夏のBL映画祭②
「Snails in the Rain」
80年代のイスラエル、テルアビブ。恋人と同棲中の大学生ボアズは、彼への恋心をつづった手紙を受け取る。それは同性からのもので、送られてくる愛の手紙はボアズの心を激しく乱すが…
イスラエルも最近はLGBTに優しい国のようですが、かつては厳しく不寛容だったようです。この作品はBL映画というよりゲイ映画って感じ。中東の暑さの中でくすぶる男たちの情愛と肉欲が、こっちまで汗ばみそうになるほど濃密にねっとりと描かれています。
男から男へのラブレターといえば。思い出すのは「三島由紀夫レター教室」です。小説の中でノンケ青年が人気ブサイク芸人からラブレターをもらい、その内容に心揺れるエピソード。自分自身のことはほとんど触れず、控え目ながらも真摯に情熱的に、ひたすら青年のことを賛美する愛の手紙に、キモい!と嫌悪を抱かない自分に戸惑う青年の心理が興味深いのです。青年をひそかに愛している熟女の、男色家のほうが女よりも男の弱みと泣きどころを掴んでいる、そして男はみんな自惚れ屋である、という分析には思わず膝を打ちました。この映画でも、同性からの詩的な愛の賛美にボアズは心揺さぶられ、周囲の男がみんな自分に熱い視線を向けているように見えてしまう彼の自意識過剰さは、まさに三島由紀夫の言う通りな男のメンタリティでした。
同性からの愛の告白に揺れる想い。でも三島由紀夫レター教室の青年とこの映画のボアズのそれはかなり違います。青年は完全なるノンケでしたが、ボアズは同性愛者。でもそれを認めず否定し、必死にノンケとして生きようとしてるけど、ラブレターをきっかけに真の欲望が抑えきれなくなり苦悩、煩悶する姿が痛まくも哀れ。LGBTの権利が広く認知されたとはいえ、まだまだ社会的には同性愛は罪、害悪と見なされることが多いのが現実。自分の性嗜好をまるで臭いものに蓋をするように抑えたり隠したり、ビクビク怯えたりするボアズはイライラするほどチキンなのですが、だからといって堂々とカミングアウトすることが正しいとも思えなくて。本当の自分を生きることで得られる解放感や自由の代償の大きさ、失うものも多いことを考えると、ボアズの躊躇も偽りの人生も理解できます。LGBTに対して偏見を持ち差別してる人たちの狭量さのほうが、よっぽど恥ずべき罪、害悪だと思わない人のほうがまだ多い、という現実が悲しい。
それにしてこの映画、まったく腐向けじゃないんですよ。ボアズをはじめ、男たちが意味もなく必要以上に裸になるシーンや演出が多く、かなりゲイ向け。中東の濃ゆい男たちの全裸やキス、自慰などに乙女な腐が求める美しさはなく、むせそうになるほどの肉欲の臭いで充満してます。ゲイゲイしいエロティックさよりも、ボアズの葛藤や恋人、家族との関係を繊細に深掘りしてほしかったかも。終盤に判明するラブレターの送り主は、そんなに意外ではなかったです。
ボアズ役のヨアヴ・レウヴェニは、すごいイケメン、ていうか美男!ルックスが非一般人すぎて、フツーの大学生に見えん!端麗な超小顔、細マッチョな長身、性的フェロモンも濃厚で、女にも男にもモテモテな色男役にピッタリな風貌。脱ぎっぷりもハンパなかったです。彼女とのセックスシーンがエロかった。男とはキスどまりでしたが。ゲイゲイしいけど、男同士のキワどいR18的な性交シーンは皆無でした。
あまり馴染みのないイスラエルの庶民の生活風景が興味深かったです。中東でもあまりアラビアンな感じではなく、ちょっと西欧に近い感じ?特に宗教を感じさせる表現も場面もなかったです。ボアズの彼女が作ってる料理が、日本ではあまり見かけないもので珍しかったです。徴兵制のあるイスラエル、韓国もですが、軍隊生活ってゲイにとってはいろんな意味で過酷。男たちがふざけて公開自慰とか、ゲイに限らず繊細な心を持つ人には戯れの域を超えた地獄絵図なのでは。ああいうのが男らしいとか男の付き合いとかいう価値観が怖いです。
