の終わり」のギャスパー・ウリエルでしたが、ギャス男よりもニコラのほうが受賞に相応しかったのでは。

 日本のイケメン俳優も、エディみたいな役に挑戦すればいいのに、とは思うけど、演技力と魅力がないと、ただの凶悪なドキュンになってしまう危険性もある難しい役です。ニコラは演技力以上に、おんな心に訴えるダメ男の危険な魅力があるんですよね~。一緒にいたらダメになる、傷つくだけと判っていても、離れられない見捨てられない男って、実際いますもんね。美しい男って、幸福より不幸のほうが似合う。ニコラもまた、そんな美男です。それにしても…誘蛾灯と蛾、ゴキブリホイホイとゴキブリみたいな男と女の関係、愚かしいけど憧れます。
 妻役のメラニー・ティアリーは、「La princesse de Montpensier」のモテ姫役とは打って変わって、生活に追われるママ役を好演。「ホロウ・クラウン」のヘンリー5世編にも出ていた彼女、美人ではないけど人情深さと肝っ玉がありそうな風貌、演技に好感。息子役の男の子も可愛くてけなげだった。

 ↑美しきDQN俳優、ニコラ・デュヴォシェル。リュディヴィーヌ・サニエとの間のお子さん、もう大きく、さぞやきれいに成長してることだろうな~。いい役者に成長したニコラの出演作は、日本未公開が多くて残念。ピエール・ニネ!と共演したコメディ、DVDスルーでいいので観たい!!
コメント (2)
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モテキのプリンセス

2017-12-17 | フランス、ベルギー映画
 皆さま、ぼんそわ~る!
 日ごと寒さが募りますね!着てはもらえぬセーターを、涙こらえて編んでしまいそうになりますね!ただでさえ寒いのに、背筋が凍りそうになる事件や事故が多発するせわしない年の瀬ですが、皆さまもご用心&ご自愛くださいますやう。残り少ない2017年を、無事に乗り切りましょう!
 今年もたくさん映画、観ましたね~。私もついに、待望の「婚約者の友人」で、今年最後の劇場鑑賞。ピエール・ニネが映画納め男になりました(^^♪それを記念して、フレンチなイケメンたち、ボーギャルソン映画祭を開催!お目汚しいただければ、幸甚の至りですイケメンは心の湯たんぽ!あったかいんだからぁ~♪(古っ!)

 師走のbeau garçon映画祭①
 「La princesse de Montpensier」
 内戦に揺れる16世紀のフランス。貴族の娘マリーは、ギース公との恋仲を裂かれ、モンパンシエ侯爵との結婚を強いられる。夫と元恋人との間で揺れるマリーにとって、彼女の教育係であるシャバンヌは心安らぐ相手だったが…
 名匠ベルトラン・ダヴェルニエ監督作品。最近はめっきり佳き時代劇が少なくなっているので、美しい衣装やセット、実際の古城でのロケ、激動の時代の中で美男美女が繰り広げる波乱のロマンス、といったコスチュームプレイのエッセンスがぎっしり詰め込まれたこの映画は、時代劇ファンや歴女にとっては必見と言えましょう。描かれている社会背景や恋愛関係など、大人向けの時代劇でもあります。

 とにかくヒロインのマリーが、激モテ!鬼モテ!なんですよ。しかも、いい男オンリー。情熱的な美男の元カレ、真面目で優しい夫、教養深い熟年の家臣、奔放で背徳的な王子…見た目もキャラもそれぞれ個性的なイケメンたちに愛されて、もう大忙し!いい男独り占めのウハウハな花より男子状態なんです。マリーをめぐって、狂おしく切ない恋情に身を焼く男たち。マリーの女冥利に尽きるモテっぷり、羨ましいかぎりでしたが、あんなに愛や恋まみれになるのって、疲れるだろうな~と、マリーの混沌として安らぎのない生活を見ていて思いました。たくさんのイケメンにモテモテよりも、やっぱ一人の男に優しく誠実に愛されるほうがいいですね。

 情熱的だけど、どこか退廃的で不毛な恋愛もフランス的。マリーも、若い娘だけどドライでクール。全然うろたえたり取り乱したりしないんですよ。私なら、アタフタとテンパリすぎて胃潰瘍か高血圧になって、心も身体も壊して入院するでしょう運命にも自分の心にも逆らわずに生きる、マリーのしなやかさが魅力的でした。

