まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

初恋の放火魔

2024-06-13 | 北米映画 80s~90s
 皆さまには今、推しの子はいますか?わしは最近、この男子にハマってます(^^♪

 竹村祐樹くん。NHK手話ニュースのキャスターです。すごい可愛いですよ~スポーツマンっぽい長身のベビーフェイス小顔イケメン

 手話ニュースの時のスーツ姿もイケてますが、もうひとつ担当しているNHKこども手話ウィークリーの時の彼は、ニュースのトピックに合わせて被り物してたり、表情が豊かでウルトラキュート食い入るように見てしまうので、注意散漫なせいか手話の読み取りがなかなか上達しない私には最高の先生でもあります。ろう者だということ以外、詳しいプロフィールは不明ですが、NHK手話キャスターになる前に、いくつか映画にも出てるらしいので、いつか観てみたいものです。

 「エンドレス・ラブ」
 高校生のデヴィッドとジェイドは、深く愛し合い求め合うあまりジェイドの父の不興を買い、会うことを禁じられてしまう。ジェイドへの恋に焦がれるあまり、デヴィッドは彼女の家に火をつけて…
 80年代、皇太子さま(現・天皇陛下)もファンであることを公言するなど、日本でも絶大な人気を誇ったブルック・シールズ主演の悲恋映画。公開当時は評価されずヒットもしなかったらしいけど、私はこの映画すごく好きなんですよね~。何でかというと、すごく狂ってるから甘美な青春のロマンス、という糖衣を被った戦慄のメンヘラ映画なんですよ。子どもの時テレビで初めて観た時は、何なのこいつら?!頭おかしいだろ!と、好きで好きでどうしようもないあまりイカレてしまうデヴィッドと、そんな彼氏の狂態は真実の愛の証!と思い込んでいるジェイドの姿は、13日の金曜日以上のホラーでした。

 恋に狂い破滅する男女の映画を観るたびに痛感しますが…何事も過ぎたるは猶及ばざるが如し、ほどほどが身のためなんですね。デヴィッドもジェイドも恋に夢中なあまり、自分たちのこと以外は何も目に入らない、文字通りLove is blind状態。本人たちは幸せで楽しいんだろうけど、そのあまりにも周囲への配慮に欠けた行為や言動は、まだ若いから、子どもだから、と笑って許すことができない無謀さ、無神経さがありました。私がジェイドのパパでも、あんなことされたら不快だし怒りますよ。可愛いひとり娘が男の子と交際している、それはまあいいとして、その彼氏が結婚もしてないのに家族ヅラして家に入り浸り、夜中に家族が寝静まったらi家に侵入して娘とエッチしまくり、明け方に帰る。もうちょっとこっそりやればいいのにバレバレ、ていうか堂々とやってるところが厚かましい、人をバカにしてる。

 非難されたり拒絶されたりすると、それがなぜなのか理解できず相手に対して病的なまでにネガティブで攻撃的になるデヴィッド、ピュアすぎるというよりちょっと発達障害があるのかな、と心配になる思考回路と言動がヤバすぎ。ジェイドと引き離され、彼女に会いたい一心でとった行動が、なぜか放火おいおい~。八百屋お七じゃあるまいし。精神病院にブチこまれても、クールダウンどころかますます狂おしくジェイドへの想いを募らせ、退院後も暴走してさらなる悲劇を起こすデヴィッド、まさにジェイド一家にとっては疫病神。周囲に迷惑かける恋愛は、やっぱしないほうがいいですよね~。

 迷惑なガキどもだなと眉をひそめつつ、あんなにも誰かを深く強く愛せる、求められるっていいな~と羨ましくもなりました。身も心も陶酔して蕩けるような恋の多幸感とか、破壊的になる絶望感とか、いったいどんな感じなんだろうと、経験したことない私は想像もつかない。若い頃も年老いた今も用心深く生きてる私のほうが、ひょっとしたらデヴィッドとジェイドよりも愚かなのかもしれません。花を踏んでは同じく惜しむ少年の春…若き日の美しい愚かさを、甘い痛みと共に振り返ってみたかった…

 ジェイド役のブルック・シールズは、当時15歳!すでに完成形の美女。ちょっと可愛い、ちょっと美人とはレベルが違うゴージャスな美しさで、フツーの女子高生には見えません。大柄で頑強そうな見た目なので、悲恋に嘆く美少女って感じはあまりしません。ラブシーンが多かったけど(ヌードは吹き替え?)今だと10代の女優にあそこまではさせられません。デヴィッド役のマーティン・ヒューイットが、マーク・ラファロを可愛くした感じのイケメン。彼も脱ぎっぷりがよかったです。もう引退してるみたいですね。ジェイドのイケズな兄役のジェームズ・スペイダーが美青年。そして何と!若き日のトム・クルーズが!出てきてすぐ裸になるアホそうな脳筋少年役。チョイ役ですが、デヴィッドに余計なことを吹き込む重要な役でもありました。
 内容といい雰囲気といい、イタリアの名匠フランコ・ゼフィレッリ監督の「ロミオとジュリエット」を彷彿とさせるのですが、それもそのはず、この作品もゼフィレッリ監督でした。ライオネル・リッチーとダイアナ・ロスがデュエットした主題歌は、誰もが耳にしたことがある有名な曲ですね。




