まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

Blessed Boys

2024-04-30 | イタリア映画
 「異人たち」公開記念BL映画祭⑤
 「La Santa Piccola」
 ナポリの小さな町で暮らすリノとマリオは、幼い頃からの親友同士。リノの幼い妹アンナルーチェが奇跡を連続して起こし、信心深い町民たちから聖なる少女として崇められるようになる。リノは一変する生活に、マリオは自分がリノに恋をしていると気づき戸惑うが…
 イタリアのBL映画、なのですが。BLそのものががっつりメインじゃなかったのが物足りませんでした。リノとマリオの友情がBLへと形を変えていくプロセスをもっとじっくり描いてほしかったです。それにしても。男同士の仲が良すぎる友情って、立派なBLですよね。女とはヤルし結婚もするけど、一緒にいたい、楽しいことも悩みも分かち合いたいのは男の親友。そういう深く強い心の結びつき、精神的な同性愛の美しさと危うさも、腐をときめかせる魅力です。

 女そっちのけでイチャイチャじゃれ合ってる仲良しイケメン二人組、なんてすごく尊い!萌える!妄想をかきたてる!この映画のリノとマリオも、ほとんどカップル。いくら仲良しとはいえ、男同士であんなことする?なスキンシップばかりするんです。周囲も別に奇異な目で見てないし、イタリアではあんなのフツーなのかな。あっけらかんと堂々としてるよりも、やっぱ周囲も本人たちも、そして観客もドキドキハラハラさせたり不安にしたりするような、そろそろ禁区 by 明菜な領域に入るBL、つまり世間的に後ろ指さされる、やましいものとされている関係が、私はやっぱ好きです

 すべての男性は同性愛を秘めているけど、ほとんどの男性がそれに気づかず目覚めない、と言われていますが。幸か不幸か、突然リノに親友以上の想いを抱いていると気づいてしまったマリオ。なりゆきで熟女と3Pをすることになり、そこでリノの痴態を目の当たりにしたことがマリオのBLスイッチをオンしてしまったのが、可笑しくも切ない。熟女との3Pが、あたかもリノとマリオのセックスみたいなシーンになってたのが、なかなかエロくて刺激的な演出でした。マリオを誘ってるとしか思えぬリノの無防備さ、無邪気さが小悪魔でした。

 軽いBLものにありがちな安易で都合のいいハッピーエンドではなく、かなりホロ苦い結末になるのですが、絶望的でもなかったような余韻。次々と起きた奇跡のように、きっと二人にも…と希望を祈りたくなるラストでした。
 主役の俳優二人が、なかなかイケメンでした。リノ役のフランチェスコ・ペッレグリーノは、クールなやんちゃ男子って感じ。家族のために一生懸命なけなげさと、ハメをはずした時の下半身のだらしなさのギャップが可愛かったです。マリオ役ヴィンチェンツォ・アントヌッチは優しそうで、恋に悩んでオロオロするところが可愛かったです。アンナルーチェ役の女の子が美少女!美男子のリノとはまるで恋人同士のような仲睦まじさで、絵になる美しい兄妹でした。アンナルーチェが固まって動かなくなる、動かせなくなる神がかり?現象がホラーでした。ナポリの町の超庶民的な生活風景や町の様子も興味深かったです。
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南の島のBL不倫!

2024-04-26 | イギリス、アイルランド映画
 皆さまComment ça va?
 早いもので、もうゴールデンウィーク!🎏貧乏ヒマなしワーキングプアな私ですが、珍しく今年は3連休をいただきました!嬉しい!休みに何をするわけでもないけど、まったり怠惰な休日を満喫したいと思います(^^♪皆さまは素敵なご計画がおありでしょうか。


 春の花はすっかり散ってしまい、ちょっと寂しくなったマイリトルガーデンですが、代わりに初夏の使者が訪れ始めています。ラベンダーとゼラニューム、ナスタチウムが早くも元気いっぱい。ほぼほったらかしでも毎年きれいに咲いてくれるので重宝してます。

