まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

風薫る五月

2021-04-30 | 映画雑記
 GW真っ只中ですね!🎏爽やかな初夏だけど、心は浮き立ちません。夏の扉を開けても、きっとコロナは居座ったまま。ちっともフレッシュ!フレッシュ!フレッシュ!じゃない夏になりそうですね
 暑いコロナ禍を想像しただけで精神が崩壊しそうになりますが、楽しみな映画がたくさんあることがせめてもの救いです。7月8月日本公開の作品で、私が心待ちにしてる作品をピックアップしてみました~
 
  白頭山大噴火

 イ・ビョンホンとハ・ジョンウのW主演作。若々しいけどシブさも増して、ますますカッコよくなってきてるビョン吉さまの男気ヒーローっぷりに、わしのハートも大噴火(^^♪

  シンプルな情熱

 世界的バレエダンサーで俳優でもあるセルゲイ・ポルーニンが、ヒロインを翻弄する悪い色男役。オコチャマ漫画映画にはもう飽き飽き!こういう大人の恋愛映画が観たいの!

  SEOBOK ソボク

 コン・ユ&パク・ボゴム、韓流の人気イケメンスターが競演。BLっぽいけどBLではなくブロマンス系?イケメンには身も心も愛し合ってほしいのに!

  SUMMER OF 85

 フランソワ・オゾン監督待望の新作は、瑞々しいBL青春映画。女性やノンケじゃやっぱ心に響くBLは作れない!フランスの新星イケメン、バンジャマン・ヴォアザンにも期待大!

  プロミシング・ヤング・ウーマン

 アカデミー賞脚本賞受賞!キャリー・マリガンの怪演は、自称女優のCMタレントにはできない激烈さと痛快さだとか。

  アジアの天使

 池松壮亮 in 韓国。そんなに面白そうじゃないけど、壮亮くんの映画は最近ご無沙汰なので、久々の再会を心待ちにしています。

  恋の病 潔癖なふたりのビフォーアフター

 すごい気になってた台湾映画!突然の日本公開ニュースに驚喜!台湾の岸優太(と私は勝手に呼んでます(^^♪)ことリン・ボーホンは、ブサカワいくて肉体美♡

  孤狼の血 Level 2

 待望の続編。またロケには遭遇できんかった!😨職場のすぐ近くでやってたらしいのに!楽しみですが不安も。キャストがちょっと…失笑もののVシネマ化の懸念。トーリもですが、日本のイケメンがイキっても全然怖くも迫力もないもんね~  

 皆さまが楽しみにしておられる作品は何でしょうか。お聞かせ願わしゅう存じます🎏
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華やかにニューノーマル

2021-04-26 | 映画雑記
 アカデミー賞が発表されましたね!
 コロナ禍のため、いろいろと試行錯誤した上での授賞式となったようです。やっぱ映画ファンとしては、大切な年に一度のお祭りですから、無事に行われたのは本当に喜ばしいかぎりです。東京オリンピック開催はやめてほしいと心底思うけど
 すでにwowwowは解約、今年は授賞式を観ることはできなかったので、夜にyoutubeで主な受賞シーンだけ楽しみました。授賞式は候補者とプレゼンター、その同伴者一人だけ、ということでこじんまりした、けど例年とは真逆な落ち着いた優雅な雰囲気だったように感じられまた。受賞はほぼ下馬評通りで、「ミナリ」のユン・ヨジョンも順当にオスカー獲得。韓国人俳優初、アジア人女優では半世紀以上ぶりという快挙!

 プレゼンターのブラッド・ピットがやっぱカッコよかった~理想の年の重ね方ですね。いつまでも若ぶってる日本のイタいおじさんアイドルとか、ブラピを見習ってほしい!それにしても。韓流ファンにはおなじみのBBA女優ユン女史が、まさかオスカー女優になるとは。今後はもうおいそれとは韓流ドラマには出てくれないでしょうね。アメリカで結婚生活、子育てをした経験があるユン女史は英語が得意、ユーモアまじりのスピーチが会場に温かい雰囲気をもたらしてました。韓国俳優、やっぱすげーわ。日本人俳優も頑張ってくれ!日本アカデミー賞受賞程度で満足せずに!

 助演男優賞も大方の予想通りダニエル・カルーヤが受賞。数年前「ゲット・アウト」で主演男優賞候補となった彼、早々と2度目のノミネートで受賞となりました。風貌といい演技といい、いい役者ですよね~。まだ32歳!二宮とか相葉とかより年下ですよ!受賞作の“Judas and the Black Messiah”はいつ日本で観られるのかしらん。同作で同じく助演男優賞候補となったラキース・スタンフィールド、いい男!

