まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

涙の茉莉花BL

2022-02-27 | オセアニア、アフリカ、中東、その他のアジア映画
 アカデミー賞の行方も気になるところですが、フランスではセザール賞が発表されました。わし的には、オスカーにノミネートされてる作品やスターより気になる受賞結果になってました。作品賞の“Illusions perdues”はバルザックの小説を映画化した文芸時代劇で、主演のバンジャマン・ヴォアゾンくんが新人男優賞を受賞!バンジャマンくん、可愛い!今後のさらなる躍進が期待されるイケメンです。共演のヴァンサン・ラコストも助演男優賞獲得。日本公開が待ち遠しいですね。

 嬉しいと同時に衝撃的だったのが、主演男優賞のブノワ・マジメル。ずいぶん前から貫禄がでて恰幅もよくなってたブノワですが、さらにどっしりでっぷり化しちゃってるではありませんか。でも美青年時代とは違う魅力と個性を培い、2度目の受賞で今やフランス映画界の重鎮に。カトリーヌ・ドヌーヴ共演の受賞作“De son vivant”では、余命いくばくもない主人公を演じてるブノワ。作中では↑の画像とは別人のように痩せやつれた風貌で、かつてのイケメンぶりをちょっとだけ蘇らせてます。役者ですね~。
 次はオスカーですね!

 「Malila The Farewell Flower」
 タイの農村でジャスミン畑を営むシェーンは、ガンで余命いくばくもない元恋人ピッチと再び愛し合うようになる。ピッチのためにシェーンは出家しようとするが…
 最近タイの映画やドラマも人気だとか。特にBLものは充実しているようで、この作品もなかなか味わい深い佳作でした。美しく静かな野生の風景の中、肉体も魂も溶け合うように交わす男たちの愛が切なく悲愴でした。男同士で愛し合うという禁断感はほとんどなく、二人とも全然コソコソしてなかったのが清々しいのですが、私はそんな堂々としたBLより、人目をしのんだ密会とか、迷いや罪悪感で煩悶する隠微なBLのほうが好きなんですよね~。禁じられるからこそ生まれるドラマが好きなんです。

 二人がどういう経緯で愛し合う仲になり、なぜ一度は別れたのかは詳しくは説明されておらず推察するしかないのですが、勝手な妄想も腐は得意で大好きシェーンにはかつて妻子がいて、幼い娘が大蛇に襲われて(噓でしょ?!タイの田舎、怖すぎる!アナコンダみたいな巨大な蛇に全身ぐるぐる巻きにされてる幼児、という衝撃的なシーンあり)死に、その悲しみから立ち直れず酒びたりになってしまい嫁と離婚、という事情があったらしいけど、シェーンも男同士の愛に怖気づいて女に逃げたパターンなのかな。偽りの人生の終わり方が悲痛。現実も未来も捨てシェーンが身も心も耽溺する刹那の愛は、かなり退廃的。希望あふれる明るい愛よりも、妖しく心惹かれてしまう私です。

 男同士のラブシーンが美しくも官能的です。亜熱帯の暖かい湿った夜気が、退廃的で厭世的な情交にぴったり。西洋人のカサカサした肌、運動みたいな情緒のない動きと違い、東南アジアの男の浅黒いぬめりけのある肉感的な肌の重なり、じっくりと相手の悦びを確かめるような愛撫や腰使いは、かなりエロティック。でも全然イヤらしくなく、心も愛し合い求め合っていればセックスもこんな風になるはずだよな~と、羨ましくなるような情感が漏れていました。そういうシーンを作り出せる俳優さんって、ほんとスゴいわ。全裸での絡みといい濃密なキスといい恍惚の表情といい、ぜんぶ演技ですもんね。

 ラブシーンは2回だけですが、行為だけでなく愛し合う場所も東南アジアの原始的な野趣があって印象的でした。主演男優二人の演技と見た目も、女よりキレイ系なメイクばっちりイケメンの軽薄な演技が苦手な私には好ましかった。シェーン役の俳優は、妻夫木聡を長身で逞しい体格にした感じのイケメン。優しく悲しげな笑顔が可愛かった。バキバキ筋肉ではなく、がっちりむっちりした肉体も私好みでした。ピッチ役の俳優は、やつれて黒くなった西島秀俊みたいでした。彼らの役者魂あふれるBL演技、日本の若い俳優もBLやるならあれぐらいはやってほしいものです。

 独特の死生観、出家、修行など、かなりスピリチュアルな映画でもありました。ウジ虫だらけの腐乱死体が起き上がって…なオカルトっぽいシーンもあり。出家のプロセスや修行服の着方、修行の旅のためのグッズ(あのテント、ほしい!)など、タイのお坊さんの修行描写も興味深かったです。ピッチがバナナの花や葉で作るバイシー(儀式用の装飾品)も、その精巧で美しくもはかない風情で霊的ムードを醸すのに一役買っていました。
 
 

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踏み迷う残雪の山

2022-02-24 | 旅行、トレッキング
 久々に山に登った!K市の野呂山でトレッキングしました(^^♪
 ここのところ、週末はずっと悪天候続きでガッカリ。せっかく芽生えたアウトドアな意欲も萎えそうになりましたが、やっと自然のGOサインが出たので奮起して出かけました。
 雨は降ってないとはいえ、かなりどんよりした曇天で、おまけに寒い。登山口のある川尻近くまで来ると、車のフロントガラスにコツンコツンと霙が落ち始めたではないか。引き返そうかなと思いましたが、そうしたらもう二度とトレッキングしそうにない自分が見えたので、ええいままよと半ばヤケクソで車を走らせました。
 登山者用駐車場はガラガラ。こんな日に登山はやはり酔狂、いや、間違ってる?ウダウダした迷いを振り捨て、死ぬる思いで登山口から山頂を目指して山道を進みました。