 フェニックスという変わった形のナスタチウム。次々と咲いてどんどん伸びて、何か怖いくらい強健です。休日は庭いじりも楽しみたいと思います(^^♪

 「異人たち」公開記念BL映画祭④
 「Play the Devil」
 カリブ海の島国トリニダード・トバゴ。成績優秀で容姿にも恵まれた高校生グレゴリーは、家族や学校から将来を嘱望されていた。そんな中、裕福な実業家ジェームズと親しくなるグレゴリーだったが…
 トリニダード・トバゴ、この映画で初めて知りました。人気リゾート地のような華やかで人工的なところがなく、風景も人々の暮らしも現代社会に汚されておらず、その素朴で原始的な美しさに魅了されました。行ってみたい!公用語が英語なので、短期語学留学を兼ねて半年ほど滞在してみたいものです。日本のように何でもできる、何でもそろってる便利さはないけど、生きるために必要なものは欠けてないし、不必要で有害なものがないシンプルライフが送れそう。本当に高いQOLって、トリニダード・トバゴのような国で得られそうな気がします。

 そんな美しく静かな南の島でも、BLは繰り広げられるのです。トロピカルな舞台だと、BLも明るくハッピースウィートなものになりそうですが、この映画は暗くて悲劇的なBLです。ラブコメ調のBLより、私はそっちのほうが好み。BLにはどうしても、悲しみと苦しみを求めてしまうんですよね~。イケメンDKとハイスペック熟年のBLなんて、シクラメンのように甘い禁断のかほりしかしません。

 グレゴリーが、ほんと見た目もキャラも可愛いんですよ。あどけなさの残る童顔とセンシュアルな美しい肉体がアンビヴァレントな魅力に。見た目がもう他の島民とは違うんですよ。まさに鶏群の一鶴、みたいな。美しいだけでなく、頭も性格もいいという欠点のなさ。自分の美点に驕らず優しく真面目で、家族思いなところも痛ましいほどけなげな少年。グレゴリーが小さな南の島ではなく、ニューヨークとかロンドンで生まれ育ってたら、もっと楽な人生を歩めただろうにと思わずにはいられませんでした。神さまって残酷だわ。

 美しくて才能があって、優しくて繊細なグレゴリーのような若いゲイにとっては、トリニダード・トバゴのような小さな島は監獄のような場所です。家族や友だち、島民はみんな彼を愛してくれる善き人たちだけど、無知なので誰もグレゴリーの苦悩や閉塞感に気づかない。カミングアウトどころか、ゲイであることを自認さえできず鬱屈を抱えるグレゴリーが悲痛。外国帰りで教養があり金持ちのジェームズは、彼にとってやっと出会えた理解者のはずだったのに、ジェームズにはもちろん下心が。誘惑されて初めてのセックス体験をするのですが、それがまたデリケートなグレゴリーを追い詰めて、苦すぎる顛末に。環境も価値観も同性愛を許容していない、多様性?何それ?な小さく狭い世界の現実がシビアでした。

 グレゴリーにマジぼれ、執着してつきまとう中年ストーカーなジェームズがヤバい、けど報われない恋が切なかったです。既婚者のジェームズなので、何も知らない奥さんと子どもも可哀想。同性愛には何の罪もないけど、不倫はやっぱマズいですよね~。
 グレゴリー役のペトリス・ジョーンズは、イギリスの俳優だとか。極小ベビーフェイスが可愛い。劇中ほとんど上半身裸だったような。おじさんゲイが溺れて執着するのも理解できる肉体美でした。1回だけあるセックスシーンは大したことないけど、若者らしい激しいがっつき方が素敵でした。ジェームズ役の俳優はブサイクではないけど、もうちょっと男前熟年ならmuch betterだったかも。島の伝統の祭りやダンスも、エスニックで面白かったです。森林や滝など、自然の風景も美しかったです。ほんと行ってみたいわトリニダード・トバゴ!
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イケメンとウミガメ