「Snails in the Rain」
80年代のイスラエル、テルアビブ。恋人と同棲中の大学生ボアズは、彼への恋心をつづった手紙を受け取る。それは同性からのもので、送られてくる愛の手紙はボアズの心を激しく乱すが…
イスラエルも最近はLGBTに優しい国のようですが、かつては厳しく不寛容だったようです。この作品はBL映画というよりゲイ映画って感じ。中東の暑さの中でくすぶる男たちの情愛と肉欲が、こっちまで汗ばみそうになるほど濃密にねっとりと描かれています。
男から男へのラブレターといえば。思い出すのは「三島由紀夫レター教室」です。小説の中でノンケ青年が人気ブサイク芸人からラブレターをもらい、その内容に心揺れるエピソード。自分自身のことはほとんど触れず、控え目ながらも真摯に情熱的に、ひたすら青年のことを賛美する愛の手紙に、キモい!と嫌悪を抱かない自分に戸惑う青年の心理が興味深いのです。青年をひそかに愛している熟女の、男色家のほうが女よりも男の弱みと泣きどころを掴んでいる、そして男はみんな自惚れ屋である、という分析には思わず膝を打ちました。この映画でも、同性からの詩的な愛の賛美にボアズは心揺さぶられ、周囲の男がみんな自分に熱い視線を向けているように見えてしまう彼の自意識過剰さは、まさに三島由紀夫の言う通りな男のメンタリティでした。
同性からの愛の告白に揺れる想い。でも三島由紀夫レター教室の青年とこの映画のボアズのそれはかなり違います。青年は完全なるノンケでしたが、ボアズは同性愛者。でもそれを認めず否定し、必死にノンケとして生きようとしてるけど、ラブレターをきっかけに真の欲望が抑えきれなくなり苦悩、煩悶する姿が痛まくも哀れ。LGBTの権利が広く認知されたとはいえ、まだまだ社会的には同性愛は罪、害悪と見なされることが多いのが現実。自分の性嗜好をまるで臭いものに蓋をするように抑えたり隠したり、ビクビク怯えたりするボアズはイライラするほどチキンなのですが、だからといって堂々とカミングアウトすることが正しいとも思えなくて。本当の自分を生きることで得られる解放感や自由の代償の大きさ、失うものも多いことを考えると、ボアズの躊躇も偽りの人生も理解できます。LGBTに対して偏見を持ち差別してる人たちの狭量さのほうが、よっぽど恥ずべき罪、害悪だと思わない人のほうがまだ多い、という現実が悲しい。
それにしてこの映画、まったく腐向けじゃないんですよ。ボアズをはじめ、男たちが意味もなく必要以上に裸になるシーンや演出が多く、かなりゲイ向け。中東の濃ゆい男たちの全裸やキス、自慰などに乙女な腐が求める美しさはなく、むせそうになるほどの肉欲の臭いで充満してます。ゲイゲイしいエロティックさよりも、ボアズの葛藤や恋人、家族との関係を繊細に深掘りしてほしかったかも。終盤に判明するラブレターの送り主は、そんなに意外ではなかったです。
ボアズ役のヨアヴ・レウヴェニは、すごいイケメン、ていうか美男!ルックスが非一般人すぎて、フツーの大学生に見えん!端麗な超小顔、細マッチョな長身、性的フェロモンも濃厚で、女にも男にもモテモテな色男役にピッタリな風貌。脱ぎっぷりもハンパなかったです。彼女とのセックスシーンがエロかった。男とはキスどまりでしたが。ゲイゲイしいけど、男同士のキワどいR18的な性交シーンは皆無でした。
あまり馴染みのないイスラエルの庶民の生活風景が興味深かったです。中東でもあまりアラビアンな感じではなく、ちょっと西欧に近い感じ?特に宗教を感じさせる表現も場面もなかったです。ボアズの彼女が作ってる料理が、日本ではあまり見かけないもので珍しかったです。徴兵制のあるイスラエル、韓国もですが、軍隊生活ってゲイにとってはいろんな意味で過酷。男たちがふざけて公開自慰とか、ゲイに限らず繊細な心を持つ人には戯れの域を超えた地獄絵図なのでは。ああいうのが男らしいとか男の付き合いとかいう価値観が怖いです。