 登っているうちに霙は止み、灰色の空にも青が見えてきました。野呂山には去年末にも登り、山頂にある野呂山ロッジでお風呂とランチを楽しんだので、今回もそれ目当て。野呂山も登りやすい山なので、私のような初心者にはぴったり。登っているうちに寒さも薄れ、汗ばむ身体に森林の涼気が心地よい。よどんだ私の心身を浄化してくれる、山のきれいな空気と静けさ。息切れはしても心は澄んでいくようです。
 どんどん登っていくうちに、そんなキレイごと言ってる自分が恥ずかしくなるような事態に。野呂山にも登山コースがいくつかあって、前回は“かぶと岩コース”を登ったので、今回は“どんどんコース”を選んだのですが、進めば進むほど道は険しく野生化し、うすぼんやりな私もさすがに何か変?と訝しみ始め、気づけばジャングルみたいな茂みや水泥でぬかるんだ急斜面でさ迷ってるではないか。まさかの遭難?!な恐怖に震えながら、終戦を知らない日本兵みたいになって森林を彷徨しているうちに、登山コースと思しき山道に出ることができたのでした。標識を見ると、そこはかぶと岩コースでした。はじめっからかぶと岩コースにしときゃよかった。テキトー&不注意、普段の生活と違い、山では命取りになりかねません。気を引き締めて、仕切り直し。

 7、8合目ぐらいまでくると、足元にも木々にも残雪が。同じK市でも、街中では雪なんてほとんど降らない、ましてや積雪なんて。なので、雪を踏みしめて歩くとちょっと童心に戻りました。わしが子どもの時はK市にも雪は積もって、よう雪遊びしたのお~とノスタルジイ。やがて他の登山者さんたちとも、たまにすれ違い始める。気持ちよく挨拶したり道を譲り合ったりする彼らのほとんどが、私の老父母より年上と思しきご高齢の方々。元気なお年寄りに感嘆するばかりです。

 思わぬアクシデントな寄り道はありましたが、やったー!お昼すぎに山頂に到着!一面の雪景色に驚きました。展望台から臨む瀬戸内海、映画「ドライブ・マイ・カー」のロケ地にもなった安芸灘大橋も小さく見えます。

 身体は冷えたし腹はペコペコ。想定外の積雪に滑って転びそうになりながら、お風呂とランチを堪能すべく野呂山ロッジへ。しかしロッジは、まん防で休業だった!ガーンしかも入口の張り紙には、翌日から営業再開と書いてあってトホホ!いつも行き当たりばったりで無計画。私、自分のそういうところがほんと嫌です。ちゃんと事前チェックしてれば、翌週に予定を変えられたのに。登頂した達成感よりも、ダメ人間な自分への落胆のほうが大きかったです。

 ちなみに野呂山ロッジの食堂は、猪の料理が名物🐗去年末は猪丼を食べました。びっくりするほど美味しくはないけど、食べられないことはない味。
 がっかりを引きずりながら、元来た山道を下っていきました。下山は楽だが、溶けた雪のせいで滑りやすく、何度もツルっとなって尻もちをつきました。ケガなどはしませんでしたが、気をつけないと岩に頭打って死亡してしまいます。登山口に降り立った時には泥だらけになっていて、車に乗るとき大変でした…
 次回はちゃんと下調べをして登山します!ライトなトレッキングは心身にいいので、今後も続けたいと思います。春の登山、想像しただけでも気持ちが浮き立ちます(^^♪
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NYヤンキー恋物語

2022-02-20 | 北米映画 15~21
 「ウエスト・サイド・ストーリー」
 ニューヨークのウエストサイド。ポーランド系の非行少年グループであるジェッツと、移民のプエルトリコ系グループのシャークスが対立する中、シャークスのリーダーであるベルナルドの妹マリアは、ダンスパーティーで出会った青年トニーと恋に落ちる。しかしトニーはジェッツの元リーダーであり、それを知ったベルナルドは激怒するが…
 アカデミー賞を受賞した1961年のオリジナル「ウエスト・サイド物語」は、恥ずかしながら未見。でも内容と作中曲はあまりにも有名なので、まったく未知な作品といった感じはしません。そんな名作を、世界一有名なフィルムメーカー、スティーヴン・スピルバーグ監督がリメイク。映画史に残る大ヒット娯楽作を連発し、いろんなジャンルの作品も意欲的に手掛けてきたスピルバーグ監督が、初めてミュージカルに挑んだことも話題に。私、かつてはミュージカルが苦手で、ずっと敬遠していたのですが、最近は好きになってきてます。素晴らしい歌や踊りって、心を高揚させ元気づけてくれますよね~。不穏で不安な時代なので、明るく楽しいミュージカルを観てハッピーな気分になりたい。なのでこの作品を楽しみにしていたのですが、よく考えてみたら全然ハッピーじゃない内容だったんだよな~シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」を下敷きにした悲恋物語なんですよね~。