 「ナイブズ・アウト」や「蜘蛛の巣を払う女」とかで男前やな~と思ったけど、授賞式での彼はさらに男前でした。ゴージャスなチンピラ風ファッションもイケてました。でも私がもっとも楽しみにしてた候補者は、「サウンド・オブ・メタル」で主演男優賞候補となったリズ・アーメッド新婚の奥さま同伴でしたね。受賞とはなりませんでしたが、ノミネートだけで間違いなく役者としての格はグっと上がった。今後の活躍がますます楽しみに。

 作品賞がラストに発表されるのが恒例なのですが、今年はなぜか主演男優賞がトリでした。これはおそらく故人のチャドウィック・ボーズマンの受賞を見越しての措置。感動の余韻を残して終焉という青写真。しかし。蓋を開けてみたら、受賞者は「ファーザー」のアンソニー・ホプキンス!でもそんなに意外でもなかったです。むしろ順当だと思います。チャドウィックが受賞したら、嬉しさよりも悲しみがまたぶり返したかもしれないので、正直ちょっとホっとしたかも。ホプキンス爺さま、「羊たちの沈黙」以来29年ぶりの受賞!さらに御年83歳での受賞は史上最高齢!まさに老人の星!授賞式にはやはり欠席、スピーチなしでセレモニーは終了し、何だか拍子抜けで寂しい終わり方だったようです。やっぱ作品賞で締めくくるのがベストかも。

 その作品賞を獲った「ノマドランド」は、監督賞と主演女優賞も受賞。女性が監督賞を受賞するのは史上2人目。クロエ・ジャオ監督のおさげ髪が可愛かった。フランシス・マクドーマンドは3度目の主演女優賞受賞!彼女も授賞式は欠席するのではないかと思ってましたが、ちゃんと出席しててホっとしました。主演女優賞3個はキャサリン・ヘプバーンに次ぐ記録で、メリル・ストリープ超えを達成。マクド姐さんこそ、今や現代最高の名女優。それを否む人はいないのではないでしょうか。「ノマドランド」やはり観に行かねば!
 毎年オスカーの後は、これが最後かも…来年の今頃にはもう私この世にはいないかも…と、はかない思いに襲われてしまうのですが、きっとずっとこの繰り返しなんでしょうね来年はどんな作品やスターが栄光に輝くでしょうか。
 あらためて、受賞おさらい。
  
 作品賞 「ノマドランド」
 監督賞 クロエ・ジャオ
 主演男優賞 アンソニー・ホプキンス
 主演女優賞 フランシス・マクドーマンド
 助演男優賞 ダニエル・カルーヤ
 助演女優賞 ユン・ヨジョン
 国際長編映画賞(外国語映画賞) 「アナザーラウンド」
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ハベクの新婦①~⑥ 神ってる!

2021-04-25 | 韓国のドラマ
 ちょっと今さら感ありますが、「ハベクの新婦」観始めたニダ!第1話から6話まで観たニダ!

☆美人
 神の国の王位継承者である水神ハベクさま。俺さまGODですが美人です。メイクと髪型で、たまにX JAPANのYOASHIKIに似て見えるが。演じてるナム・ジュヒョクくん、彼もスラ~っとしたモデル長身、超小顔、長い手足など、まさに神さまに選ばれし者な体型です。
 神の国のセットや神の国の住人の衣装など、成金趣味なところが韓国らしいです。神の国の言葉も韓国語なんですね(笑)。

☆フルチン降臨!
 ヒロインのソア役はシン・セギョン。石原さとみ+キスマイの北山、みたいな顔です。ソアの前に現れるハベク。何と全裸!捕まるよ!ボカシ入りのすっぽんぽん、ジュヒョクくん頑張りますね~。こんなんもう日本のドラマじゃありえんし。体脂肪ほとんどなさそうなバキバキ筋肉質な肉体ですが、細すぎ!私好みの肉体美じゃないのが残念。
 
 ソアが持ってたナースの制服を着て堂々と歩み去るハベクが笑えた。
☆藤井聡太?
 人間界ではノータイのジャケット、スラックスというシンプルな衣装を着てるハベクですが、それもすごく似合っていてカッコいいです。ジュヒョクくん、すごい透明感ある清潔な風貌と雰囲気なので、韓国といえばの悪趣味成金ファッションより、品のあるシンプルな衣装のほうが似合います。
 
 ジュヒョクくん、可愛いのですが、美男とかイケメンではないですね~。坂口健太郎を薄く地味にしたような顔?ヘボい顔が藤井聡太くんに見えることもある。でも聡太くん好きだしケンチャナ!
☆ハベク語録 
 人間界でも俺さまGODなハベク。人間のふりして人間社会に合わせるなんてことも全然しないので、オツムがちょっとアレな可哀想な人扱いされちゃいます。ハベクがよく口にする『無礼者』『俺は許可しておらぬ』『何の話かわからぬ』etc.日常会話で使ってみたいかも。

 ↑ 貧乏神?のおっさんに唇を奪われるハベクが笑えた
☆韓国の金持ち
 実業家フエ氏役の俳優、どっかで見たことあるな~と思ったら、「雪の女王」とか「霜花店」とかに出てた俳優ですね!ちょっと苦手系な見た目。私好みの男前俳優だったらと残念。フエ氏自身は威張ってないソフトな紳士なのですが、大勢の部下を従えて人前で大名行列って、時代劇じゃあるまいし。でも韓流ドラマではおなじみですよね。

