「光」
妻子と団地で暮らす信之の前に、幼馴染の輔が現れる。25年前に故郷の離島が津波に襲われ壊滅する直前、信之は恋人の美花のために殺人を犯し、その証拠を握る輔は信之を脅迫し始めるが…
やっとこさ観に行くことができました~井浦新と瑛太が競演、しかも男同士の愛憎ものと聞いて、観ないわけにはいかなくなった映画。その前に、直木賞作家である三浦しをんの原作小説も読み、とても面白かったのでますます映画への待望熱が高まりました。ド田舎では今年になってやっと公開されて、喜び勇んで劇場へと向かったのでした。で、どうだったかというと…
すごく良かった!部分と、残念…な部分がせめぎ合ってた、というのが率直な感想。すごく良かったのは、主演男優二人の好演。井浦新も瑛太も、かつては個性的なイケメン俳優としてもてはやされましたが、加齢と共に人気も容色も衰え、ヒット作や話題作にも恵まれず、かなりビミョーな存在になってたのですが、この映画ではこれまでは見せなかった、いや、もう見せるしかない捨て身の演技を披露していて、彼らの役者人生の第二章の始まりを感じさせてくれました。チヤホヤされた若い頃や絶頂期の自分と決別できず、いつまでもカッコいいつもりのイタいおじさん(誰とは言わんが)に比べると、役者として進化したい、成熟したいという気概を、二人がもっていたと知り嬉しいです。
まず、信之役の井浦新。感情のなさそうな蝋人形顔で、何を考えてるのか分からない、謎めいた不気味さがあるARATAに、信之役はピッタリでした。
あまり瞬きしない黒目がちの瞳が、まさに人形の目みたいで怖い。でも、冷酷な感じは薄く、むしろ優しそうなところもARATAの魅力でしょうか。優しいけど、実はすべてに倦怠的なせいで受け身になってるだけ、な感じ。激情的で狂気的なシーンも気合いが入ってましたが、私が素敵だなと思ったのは、幼い娘に良きパパなシーン。特に、豚や牛の解体人形?みたいな変なものが飾ってる展示会で娘との連続ツーショット写真のシーンのARATAが、すごく可愛くて好きです。服を着てるとほっそりして見えるけど、ベッドシーンで見せた上半身裸はムチムチしていて意外でした。
輔役の瑛太が、なかなか頑張ってた!薄汚い風貌、爛れた雰囲気、どんより濁った目、下卑た頭の悪そうな笑い方が信之のみならず観客の神経にも障るけど、どこか憎めない放っておけない、病んだワンコ、病んだ構ってちゃんみたいでキモカワいかった。若いピチピチでもなく老いたカサカサでもない、エロい男脂が出始めた浅黒い肌艶など、これまでになく性的な魅力を醸してました。小汚いけど、やっぱスゴいイケメン!手足、長っ!小汚くて下品で病んでるけど、不思議な優しさ悲しさがあって女にモテる輔は、瑛太ぐらいのイケメンが演じないと成立しない役ですもんね。
信之と輔のイビツな精神的BL関係を、ねちっこく激しく描いてたのも高ポイント。原作では信之の妻や輔の恋人が物語に深く関わってくるのですが、映画では女たちを極力排して男たちの愛憎に焦点を当てていました。BLに女がしゃしゃり出てくるのを忌み嫌う腐にとっては、大歓迎な省略。キスやセックスはしないけど、フツーの男同士はこんなことしない、言ったりしない、かぎりなくBLなシーンも多し。
信之の関心を執拗に狂おしく求める輔が、『あんな女のどこがいいんだよ!!』とか『ほんとに俺のために殺してくれるの?』と嫉妬したり甘えたりする姿に萌えました。同じ女とヤって、その感想を訊いたり答えたりするのも、淫靡で間接的な同性愛だった。BLに興味がない人、BLが苦手な人が観たら、ただもう理解できない気持ち悪いだけの映画かもしれません。