2024-04-21 | 北米映画 08~14
 「異人たち」公開記念BL映画祭③
 「Loggerheads」
 10代の時に産んですぐに手放した息子を探し出そうとするグレース。保守的な夫と家出した養子との間で苦悩するエリザベス。浜辺でウミガメを探す青年マークと出会うゲイのジョージ。面識もなく遠く離れた場所で暮らす彼らは、あることで深くつながっていた…
 ようやく観ることができました!この映画、すいぶん前から気になっていたんです!何でかって?「タイタンズを忘れない」や「ドリヴン」などで、いっときハリウッド次世代スターとして期待されていたイケメン、キップ・パルデューがゲイの役を演じてるからです(^^♪

 キップくん、ほんとイケメンだったんですよね~。金髪と白い肌、明るく健康的、優しそうで上品な雰囲気があり、アメリカのいいとこの坊ちゃん、優等生って感じがすごい好きだったんです。実際の彼も名門大学出身で、フットボールの選手だったという文武両道の経歴にも惹かれるものがありました。いつの間にか消えてしまったのが残念。今でも俳優してるのかな。現在の姿、調べないようにしてます爽やかイケメンだった頃の彼を心にとどめておきたいので。

 キップくんが華々しいメジャー大作から身を引き、ひっそり出演したのがこのインディペンデント系の小品。内容も出演者も映像も、まさに低予算って感じの映画。映画というよりテレビドラマっぽかった。心と人生に悲しみと痛みを抱えた人々が織りなす群像劇が、淡々と奇をてらわず描かれています。お涙ちょうだいのあざとさはないので好感を抱けましたが、いかんせん地味すぎる。ドラマティックさや刺激に狎れすぎると、こういう映画は結構キツくなりますね。

 ゲイの青年役を演じたキップくんですが、見た目もキャラも全然キャマキャマしくもゲイゲイしくもなくて、フツーに爽やかな好青年。たまに顔がマット・デーモンに似て見えた。マットをクリーミーな細面にした感じ?養父母との断絶やHIV感染など、ヘヴィー級の深刻な境遇にあるようには見えない。もうちょっと絶望の翳りとか怒り、悲しみが伝わる演技、役でもよかったのではとも思いました。観客の心の琴線に強く深く触れるには、やはり相当の演技力と脚本のクオリティが必要なんですね。キップくんはちょっとだけ肉体美を見せてますが、男同士のラブシーンはほぼ端折られてます。ジョージ役の俳優が、フツーのおっさん。もっと男前にしてほしかった。
 80年代に吹き荒れたエイズ恐慌、養子縁組の実態など、アメリカって国土は広大なのに社会や人間の価値観が狭い国ですね。HIV患者に対する人々の無知と差別偏見の露骨さが非道すぎ。養子がゲイだとわかると出ていくように仕向けた牧師が、愛だの平等だのと説いてるのが偽善的すぎて怖い。都合が悪くなると捨てるとか、養子はまるでペット以下な扱い。産んですぐに養子に出した息子に会おうとするグレースも、自分のことしか考えてないようで不快でした。いきなり私がママよ!と現れたら子どもがどう思うかなんて、そんなの関係ねぇ!なのかな。何で産んだの、何で引き取って育てたの、な人々に翻弄され傷つけられる子どもたちを思うと、胸が痛みます。
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愛した男の息子と…

2024-04-18 | フランス、ベルギー映画
 「異人たち」公開記念BL映画祭②
 「Arrête avec tes mensonges」
 人気作家のステファンはワイン会社の招待を受け、35年ぶりに故郷であるコニャック地方に帰ってくる。ワイン会社で働く青年リュカと親しくなるステファンだったが、リュカが高校時代の恋人トマの息子と知り…
 初恋は実らないと言いますが、だからこそ忘れられないスウィートペインな思い出になるのですね。それがBLならなおのこと。男子高校生二人のファーストラブが、美しい田舎町を舞台に甘く切なく描かれているフランス映画です。主役のDK二人が、翳のあるイケメン不良少年と真面目な地味メガネ男子、という定番ともえいるベタなカップリング。いつも不良をドキドキ目で追ってたメガネが、ある日突然こっそり近づいてきた不良に人の来ない体育倉庫の連れて行かれ、当惑しつつも嬉し恥かし初体験。BL関係になるまでにまわりくどいエピソードや描写がなく、すぐにセックスする展開がよかったです。初めてのセックスシーンは、短いながらもリアルで大胆でした。ぜんぜん甘美でも情熱的でもなく、鬱積していたものを吐き出した感じ。せわしなく稚拙な性行為が、いかにも未成年の男子って感じでした。