 悲恋だけでなく、人種間の対立や社会の分断など、現代でも深刻な問題を描いてる点にも、ハッピーどころか居心地が悪く暗澹とした気分に。移民のプエルトリコ派VS先住のポーランド系の不良グループのいがみ合いやケンカなど、やってることや思考回路は日本のヤンキー漫画やドラマ以下でトホホ。やくざやマフィアの抗争と違い、ヤンキーのケンカとかスケール小さすぎてバカみたい。中・高校生の不良がケンカするのならまだしも、ジェッツもシャークスも、結構大人?中にはおっさんみたいな人もいたし、いい年して何やってんのと呆れるばかりでした。でも最大のトホホだったのは、マリアが恋に落ちるトニーと、それを演じる俳優の魅力のなさに尽きます。
 
 あんな悲劇が起きたのは、トニーがアホだったから。彼がもし賢くて冷静で男気のある青年だったら、あんな事態は防げたはず。若さゆえ、なんて言葉で片付けられないダメ男っぷりにイライラするだけでした。そんなダメ男にZOKKON命になるマリア。何で?!いくらウブな乙女とはいえ、男を見る目がなさすぎるわ。よしんばトニーがダメ男でも、すごい美男子だったらまだ理解できるが、ブサイクではないけどイケメンでもないフツーの兄ちゃんだし。美点は背が高いことぐらい?演じてたアンセル・エルゴート、アメリカでは人気なのでしょうか。ハリウッドにはもっと演技が巧いイケメン、いっぱいいるだろうに。トニーだけでなく、イケメンが不思議なほどいない映画なんですよ。天才的な演出家のスピルバーグ御大ですが、若い俳優選びのセンスだけはないみたいですね。リフのトニーへの友情を逸脱したような執着など、描きようや役者によってはほのかにBLっぽくなれただろうに。まあ、スピルバーグ作品にそんなかぐわしい腐臭を期待するほうが間違ってますねとにかく、惜しいことが多い映画だった。

 と同時に、素晴らしい点も多い映画でもありました。さすがミュージカルの本場アメリカ、踊りのダイナミックさ、歌のエモーショナルさは圧巻、圧倒的で、日本人がチョコマカやってるのとは比較にならない躍動感と力強さ。有名な曲の中でも、“トゥナイト”は映画を知らない人でも聞いたことはあるはずの名曲ですね。私は“マンボ”と“アメリカ”が好きです。セットや映像も凝ってて、50年代のニューヨークなんだけど独創的な異世界にも見えることがあって、スピルバーグ監督の旧作への愛と彼の枯れない才気がブレンドされていた作品でした。男優と違い、女優はチャーミングでした。マリア役のレイチェル・ゼグラーは、ラテン版オリヴィア・ハッセーって感じの風貌。気風のいいアニータ役のアリアナ・デボーズが、今年のオスカー候補になったのもうなずけるほどの輝ける好演。旧作でアニータを演じオスカーを受賞したリタ・モレノが、若者たちの見守る雑貨屋のおばあさん役で出演しているのも話題。ジェッツに入れてもらえない性同一障害?な男装の女性は、この新版のオリジナルキャラ?マリアやアニータの自己主張や自立心の強さど、多様性や女性の権利などに配慮してるのが、60年代ではなく現代の映画だな~と思いました。
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ヤニヴのイケメンエスピオナージ

2022-02-16 | イギリス、アイルランド映画
 「ミュンヘン 戦火燃ゆる前に」
 オックスフォード大学で出会い親友となったイギリス人のヒューとドイツ人のポールは、イデオロギーの違いから決裂し疎遠となる。数年後、ナチスドイツの脅威という暗雲がヨーロッパ中にたちこめる中、イギリスの首相チェンバレンはヒトラーとの会談のためミュンヘンに赴くことになる。外交官として同行するヒューは、ある密命を帯びていたが…
 愛しのMein liebhaber ヤニス・ニーヴナー目当てで観ました~(^^♪この作品出演のニュースを知った時、てっきり「コリーニ事件」に続いてまたナチス役かと思い込んでしまったのですが、ナチスと戦う役だったので驚喜。それにしてもヤニヴったら、ほんと死角なしのイケメンきれいな顔だけど、メイクばっちりな女よりきれい系ではなく、おしゃれ系のナヨっちい優男でもなく、男らしい素朴さ精悍さでいい感じに無骨で地味なところが好きなんです。今回のヤニヴは、反ナチになる前は明るく爽やかな大学生風、反ナチになってからはどこか思いつめた疲れたリーマン風、と雰囲気も風貌も変えて演じ分けてるけど、どっちもイケメンであることは言うまでもない。メガネも可愛い!

 冒頭の、オックスフォード大学時代のヤニヴ、酔っ払ってはっちゃけてる姿が可愛い!庭で寝転がってヒューに腕枕してもらってるヤニヴに、早く本格的なBL映画に出ろよ(「Jonathan」はBL映画だけど、ヤニヴはBLしなかったし!)!と、じれったくなりました。ヒューとパブで口論になるシーンの、激高して声も表情も険しく荒々しくなるヤニヴ、なかなか気迫に満ちた熱演でしたが、イケメンは怒っても可愛い薄くなった髪の毛、窶れた顔などで、命がけの反ナチ運動や愛する人を襲った悲劇などからの心労をよく出してたヤニヴです。台詞は英語とドイツ語が半々で、ヤニヴの流暢な英語(聞き取りやすくて好き!)がまた聞けて嬉しかったです。自然に自在に2か国語を操って、すごくカッコよかった。