☆こんな精神科医イヤだ
 ソアが、これまた共感できない魅力の薄い、韓流ドラマの典型的ヒロイン。濃ゆいメイクといいケバい髪色といい精神科医とは思えぬ風貌。ほとんど働かず、患者に対してもぞんざいで無能。よくクリニック開業できたな~、いや、よく医師免許とれたな〜と呆れます。閑古鳥も当たり前。銀行員や不動産屋に対しても高圧的でヒステリックだし、患者より彼女の精神のほうがイタんでるっぽいです。

☆カミワザ!
 神力を失ってるハベクですが、人間のやることなら一度見たり聞いたりしたら何でもできるという超人的能力はあり。インラインスケートで神業連発するハベクのドヤ顔が可愛い!
☆下劣な国民性?
 タレントのジャヤが、ソアの不幸な家庭環境を人前でバカにするシーン。金持ちが貧しい者を露骨に暴力的に見下す場面、ドラマだけでなく実際にも日常茶飯事っぽい韓国。民度低すぎるでしょ。日本で同じようなことやったら完全にアウトです。
☆混浴したい
 水浴びが大好きなハベクは、やたらとソアの家の屋上で行水。ジュヒョクくん、ほんとほっそいですね~。羨ましい!

☆神友
 ハベクと同じ神であるムラは女優として、ビリョムは財閥の御曹司として人間界に潜伏。ムラはニューハーフっぽい美女。ビリョムは品川似。ハベクもですが、みんな神さまにしてはチャラい。神秘的な雰囲気も神々しい威厳も全然なし。人間にとっては迷惑なことばかりしてるし、何しにきたの。とっとと帰って!な、ありがたみゼロな神さまたちです。

☆料理男子
 料理も一瞬で一流シェフなみな腕前になるハベク。ギャルソン風な服もチェゴヤ!スタイルいい男子って、ほんと何着ても似合いますね~。
★総括
 ファンタジーが苦手なので正直ちょっとキツいのですが、カッコカワいいナム・ジュヒョクくんがリタイアを阻止してます。なかなかいませんよね~。彼みたいな清潔感と透明感がある俳優って。イケメンなんだけど、たまに顔が藤井聡太に見えることがあるところも好きです。ヒロインに全然魅力がないのが、まあ韓流ドラマにありがちですが、やはり残念です。イケメンとのイチャイチャよりも、ぜんぜん働いてないところが神経に障る!

 ↑ ナム・ジュヒョクくん主演の「ジョゼと虎と魚たち」の韓国リメイク版、日本公開が楽しみですね(^^♪
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ロックダウン!危ない橋を渡る男

2021-04-18 | 北米映画 15~21
 「21ブリッジ」
 マンハッタン島で強盗事件が発生し、犯人の二人組は多数の警官を射殺して逃走する。捜査を指揮する刑事のアンドレは、マンハッタンを封鎖して犯人たちを追跡するが…
 チャドウィック・ボーズマン、最後の劇場公開映画いつになったらこの喪失感は薄れるのでしょうか。彼の新作をもう観られないなんて、いまだに信じられない信じたくない。この映画でもう見納めかと思うと、哀惜と寂しさがいや増します。最後の勇姿、目に焼き付けてきました…

 強く優しく誇り高く、そしてどこか悲しげ。この作品でも、いつものチャドウィックでした。素晴らしい演技力の持ち主だけど、悪役は絶対できない役者でした。演技が上手い俳優は枚挙にいとまなしですが、ヒーロー役や善人役を演じてもどこか性悪さや薄汚さが透けて見える俳優も多い。チャドウィックからはそんなものは微塵も感じられませんでした。あの高潔さ、気高さは演技だけで表せるものではありません。誰にでもいつでも明るく愛想がいい的な善良さではなく、常に悲しみと苦しみをたたえているところ、自分に酔ってるナルシーさが微塵もないところも彼の魅力です。そんな役者は稀有なので、かえすがえす急逝が惜しまれます

 この映画の撮影時にはもう闘病中だったはずのチャドウィックですが、そんな気配は感じられず、激しいアクションに挑んでたのが驚異でした。無理したんだろうな~。その役者魂に畏怖するばかり。「ブラックパンサー」や、それ以前の作品のような若々しい壮健さはありませんが、暗い過去と傷を背負いハードな職務に心身を削る刑事役は、エネルギーあふれた健康的でピッチピチな俳優だと不自然なので、やつれて疲れた雰囲気を漂わすチャドウィックに合ってました。シブくて悲しそうだけど可愛い顔、しゃがれてセクシーな声が好きです。

 チャドウィック最後の熱演には心揺さぶられましたが、お話やアクションなどはかなり凡庸です。どこかで見たことがあるようなシーンと展開で、特に目新しさのない作品でした。決してつまんないわけではなく、派手で迫力あるアクションはやはりハリウッド映画ならでは。1時間30分ぐらいで終わるコンパクトさも私には好ましかったです。コンパクトすぎたせいで、アンドレの暗い人間性とかちゃんと描けてなかったけど、クダクダしい余計な人間関係に時間を割いてなかったのは、返ってすっきりしてよかったのかも。