 ステファンとトマのこじらせBLが、もどかしくも切ない。ステファンのほうはゲイという自覚があり、そのことを恥じてないので、恋にポジティヴで正直なのですが、トマは病的なまでに二人の関係を秘密にしようとし、表向きは頑なにノンケのふりを続けてステファンを困惑させたり傷つけたり。俺はゲイじゃない!なのになのに何で、みたいな葛藤や自己嫌悪から逃れられず、そのことがやがて悲劇へと彼を導くことに。ひと昔、そして田舎のゲイの生きづらさを、悲観的で臆病なトマを通して知ることができます。そこまでビクビクしなくても、コソコソしなくてもと思うのは、現実のゲイの苦悩や悲しみとは縁がないからでしょう。ゲイとして堂々と生きるには、あまりにも小さく狭い世界である田舎町。ステファンのように、いずれは都会に行ける自由も才能もない。恋が幸せよりもどうしようもない閉塞感と絶望の淵へとトマを追い詰め、それになすすべもないステファン、悲しすぎるトマの選択…痛ましいけど、やはりBLには悲劇が似合う。

 ステファンとトマが人目を忍んで過ごす恋人の時間は、暗く重い雲間から射す優しく明るい光のような儚くも幸せなシーンでした。あんなに心も体もひとつになれる相手と出会えた、愛し合えたのに、夢も希望も抱けないなんて理不尽。トマとステファンが密会する湖畔が美しい。でも、体育倉庫といいステファンの部屋といい、コソコソしてるわりには誰か来るかもしれない場所で真昼間からイチャイチャしてるので、バレやしないかこっちが不安になりました
 DKステファン役の子は、ジュリエット・ビノシュそっくり。彼女の息子かと思ったほどに。トマ役の子は、ちょっと間宮祥太郎似?脱ぎっぷりがよく、大きなアソコもボロンっと大胆に出してました。熟年ステファン役のギヨーム・ドゥ・トンケデックは、ジャック・レモン系の軽妙な温かみがある俳優ですね。リュカ役のヴィクトル・ベルモンドは何と!フランスの大スター、故ジャン・ポール・ベルモンドの孫だって!言われてみれば、ちょっと似てますね。おじいちゃんのような男くさいワイルドさはなく、優しげな感じ。ワインで有名なコニャック地方の風景が、すごく美しく撮られていました。高級ワイン飲みたい!
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彼が愛したフランケンシュタイン

2024-04-15 | 北米映画 80s~90s
 ゆっくり愛でる間もなく、今年も桜は慌ただしく儚く散ってしまいました…🌸
 今年こそたくさん映画館で映画を観る!というマニフェストも、例年通り守れていない「オッペンハイマー」もいまだに。このままだと、観なくていっか(^^♪になっちゃいそうです。オッペンはそんな感じですが、絶対に外せないのが「異人たち」です。今月中には観に行くぞ!それまで他のBL映画をアペリティフに、BL映画祭じゃ(^^♪って、もう最近ほぼBL映画しか観てねーじゃん!なんてツッコミ、自分でしてみます

「異人たち」公開記念BL映画祭①
 「ゴッド・アンド・モンスター」
 かつてフランケンシュタイン映画で人気を博し、引退後は家政婦のハンナと静かな余生を送っていた映画監督のジミーは、庭師の青年クレイトンに魅せられ彼をモデルに絵を描き始める。クレイトンと心を通わせていくにつれ、過去の記憶と死に直面している現実が老いたジミーの中で交錯し…
 去年「ザ・ホエール」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーが、イギリスの名優イアン・マッケランの相手役を演じた作品。「ザ・ホエール」は未見のままなのですが、役といい風貌といいすっかり特異な感じのおじさんになったんだな~と、若き日のブレンダンを感慨深く思い返します。ブレンダンといえば、「ジャングル・ジョージ」とか「ハムナプトラ」シリーズとか、コメディ寄りの肉体派イケメン俳優ってイメージ。それより前の青春ものに出てた頃は、何となく顔や雰囲気が筒井道隆とカブって好きだったんですよね~。そんなブレンダンの作品の中でいちばん好き、いちばんの好演を見せているのが、老人と若者の優しく切ない友情を描いたこの秀作だと思います。