 脱ぎ男なヤニヴですが、この作品では無駄脱ぎなし!着替えシーンでもラブシーンでも上半身裸は見せなかった。はい減点!ラブシーンの相手は、秀作「ありがとう、トニ・エルドマン」での名演が忘れがたいザンドラ・ヒュラーって!おばはん、じゃない、熟女じゃん!?母子じゃん!?羨ましいにもほどがあるわ。ザンドラさんもそんな年じゃないと思うけど、ヤニヴが若く見えるせいかすごい違和感あり。情交はあるけど、恋人というより同志な関係性のほうが強かったのが、見ていて物足りなくもあり安心でもあったり。

 ヒュー役は、「1917 命をかけた伝令」で主人公を演じたジョージ・マッケイ。彼、すごい面白い顔してますよね~。マチュー・アマルリック+ハリーポッターのロン、みたいな顔?イケメンじゃないけど、彼みたいなユニークな俳優も映画界には必要。必死になって東奔西走する姿には、若い俳優にしかない颯爽としたエネルギッシュさが。長身で体格がよく、スーツがよく似合ってました。マッケイくん、いい役者なのですが、英国俳優ならあってしかるべき“ゲイ役も似合いそう”なところがなく、ヤニヴとのブロマンスにも腐を喜ばせるBLのかほりがしなかったのが残念。

 英国首相ネヴィル・チェンバレン役は、「ハウス・オブ・グッチ」で会ったばかりのジェレミー・アイアンズ。美老人!気さくで茶目っ気があって剛毅な役だけど、すごいエレガントなところがさすがアイアンズおじさま。雰囲気が貴族的。スーツだろうが寝間着だろうが、たぶんジャージだってステテコだって優雅です。ポールの元学友のナチス将校役は、最近はすっかり国際的バイプレイヤーなアウグスト・ディール。ヤニヴと同級生役にはちょっと無理があったような。見るからに裏表がある、性悪で非情な役はステレオタイプなナチス役ですが、そんな役にピッタリな顔してるのは彼にとって幸か不幸か。

 ミュンヘン会談の舞台裏、ヒトラーの侵攻を阻止するためのイギリスとドイツの諜報活動は、派手で荒唐無稽なスパイ映画を観狎れてしまってるせいか、かなり地味でハラハラドキドキはあまりなかった。奔走したわりには大した成果は得られず、むしろ失敗に終わったのがトホホ。普段は冷静で紳士的だけど、やはり不穏で気味が悪い今作のヒトラーでした。ポールを気に入り、何かと絡んでくるヒトラーが薄気味悪くも微笑ましかったです。ポールがブサイクだったら、絶対ああはならなかったはず。諜報って、やっぱ美男美女向きの仕事ですね。それにしても当時のドイツ、狂ってるとしか思えぬ国情ですよね~。かなり製作費を費やしてそうな衣装やセットなど、当時の再現が見事でした。ヒューとポール、あの時代でなければイギリスとドイツを自由に行き来して、生涯友人のままでいられただろうに。二人が動乱を生き抜いて、戦後に再会できますようにと願わずにはいられないラストでした。ヒューはともかく、ポールは性格といい立場といい、かなりその望みは薄いが…

 ↑ 若い二人はほとんど一般人、爺さまはおしゃれな貴族

 ヤニヴ~働き者なヤニヴ、出演作は多いけどなかなか日本で公開されないのが悲しい😢最新作はドイツ版ワイルド・スピード?早く観たい!
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イケメン優等生の秘密!

2022-02-13 | 北米映画 15~21
 「ルース・エドガー」
 アフリカの悲惨な紛争地で生まれ、幼少期にアメリカ人のエドガー夫妻の養子となったルースは、高校では学業にもスポーツにも秀でた優等生として誰からも愛される少年に成長する。教師のハリエットは、ルースが提出したレポートから彼が過激思想の持ち主ではないかと疑う。ルースのロッカーから花火を発見したハリエットは…

 人気者の優等生が隠し持つ、恐るべきもうひとつの顔!なんて、漫画やドラマでよくある設定ですが、ルースはそんな陳腐で判りやすい二重人格的なキャラではないし、そんな言動もしません。もう最初から最後まで、一貫して優しく聡明で頑張り屋さんな、文武両道のパーフェクトボーイ。まさに非の打ち所がないとはルースのこと。周囲からのプレッシャーやアイデンティティーの苦しみを隠してけなげに振る舞ってるルースを、“不幸や逆境を克服して活躍する理想的な黒人”という枠に嵌め込み、そんな黒人を支援してる寛大で志の高い私たち!と自分に酔ってる大人や社会の偽善や欺瞞、道に外れた者を容赦なく攻撃して排斥する偏狭さこそ、今のアメリカ社会を汚染してる毒だと思いました。

 あんなにみんなして気持ち悪いほどルースをチヤホヤしてたのに、レポートと花火で一気に疑心暗鬼になってルースをテロリスト予備軍扱いとか、ほんと大人どもがクソすぎ。こんな連中の期待に応えようと必死に努力、我慢してるルースが哀れ。ルースが性格も頭も悪い男の子だったら、きっと平凡で平穏な日常のままだったんだろうなあ。ルースが実行する養父母や教師への手痛い制裁は、悲しいけどある意味痛快でもありました。それにしても、すごい深謀遠慮!策士すぎるルース、その見事な韜晦ぶりや実行力など、将来は政府の諜報関係の仕事に就けばいいと思いました。怖い子ではあるけど、悪意や邪気などは全然なく、とにかく自分を窒息させるような愛情や理想、正義の鬱陶しい押しつけを止めてほしかったのでしょう。自分の計画通りになっても、ちょっとも嬉しそうでも満足そうでもなく、大人たち以上に悲しそうなルースが痛ましく愛おしかったです。