 それにしても。麻薬強奪が大量殺戮に発展し、ついには市街戦化する無法地帯ニューヨーク。問答無用に撃ち殺し撃ち殺される人々。アメリカ、ほんま怖すぎて絶対住めんわ。命がいくらあっても足りん。犯人逮捕のためにマンハッタンが封鎖されるのですが、あっさりしすぎで異常事態の緊迫感が希薄だったのが残念。もっとカオスでパニックな描写があってもよかったのでは。

 犯人コンビ役、テイラー・キッチュとステファン・ジェームズもいい男たちでした。もう主役は無理そうなテイラーですが、今でも男前です。悪そうな顔、鋭い目つきが悪役に合ってます。今回は悪役というより、精神的に破綻して破滅的になった男の役でした。「ビール・ストリートの恋人たち」では優しい芸術家肌の男の子役だったステファン、今回は犯社会的な青年役。でも根は悪人ではなく、想定外のトンデモ事態にパニくる姿が哀れで可愛かったです。顔も可愛い。後半、ほとんど主役になってました。犯人なのに頑張れー!死ぬなー!と声援を送ってしまいました。俊敏な動きが若者らしい魅力。テイラーもステファンも、着替えシーンで肉体美をチラっと披露してます。どっちもいいカラダ!

 警察署長役でJ・K・シモンズも出演してます。オスカーを受賞しても、よほどのことがない限りオファーは断らないという、お高くとまらない選り好みしない仕事のスタンスに好感。アンドレの相棒になる敏腕女性麻薬捜査官役のシエナ・ミラーが、かなり残念。ここでかなり製作費をケチってますよ。もっと大物女優にしてほしかった。あるいは、どうせならイケメン白人男優にして、チャドウィックとオセロなブロマンス対決をさせてほしかったです。 
 大都会の夜景が大好きです。この映画のニューヨークの夜も美しく、物騒だけどやっぱ行ってみたいな~と思いました。

 ↑ 「マ・レイニーのブラックボトム」でオスカー候補となった陛下。受賞したら嬉しい、けど最初で最後のオスカーかと思うと悲しい…😢
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一世一代の証言!

2021-04-14 | 欧米のドラマ
 NHK BSで放送されたBBCのドラマ「検察側の証人」を観ました~。原作はこれまで何度も映像化されてるアガサ・クリスティーの戯曲です。
 終戦直後のロンドン。富豪の中年女性エミリーが何者かに撲殺される。家政婦の証言やエミリーの遺言書などから、エミリーと親密な関係だった青年レナードが逮捕される。弁護士のメイヒューはレナードの無実を証明しようとするが、レナードの妻ロメインは法廷で夫に不利な証言をし…
 映像化の中では、巨匠ビリー・ワイルダー監督の「情婦」が有名。アガサ・クリスティ―原作の映画やドラマといえば、どちらかといえば明るい楽しい内容や演出のものが多いのですが、このドラマはかなり非アガサ・クリスティー的というか、すごく暗く陰惨な悲劇にアレンジされていました。「情婦」も悲劇的なラストでしたが、名優チャールズ・ロートンが演じた主人公の弁護士はユーモアたっぷりなキャラで、付き添い看護婦とのやりとりとかワイルダー監督らしい軽妙なコメディタッチで、往年のハリウッド映画の香り高い愉快な映画に仕上がってました。でもこのドラマときたら、何でここまで?と首を傾げてしまうほど救いのない話になっちゃってるんですよ。メインキャラ全員が深刻な問題を抱えていて、話が進むにつれてどんどん病的に狂気的になっていくんですよ。もはや事件の真相はどうでもよくなってくるほどに。

 真犯人の狡猾で冷酷な殺人もさることながら、原作にはないメイヒュー夫妻の愛も希望も失われた老夫婦関係が鬱すぎる。ミステリーよりもそっちに重点が置かれているようなドラマかもしれません。心を殺して続ける絶望と苦痛に蝕まれた人生が重すぎる、けど日本の軽い捜査ものドラマに飽き足らない人には見ごたえがあるのではないでしょうか。レナードとロメインの歪んだ愛も、日本のドラマでは描かれない複雑さと怖さで面白いです。
 当時の格差社会の不公平さ、正義のなさも怖い。貧乏なレナードや外国人であるロメインへの社会の扱いが非道すぎる。特に警察、ありえんほどに人権無視。今では考えられないけど、当時は当たり前なことだったんですね。