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彼が愛したフランケンシュタイン

2024-04-15 | 北米映画 80s~90s
 ゆっくり愛でる間もなく、今年も桜は慌ただしく儚く散ってしまいました…🌸
 今年こそたくさん映画館で映画を観る!というマニフェストも、例年通り守れていない「オッペンハイマー」もいまだに。このままだと、観なくていっか(^^♪になっちゃいそうです。オッペンはそんな感じですが、絶対に外せないのが「異人たち」です。今月中には観に行くぞ!それまで他のBL映画をアペリティフに、BL映画祭じゃ(^^♪って、もう最近ほぼBL映画しか観てねーじゃん!なんてツッコミ、自分でしてみます

「異人たち」公開記念BL映画祭①
 「ゴッド・アンド・モンスター」
 かつてフランケンシュタイン映画で人気を博し、引退後は家政婦のハンナと静かな余生を送っていた映画監督のジミーは、庭師の青年クレイトンに魅せられ彼をモデルに絵を描き始める。クレイトンと心を通わせていくにつれ、過去の記憶と死に直面している現実が老いたジミーの中で交錯し…
 去年「ザ・ホエール」でアカデミー賞主演男優賞を受賞したブレンダン・フレイザーが、イギリスの名優イアン・マッケランの相手役を演じた作品。「ザ・ホエール」は未見のままなのですが、役といい風貌といいすっかり特異な感じのおじさんになったんだな~と、若き日のブレンダンを感慨深く思い返します。ブレンダンといえば、「ジャングル・ジョージ」とか「ハムナプトラ」シリーズとか、コメディ寄りの肉体派イケメン俳優ってイメージ。それより前の青春ものに出てた頃は、何となく顔や雰囲気が筒井道隆とカブって好きだったんですよね~。そんなブレンダンの作品の中でいちばん好き、いちばんの好演を見せているのが、老人と若者の優しく切ない友情を描いたこの秀作だと思います。

 当時29か30歳ぐらいのブレンダン、当然ながら若い!そしてカッコイカワイい!イケメンというか、ファニーな漫画顔?ぶっきら棒でちょっと粗野なところはあるけど、実はすごくいい奴で老人に優しい青年を朴訥にナイーブに演じてます。常にどことなく悲しそう、寂しそうな顔が可愛い。ブルーカラーの肉体労働者役が似合うガタイも素敵。屈強で大きな体をもてあましてる、心は少年のままな若者って感じがよく出てる風貌と演技でした。この映画でのブレンダン、主人公のジミーのみならず、多くの映画ファン(ていうかゲイ)の胸をときめかせザワつかせたに違いありません。惚れ惚れするような肉体美は、まさに眼福!

 ピチピチ、ムキムキな若い肉体をさらし、おじいちゃんを回春させる罪な男。誘惑とか挑発とかいった意図は全然なく、実に無邪気にゲイのおじいちゃんをドギマギハアハアさせるところが、笑えると同時に切ない。ラスト近く、暗く落ち込んでいるジミーに、これ見て元気出せや!とばかりにサラリと全裸になるシーンは、この映画のハイライトかもしれません。彫刻のような神々しい肉体、ハラリと落とす下半身のバスタオルにドキッ(前も後ろもちゃんと見えないようになってますがお尻は出してよかったのでは)。
 ジミーとクレイトンの年の差友情が、微笑ましくも痛ましい。はじめはゲイのジミーに何となく警戒して、セクハラまがいの話をされると激怒したりもしてたけど、知的でエレガントで孤独なジミーを慕い支えるようになるクレイトンが、大きな子犬みたいで可愛いんですよ。二人の友情を深めたのも、そして壊したのも、ジミーがゲイだったからではないでしょうか。セックスはもうできないけど、ジミーのクレイトンに向ける目には熾火のような欲望と恋心が。体は枯れても心は枯れない高齢ゲイの苦しさ、絶望に暗澹となってしまいました。

 実在したイギリス出身の怪奇映画監督、主人公のジェームズ・ホエール役の名優イアン・マッケランが、まさに彼にしか演じられない、彼以外の俳優は考えられないと思える適役、名演。オスカーにノミネートされたのも当然、ていうか、受賞しなかったのが不思議。イギリス人らしいきちんとした身だしなみ、軽妙で皮肉なユーモア。そして実際にもカミングアウトしているマッケラン爺さんの面目躍如、ノンケの俳優には決して出せないモノホンなゲイゲイしさが、洗練と気品に満ちていて素敵なんです。終盤、全裸のクレイトンにガスマスクをつけさせて興奮、錯乱する物狂おしさがイタすぎる。老いてもゲイ、そして芸術家だったからこその悲しい狂態でした。

 つっけんどんだけど誠実に忠実にジミーに仕えている家政婦のハンナ役、リン・レッドグレイヴの好演も印象的です。怪奇映画の撮影現場、戦場での悲恋など、ジミーの過去と現在との交錯や、彼が創り出したフランケンシュタインとクレイトンが重なる深層心理シーンなど、脚本と演出もユニークかつ巧妙。オスカーの脚色賞受賞も納得です。腐女子向けのスウィートBLと違い、ゲイの悲しく苦しい真実を描いている作品ですが、決して暗くも重くもなく、優雅でファンタジックな作風になっているところが出色です。
 