昭和臭ただよう団地や汚いアパートなど、小市民な空間もリアリティがあって良かったです。信之の妻役や美花役に、大物や実力派の女優を起用しなかったのも、返って功を奏したのでは。女優の存在感なんて、BL映画には必要なし!信之の妻役の橋本マナミは、化粧っ気のない地味さと大根演技が、懐かしの日活ロマンポルノの団地妻っぽくて良かったです。セクシーを売りにしてるわりには、濡れ場で乳首も見せない中途半端な脱ぎでしたが。すべての元凶である美花役は、長谷川京子には荷が重かったかも。ただのケバい身勝手な女にしか見えなかった。男を狂わせるけど冷感症的、虚無的な美花を適格に演じられる女優って、今の日本にはいないですよね~。
輔の父親役を、平田満が怪演。彼ってほんと名優ですよね~。鬼畜だけどみじめすぎる醜態が強烈。瑛太と平田さん、今年の大河ドラマでも父子役で共演してますね。こっちは健全な親子ですが。残念…な部分は、濡れ場が大したことなかったこと。ここはやっぱ、韓流映画、韓流男優のほうが優れてますね(韓国でリメイクされるなら、信之はソ・ジソブ、輔はチョン・ジョンミョンがいいかも(^^♪)。瑛太は覚悟を決めて、全裸になって濡れるべきだった。脱ぎと濡れなら、弟の永山絢斗のほうが「ふがいない僕は空を見た」でいい仕事してました。あと、新と瑛太の演技がかなりオーバーで、いかにも熱演してます!な暑苦しさ、不自然さが否めなかったのも。演出と音楽も大仰だった。もうちょっと抑え気味でも良かったのでは。
信之は美花を、輔は信之を。愛する人に愛されず、求めていない人に求められる、皮肉で残酷な関係。光とは、見えても決して手に入れることはできない愛のことなのでしょうか。光がもう見えない私は、不幸な人間なのでしょうか。
スウィーツ漫画、少年漫画映画ばかりの今の邦画ですが、直木賞女流作家の作品をもっと映画化すれば、大人も楽しめるのにな~。桐野夏生の「グロテスク」、高村薫の「冷血」、小池真理子の「ストロベリーフィールズ」とか、イケメン俳優が演技開眼、魅力発揮できる映画になりそうだわ!
妻子と団地で暮らす信之の前に、幼馴染の輔が現れる。25年前に故郷の離島が津波に襲われ壊滅する直前、信之は恋人の美花のために殺人を犯し、その証拠を握る輔は信之を脅迫し始めるが…
やっとこさ観に行くことができました~井浦新と瑛太が競演、しかも男同士の愛憎ものと聞いて、観ないわけにはいかなくなった映画。その前に、直木賞作家である三浦しをんの原作小説も読み、とても面白かったのでますます映画への待望熱が高まりました。ド田舎では今年になってやっと公開されて、喜び勇んで劇場へと向かったのでした。で、どうだったかというと…
すごく良かった!部分と、残念…な部分がせめぎ合ってた、というのが率直な感想。すごく良かったのは、主演男優二人の好演。井浦新も瑛太も、かつては個性的なイケメン俳優としてもてはやされましたが、加齢と共に人気も容色も衰え、ヒット作や話題作にも恵まれず、かなりビミョーな存在になってたのですが、この映画ではこれまでは見せなかった、いや、もう見せるしかない捨て身の演技を披露していて、彼らの役者人生の第二章の始まりを感じさせてくれました。チヤホヤされた若い頃や絶頂期の自分と決別できず、いつまでもカッコいいつもりのイタいおじさん(誰とは言わんが)に比べると、役者として進化したい、成熟したいという気概を、二人がもっていたと知り嬉しいです。
まず、信之役の井浦新。感情のなさそうな蝋人形顔で、何を考えてるのか分からない、謎めいた不気味さがあるARATAに、信之役はピッタリでした。
あまり瞬きしない黒目がちの瞳が、まさに人形の目みたいで怖い。でも、冷酷な感じは薄く、むしろ優しそうなところもARATAの魅力でしょうか。優しいけど、実はすべてに倦怠的なせいで受け身になってるだけ、な感じ。激情的で狂気的なシーンも気合いが入ってましたが、私が素敵だなと思ったのは、幼い娘に良きパパなシーン。特に、豚や牛の解体人形?みたいな変なものが飾ってる展示会で娘との連続ツーショット写真のシーンのARATAが、すごく可愛くて好きです。服を着てるとほっそりして見えるけど、ベッドシーンで見せた上半身裸はムチムチしていて意外でした。