 裁判と老妻に翻弄されるメイヒューも哀れでしたが、やっぱ最大の被害者は殺されたエミリーです。いくら自分勝手で若い男好きな淫乱ばばあでも、あんな殺され方されていいわけない。女主人への歪んだ愛執からレナードを憎悪する家政婦の、悲惨すぎる末路も後味が苦い。他人を支配したり傷つけたり利用したり、陥れたり呪ったりしたら必ず自分に返ってくるのです。でもやはり、映画やドラマでは黒い欲望と愛憎まみれな業の深い人間のほうが、清く正しい善人よりも面白いです。
 このドラマが楽しみだったのは、私が今いちばん注目してるイギリス俳優、ビリー・ハウルがレナード役だったから(^^♪

 彼、やっぱいい役者ですね!全然イケメンでも美青年でもない、どっちかっつーたらブサイクかもしれない顔なのですが、雰囲気とか佇まいがすごい美しいんですよ。ルックスで売ってない彼みたいな俳優が、長く活躍できるんですよね~。虐げられた社会底辺者の役なのですが、小汚さとかうらぶれた感じは全然なくて、貧しげな服装でもどこか優雅で上品。ぜったい犯人じゃないよ、早く助けてあげて!と心が痛む必死さ哀れさだけど、ロメインや家政婦の供述によるシーンでは冷酷で残忍な悪人の顔も見せる、謎めいた複雑な二面性のある役を好演してたビリー。スラっと背が高くてスーツやタキシードが似合うところも英国男優。それにしても。レナード役って、若い男優なら演じてみたい、挑戦しがいのある魅力的な役なのでは。

 メイヒュー役はイギリスのバイプレイヤー、ハリウッド映画にもよく出てるトビー・ジョーンズ。ちっこいけど見た目と演技で存在感は強烈。見た目だけの俳優など易々と食ってしまう名優です。心身ともに病んでるのに必死すぎる姿が悲壮で怖いです。殺されるエミリー役は、SATCで人気を博した熟女キム・キャットラル。若い男を金で弄ぶ金持ちババア役ですが、あまりイヤらしくなかったのは彼女がサバサバしたアメリカ女性だからでしょうか。

 最も重要な役、「情婦」では大女優マレーネ・ディートリッヒが演じたロメイン役のアンドレア・ライズバラは美人ですが、地味なところが役に巧く活かされてました。犯人が仕掛けたトリックはあまりにも有名。大胆で衝撃的ですが、現代では絶対に通用しませんよね~。証人や情報提供者の素性は徹底的に調べるだろうし、もし同じことすればすぐにバレます。

 ↑ 雰囲気が美しいビリーの新作、タハール・ラヒム共演のNetflixドラマ「ザ・サーペント」楽しみ(^^♪
 

 
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農業オットケー!

2021-04-11 | 北米映画 15~21
 「ミナリ」
 韓国系移民のジェイコブは、農業で一旗あげるため妻子を連れてアーカンソー州で農園を始める。経営が軌道に乗らない中、韓国から妻の母が孫の世話のためやって来るが…
 昨年の「パラサイト 半地下の家族」に続き、今年も韓国ものがアカデミー賞を席巻。この作品はアメリカ映画でアメリカが舞台となってますが、登場人物はほぼ韓国人で台詞も韓国語なので、韓国映画界の快挙再びと言ってもいいのではないでしょうか。日本人としては何だか悔しい、もどかしいです。ヒットしてるらしい最近の某スウィーツ邦画や、某マンガ原作映画とか、日本ではもうこういう映画しか作られないのか~と落胆、失望せずにはいられません。国家としては日本以上にどうかしてる韓国ですが、映画だけは完全にわが国を凌駕してます。羨ましい。日本人の人気俳優やアイドルがハリウッド進出!ってのも、こんな映画こんな役でと失笑するものがほとんど。この作品のように、母国のアイデンティティを背負い、母国語で演技してアメリカで評価される、というのが真の、かつ理想的なハリウッドでの成功と言えるのではないでしょうか。

 韓国人一家がアメリカでの生活で苦労、奮闘する姿を描いてるのですが、韓流映画だときっと必要以上にドラマティックにしたり、お涙ちょうだいな感動エピソードや悲劇をぶっこんでくるところですが、この映画にはそんなあざとさや湿っぽさは全然なく、辛く厳しい現実の中にあっても優しさとユーモア、希望を失わない温かく爽やかな家族ドラマでした。必死に生きてるんだけど、追い詰められてギスギスすることなく、どこかのんびりほのぼのしてる楽天的なところが微笑ましかったです。お金や天候には苦労する一家ですが、アメリカといえばの差別偏見の被害にはほとんど遭ってなかったのが、ちょっと都合よすぎて不自然な感じもしました。アメリカ人、あんな善い人ばかりじゃないだろ。人種差別こそ、もはやアメリカ人の真の姿とさえ思える今日この頃。最近の非道すぎるヘイトクライムとか、アメリカ人の民度ってどんどん低くなっていってる気がします。あんなケダモノみたいな白人や黒人が、よくもまあ自分たちのほうがアジア人より上とか思えるよなあ。まさに狂気の沙汰です。