 当時29か30歳ぐらいのブレンダン、当然ながら若い!そしてカッコイカワイい!イケメンというか、ファニーな漫画顔?ぶっきら棒でちょっと粗野なところはあるけど、実はすごくいい奴で老人に優しい青年を朴訥にナイーブに演じてます。常にどことなく悲しそう、寂しそうな顔が可愛い。ブルーカラーの肉体労働者役が似合うガタイも素敵。屈強で大きな体をもてあましてる、心は少年のままな若者って感じがよく出てる風貌と演技でした。この映画でのブレンダン、主人公のジミーのみならず、多くの映画ファン(ていうかゲイ)の胸をときめかせザワつかせたに違いありません。惚れ惚れするような肉体美は、まさに眼福!

 ピチピチ、ムキムキな若い肉体をさらし、おじいちゃんを回春させる罪な男。誘惑とか挑発とかいった意図は全然なく、実に無邪気にゲイのおじいちゃんをドギマギハアハアさせるところが、笑えると同時に切ない。ラスト近く、暗く落ち込んでいるジミーに、これ見て元気出せや!とばかりにサラリと全裸になるシーンは、この映画のハイライトかもしれません。彫刻のような神々しい肉体、ハラリと落とす下半身のバスタオルにドキッ(前も後ろもちゃんと見えないようになってますがお尻は出してよかったのでは)。
 ジミーとクレイトンの年の差友情が、微笑ましくも痛ましい。はじめはゲイのジミーに何となく警戒して、セクハラまがいの話をされると激怒したりもしてたけど、知的でエレガントで孤独なジミーを慕い支えるようになるクレイトンが、大きな子犬みたいで可愛いんですよ。二人の友情を深めたのも、そして壊したのも、ジミーがゲイだったからではないでしょうか。セックスはもうできないけど、ジミーのクレイトンに向ける目には熾火のような欲望と恋心が。体は枯れても心は枯れない高齢ゲイの苦しさ、絶望に暗澹となってしまいました。

 実在したイギリス出身の怪奇映画監督、主人公のジェームズ・ホエール役の名優イアン・マッケランが、まさに彼にしか演じられない、彼以外の俳優は考えられないと思える適役、名演。オスカーにノミネートされたのも当然、ていうか、受賞しなかったのが不思議。イギリス人らしいきちんとした身だしなみ、軽妙で皮肉なユーモア。そして実際にもカミングアウトしているマッケラン爺さんの面目躍如、ノンケの俳優には決して出せないモノホンなゲイゲイしさが、洗練と気品に満ちていて素敵なんです。終盤、全裸のクレイトンにガスマスクをつけさせて興奮、錯乱する物狂おしさがイタすぎる。老いてもゲイ、そして芸術家だったからこその悲しい狂態でした。

 つっけんどんだけど誠実に忠実にジミーに仕えている家政婦のハンナ役、リン・レッドグレイヴの好演も印象的です。怪奇映画の撮影現場、戦場での悲恋など、ジミーの過去と現在との交錯や、彼が創り出したフランケンシュタインとクレイトンが重なる深層心理シーンなど、脚本と演出もユニークかつ巧妙。オスカーの脚色賞受賞も納得です。腐女子向けのスウィートBLと違い、ゲイの悲しく苦しい真実を描いている作品ですが、決して暗くも重くもなく、優雅でファンタジックな作風になっているところが出色です。
 
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御心のままにBL

2024-04-04 | 欧米のドラマ
 ドイツのTV映画「So auf Erden」を観ました。
 敬虔なキリスト教信者で布教活動にも熱心なヨハネスとリディア夫妻は、路上で倒れていたドラッグ中毒の青年シモンを自宅に連れ帰り介抱する。シモンに強く惹かれるヨハネスは、罪悪とされている同性への欲望に苦悩するが…
 愛しのドイツイケメン、ヤニス・ニーヴナーがゲイの青年役(^^♪を演じてるこのドラマ、前からすごく観たかったんですよ!念願かなってIch bin glücklich!