 注目の若手黒人俳優、ケルヴィン・ハリソン・ジュニアがルース役を魅力的に好演。「シカゴ7裁判」で小さな役だけどそのイケメンぶりにビビビ!とMYイケメンレーダーが反応。この作品でもとにかくイケメン!ほとんど同じ顔に見える黒人俳優ですが、彼らとは明らかに顔面偏差値が違う驚異的な美男やイケメンもいる。ケルヴィンは若い頃のデンゼル・ワシントンを明るく可愛くした感じのイケメン。爽やかで健やかな学園王子さまぶりに、こんな彼氏ほしい~!と見ていて心がJK化しました二面性をヘンに怪しげに出さず、ふっと翳る表情や悲しそうな瞳でルースの内面の複雑さを表していたのが出色。

 若いので、黒い肌がピチピチツヤツヤ、チョコレートみたいで美味しそうなんですよ。着替えやガールフレンドとのエッチシーンで脱いでますが、裸はまだ少年っぽくほっそりしてるのでセクシーではありません。数年後にはマッチョ化してアクション映画でも活躍しそう。故チャドウィック・ボーズマンの後継者になってほしい。若手黒人俳優も今は群雄割拠ですが、ケルヴィンはそのうち頭ひとつ抜けて、将来は黒人スターの頂点に立つ可能性大です。

 エドガー夫妻役は、ナオミ・ワッツとティム・ロス。ナオミさんは熟女とかおばさんって感じではなく、地味だけどきれいで知的な素敵女性な風貌に好感。動揺と葛藤の演技が繊細でした。ティム・ロスおじさんとの夫婦の営みシーンで大胆脱ぎ。頑張るな~。ティム・ロスも、いい人だけど偽善の見本みたいな役を好演。ハリエット役のオクタヴィア・スペンサーが、なかなか強烈でした。いい人な役しか見たことなかったので、ダメな黒人少年は黒人社会のためにならない、ダメな女子は女性の地位向上を妨げる、という独善と偏狭さで生徒たちを陥れる女教師な彼女が、どこかサイコちっくで怖くて新鮮でした。ハリエットとルースの対立も、黒人同士とはいえ決して一枚岩ではないんだな~と、その複雑さにアメリカ社会の暗部を覗き込んだ思いでした。

 ↑ ミュージカル映画「シラノ」近日日本公開!期待の黒人イケメン、ケルヴィン・ハリソン・Jrくん。チャドウィック・ボーズマンの穴を埋めてくれそうな活躍をI wish!

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私の彼はテロリスト

2022-02-11 | ドイツ、オーストリア映画
 「カールと共に」
 ドイツのベルリンでアパートが爆破され、多くの民間人が犠牲となる。父以外の家族を失った女子高生のマキシは、マスコミの追求から救ってくれた青年カールと親しくなる。カールに誘われプラハで開かれるサマーキャンプに参加したマキシは、そこに集ったヨーロッパ改革のための団結を呼びかける若者たちの熱気や真摯さに共鳴し、カールが率いる運動に貢献しようとするが…
 大好きなドイツイケメン、ヤニス・ニーヴナー目当てで観ました~ああ~ヤニヴ、やっぱカッコかわいい~彼が演じるカールは、若々しく情熱的で巧みな弁舌、そして爽やかなイケメンぶりでカリスマ的人気の若き政治運動家。こんな男が立候補したら、よほどのトンデモ思想じゃないかぎり、もう見た目だけで投票しちゃいますよ。熱く、かつ爽快な演説シーンのヤニヴは、マキシじゃなくても惚れてまうカッコよさでした。初めてマキシと出会うシーンなんて、もう女の妄想の産物的な王子さまっぷり。マキシの悲しみや苦しみを癒す明るさ、優しさもso sweet!心臓に負担なほどの胸キュンなヤニヴでした。

 毎度毎度、こんな彼氏ほしい~と心底思わせるヤニヴ。カールも理想的な(表向きは)恋人。脱ぎ男なヤニヴですが、今回はラブシーンでちょこっとだけで、あまり肌露出はありません。スウィートなだけでなく、ダークなヤニヴもチョベリグ(死語)でした。カールにはもうひとつの恐るべき顔があって、その悪魔のような冷酷さに戦慄!爆弾テロをイスラム系組織の犯行と思わせるため、髪や目の色を変え髭をつけて中東の男に成りすますヤニヴ、これまたイケメンなんですよ!イケメンは何してもイケメン!爆弾テロだけでなく、テロの被害者であるマキシを騙して利用して移民排斥の気運を煽ろうとするなど、卑劣!なんだけど、そんな風には全然見えないんですよね~。カールみたいな、自分たちの価値観や信念に反する者どもはみんな敵、な人たちって悪人より怖い。損得とか関係ない、利益なんかまったく求めておらず、ただもう純真に真剣に世の中を変えたいと熱望し、そのためには手段を選ばない、自分の命をも捨てるカールとその仲間たちの考え方と行動は、私なんかからしたらただもう狂気の沙汰。その妄信による凶行は、アメリカの同時多発テロや地下鉄サリン事件、古くは連合赤軍事件などとカブります。