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美・サイレント

2023-05-25 | 北米映画 80s~90s
 「愛は静けさの中に」
 小さな港町にあるろう学校に赴任したジェームズは、若く美しいろう者の掃除婦サラに興味を抱く。サラの閉ざされた心を開こうとするうちに、ジェームズは彼女と恋に落ちるが…
 最近また手話講座に通い始めたので(意識高めな目標があるわけではなく、認知症防止のため)ろう者、手話といえば真っ先に思い浮かぶこの作品を久々に観ました。懐かしい!この映画を初めて観たのは、ちょうど私が映画を好きになり始めた頃。それまで聾啞や手話についてほとんど無知だったので、ちょっとカルチャーショックを受けたのをよく覚えてます。ヒロインを演じたマーリー・マトリンが実際にもろう者で、映画初出演でいきなりアカデミー賞の主演女優賞受賞というドラマティックさが、映画以上にインパクト大で感動的でした。マーリーはろう者初、さらに史上最年少での主演女優賞受賞という快挙。共演者のウィリアム・ハートとは実生活でも恋人となり、授賞式では前年に「蜘蛛女のキス」で主演男優賞を獲得した彼が、ステージでマーリーの名前を発表するという、これまた出来すぎな展開とシーンも話題になりました。その時は幸せそうに見えた二人ですが、後年マーリーが告白した衝撃的で悲惨な関係には戦慄。

 とにかく当時20歳そこそこだったマーリーの、若さと美しさが鮮烈。情熱的な演技も圧倒的かつ瑞々しい。すごい勝ち気で激情的、かつ屈折してるサラのキャラも強烈です。障害があるけどけなげに生きてる娘、なんて生易しいヒロインじゃないんです。チェッカーズも真っ青なギザギザハートっぷり。でもその反抗的で攻撃的な態度には悲しみと絶望が見え隠れしていて、それが美しい翳りになっています。サラの壮絶な悲惨すぎる過去と家族関係は衝撃的。私なら精神を病むわ。「silent」の想くんなんて、サラに比べたら甘えてるな~と思います。深く傷ついても壊れたりしないサラの強さも、痛ましいけど魅力的でした。ちょっと蓮っ葉なビッチ言動とか、機嫌がいい時の皮肉なユーモアとかも、サラを悲痛なだけなヒロインにしてませんでした。

 今は亡き名優ウィリアム・ハートも若い!頭髪はもうかなりヤバくなってましたが。すごく優しそう、だけどかなり神経質でもある、といった複雑で深みのある役と演技も、やはり「silent」とは違います。愛する人を大事に思うあまり、相手の気持ちや立場を疎かにし無意識にコントロールや矯正をしようとする健常者の独善、驕り、上から目線の善意など、障害者との関りやインクルーシブ教育について考えさせられました。マーリーとハート氏のラブシーンも、ロマンティックかつ情感があって印象的。特にプールでのラブシーンが美しかった。大人のロマンスとラブシーン、これがなかったゆえに「silent」は、残念な少女漫画ドラマになってしまいました。

 ろう学校の授業の様子も興味深かったです。あんな風に発声練習とかやるんですね。ろうの生徒たちが明るくて、学園生活も楽しそうだったのが映画を救いのある内容にしていました。そして手話。日本手話とは違うアメリカ手話なので、もちろん全然チンプンカンプン。サラの手話はすごい高速でアグレッシブ。使う人の性格が出る手話、私は優しい手話を習得したいです。マーリーが母親役で出演している、2年前にオスカーの作品賞を受賞した「コーダ」も、近々観ようと思ってます。
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堕天使の心臓

2022-09-06 | 北米映画 80s~90s
 「エンゼル・ハート」
 50年代のニューヨーク。私立探偵のハリー・エンゼルは、謎めいた紳士ルイ・サイファーから失踪した歌手ジョニーの行方を突きとめるよう依頼を受ける。ジョニーを探すハリーだったが、探り当てた関係者は次々と怪死し…
 初めてこの映画を観た時はまだ子どもだったので、ぜんぜん理解できずただもうワケワカメでした。評判ほど怖くもキモくもなかった。当時は実際に起こってる事件のほうがはるかに恐ろしく、こんな悪魔だの呪いだのといった非現実的なオカルトよりも、女性子どもが白昼突然惨殺される通り魔事件とか、一家が皆殺しにされたあげくバラバラに解体されてしまう事件とかいったニュースのほうが恐怖でした。長い年月を経て最近、あらためて今作を観ることができたのですが、やっぱワケワカメでした(笑)。ショッキングでエグいシーンには狎れてしまっているので、この映画程度のホラーシーンはむしろ滑稽。片目を撃ち抜かれり心臓を取り出された死体なども、特殊メイクとかがまだひと昔前って感じで生々しくないんです。

 ハリーの行く先々でむごたらしい殺人が起き、無惨な屍累々…ハードボイルドな探偵ミステリー仕立てなのですが、もう人間技とは思えぬ惨状ばかりなので犯人とか真相とかどうでもよくなってしまいます。ラストは衝撃の真実(ハリーにとっては。ジョニーと悪魔の関係とか、松本洋子先生のオカルト漫画で似たような設定があったような)なのですが、あの人物はいったい何がしたかったの?自分から逃げようとしたジョニーへの制裁?ハリーを弄びたかっただけ?さんざんミステリーテイストで引っ張っておいて、結局はオカルトな結末なのでガクっときます。