 「Jonathan」の翌年、「マクシミリアン」と同年の作品で、当時25歳のヤニヴ。可愛い~やっぱイケメンですね~。やんちゃさと優しさがいい感じにブレンドされてて、男らしいけど清潔感があって。シモンはストリートミュージシャンなので、ヤニヴの歌声も聞けます。スウィートなハスキーヴォイスあんな男の子が路上で歌ってたら、ヨハネスじゃなくても足を止めてガン見するわ。

 いい役者はたいてい一度はBLに挑戦していますが、好きな俳優のBLはやはり格別なものがあります。ヤニヴを初めて知った「Jonathan」はBL映画でしたが、主演のヤニヴはBLな役じゃなくてトホホ。このドラマでやっとヤニブのBLが見られる!と、期待と興奮で鼻息を荒くして観たのですが…うう~ん…ワクワクドキドキするはずが、かなりガッカリだった。相手がおっさん、いや、おじいさんだったのがちょっと…シモン、爺専だったの?いや、若い彼氏いたよね?爺も抱けるシモンの許容範囲の広さに驚かされました。BLってやっぱヴィジュアルも大事なんですよね~。若い男とお爺さんがキスしたり、激しく求めたって肌を重ねる姿は決して美しくも官能的でもなく、見ていて気まずくなるような異様さでした。

 脱ぎ男のヤニヴ、今回も潔い脱ぎっぷり。ケツ丸出し!つるん、ぷるんとした美尻!テレビドラマで人気俳優がこんな大胆な脱ぎ、日本ではありえません。ヤニヴだけではく、ヨハネス役のおじいさん俳優も全裸見せ。こっちはあんまし見たくなかったかなそれにしても。隠れゲイ?のヨハネスが若いイケメンのシモンに惹かれるのは解かるけど、シモンがなぜヨハネスに?父親を慕うような気持ちが嵩じて?そういう複雑で妖しい機微を描いてほしかったかも。

 同性愛よりも、現代社会における宗教の矛盾がメインテーマになってるドラマです。宗教ってやっぱ怖いと思った。同性愛は罪悪!邪悪!と、この世の終わりのように絶望し煩悶するヨハネスの様子とか、まるでエクソシストみたいにヨハネスを悪魔祓いしたりとか、狂信的すぎてドン引き。愛だの平和だの平等だのと唱えながらも、教義に反する者はみんな敵で排斥とか、すごい偽善的で狭量。宗教じたいが争いや憎しみを生み出してるようにも思えました。教会の運営や活動のためにいつも金!金!言ってるのも何だかな~。賄賂とか密告とか、教会の人間関係も世俗まみれ。魂の浄化とか救いとか、まったくなされてない。この世に生きるかぎり、ピュアな信仰心を貫くことは困難なようです。

 ↑ ヤニヴ~リドリー・スコット監督の大作「ナポレオン」にヤニヴが出てる!と知り、さっそくチェキってみたのですが。超チョイ役でトホホすぎ!ヤニヴの無駄遣いすんなー!チョイ役でもケツ出してたのがヤニヴらしかったけどヤニヴはクリスチャン・ディオールの半生を描いたTVシリーズ“The New Look”にも出演。またチョイ役じゃありませんように!

 ↑ ヤニヴの最新作映画“Hagen”は、ヴァイキング時代の歴史ドラマ。ヤニヴはワイルドで勇猛な戦士役みたいです。楽しみ!
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疑惑に落とす女!