 ヤバい役だけどヤバくは見えないヤニヴ、鬼気迫る狂気とかといった感じはないけど、だから怖かったと言えるかも。よほどのトンデモ思想じゃないかぎりイケメンならOKと先述しましたが、カールはまさしくトンデモ思想のヤバい人、だけど正体を知らないとマキシのように無警戒にコロっと術中にハマってしまう。トンデモ人と思わせないカール役を、ヤニヴは巧みに魅力的に演じていました。英語とフランス語の台詞も多かったヤニヴ。ドイツ俳優の語学力ってすごいですね~。
 マキシ役のルナ・ヴェドラーは、ぽっちゃり系の美人で、気丈だけど悲しみや怒りを抱えて心の中で悲鳴をあげている痛ましさが伝わる好演でした。ヤニヴとはお似合いの、若々しく可愛らしいカップルでした。それにしても。傷ついてる人や生真面目すぎる人って、洗脳されてしまいやすいのでしょうか。ついできてしまう心の隙が怖い。知らず知らずのうちに、どこかおかしなこと、間違ったことを正しいと信じてしまう恐怖を、マキシを見ていて感じました。

 アメリカも非道いけど、ヨーロッパの分断も深刻で怖いわ~。ラストの暴動は、まさにカオスな地獄絵図。あながち非現実とも思えぬ不穏さが、今の欧州にはあります。ドイツやフランスの極右なんて、ほとんどナ〇スでしょ。カールとかがあまりにも堂々と、理路整然と移民排斥を主張するので、ああそうなのかなと納得しそうになって、危ない危ないby 福田和子!私は極右なんかじゃない、人種差別主義者なんかじゃない!と思ってるけど、果たして本当にそうなのかなと、日本でも増加する外国人に不安を覚えてる自分を顧みてしまいました。プラハでのサマーキャンプが、すごくポップで知的で活気に満ちていて楽しそう!あんなにフレンドリーで魅力的な人たちに囲まれたら、私も確実に洗脳されますわ

 ヤニヴ~今年に入ってNetflixではもう一本、「ミュンヘン 戦火燃ゆる前に」も配信開始となり、ヤニヴファンには嬉しい年始めとなりました(^^♪でもそろそろ、大きなスクリーンでヤニヴと会いたい

 
 
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セシルの自滅

2022-02-08 | 北米映画 15~21
 「セバーグ」
 60年代後半。女優のジーン・セバーグは、公民権運動に共感し各種団体に寄付をしていた。その中には急進派のブラックパンサー党も含まれており、FBIはジーンを危険人物を見なす。黒人活動家のハキーム・ジャマルと不倫関係となったジーンは、FBIによる度の過ぎた監視や盗聴によりノイローゼ状態に陥り…
 「悲しみよこんにちは」や「勝手にしやがれ」などで日本でも人気女優となったジーン・セバーグが、FBIに危険人物視されて盗撮盗聴中傷されて精神ぶっこわされちゃう話。セバーグが若くして謎の死を遂げたことは知ってましたが、あんな目に遭ってたとは驚き桃ノ木です。公民権運動やベトナム戦争で騒然としてた当時のアメリカ、ずいぶんとカオスな時代だったようですが、FBIによる政府にとって都合の悪い、ウザい連中にダメージを与えるため、彼らの私生活を暴いたりスキャンダルを捏造したりする、いわゆるコインテルプロみたいな卑劣で非道なことがまかり通ってたなんて。現代では考えられない、のかな?私たちが知らないだけで、実際には隠密に行われてるのかも。中国とかやってそう。日本でも、元気そうだった人気俳優や女優が急死して驚かされることがよくありますが、もしかしたら…?なんて、うがちすぎでしょうか?

 FBIによるイヤガラセでノイローゼとなるジーンが痛ましかったけど、あまり同情できなかったのはなぜ?少々のことではコワレない、何があろうと屈しない!貫く!な信念のヒロインを見慣れてるからでしょうか。今の女優だったら攻撃されたら神経衰弱になるどころか、ますます奮い立って戦うでしょうから、あまりにも心が弱いジーンが情けなく思えた。責められたり非難されたりするのは百も承知だったはずなのに、覚悟がなさすぎ。見た目は華やかな蝶だけど、中身は小心なイモ虫、みたいなジーンでした。自由で奔放な女になるには、やはり強靭な精神が必要です。苦しみも悲しみも全部自分のことだけで、夫や子ども、不倫相手の家族、映画関係者といった周囲の人たちに迷惑、心配かけまくるのにもイラっとしました。自滅してしまったジーンに比べ、当時やはり政治運動をしていたジェーン・フォンダとか、ほんと強い女性だったんですね。女優としても中途半端に終わったジーンと違い、ジェーンは70年代を牽引する大女優になったし。

 ジーン役は、最新作「スペンサー」でダイアナ妃を演じて絶賛されたクリステン・スチュワート。「トワイライト」シリーズで人気女優になった彼女、ちょっと苦手だったのですが、この映画の彼女は魅力的でした。精神的に追い詰められていくニューロティックな大熱演。実際のジーンには似てないけど、有名なセシルカットも可愛いのではなくスタイリッシュなボーイッシュさで、風貌があまり女オンナしてない、ちょっと中性的な感じがカッコよく見えました。スタイル抜群で、ミニスカートやホットパンツなど見とれてしまうような長い美しい足なのですが、それもセクシーではなくカッコイイ感じ。ラブシーンや入浴シーンなどでヌードも披露してるけど、全然いやらしさはないです。彼女の60年代セレブファッションがおしゃれ。それにしても。ファッションだけでなくパリやロスの邸宅など、すごいセレブ生活でしたが、大ヒット作に恵まれたわけでもなく大スターでもなかった彼女があれなら、当時のトップスターはいったい?と想像し、映画スターの稼ぎっぷりにあたらめて畏怖。