 オカルトな話よりも、名匠アラン・パーカー監督のスタイリッシュな演出と映像が見どころです。陰鬱だけどおどろおどろしくはなく、ムーディーでおしゃれなCMっぽいシーンが多い。黒人音楽の使い方も、独特の雰囲気づくりに一役買ってます。
 主役の探偵ハリー・エンゼル役は、80年代に絶大な人気を誇ったミッキー・ローク。当時はトム・ハンクスとかケヴィン・コスナーが大好きだった私には、ミッキーの魅力を解することはできませんでした。彼のファン層は映画通のお姉さまたちって感じだった。そんなお姉さまたちの年齢をはるかに超えた今、やっとミッキーのよさを理解。男の色気って、やっぱガキには伝わらないもの。純粋無垢な子どもには、色気とか悪臭に近いものですよね。とにかく顔が性器に見えるほど色気がハンパないミッキー、でも当時まだ35歳。日本の某事務所のアイドルおじさんたちより年下とかありえんわ~。カッコつけた探偵役はできても、大人のエロさを振りまく探偵役とかできる俳優、日本にはいないですよね~。

 当時はニタニタした笑顔がイヤらしい!とか思ってたけど、今はそのイヤらしさが素敵に思えます。顔が犬みたいで可愛い。声が優しくソフトなのもレディーキラーな武器。ヨレヨレのダボダボスーツも、何だかオシャレ。優しくアンニュイで退廃的なのも、アメリカ男優には珍しい魅力。私が観た出演作の中では、いちばんカッコいいミッキーかも。カッコいいけど全然カッコつけておらず、結構みっともなくズタボロにされたり、かなり体を張ってました。そして過激なセックスシーンあり!全裸はちょっとボテっとした感じで肉体美ではありませんが、ちょっと崩れた中年おじさん好きにはたまらんカラダかも。

 依頼人ルイ・サイファー役は、名優ロバート・デ・ニーロ。今は仕事選ばずな枯れた好々爺になってるデ・ニーロ御大ですが、当時は映画界最高のカリスマ俳優でした。彼が出てるだけで品質保証的な。この作品では出番は少な目ですが、存在感は強烈です。薄気味悪いけど、彼も当時まだ40代半ばの男盛りなので、すごくカッコいいです。女占い師役で、シャーロット・ランプリングも出演してます。チョイ役ですが、ヨーロッパの上流社会の香り高い、エレガントでミステリアスな雰囲気がオカルトに合ってました。
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貴女だけ見つめてる

2022-03-02 | 北米映画 80s~90s
 「殺しのファンレター」
 女優のサリー・ロスの熱狂的ファンである青年ダグラスは、ファンレターの返事が彼女本人ではなく秘書から送られてくることに不満を抱いていた。ダグラスの執拗な手紙を気味悪がった秘書は、冷たい拒絶の通達を彼に送る。激怒したダグラスは秘書を襲い重傷を負わせ、それを機にサリーに近い人間を次々と殺傷し、ついにはサリーをも…
 「ターミネーター」のイケメン未来戦士カイル役で脚光を浴び、特に日本で絶大な人気を得たマイケル・ビーンが、そのブレイク前に出演したサイコサスペンス。当時27歳ぐらい?当然ながら若い、そして可愛い!役は異常なストーカー男で、やってること言ってることすべてがイカレたキ〇ガイなのですが、ぜんぜん気持ち悪くないです。私からしたら、フツーにしてる千原ジュニアとかバナナマン日村とかのほうが数億倍キモい怖いです。

 精悍でセクシーなカイルと違い、爽やかで純朴な80年代の好青年風なマイケル。役は全然違うけど、愁いがあって薄幸そうなところはカイルと共通。それこそが日本の女性に受けたマイケルの魅力でしょう。見た目も気持ち悪い俳優がダグラスを演じたら、もっと怖い映画になってたことでしょうけど、そんな俳優や映画なんて私には必要ないんです。ぜんぜん怖くなくてもイケメンのほうがいい!怖くないけど決して大根演技というわけではなく、表情とか目つきとかに宿る暗い情熱、無視されたり冷たくされ傷つく様子がデリケートな子どもみたいで痛ましくもあって、ただの不気味なイカレ男にならありえない憐みを感じてしまいました。

 タガが外れてどんどん狂暴化していくダグラス、イケメンなのにもったいない!あんなイカレ人でなくフツーに生きていれば、見た目のおかげで何かと得をする人生だったはずなのに。何が悲しくてストーカーなんかに。それにしても本格的ストーカーって、ほんと気力体力そして時間が要る犯罪。あの行動力と計画性、まともなことに活かせてればきっと、ひとかどの人物になれたはず。サイコパスってルックスがよく知能指数が高い人が多いって聞くけど、先天的に持って生まれたものはもうしようもないのでしょうか。

 ゲイバーで若い男を引っかけ、誘惑して殺して死体にガソリンまいて焼き、自分が死んだように偽装するダグラス。男同士の絡みをもっと濃密にしてほしかったです。プールのシーンや着替えシーンでチョコチョコ脱いでるマイケル、ターミネーターの時のような肉体美ではないけど、レコード店の店員にしてはいいカラダしてます。

 若かりしマイケル・ビーンのイケメンぶりは一見の価値ありですが、映画そのものは設定も展開もありきたりなB級サスペンスです。サリー役は往年の大女優ローレン・バコール。男前系いい女な物言いや物腰、シャキっとした姿勢や歩き方、美しい足、タバコの吸い方、舞台のミュージカルシーンでのハスキーな歌声など、カッコいい女性って感じで素敵なのですが、いかんせんもうお婆さんダグラスが性的な妄想も抱く対象としては、いささかお年を召しすぎ。アップになると不自然な紗がかかるのが、いかにも老女優への配慮。男たちからモテモテなのも、かなり無理があった。サリーのキャラもい人すぎ。女優があんないいひとだとつまんないし、リアリティない。サリーの秘書役は名女優のモーリン・ステイプルトン、サリーの元夫役がジェームズ・ガーナーと、脇役の顔ぶれがシブかったです。
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ショーウィンドウに映った変質者!