輔役の瑛太が、なかなか頑張ってた!薄汚い風貌、爛れた雰囲気、どんより濁った目、下卑た頭の悪そうな笑い方が信之のみならず観客の神経にも障るけど、どこか憎めない放っておけない、病んだワンコ、病んだ構ってちゃんみたいでキモカワいかった。若いピチピチでもなく老いたカサカサでもない、エロい男脂が出始めた浅黒い肌艶など、これまでになく性的な魅力を醸してました。小汚いけど、やっぱスゴいイケメン!手足、長っ!小汚くて下品で病んでるけど、不思議な優しさ悲しさがあって女にモテる輔は、瑛太ぐらいのイケメンが演じないと成立しない役ですもんね。
信之と輔のイビツな精神的BL関係を、ねちっこく激しく描いてたのも高ポイント。原作では信之の妻や輔の恋人が物語に深く関わってくるのですが、映画では女たちを極力排して男たちの愛憎に焦点を当てていました。BLに女がしゃしゃり出てくるのを忌み嫌う腐にとっては、大歓迎な省略。キスやセックスはしないけど、フツーの男同士はこんなことしない、言ったりしない、かぎりなくBLなシーンも多し。
信之の関心を執拗に狂おしく求める輔が、『あんな女のどこがいいんだよ!!』とか『ほんとに俺のために殺してくれるの?』と嫉妬したり甘えたりする姿に萌えました。同じ女とヤって、その感想を訊いたり答えたりするのも、淫靡で間接的な同性愛だった。BLに興味がない人、BLが苦手な人が観たら、ただもう理解できない気持ち悪いだけの映画かもしれません。
昭和臭ただよう団地や汚いアパートなど、小市民な空間もリアリティがあって良かったです。信之の妻役や美花役に、大物や実力派の女優を起用しなかったのも、返って功を奏したのでは。女優の存在感なんて、BL映画には必要なし!信之の妻役の橋本マナミは、化粧っ気のない地味さと大根演技が、懐かしの日活ロマンポルノの団地妻っぽくて良かったです。セクシーを売りにしてるわりには、濡れ場で乳首も見せない中途半端な脱ぎでしたが。すべての元凶である美花役は、長谷川京子には荷が重かったかも。ただのケバい身勝手な女にしか見えなかった。男を狂わせるけど冷感症的、虚無的な美花を適格に演じられる女優って、今の日本にはいないですよね~。
輔の父親役を、平田満が怪演。彼ってほんと名優ですよね~。鬼畜だけどみじめすぎる醜態が強烈。瑛太と平田さん、今年の大河ドラマでも父子役で共演してますね。こっちは健全な親子ですが。残念…な部分は、濡れ場が大したことなかったこと。ここはやっぱ、韓流映画、韓流男優のほうが優れてますね(韓国でリメイクされるなら、信之はソ・ジソブ、輔はチョン・ジョンミョンがいいかも(^^♪)。瑛太は覚悟を決めて、全裸になって濡れるべきだった。脱ぎと濡れなら、弟の永山絢斗のほうが「ふがいない僕は空を見た」でいい仕事してました。あと、新と瑛太の演技がかなりオーバーで、いかにも熱演してます!な暑苦しさ、不自然さが否めなかったのも。演出と音楽も大仰だった。もうちょっと抑え気味でも良かったのでは。
信之は美花を、輔は信之を。愛する人に愛されず、求めていない人に求められる、皮肉で残酷な関係。光とは、見えても決して手に入れることはできない愛のことなのでしょうか。光がもう見えない私は、不幸な人間なのでしょうか。
スウィーツ漫画、少年漫画映画ばかりの今の邦画ですが、直木賞女流作家の作品をもっと映画化すれば、大人も楽しめるのにな~。桐野夏生の「グロテスク」、高村薫の「冷血」、小池真理子の「ストロベリーフィールズ」とか、イケメン俳優が演技開眼、魅力発揮できる映画になりそうだわ!