 マリー役のメラニー・ティアリーは、すごい美女!ではないけど、男心をソソりそうな親しみやすさとエロさのある女優。全裸シーンがあるのですが、その白い柔肌の美しさときたら!胸の形、大きさとかまさに理想的。ジムで鍛えたり、シェイプアップに血道を上げて作る人工的なナイスボディとは違う、持って生まれた系の瑞々しい裸体でした。
 マリーを愛する男たちを、フランスの人気イケメン俳優や男前熟年俳優が演じています。これが最大の見どころ!
 ギース公役は、「たかが世界の終わり」でセザール賞を受賞するなど、イケメン俳優から味のある性格俳優へと成長を遂げたギャスパー・ウリエル。

 雄々しく血気盛んな貴公子を演じてるギャス男、その美丈夫っぷりに惚れ惚れ!美男だけど、どんどん野郎っぽくワイルド化してるギャス男の、ノシノシした男らしい歩き方が好き。ちょっとアゴがとんがり過ぎなのが最近気になるが。マリーへの想いでハアハアしたりプッツンしたり、とにかく情熱的なギャス男。怒りんぼなところが可愛かった。
 モンパンシエ侯爵役は、ギャス男の「かげろう」ではまだ子役だったグレゴワール・ルプランス・ランゲ。 

 すっかり大人になったグレゴワールくんですが、まだ少年っぽい。マリーより年下に見えました。マリーに対して真面目でシャイなところが、けなげで切なかったです。すっぽんぽん姿も可愛かった。地味だけど誠実で優しい彼が、嫉妬に狂って取り乱したり、ギーズ公と恋の火花を散らすシーンに、ドキドキワクワクしました。私もいい男ふたりを争わせて、けんかはやめて~♫二人をとめて~♪してみたい!
 国王の弟アンジュー公役は、これまたお気にのボーギャルソン、ラファエル・ペルソナ。

 怪しくて、ちょっとコミカルでもあったラファエル。タヌキっぽいパンダなメイクもユニーク。マリーに色目を使ったりしますが、どちらかといえばゲイっぽいキャラで、ギャス男との絡みに微かなBLのかほりが。

 若いイケメン3人よりも、どちらかといえばシャバンヌ役のベテラン男優、ランベール・ウィルソンのほうがヒロインの相手役っぽかったです。かつては美青年、現在は美熟年のウィルソン氏。理想的な男性の年齢の重ね方です。思慮深く紳士的で、どこか厭世的な大人の男を好演してます。ちょっと顔がイチローに似て見えたのは、きっと目の錯覚
 ギース公は黒、モンパンシエ侯爵は緑、アンジュー公は赤、シャバンヌは青、と男たちの個性に合わせた色の衣装も素敵でした。マリーのドレスや寝間着、髪型なども、派手ではないけど美しくて目に楽しかったです。当時の貴族の生活の描写も興味深かったです。
 同じ時代の宮廷劇「王妃マルゴ」と観比べるのも一興かも。マルゴは名前しか出てきませんでしたが、悪名高い母后カトリーヌは登場します。ラストではバルテルミーの大虐殺も描かれてました。
 この映画を日本の時代劇に置き換えてリメイクするならば、理想妄想キャストはこうだ!
 
 マリー … 小松菜奈
 ギース公 … 松坂桃李
 モンパンシエ侯爵 … 池松壮亮
 アンジュー公 … 瑛太  
 シャバンヌ … 竹野内豊

 こんなん出ましたけどぉ~?
 小松菜奈ちゃんが、その若く美しい肢体を大胆にさらしたら、すごい話題になって女優としてステップアップできると思う!
 男優たちはみんなちょんまげが似合いそうにないので、江戸時代じゃないほうがいいですね~。 

 ↑ギャス男33歳、グレゴワール30歳、ラファエル36歳…日本の某事務所のアイドルグループと、ほぼ同年代。大人っぽいけど若く見えるフランス男優たちと、子どもっぽいけど老けてる日本のアイドルの違いに愕然…
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殺人鉄道2017