 家族ひとりひとりのキャラも、ありえないほど個性的には描かず、ごくフツーの市井の移民一家、でも魅力的な家族だったのが自然でよかったです。中でも幼い長男デヴィッドと祖母がいい味だしてました。二人のやりとりが笑いを誘い、かつしみじみと切なくもありました。デヴィッドにウザがられても、のほほんと大らかに孫を包み込むハルモニの包容力が素敵でした。私もあんなハルモニ、ほしかったわ。ハルモニの人柄や言動がほんと楽しくて、ちょっと品がないところやシレっとしたしたたかさに親近感。中盤とラストに、とんでもない辛苦と不運を一家にもたらしてしまうハルモニが、悲しくも愛おしかったです。

 一家を演じた俳優たちが、みんな素晴らしい演技!パパ役のスティーヴン・ユァンは、人気ドラマ「ウォーキング・デッド」で名を上げ、村上春樹原作の映画「バーニング」で高く評価され、この映画でアカデミー賞にもノミネートされるなど今アゲアゲな韓国系アメリカ人俳優。韓国語も流暢なんですね。優しいけど意固地で頑固、アメリカ人を信用してない偏狭さも自然に伝わってくる演技でした。ママ役のハン・イェリも、デヴィッド役のアラン・キムくんも、オスカー候補になってもおかしくない好演でした。特にブサカワなアランくん、末恐ろしい子役ですよ。英語と韓国語のバイリンガル演技も驚異でした。

 ハルモニ役は、韓流映画やドラマでおなじみの売れっ子ばばあ女優ユン・ヨジョン。韓国人俳優初のオスカー候補!受賞もありえるので、ほんと快挙です。プっと笑えて、しんみりと切なくさせる忘れ難い演技。韓国ならではの老女だけど、同時に若者への無償の愛と高齢者の悲しい末路は、誰の心の琴線にも触れる万国共通なものではないでしょうか。オスカー獲ってほしい!
 農業って尊い!そして大変!と、あらためて思いました。お金と体力があれば、私も農業したい!毎年狭い庭のプランターで、ロマネスコやミニトマトを栽培してるのですが、せめて小さな畑で野菜を育ててみたいものです。それにしても。この映画を観て、夢をかなえるためにはきれいごとばかりでは無理だと思い知りました。誰かが傷ついても犠牲になっても構わない、という冷酷さも必要なんですね。独りの力で実現できる夢なんてありません。
 タイトルのミナリとは、韓国語でセリのことだとか。ハルモニが水辺でセリを育てるのですが、ほとんどほったらかしでも生い茂る逞しさは、異国での苦労に挫けない一家そのもので、映画の題にぴったりです。
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ミッション・ホリプロ

2021-04-04 | 日本映画
 「太陽は動かない」
 産業スパイ組織AN通信のエージェントである鷹野と田岡は、ブルガリアで死亡した仲間が追っていた香港の裏組織の動向を探る任務に就く。彼らの前に、フリーエジェントのデヴィッド・キムや、謎の女AYAKOが現れ、ある機密をめぐって諜報戦が激化するが…
 人気作家、吉田修一の小説の映画化。うう~ん…海外ロケでのダイナミックで奇想天外なアクションシーンなど、なかなか頑張ってるとは思ったのですが、何だろう?すごく残念な映画でもありました。やっぱスパイアクション映画って、日本には似合わないというか、すごい不自然で無理してる感じが否めなかった。真面目にやればやるほど滑稽で失笑、これはコメディ映画なのかな?と首を傾げてしまうことも。とにかく失笑苦笑シーンてんこもりで、ツッコミどろこも満載。あえて狙ってたのかな?と思うほどに。

 私、007やM:I、ワイスピとかが大好きなんです。なので、この映画がどうしてもそれらのショボい劣化版としか思えなくて。どっかで見たことがあるような、オリジナルのパロディみたいなシーンなど、ほとんどコントみたいだった。ノリはド派手で壮大なんだけど、国家の存亡に関わるとか国民の命が危機にさらされてるとかスケールの大きい話ではなく、単なる企業の利益争いの手先になってるスパイってのが、何か小さいな~と苦笑。スパイ描写もステレオタイプすぎ。日本ならではの独自で斬新な描き方が望ましかった。

 スパイ映画ってどうしても007やM:Iのような、冷徹で非情な世界というイメージがありますが、この和製スパイ映画にはそんなハードボイルドさは微塵もなく、センチメンタルでスウィートなんですよ。それが大きな敗因のひとつです。スパイ映画にお涙ちょうだいな感動エピソードとか要らん!悲しい過去のエピソードとか、淡い青春の初恋とか、熱い友情タッグとか、脱力感ハンパないです。何だか昔懐かしの大映ドラマなノリ。それもそのはず、主演の藤原竜也と竹内涼真の所属事務所はホリプロ。元ホリプロのアイドル、堀ちえみの「スチュワーデス物語」を彷彿とさせるスパイ映画になってました