2021-09-29 | 北米映画 80s~90s
 「愛は危険な香り」
 ショーウィンドウデザイナーのカティアは、独特のエロティックなディスプレイで街の話題をさらう。充実した日々を送るカティアにひとりの男が邪まな欲望を抱き、ひそかに彼女の私生活に侵入し始めて…
 今ではすっかり熟女になってるダイアン・レインですが、80年代は日本で高い人気を誇ったアイドル女優でした。そんな彼女が突然、お色気路線に走ってファンを驚かせたのがこのサスペンス映画です。いったいどーしちゃったの?と戸惑ってしまうようなヌードや濡れ場を披露してます。若くて可愛いだけのアイドル女優からの脱却を試みたのだとは思いますが、やり方が極端だな~とも。オスカーを狙ってるような作品とか、巨匠や名匠の芸術作品とかならともかく、こんなB級変態サスペンスで…何だか痛ましく思えたダイアン嬢の艶技でした。でも、決死の覚悟的な重さや、気取った映画でお高くとまった出し惜しみヌードではなく、敷居の低いチープなサスペンス映画での大胆な脱ぎっぷりは、軽やかに潔くて好感。

 20代とは思えぬ熟した裸体がエロいです。ヌードだけでなく、下着姿や普段着まで必要以上にエロくて、何でそんなカッコしてウロウロしてるの?はしたない!けど、目に楽しいダイアンのハレンチファッションです。変態ストーカー男を刺激して誘ってるとしか思えぬ服装や行動は、女性としていかがなものかな不用心さ。そんなんだから酷い目に遭っても当然!なんて非難は、時代錯誤なアンチフェミニズムになってしまうでしょうか。悪いのはもちろん、エッチな女性におかしなことをする男のほうです。でも、女性に用心深さや慎ましさを求めるのがおかしい、という考えや風潮には違和感を覚えます。
 当時22歳のダイアンは、さすがに若さでピチピチしていて、可愛いというより美人。キリっとしていて心身ともに強そうで、フツーならノイローゼになるような被害を受けてもコワレることなく、百倍返しの逆襲をする気丈なヒロインにぴったりな風貌です。エッチすぎるファッションといい、気持ち悪すぎる怖すぎる目に遭っても引っ越そうとしないところや、犯人と独りで直接会おうとするところなど、勇敢というより無謀すぎる。ストーカー被害に遭ってる女性は、絶対マネしてはいけません。

 ストーカー男の犯行が、どれも気持ち悪すぎ。あまりにも変態でほとんどギャグの域、笑ってしまいましたが。知らない男が留守中にあんなこと自分の部屋でしてたらと思うと独り暮らしってほんと危険。屋上からロープを使って窓から侵入とか、命がけなところも笑えた。何でそこまでして。ストーカー行為って頭のおかしさだけではなく、体力気力と時間が必要。

 変態ストーカー役の俳優が、結構いい男。B’zの稲葉とスティーヴン・セガールを足して二で割ったような顔です。ヒロインの恋人が、卓球の水谷にチョイ似の地味なブサイク寄りのフツメンなのが惜しい。濡れ場もあるので、もっとイケメンにしてほしかったです。日本でリメイクするなら、ストーカーは青柳翔、彼氏は町田啓太にしてほしいです。ヒロインがディスプレイするショーウィンドウが、すごい下品で卑猥で笑えます。あんなショーウィンドウ、ありえない!ヒロインの発想力もストーカーに劣らず変態です。映像がかもす雰囲気、ファッションや音楽など、再現ではないリアルな80年代で、当時を知る者にとっては懐かしさを禁じ得ません。もちろん劇中では、ネットもスマホもないのですが、あればストーカー行為はもっと悪質で巧妙になってたことでしょう。
 
 
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サンドベージュの美男!

2021-09-26 | 北米映画 80s~90s
 「サハラ」
 1927年。事故で急死した父の遺志を継ぎ、サハラ砂漠での国際ラリーに男装して出場するアメリカ人の少女デイル。部族間の抗争に巻き込まれ、誘拐されてしまうデイルだったが…
 80年代前半、日本でも絶大な人気を誇ったブルック・シールズ。皇太子さま(現・天皇陛下)が彼女のファンだったことも話題に。当時18歳、世界一の美女と謳われ、人気絶頂だったブルックが主演したアドベンチャーロマンス映画であるこの作品、公開されるやケチョンケチョンに酷評され駄作の烙印を押される結果に。どんだけひどいんだよと返って気になってた今作、ついに観ることができました。うう~ん?言われてるほどクソ映画じゃないような?まあ確かに名作佳作ではないけど、駄作寄りの凡作だと私は思いました。なので妙な期待ハズレとんでもクソ映画が観られると思ったのに!