2017-12-11 | 北米映画 15~21
 「オリエント急行殺人事件」
 イスタンブール発オリエント急行の車内で、アメリカ人の実業家ラチェットが殺害される。乗客として事件に遭遇した名探偵ポアロは、国籍も身分も違う容疑者たちの中から真犯人を探り出そうとするが…
 ホントに作っちゃうんだ~…と、この映画の撮影スタートニュースを聞いた時、複雑な気持ちにかられました。74年版の「オリエント急行殺人事件」は、子どもの時に初めてTVで観て以来、大好きな思い入れのある名作なので、この新版は期待よりも不安を私にもたらしました。名作のリメイクの大半は、トホホな劣化版じゃないですか。原作の持ち味を活かさず、メチャクチャにいじくり回してしまう罪深いものも多い。オリエント急行が、三谷コーキ先生にされたような目にまた遭ってしまってるのかな~…でも気になるし…と、揺れる想い~♪by ZARD いや!こうなったら、ネガティヴな目線ではなく、楽しく粗探し、ツッコミしまくってやる!と意気込みながら観に行きました。で、いざ観たら…想定外に、拍子抜けするほど、面白くて楽しめました

 どうしても74年版と比較してしまうので、こんなのオリエント急行じゃない!こんなのポアロじゃない!と思ってしまうシーンが多かったのですが、それもまたこの映画の魅力になってました。こういうオリエント急行もアリじゃね?と、74年版とはまったく異なるテイストも、楽しんで味わえました。74年版がコクの深いワインなら、この2017年版は甘酸っぱいシャンパン、みたいな違いというか。どっちも高級で美味。好みが別れるところですが、私はやっぱワインのほうが好きかな。74年版は、とにかく優雅で小粋で、どちらかといえば舞台劇的で英国色が濃く、しかも洗練された喜劇みたいだったけど、このニューバージョンは、現代的でスタイリッシュな、とても映画的な演出や撮影、最先端のCG駆使が、いかにもイマドキのハリウッドっぽかったです。あと、アーバスノット大佐を黒人の医者に変えてたり、人種ネタが今のハリウッド、アメリカ社会を反映してました。

 最も衝撃的だったのは、ポアロのアクションシーン!ステッキを使って襲撃者と戦ったり、列車の屋根の上を歩いたり、軽快に俊敏に動き回るポアロに唖然。ポアロって、そんなキャラだったっけ?!でっぷり太って悠然とふんぞり返ってる、ナルシーでイヤミな、ちょっとオネエっぽい爺さんってイメージのポアロが、若々しく雄々しく真面目でカッコいいヒーローキャラになってたのが、かなり斬新で革新的でした。新ポアロを熱演したケネス・ブラナは、監督も兼任。さぞや大変な撮影だっただろうな~。健闘を心から讃えたいです。
 映画的な演出やポアロのキャラ変、そしてキャストもなかなか素敵なメンツでした。ユニークで知名度も高いけど、74年版に比べると格落ちしてる感じは否めません。74年版が大物ぞろいすぎなんです。ラチェット役のジョニー・デップ、ハバード夫人役のミシェル・ファイファーは、かつての美しさを知ってる者からしたら、ちょっと切なくなるほど老けてしまいました。ジョニーは極悪というよりチョイワルおやじ。もっと殺されて当然!な毒々しい瘴気を出してほしかったです。

 出演者の中では最も大物で、撮影中きっと特別扱いされてたはずの大女優ジュディ・デンチは、気軽に出演した感じ。彼女らしい強烈さはあまり出してなかったです。宣教師役のペネロペ・クルスもフツーすぎ。旧版の宣教師と全く別人物にしたのは、ペネロペに出演してもらうための忖度改変?
 ベテランの有名俳優たちよりも、知名度は低いけど若い男優陣のほうがフレッシュで魅力的でした。私が最も惹かれたのは、鉄道会社の重役でポアロの友人バーク役のイギリス俳優トム・ベイトマン。なかなかイケメンでした!そして、「マグニフィセント・セブン」にも出てたラテン系俳優のマヌエル・ガルシア・ルルフォも、見せ場はほとんどなかったけど、井浦新を濃ゆくした感じの顔がイケてました。車掌役のオランダ俳優マーワン・ケンザリも、男のフェロモン濃厚な色男。アンドレイニ伯爵役は、ウクライナ出身の世界的人気バレエダンサー、セルゲイ・ポルーニン。妖しい美男子ぶりが印象的でした。あと、冒頭のイスタンブールでの事件に関わる若い警官が、チョイ役ながらイケメンだった。小粒だけど国際色豊かで個性的なイケメンの起用は、かなり大成功です。近い将来、みんな大物人気スターになるかも。