 最大の敗因は、藤原竜也も竹内涼真も凄腕のスパイに見えないことかもしれません。藤原竜也はね~…個性的な俳優だとは思うのだけど、老けた子どもみたいな弛んだ童顔で、しかもガリガリヒョロヒョロで、まったく強そうに見えない。その髪、切れよ!と思ってしまったり。演技が熱すぎオーバーすぎ。まるでコントでした。香港の高層ビルの屋上から鳥のように飛んで逃げるシーンと、郵送されてきた箱の中からジャジャーンと飛び出してくるシーン、かなり笑えました。そういうのが、映画をユルく軽くしてしまったと思う。

 竹内涼真はね~…最近ワイルド系にイメチェンし、肉体改造してマッチョ化。ファンサービスのシャワーシーンでは、お尻も披露。デカくてムチムチした肉厚なケツは、私好みでなかなか眼福でした。イケメンだけどヘボいアホ顔なので、どんなにハードなアクションをしてもタイトでシャープな感じがせず、何だか締まりがないというか。竜也同様、頭脳明晰で屈強なスパイに見えません。それと。24時間以内に組織にコンタクトしないと、胸に埋め込まれた爆弾が起爆するという設定なのですが、まるでウルトラマンのカラータイマーみたいにピコンピコンと音出して点滅するのが笑えた。

 藤原竜也の少年時代を演じてた日向亘(彼もホリプロ)が、凛々しくフレッシュでした。デヴィッド・キム役はピョン・ヨハン、謎の女AYAKO役はハン・ヒョジュ(最近よく遭遇するわ~)、韓流スターも登場。二人ともイケメン、美人なんだけど、スパイにしては可愛すぎ優しすぎというか、やっぱユルいんですよね~。二人とも頑張って日本語の台詞もこなしてましたが、わざわざ日本語を使ってくれてデヴィッドもAYAKOも随分親切な人たちだな~と苦笑。ハン・ヒョジュのファッション七変化は目に楽しいのですが、着物姿とか意味不明で笑えた。AYAKO役は、10年前ぐらいのハ・ジウォンがピッタリなんだけどな~。

 明らかにCGなシーンが多かったのも、チープ感を強くしてました。敵役、悪役がショボい小物すぎ。拷問が手ぬるい。韓国映画のヤクザのほうがよっぽど残虐です。頑丈なはずの縛めが案外簡単にはずれたり、走行中の列車や航海中の船にいつの間にか乗り込んでたりとか(どーやって?!そのプロセス、省略しすぎ!)。鷹野の上司(佐藤浩市)が、鷹野のことを行方不明になった自分の息子ではないかと思ってる企業の取締役(鶴見辰吾)に、鷹野の悲惨な過去についてペラペラ喋ったり、スパイにあるまじきオープンさ親切さで嗤えた。

 とまあ、細部が雑なのがトホホかつ笑えます。内容も演出も出演者も、大人が楽しむハードでクールなスパイ映画ではなく、スパイ映画の形を借りた女性受け狙いのスウィーツ映画になってしまってたのが残念です。原作を読んだ時、鷹野や田岡を日本人俳優でイメージできなかった。当時の脳内キャストは、鷹野=イ・ジョンジェ、田岡=チョン・ジョンミョンでした。10年前ならドンピシャな組み合わせだと思う!今なら鷹野=パク・ソジュン、田岡=ナム・ジュヒョクがチョアチョア~(^^♪韓国でも映画化して!
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君が男でも女でも愛してる

2021-04-01 | 中国・台湾・香港映画
 久々の更新!皆様ご機嫌いかがでしょうか?
 思いがけないことが起きて、身も心も慌ただしくしておりました。というのも…私事なのですが、このたび縁あって結婚することになりました。恥ずかしながら、相手は15歳も年下です。いろんな不安は否めませんが、彼を信じて幸せになりたいと存じます。
 何てね(^^♪ぜんぶ嘘です今日はエイプリルフールですね!しょーもなさすぎる嘘ですんません結婚は嘘ですが、ある思いがけないことは本当に起きて、バタバタとしておりました。何が起きたのかは、おいおいお話ししたいと思いまする。
 今日4月1日は、レスリー・チャンの命日でもありますね。レスリーの死のニュースは、たちの悪い嘘かと思いました。あの日の衝撃と悲しみは、今でも鮮明に覚えてます。レスリーを偲んで、特に好きな彼の作品を回顧していきたいと思います…

 永遠的張國榮 ①
 「君さえいれば 金枝玉葉」
 人気歌手ローズに憧れるウィンは、彼女に近づきたい一心で男になりすまし男性歌手オーディションに応募、何と合格してしまう。ローズの恋人で音楽プロデューサーのサムは、天真爛漫なウィンに惹かれる自分に戸惑い悩むが…
 これまで観た香港映画、そしてラブコメ映画の中ではMY 最高傑作!これほどハッピーな楽しさと胸キュンにあふれた映画、他に私は知りません。気が滅入った時に観たくなる作品。コロナ禍で気分が落ち込んでる人に、ぜひ観てほしいです。それにしても。この映画、公開からもう27年!も経ったんですね~。でも、いま観ても色褪せない、それでいてノスタルジーにもあふれた、往年の香港映画ファンにとっては宝物のような映画。久々に観ましたが、やっぱ名作!