 そもそも、作り手にオスカーを狙うような作品を制作する気などサラサラなく、ブルック・シールズのファンのためだけに作ったアイドル映画なのですから。彼女のファン以外、満足できるわけがありません。某事務所のタレントや、何とか坂のアイドルグループの映画やドラマと同じです。彼らのファンのほとんどは、好きなアイドルの出演作や演技のクオリティなど気にもしないはず。お目当てのアイドルがカッコよければ可愛ければ、それでいいのです。この映画も演出や脚本なんか二の次三の次、とにかくブルック・シールズにいろんなことをさせてファンを喜ばせる、潔いほどそれしか意図してません。

 男装したり、水浴びしシャツを濡らして透けた乳首を見せたり、ワイルドスピード運転したり銃撃戦したりアラブの民族衣装を着たり。コテコテのアイドル映画に仕上がってます。ツッコみどころ満載な点も、ある意味愉快。バレバレな男装とか、野蛮で無知なのに英語が流暢な砂漠の部族とか、砂漠のレースシーンがほとんどないとか。見所なはずのカーレースもサハラ砂漠も、びっくりするほどスケールが小さい。比べるのもアレですが、「アラビアのロレンス」ってやっぱスゴい映画なんですね~。あんなアメリカの小娘でもチャラっとサバイバルできるとか、せっかく過酷で壮大で美しいサハラ砂漠を舞台にしてるのに、何だか鳥取砂丘にも劣るショボさになってたのが残念。
 ブルック・シールズにかまけすぎて、壮大かつ甘美な映画になり損ねてしまってますが、そんな欠点も補う美男子がこの映画に!デイルと恋に落ちる砂漠の部族の若き長ジャファール役のフランス俳優ランベール・ウィルソンです。

 現在は素敵な熟年となってるムッシュウ・ウィルソンですが、当時25歳(!)のこの映画の彼、当然若い!そして麗しい~!エキゾティックで優しそうで知的。浅黒い肌が艶っぽくて、ん・色っぽいby 工藤静香!砂漠の蛮族らしからぬ優雅な物腰!180㎝以上もあるデカいブルック・シールズにも見劣りしない長身!美声での美しい英語!見た目は完璧な砂漠の王子さまなのですが、脚本のせいでキャラが薄っぺらくなってたのが惜しい。フツーにいい人だったし。そうじゃなく、砂漠の王子さまはもっと神秘的で誇り高く傲慢じゃないと。でも優しそうなランベールにツンデレは似合わないかも。でもブルック・シールズとはほんと美男美女なカップルで、まさに映画的!

 ブルック・シールズはほんと美女!あんな18歳の女の子、今いないよな~。顔が華やかすぎるというか派手すぎるというか、うっとり見とれてしまうような美しさではないんですよね~。夜中にばったり道端で会ったら怖いかも。立派な眉とか体格とか、野太くて優しさとかデリケートさに欠けてるところに、女優としての魅力をあまり感じません。砂漠でも崩れないメイク、乱れない髪型が失笑ものでした。シールズさん、すっかりあの人は今状態ですが、今でも女優やってるのかしらん?


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モンクロ

2021-01-18 | 北米映画 80s~90s
 「モンスター・イン・ザ・クローゼット 暗闇の悪魔」
 カリフォルニアで謎の連続殺人事件が発生。新聞記者のクラークは、取材先で出会った大学教授ダイアンと共に犯人を突き止めようとする。犯人はクローゼットを転々とするモンスターだった…
 「悪魔の毒々モンスター」など、チープすぎるけど面白いB級ホラーコメディ映画で一世を風靡した(?)映画会社トロマの作品。この映画も、く、くっだらねー!けど好きです。あまりにもしょーもなさすぎ、でもそれを明らかに狙ってる確信犯的なバカバカしさからは、返って作り手の利口さが伝わってきます。もう全編、どーいうこと?!何でやねん?!の失笑&苦笑のオンパレード。メチャクチャすぎる話と展開に、もはやツッコミは無意味。そのトンデモおバカさを楽しめないと、最後まで観ることはできません。

 この頃はもうかなり映像技術は高度になってたはずなんだけど、この映画はかなり低予算なためか、大昔の円谷プロのウルトラマンよりレトロでチープ。壊される壁とか明らかにハリボテ。モンスターもほとんど着ぐるみです。そんなチープさがまた味わい深い。モンスターについても、誕生の経緯とか、なぜクローゼットに?とか、どうやって移動してんの?とか、何で人間を殺すの?とか、まったく説明がありません。モンスターはキモいというよりブサイクで笑えます。ホゲホゲホガホガうめいてるモンスターの声も変で笑える。

 まるでドリフのコントみたいなお笑いシーン、特にいろんな名作映画のパロディシーンがふざけてます。口の中から第二の口が出てくるモンスターの生態は、「エイリアン」へのオマージュ?アインシュタインそっくりな博士が、鉄琴を弾いてモンスターと交信を試みるのはスピルバーグの「未知との遭遇」。もちろん感動的な展開になんかならず、予想通りのおバカな顛末に。シャワーを浴びてる女にカーテン越しに忍び寄る影、はヒッチコックの「サイコ」。アホらしすぎて、ダメな人にとっては苦痛かも。軍隊に攻撃されても死なないモンスター、そしてそばで倒れてた博士も生きてるとか笑えた。いきなり電気が苦手!と何の前触れもなく断定されて、チープな電気ショックトラップに引っかかってビリビリなモンスターも、くだらなすぎる。最大の?!は、モンスターがクラークに惚れて(モンスター、♀だったの?!)、気絶した彼をお姫様だっこしながらクローゼットを探して歩くというワケワカメな展開。これは「キングコング」のパロディなのかな?クラーク役の俳優、モンスターにもダイアンにも惚れられるのも納得の、なかなかのイケメンでした。
 おバカすぎる話や、わけのわからないモンスターより衝撃的なのは、ダイアンの幼い息子役の子役!何と!これが映画デビューの故ポール・ウォーカー!