 ジーンに同情するFBI捜査官ジャック役は、英国俳優のジャック・オコンネル。彼ももう30代半ばだと思うけど、童顔で小柄なので若く見える。男らしくて素朴な少年っぽさが可愛い。少年っぽいので妻帯者役が何か似合いません。彼の上司役で、ヴィンス・ヴォーンも出演してます。一見しただけで何かもうヤバい人っぽいヴィンス、反抗期の娘に対する厳しい態度が怖かった。

 ジーンの夫は、ピエール・ニネが「母との約束」で演じたフランスの高名な作家、ロマン・ガリだったんですね!ガリ役は、その「母との約束」でママン役だったシャルロット・ゲンズブールの夫イヴァン・アタル。久々に見たイヴァン、すっかり枯れたシブい熟年になってました。ジーンと不倫関係になるハキール・ジャマル役は、「アベンジャーズ」シリーズのファルコン役でおなじみのアンソニー・マッキーでした。過激な政治運動団体ブラックパンサー党は、「シカゴ7裁判」にも出てきましたね。
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黒い箱を開けた美男!

2022-02-04 | フランス、ベルギー映画
 「ブラックボックス 音声分析捜査」
 ヨーロピアン航空の旅客機がアルプスに墜落し、乗客乗員全員が死亡する。航空事故調査局の音声分析官マチューは、優秀だがそれゆえに周囲から孤立しており、上司のポロックにより捜査から外される。しかしポロックが突然行方不明となり、マチューが彼を引き継ぐことになるが…

 待ちに待ったピエール・ニネの新作、やっと日本公開!銀幕の中の彼は久しぶり。ネット配信もいいけど、やっぱ大きなスクリーンで好きな男を見るのは格別!今回のニネっちの役は、音で事故や事件の原因を探る音声分析官。いろんなジャンルの映画、役に挑んでるニネっちですが、こういう社会派サスペンス系は初?でも美しいファニーフェイスとスマートなスタイルのよさは相変わらずでした。手足だけでなく、睫毛も長い!マッチ棒が乗せられそう!メガネも「イヴ・サンローラン」とはまた違う、インテリなオタクっぽさ。若いけど落ち着いた大人の男性な雰囲気は、彼より年上なのにいつまでもアイドルもどきな某事務所タレントとは大違い。

 有能だけど人付き合いが苦手で、ちょっと根暗なニネっちも可愛かった天才肌だけど変人でコミュ障な役って、日本の俳優もよくやる役ですが、彼らにありがちなわざとらしさとか個性派ぶったところ、必要以上にカッコよく見せようとするところなど、ニネっちには全然ないんですよね~。どの作品の彼もかなり特殊な役なのですが、俺すごいだろ?ユニークだろ?な鼻につく自己顕示欲とかナルシズムがない、けど驚かされたり圧倒されたりもする。今回も彼が稀有な俳優であることを思い知りました。

 中盤ぐらいまでは、別にニネっちじゃなくてもいい役かも?瑛太とか向井理でもよさそう、なんて思ってたのですが、事件の真相に近づくため常軌を逸した独断行動や、追いつめられ理性を失い混乱し暴走する様子は狂気的でもあって、なかなか鬼気迫るものがありました。マチューは鮮やかに事件を解決する魅力的な変人、なんていかにも人気俳優がやりたがるようなキャラではなく、自分の見解は一方的にぶつけてくるけど周囲の意見には耳を貸さない、他人の都合や思惑など意に介さない、ひとつのことへ異常なほどのめりこむetc.間違いなくアスペルガー症候群な、かなりキワどい役なんですよ。ルックスがいいだけの俳優だと見ていてイライラするだけの、単なる自己中で非常識なKY男になってたマチューですが、そこは骨の髄まで役者なニネっちなので、社会不適合者っぽさで不穏な空気を醸しつつ、信じた道をひたむきに驀進する純真な、賢い生き方ができない不器用な男にも見える役、演技になっていました。

 奥さんとの激しい口論シーンでの、ニネっちの怒鳴り声が美しくて聞き惚れました。さすが舞台俳優でもあるニネっちです。彼の舞台も観てみたいな~。美人の奥さんとのラブシーンはかなり軽め。どの映画でもよく脱ぐ脱ぎ男なニネっちなのに、この映画では彼の肉体美が眼福なシーンはなし。パンイチでパソコンしてるシーンがありましたが、暗いのではっきりニネっちの裸体は見えないというファンサービスの悪さ!
 奥さん役は、ニネっちとは「J'aime regarder les filles」でも共演してたルー・ドゥ・ラージュ。「社会に虐げられた女たち」でも思ったけど、やっぱヒラリー・スワンク+戸田恵梨香、な顔の美人。見た目同様キャラもクールで、女おんなしたネチっこさや媚びがないところがカッコよかったです。マチューの上司役は名優アンドレ・デュソリエ。ご高齢でもお元気そうで重畳。でも、どう見てもとっくに定年退職してるお爺さんですよ。伊東四朗や高橋英樹がいまだに現役刑事役やってるのと同じような違和感。マチューの友人で、セキュリティ会社の若き社長役のセバスチャン・プドルースもなかなか男前でした。