2024-04-01 | フランス、ベルギー映画
 皆さま、こんばんは!どうしても心に秘めておけないことがあり、家族にも職場でも話せていないことを、ここで打ち明けさせてください。それは…ああ、私ついに、高額宝くじに当選したんです!!!100万200万じゃないですよ!黙ったまま誰にもビタ一文あげません!もう仕事も辞めます!バラ色の優雅な引きこもり生活をエンジョイします!そして一か月ほどハワイとイギリスで過ごそうと思ってます♬ワーキングプアライフよ、さようなら!
 なんてね。今日はエイプリルフールですね(^^♪自分でも悲しく虚しくなる嘘ついちゃいました。いつかこの嘘が真になりますようにと祈りながら、ワーキングプア生活を今年も続けます…

 「落下の解剖学」
 フランスの雪深い山里で、作家であるサンドラの夫サミュエルの転落死体が発見される。第一発見者は夫妻の息子で視覚障害のあるダニエルだった。警察はサミュエルと不仲だったサンドラの犯行と見なし、彼女を殺人罪で逮捕するが…
 去年のカンヌ映画祭パルムドール受賞、アメリカの賞レースも席捲し、アカデミー賞では脚本賞を獲得した話題作を、やっと観ることができました(^^♪で、どうだったかというと…評判通りの秀作でしたが、何だろう、期待外れとまでは言わないけど、そこまで大傑作とは思えなかったというのが正直な感想です。期待し過ぎたんでしょうね。グイグイ引き込んでくる衝撃と面白さという点では、同じオスカー作品賞候補だった「哀れなるものたち」のほうが格段に上だし、ザンドラ・ヒュラーの演技も「ありがとう、トニ・エルドマン」のほうがユニークで強烈でした。

 手に汗握るサスペンスとか、二転三転するドラマティックさとか仰天の真実とか、がっつりエンターテイメント!な映画ではなく、どこにでもいる夫婦、ありふれた家族の関係の中に潜んでいるイヤな感情ー軽蔑とか恥辱、無関心とか嫌悪感、疎外感といったものーが冷ややかに、かつ痛烈に暴かれ晒されていく息詰まる相克のドラマ、として見ごたえがありました。とんでもなく醜悪な秘密とか、恐ろしい動機とかではなく、破滅へと導くのがパートナーや家族がいれば大なり小なりある身近で些細な行き違いや軋轢、自分勝手さというのが現実的で怖いです。
 それにしても。サンドラ夫妻の冷え切った関係、責任の押し付け合い、自分の利益や都合優先、いがみ合っての罵詈雑言を見ていると、ぼっちのほうがやっぱいいわと痛感。あんな不満やストレスで蝕まれた生活、まっぴらごめん。二人の間に息子がいなかったら、きっと別れられたんだろうなあと思うと、ダニエルの悲しみのほうがサミュエルの死よりも不幸で可哀想でした。

 疑惑のヒロイン、サンドラを薄気味悪いほどに冷静沈着に、時にホラーな激情で演じて絶賛され、アカデミー賞主演女優賞にもノミネートされたドイツの名女優、ザンドラ・ヒュラーの巧妙な演技がやはりこの映画の白眉でしょうか。疑惑の女といえば、いかにもやってそうな悪女、毒婦、あるいは濡れ衣を着せられた哀れな女、みたいに演じるのが常套ですが、そんなオーソドックスかつ陳腐じゃないところが、さすがザンドラさん。見た目も言動もごくごくフツー、でも空虚さや冷酷さが渦巻く女の底の知れなさを、エキセントリックに怪演熱演するのではなく、トボけた感じさえする表情や雰囲気で伝える演技が独特で非凡でした。ドイツ人の彼女が主に英語で、時々フランス語で演じてるのも驚嘆ものでした。悪意なく家族や周囲の人々を苦しめ傷つけ不幸にするサンドラみたいな女はある意味りっぱな悪女、でも苦しめられても傷つけられても壊れないサンドラの強靭な精神に憧れもします。

 今やフランス映画界随一の役者スワン・アルローが、サンドラの弁護人役を好演。すごい個性的な顔。役と演技は人間味があり、なおかつ鋭さもあって、それでいて演技派気どりの俳優にありがちな出しゃばり感がなく、かつ強烈なヒロインに食われない存在感も放っている、という理想的な相手役演技でした。ダニエルの盲導犬スヌープの、人間たちに翻弄されても忠実な姿がけなげで愛しかったです。それにしても。この内容で上映時間2時間半はちと長い!集中力がない私には、冗漫に感じられもしました。
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