 当時13歳ぐらい?見えない!8歳ぐらいかと思った。美少年ではないけど、アメリカの名探偵コナンって風貌で可愛い!まだ声がわりしてないキンキン声もキュート。ポールがもともと子役だったとは知ってたけど、その時代の彼を見たのはこれが初です。大人の俳優顔負け、小賢しいほど演技が上手い子役ではないところにも好感。ワイスピなどのポールの面影はすごくあります。この可愛い男の子が後に爽やかセクシーなイケメンに成長、スターになった矢先に衝撃の事故死…モンスター相手に発明した秘密兵器で戦う幼いポールを見てると、おバカなシーンも何だかしんみりしてしまい笑えなくなりました。あらためて、ポール哀悼…
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必殺ママ 恐怖のお仕置き!

2020-06-14 | 北米映画 80s~90s
 「シリアル・ママ」
 歯科医の妻で高校生の娘と息子の母親でもあるベヴァリーは、明るく善良な良妻賢母。しかし彼女は、非常識な連中や愛する家族の平和を乱す者たちを次々に殺す連続殺人鬼だった。逮捕され裁判にかけられたベヴァリーは、いつしか全米の人気者となり…

 ヤバいエグいブラックコメディが大好きです。特にお気に入りなのは「殺したい女」「ワンダとダイヤと優しい奴ら」「ふたりにクギづけ」「トロピック・サンダー」でしょうか。ポリコレ無縁な傑作の中でもmy bestといえばやはり何といっても、怪作の巨匠ジョン・ウォーターズ監督のこの作品です。これ、気分が落ち込んでる時にすご~く観たくなるんですよね~。真っ黒でノーテンキな笑いが、沈んだ心を元気づけてくれます。人間の偽善や欺瞞、身勝手さや悪意を暴いて嘲笑う内容なのに、まるで澄んだ青空を見てるような爽快感を得られるのです。

 それは、この映画同様に私たちも非常識で利己的な連中や理不尽な出来事に囲まれ、日々ストレスに苛まれてるからでしょう。まるでゴキブリを退治するかのように不愉快な人々、迷惑な人々を抹殺していくママがとにかくスカっと愉快痛快です。ママに殺される人たち、確かにヤな連中なのですが、殺されて当然とは言えない、基本的には善人ばかりなところがこの映画の面白いところ。みんな無神経で自分本位なだけの善人。でも、そういう人たちのほうが真の悪人より怖い。

 私たちを破滅させたり死に追いやるような極悪人とはそんなに関わることはないけど、無神経で自分本位な善人は身近にたくさんいて、被害を被ることは日常茶飯事ですから。大したことじゃないのに、こいつ殺したい!死ねばいいのに!でも些細なことなので感情的になるほうが間違っているから我慢…という鬱憤を、ヒロインであるシリアルママを通して解消の疑似体験ができる…のが、この映画の魅力でしょうか。

 それにしても。ママに抹殺されてしまう人たち、いなくなってせいせいはするけど、すごい大したことない理由で殺されちゃうのが可哀想で笑えます。シートベルトしない、リサイクルしない、レンタルビデオ(死語?)を巻き戻さないで返す、駐車場の横入りetc.最も残虐な罰が下されるのは、家族の平和を乱す奴ら。息子を精神病扱いする教師、パパの休日を台無しにする患者夫婦、娘のスケコマシ彼氏のむごたらしい殺され方は、ホラー映画も真っ青なグロさ、かつ滑稽さでかなり笑撃的です。

 爆笑シーンのオンパレード、爆笑展開のつるべ打ちですが、中でも私にツボだったのは隣家のおばはんへのイタズラ電話。二人の下品すぎる応酬、何度観ても腹がよじれます。自ら検察側の証人たちを陥れ斥けて無罪を主張するママの弁護人ぶりも、珍妙で痛快です。下品な英語の勉強にもなる映画です。パワフルでノーテンキなアメリカ人が大好きになると同時に、彼らとアメリカ社会の歪みや醜さも炙りだしてるところが、凡百おバカ映画と違う点。よくできた社会派映画でもあります。ママに私の周囲にいるイラっとするムカっとする連中を抹殺してほしい!けど、もしママが近くにいたら、真っ先に殺されるのは私かも

 ママ役のキャスリーン・ターナー、迫力満点、圧巻の怪演です。かつては妖艶な美女として魅力を振りまいていた彼女が、すっかり貫禄もお肉もたっぷりなおばさんに。おばさんにはなってますが、美人であることは不変です。ご機嫌な時の朗らかなノーテンキさと、怒髪天の大魔神と化す時のギャップが強烈。お仕置きシーンも下品な台詞もノリノリで楽しそう。こういう役、演技って女優なら一度はやってみたいのでは。日本の女優はでもキレイカワイイが優先だから、キャスリーンおばさまみたいな過激で豪快なお笑い演技は無理でしょう。
 
 

 
コメント (2)
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アカい恋人

2019-11-21 | 北米映画 80s~90s
 「レッズ」
フリーライターのルイーズは、ジャーナリストのジョン・リードと恋に落ち、夫を捨ててジョンと同棲を始める。反戦を唱え社会主義運動にのめりこむジョンは、ロシア革命に立ち会うためルイーズを伴いソ連へと渡るが…
 老化による気力・体力・集中力の衰えゆえに、どんなに面白い映画、すぐれた映画でも、長い映画はとてつもなく苦痛。上映時間が2時間を超える映画は、映画館で観ることを躊躇するように。最近の映画は、やたらと不必要なまでに長いので、本当にキツいです。DVDレンタルや録画した長時間映画は、最初から最後まで一気に観ることはほとんどなく、連続ドラマのようにチビチビと1時間ずつ観てます。この1981年の3時間を超える大作も、3日かけて完観しました
 レッズ、といっても、もちろんサッカーチームのことでもメジャーリーグの球団のことでもなく、共産主義者のことです。ロシア革命を現地で見聞したアメリカのジャーナリスト、ジョン・リードの半生を描いた映画です。私の苦手な小難しくお堅い社会派映画なのかなと思いきや、どちらかと言えばジョンとその妻ルイーズとの恋愛ドラマっぽかったです。