 捜査ものでも、もう刑事や検事、弁護士ものはネタぎれ状態、食傷気味。なので、航空事故調査局の音声分析官という職業や仕事が新鮮でした。日本の2時間ドラマみたいに一件落着なラストではなく、かなり悲劇的で苦い結末がどこかやりきれない余韻を残します。それにしても。飛行機の自動操縦や車のボイスレコーダー、監視カメラとかドローンとか、ハイテク過ぎるとなんだか怖い。何でもできちゃう!何でもわかっちゃう!いいことも、悪いことも。便利だけど、返って生き辛くなっていくような気がします。そしてこの映画、観たら飛行機に乗りたくなくなります。地上の車よりも安全とは言われてるけど、機内での墜落の恐怖や絶望を想像しただけでも戦慄。

 ブノワ・マジメルと共演したラブサスペンス“Amants”は、いつ日本で公開されんじゃろ。イザベル・アジャーニ共演の最新作“Mascarade”も、わしが生きとる間に公開して~
 
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猟奇的な熟女

2022-02-01 | フランス、ベルギー映画
 「地獄の貴婦人」
 1930年代のフランス。主が病死し失職した女中のフィロメーヌは、妹のカトリーヌともども悪徳弁護士サレの愛人となり、3人で保険金詐欺を成功させる。共謀者の男から脅迫された3人は、恐るべき手段で男とその妻を…
 以前からすごく気になっていたフランス映画。一部マニアの間ではカルト的な人気作なのだとか。主演は大女優ロミー・シュナイダー。数々の美しく気高いヒロインを演じてきた銀幕の名花ロミーが、何と!愛人と共謀し、財産を乗っ取るため金持ちを騙して殺して、死体を硫酸でドロドロに溶かして遺棄するという毒婦役!あのロミーが、なぜそんな映画、そんな役を?!にわかには信じがたく、ゆえにずっと観たいと思っていた作品を、ようやく。うう~ん、確かにロミーのファンならショッキングな映画かも。強欲、残虐。血まみれ金まみれな凄絶な邪悪さ、かつ凄艶なロミーの美しさに圧倒されます。目を背けたくなるような、かなりエグいことやってるロミーですが、決して醜悪にも下品にもならないところが驚異です。

 卑劣な詐欺や冷酷で残忍な殺人を次々と決行するロミーですが、金目的であそこまで忌まわしいことができるものでしょうか。どこか殺人快楽者のような、サイコっぽいロミーが怖かったです。殺した男女の死体を硫酸で溶かす作業中、興奮して男と性行為を始めるとか異常すぎる。バスタブの死体を後で確かめるシーンの顔とか、完全に正常ではなくなってる女のもの。おぞましい、狂った話なのですが、驚くべきことにこの映画、コメディ調なんですよ。とにかく妙に明るいんです。演出も音楽(巨匠のエン二オ・モリコーネ!)も陽気で、内容とのギャップに狼狽してしまうほど。ロミーも、サレ役の名優ミシェル・ピコリも、すごく楽しそう。笑っちゃいけない、けどついプっと吹いてしまうシーンも多々あり。かなりキツいブラックコメディ、ロミーもそういうテイストを気に入って出演したのではないでしょうか。私も悪趣味で不埒で不謹慎な笑い、嫌いじゃないです。毒にも薬にもならんポリコレ映画にうんざりしてるので、余計そう思えます。70年代はこういうトンデモ映画がフツーに製作できた、いい時代だったんですね。

 悲劇的なヒロインを演じても、決して運命に泣く女、男に守られる女ではないところが、ロミーの魅力でもあります。見た目からして、嫋々とした手弱女じゃないですもん。すごく逞しい。詐欺も殺人も、男に発破かけながら率先して行うロミーが、毅然と颯爽としていてカッコいい。ドイツ女性らしく剛健そうだけど、同時に優雅で華やかなところもロミーの魅力。彼女のとっかえひっかえなブルジョアファッションが、とにかくゴージャスで艶やかで目に楽しい。貴婦人風ベールが世界一に似合う女優かも。カジノでのマリリン・モンロー風なロミーもチャーミングでした。

 悪魔のような毒婦ですが、たまに優しい聖女の顔も見せるロミー。汽車の中で、居眠りしてる貧しい少女の本に、そっと大金をはせて立ち去るシーンのロミーは、まさに菩薩の後光が。それにしても。詐欺も殺人もうまくいきすぎ。誰も疑わない、発覚しないとかありえん。驚くべきことに、この映画ってフランスで実際に起きた事件をモチーフにしてるとか。あんな身代わり殺人や公文書偽造、現代では通用しませんよ。ユルくてアバウトな時代だったんですね~。
 ミシェル・ピコリもロミーに勝るとも劣らぬ、ノリノリすぎる楽しそうな怪演。日本の大女優、名優と呼ばれてる人たちには、ぜったい不可能な悪ノリぶりが圧巻です。死体を硫酸で溶かしたり、溶かしたドロドロ死体(完全に溶けてない部分があったり)をバケツにくんで運んだり、ウゲゲなゲロゲロ(死語)シーンがあるので、そういうのが苦手な人は観ないほうがいいかも。どうでもいいけど、あんな大量の硫酸、どこでどうやって手に入れたんだろ?
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