 女の子が男になりすます設定は韓流ドラマでおなじみですが、この香港映画こそその元祖、そしてベストですよ。韓流は亜流かパクリ。そもそも韓流の男装ヒロインは、これのどこが男なの?!男でまかり通るなんてありえん!な可愛すぎる女の子ばかり。男受けを狙ってるあざとさも鼻につく。その点この映画のウィンは、見た目もキャラも男に変身する前から女子女子しておらず、かなり男に近い。まさに香港人なガヤ娘っぷりが笑えます。演じてるアニタ・ユン、一世一代の名演!まさにウィン役を演じるために生まれてきたかのような女優。背が高くてペチャパイ、声が低い、短髪が似合う、という身体的特徴も奇跡的。もちろん顔は超可愛いので顔だけだと男には見えないのですが、BL漫画に出てくる可愛い男の子みたいなのが腐には好感。アニタ・ユンこそ、後にも先にもmy best of 男装ヒロインです。アニタ・ユン、現在はどんな姿になってるのか、気になるけど怖くて調べられない。彼女には私の中ではずっとウィンのままでいてほしいから。

 香港コメディ独特のあのガヤガヤしさが、楽しく懐かしい。みんなドタバタと大騒ぎ、ベタすぎる泥臭い笑いが愛おしい。香港人ってみんないつもあんなにオーバーリアクションなの?広東語だと、何でもコミカルに聞こえる。下ネタも多いのですが、下品にならず微笑ましいレベル。ウィンと幼馴染のユーロウとのやりとりが、いかにもコテコテな香港で好き。ユーロウのウィンへの男に化けるための特訓が笑えます。この映画は脚本もすぐれてるんですよね~。蛍光ペンやゴキブリなど、小道具の使い方が秀逸!
 この映画が忘れ難いのは、やはり故レスリー・チャンの存在ゆえでしょう。様々な映画で魅力を振りまいたレスリーですが、このコメディではとりわけ彼の個性と才能が活かされてる、いや、炸裂してます。とにかくレスリー、スマート&スウィート。ベタなお笑いシーンも可愛い過ぎる。特に好きなのは、暗いエレベーターに閉じ込められてギャーギャー騒ぐシーン。そして、ピアノを弾きながら歌うシーンの彼は神々しいカッコよさ。本当に素晴らしい俳優、そして歌手だったレスリー。

 性を超えた魅力を、レスリーが遺憾なく発揮すればするほど悲しい。中性的なレスリーですが、決してキャマキャマしくはなく、むしろ男っぽい演技。やたらとパンイチ姿になったり、ふんがー!と女にがっついたり。でも、男にはない柔らかさ、女にはない優しさが匂いたってます。そしてガラス細工の繊細さが切なくも痛ましい。男に恋してオロオロ悩むレスリーが愉快なのですが、実際にもゲイの噂があったレスリーがこんな役を、と当時は驚かされたものです。前作の「さらば、わが愛 覇王別姫」の大成功で、何か吹っ切れたものがあったのでしょうか。覇王別姫、金枝玉葉、そして「ブエノスアイレス」と、同性愛を描いた秀作を連発したこの頃のレスリーは、まさにカミングアウト的な絶頂期にあったように思われます。

 苦悩と葛藤を乗り越えたサムがウィンに言う『君が男でも女でも愛してる』は、私にとって映画史上最も感動的な台詞。ウィンが本当に男だったら、もっと感動的だったんだけど。当時は悲劇かキワモノで描かれることが多かったLGBTに、優しさと希望の光を射した佳作、そして不世出の明星レスリー・チャンの魅力は永遠に語り継がれることでしょう。

 可憐な花のようだったレスリーが散って、もう18年。彼がもしあんなにも美しくなければ、ひょっとしたら自ら死を選ぶことはなかったのでは、と今でも思ってしまいます。老いて美しさを失う苦しみと絶望は、美しい者にしか解らないのでしょう。悲しみは尽きないけど、みっともない若作りに必死になって嗤われる老人と化したレスリーを見ずにすんだことだけは、不幸中の幸いと言えるのではないでしょうか。
 ワガママだけどめっちゃ善い女なローズも、好感度の高いキャラ。演じてたカリーナ・ラウもいい女。旦那のトニー・レオンともども、すっかり日本では見なくなりましたね。おかまプロデューサー役は、香港映画の顔的存在だった大御所エリック・ツァン。やくざの親分役がオハコだけど、気風のいいおっさんオカマも軽妙に好演。ウォン・カーウァイ監督作品など、この頃は大人気だった香港映画。またかつての輝きを取り戻してほしいものです。

 この映画を日本でリメイクするなら、サム役はヒゲダンの藤原聡がいいかも(^^♪レスリーみたいな美男子ではないけど、きっと似合うのではなかろうか。ウィン役は、若い頃の榮倉奈々が風貌的には合ってると思うけど、今の女優ではとんと思いつきません。

 
コメント (9)
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