 アメリカの政府を糾弾し続け、反戦を叫び、社会主義運動に激しく身を投じ、ソ連で客死した男…と聞けば、筋金入りのガチガチなアカい人をイメージしますが、ジョンにはそんな思いつめた重苦しさはなく、むしろ明るく朗らかに自由闊達で、インテリらしからぬ情熱的でタフな行動派、という典型的アメリカンいい男って感じでした。特にルイーズに対してのヘタレっぷりが可愛かったです。魅力的な人間に描かれてはいたけど、決して理想の夫、恋人ではない類の男でもありました。そばにいても離れていても、一瞬も安らげないもん。ああいう夢追い人を愛して支えるには、超人的な精神力が必要です。

 ジョンはチャーミングでしたが、ルイーズは私の苦手なガチガチのフェミニストでした。自己主張が強く自信過剰、過小評価されるとブチギレし、悪いのは自分ではなく自分を認めない周囲、な言動や考え方がなんだかな~。相手の話を素直に冷静に聞けず、感情的で支離滅裂なあー言えばこー言うをヒステリックにぶつけてくるルイーズは、ちょっと田島○子センセイとカブりました。八つ当たりされるジョンが可哀想だった。ジョンが不在の時に彼の親友と浮気したくせに、ジョンの女遊びは許さないとか、自分勝手すぎる。キレた時のギャーギャーしたわめき声と鬼の形相、私がジョンなら百年の恋も醒めます。

 激動の時代、アメリカとロシアを舞台に、ジョンとルイーズが別れとヨリ戻しを繰り返す、壮大なバカップル映画です。ロシア革命についてはほとんど無知な私なので、当時のソ連について勉強になりました。カオスな革命、恋人の関係性など、大好きな映画「存在の耐えられない軽さ」のプラハの春と、自由奔放で優しいトマシュ&情熱的なテレーザをちょっとだけ彷彿とさせました。レーニンを演じてた俳優が本物とそっくり!それにしても。ジョンもルイーズも、全然ロシア語が喋れない、喋ろうともほとんどしないところが、ほんとアメリカ人だな~と悪い意味で感嘆。英語が上手なロシア人がいっぱいたのが、不思議かつ都合よすぎ。実際にはどうだったんだろう。

 スケールが大きく美しいロマンあふれる映画に仕上げるために、いろいろ話を盛ってるんだろうな~。ジョンを探すため、ルイーズが密航してロシアに渡る危険で過酷な冒険とか、駅での再会シーンとか、事実だったら出来すぎなドラマティックさです。でも映画なので、そういう演出は大事だとも思う。悪質な捏造、ヤラセでなければ無問題!風景や建造物までCGにしてしまう最近の映画と違い、労力をかけたロケ撮影も、CGと違ってリアルで物語に説得力を与えていました。
 この映画、キャストがなかなか豪華&シブいです。当時ハリウッドきっての才人スター、そして希代のプレイボーイとして名をはせていたウォーレン・ビーティーと、ファッションや生き方など時代の最先端をいく女優として人気だったダイアン・キートンが主演。二人は当時、恋人同士だったとか。この映画の監督も兼ねたビーティー氏は、オスカーの監督賞を受賞。演出は硬派で手堅いけど、演技と見た目は柔和で明るい。すごく若々しく、同じ世代の俳優で同じ80年代の映画「愛と哀しみの果て」のロバート・レッドフォードとかに比べたら、加齢臭や老人的なカサカサ感は皆無。恋愛映画も違和感なし、いや、返って彼から色恋要素を抜くほうが間違ってます。見た目も手伝って、常に何となくコミカル。ルイーズの誕生日に料理をしているシーンとか、かなり笑えました。映画人として最盛期にあった頃の彼ですが、今は“ラララの誤発表爺さん”としてのほうが有名になってしまったという、トホホな老後生活が切ない。

 ダイアン・キートンは、美女ではないけど男にモテる、しかも頭のいい男、才能ある男がホレる魅力の持ち主なんだろうな~。同じ進歩的なインテリ女性といっても、ルイーズと違いキートン女史はギスギスヒステリックなフェミニストではなく、軽やかでしなやかな才媛。そんなイメージがルイーズへの反感や不快感を薄めてくれました。作家のユージン・オニール役でジャック・ニコルソン、編集者の役でジーン・ハックマンといった大物名優が脇役出演してます。二人とも好演してますが、彼らほどの名優にはもったいないような役でした。女性活動家エマ・ゴールドマン役の名女優モーリン・ステイプルトンが、この映画でオスカーの助演女優賞を受賞してます。名撮影監督ヴィットリオ・ストラーロによる独特な光具合の映像美も印象的です。
 それにしても。やっぱ私、アカい人たちには共感も理解もできないわ~。若い頃に右翼男にされた洗脳がまだ解けてないせいでもあるんだけど、過激すぎてドン引きしちゃうんですよね。ジョンたちも一歩間違えれば連合赤軍、みたいな危うさがあったし。右も左も、暴力は辞さない!なのは承服しがたいです。
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