 おおむね楽しめたのですが、残念だったのは、個性的な俳優たちの演技も容疑者キャラも、何だか薄くてインパクトに欠けてたこと。旧作の容疑者たちは、ほんと濃ゆい連中だったよな~。あと、お涙ちょうだいなラストにしてしまい、まるで「相棒」劇場版みたいなチープさになってしまったこと。でもまあ、仕方がないとは思います。旧作のあのエレガントさ、シニカルなユーモア、洒脱さは、今の若い映画ファンには解せない楽しめないでしょうし…
 映画のラストで示唆されてた通り、ケネス・ブラナ主演・監督でシリーズ化が決まったみたいですね。次は「ナイル殺人事件」!キャストが楽しみですね~。またイケメンそろえてほしいものです
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友だちが上九一色村にいました

2017-12-08 | ドイツ、オーストリア映画
 「コロニア」
 1973年のチリ。ジャーナリストのドイツ人ダニエルは、勃発した軍事クーデターにより反体制分子として連行されてしまう。ダニエルの恋人レナは、拷問の果てにコロニアと呼ばれる宗教施設に強制収容されたダニエルを救い出すべく、入信を装ってコロニアに潜入するが…
 実話だとは、にわかに信じがたい…と言いたいところですが、あのオウム事件を体験した私たち日本人にとっては、嫌な既視感を覚えずにはいられない悪夢映画でした。上九一色村のサティアンとか、ヘッドギアをした信者とか、奇怪で異様な光景を、この映画を観たら思い出してしまいます。拷問としか思えない修行や、教団幹部に支配・管理された非人間的な生活、そして欲望にまみれた邪悪な教祖…おぞましさ、非情さはオウムと酷似しています。オウム以上に非道だったのは、教団施設内で行われていた人体実験や毒ガス(サリン!)製造が、国家がらみだったこと。「NO」とかでも描かれてたけど、チリの軍事政権の極悪さには戦慄せずにはいられません。どこの国にも忌まわしい恥ずかしい黒歴史はありますが、チリのそれは世界最悪のひとつなのでは。あんなメチャクチャなことがまかり通ったのが、そんなに遠い昔じゃないという事実にも暗澹となってしまいます。

 オウム信者もそうでしたが…コロニアに自ら進んで入信して、あんな奴隷生活に黙従する信者たちが、不気味で不可解すぎ。理解できない自分に安堵です。宗教き◯がいって、ほんとヤバいですよね~。オウムと違って、外部の無関係な人に害を及ぼすことがなかったのが、せめてもの救いでした。コロニアの教祖は、オウムのグルに比べたら一見フツーのおっさんでしたが、女嫌いで女に暴力的なサドで、少年を性的に弄ぶ変態、とか麻原以上に醜悪でした。
 決死の脱出劇がこの映画の見どころとなってるようですが、結構あっさり逃げることができて肩すかしでした。助かると分かってはいても、もっとハラハラドキドキな演出にしてほしかったかも。
 レナを演じたエマ・ワトソンが、なかなか好演してました。教祖やババアシスターから、男を惑わす危険な女!と目される設定に???でしたが、「美女と野獣」よりは可愛く見えた。スッチー姿もキュートでした。ラブシーンや下着姿になるシーンがあるのですが、ぜんぜん色気なし。美女設定には甚だ疑問ですが、気が強そうだけど性悪っぽさはなく、若い女優にありがちな媚や自意識過剰もなく、聡明そうで毅然としたところには好感。キラキラなプリンセス系ヒロインだと何か違う…だけど、気丈で不屈な戦うヒロインだとピッタリ。
 ダニエル役は、大好きなダニエル・ブリュール。

 可愛い!大きい犬みたい!優しい熊みたい!ムチムチした体つきも好き。抱かれ心地よさそう!裸エプロン姿など、明らかにファンサービス。セクシーなケツでしたダニブリュももう40になるというのに、若く見えますね~。まだまだ青年っぽいです。誠実で真面目そうだけど、タフで情熱的な役が似合うのは、やはりドイツとスペインのハーフだからでしょうか。この作品でも、流暢な英語、ドイツ語、スペイン語を駆使してました。コロニア内で生き延びるために、脳に障害を負ったフリをしてるダニブリュの幼児退行演技が、めっちゃ可愛かったです。

 極悪教祖役は、「ミレニアム」シリーズで知られる、ハリウッドやフランス映画でも活躍していたスウェーデンの国際俳優ミカエル・ニクヴィスト。憎々しい悪人、キモい変質者っぷりでした。善人役も悪役もハマる名優。残念なことに、今年亡くなってしまいました。あらためてご冥福をお祈りします… 
 極悪教祖が、実はナチスの残党で、戦後も外国でのうのうと、さらに残虐なことをしていた、という史実には、本当に驚かされました。しかもこの悪魔の変態教祖、捕まっても死刑にならず、病院のベッドで安らかに死んだとか。悪はいつか滅びるなんて嘘?正義って、いったい?

 ↑可愛かったダニブリュも、すっかり大人のいい男に成長。いつの間にか一児のパパになってました。「ユダヤ人を救った動物園」が、もうすぐ日本公開!
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青木ヶ原で逢いたい…

2017-12-06 | 北米映画 08~14
 「JUKAI 樹海」
 日本で教師をしていた妹のジェスが、青木ヶ原で行方不明になったという知らせを受けたサラは、アメリカから日本へと向かう。記者のエイデンに同行し、サラは樹海へと入るが…
 最近は、昔みたいに手当たりしだい何でも観る!な貪欲さが失われ、老化による気力体力集中力の著しい衰退もあって、よほどの話題作か大好きなスターが出てる作品しか観なくなってしまっていて、とても映画ファンとは名乗れないテイタラクです。反面、かなり厳選して観ているためか、トホホな駄作にはあまり遭遇しなくなってはいます。なので、たま~にババ引くと、いい映画よりもそっちのほうが印象に残ってしまいます。この作品も、そんなババ映画でした。

 これぞB級!な映画でした。いい映画を作ろうとして失敗なのではなく、最初からB級映画を作ろうとしてたとしか思えないような。すごい雑でテキトーな内容でビツクリ。オチのなさすぎるラストにも失笑。ただ単に、青木ヶ原で撮影したかっただけ?その青木ヶ原にしてって、あまり効果的に使われてなかったし。ほんとにここ、青木ヶ原?イギリスかアイルランドの森林公園じゃないの?と疑えましたし。ここでハイキング、森林浴したら気持ちいいだろうな~という自然の美しさよりも、入ったら二度と出られない、黄泉の入口である樹海の神秘や不気味さを、カメラにとらえてほしかったです。
 ホラーとしてはかなりの出来損ないですが、こんなこと日本人はしない!日本にはない!な、ヘンテコな日本描写はかなり笑えました。いまだに欧米人にとって日本は、おかしな国なんですね~。サラが寿司屋に入ると、注文もしてないのに生きたエビの寿司が出てきたり。食べたいわ!と思った。青木ヶ原の案内所の地下室には、樹海で発見された自殺死体が安置されてたり。サラたちの樹海に入る服装が軽装すぎ!ハイキングでももっとちゃんと着ますよ。立ち入り禁止にも堂々と入っていくサラたち、いま観光各地で問題化してる典型的な迷惑外人!
 サラ役のナタリー・ドーマンは、The Tudorsのアン・ブーリンですね。The Tudorsの時はピチピチしてましたが、この映画ではすっかりおばさんになってました。やっぱちょっとビョークに似てますよね~。サラを助ける記者役は、俳優としてよりもレディ・ガガの彼氏として知られてるテイラー・キニー。ガガが惚れただけあって、男前ですね。ちょっとジェラルド・バトラー+コリン・ファレル、みたいなご面相。少し濃ゆ目のヒゲ顔といい、マッチョな体といい、ゲイにも受そうなルックス。
 この映画を観たのは、大好きな小澤征悦に会いたかったからさ(^^♪

 樹海の日本人ガイド役のオザユキ。外国人と一緒でも見劣りしない長身と、流暢な英語がカッコよかったです。さすが世界的指揮者を父にもち、海外生活も長かっただけある生粋のお坊ちゃまです。英語を喋ってる時のほうが、何かいつもより演技が上手に見えたのは気のせいでしょうか樹海を案内するだけで、特筆するような役でも演技でもなかったのが惜しい。何か怪しい?なガイドにしてほしかった。この映画でハリウッドデビューと言っても失笑されるだけなので、次はちゃんとしたハリウッド映画で、謙さんみたいにオスカーにノミネートされるほどの名演を、オザユキに期待したいものです
 
 ↑来年の大河ドラマ、西郷隆盛役はオザユキにやってほしかったな~。篤姫でのオザユキの西郷どん、めっちゃカッコカワイかったもんね~🍏
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