まつたけ秘帖

徒然なるままmy daily & cinema,TV drama,カープ日記

気高き略奪愛!

2022-09-23 | 北米映画 20s~50s
 「黒蘭の女」 
 南北戦争勃発前のアメリカ南部ニューオーリンズ。名家の令嬢ジュリーは、その奔放でわがままな言動で婚約者のプレスコットを翻弄し傷つけ、ついには彼から別れを告げられる。一年後、プレスコットは新妻を連れて北部から帰郷。ジュリーはプレスの愛を取り戻そうとするが…
 「偽りの花園」「月光の女」など、佳作を生み出した名匠ウィリアム・ワイラーと大女優ベティ・デイヴィスのコンビ作のひとつ。南北戦争前のアメリカ南部、勝ち気なヒロイン、といえば「風と共に去りぬ」を思い出しますが、ベティはスカーレット役の候補者だったとか。結局スカーレット役を得たのは、当時ハリウッドでは無名に近かったイギリス女優のヴィヴィアン・リー。実際にも気が強いことで有名だったベティ、おのれ~今に見ておれ~な無念と闘争心は、彼女の女優魂に火をつけたのではないでしょうか。まるで風と共に去りぬへの意趣返しのように主演したこの作品で、2度目のアカデミー賞主演女優賞を受賞。さぞかし溜飲がさがったことでしょう。

 ベティ・デイヴィスといえば、年をとってからは役も顔も声も恐ろしい妖婆女優、というイメージが根強い。若い頃、美しい盛りの絶頂期でも、可憐で清らかなヒロインなんてほとんど演じず、悪女や毒婦を好んで演じていました。悪い!けどカッコいい!という魅力が、他の女優にはないベティの唯一無二な個性だったように思われます。この作品のベティは悪女ではないけど、関わったら無傷ではいられない厄介なポイズンガール。本人には悪意や他意はなく、ただ自分の望むように生きたいだけ、欲しいものを手に入れたいだけ、それを貫くためには他人の愛や命はどうなってもいい、という冷酷さが怖い魔性のヒロインでした。

 自分のために誰かが争ったり傷ついたり、死んだりしてもほとんど動揺せず、涙を流すのではなく冷たい微笑を浮かべるジュリー。ベティ・デイヴィスらしい毒々しさにゾクっとしますが、当時まだ30歳ぐらいなので、後年の恐ろしげな妖婆ベティと違い顔も声も可愛いです。大きな瞳もギラギラではなくキラキラと輝いて、闊達で元気な演技も若さであふれていてキュートです。小柄で華奢なところも少女っぽくて可愛い。毒々しいけど暗くて陰湿な女のネチネチさはなく、颯爽と誇り高いところが素敵なベティです。ラスト、まさに命を投げうっての略奪愛には、ありふれたゲス不倫とは違う崇高さが。

 スカーレット・オハラと共通点が多いジュリーですが、ヒステリックで神経症チックなスカーレットよりも、ジュリーは落ち着いていてクール。不幸や凶事を招いても毅然としてるジュリーを、聖書に出てくる毒婦イゼベルと重ねる叔母ですが。私の目には悪女とか毒婦には見えなかったな~。男の言いなりにはならない、世間の顔色もうかがわない、自分を押し殺して周りに同調、協調なんてクソくらえ、逆に自分に従わせてみせるという意志と自信に満ちた女性って感じだったような。カッコいい、羨ましいと憧れる反面、精神が強すぎるのも生きづらそうだなあとも、ジュリーを見ていて思いました。男や社会からしたら、めんどくさいことこの上ない女なジュリーです。

 プレスコット役は名優ヘンリー・フォンダ。こんなに若い彼を見たのは初めて。イケメンとか美男ではなく、知的でスマートだけど雄々しくもあって、いい男でした。ベティの2倍はありそうな長身もカッコよかった。ジュリーの叔母役を好演したフェイ・ベインターも、オスカーの助演女優賞を受賞しています。この映画、衣装やセットも素晴らしいです。ベティがとっかえひっかえする衣装の美しいこと!一回でいいからあんなドレス着てみたい!カラー映画だったらさぞや華やかだったでしょう。モノクロならではの美しさも魅力です。
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永遠のロンリーボーイ

2022-07-24 | 北米映画 20s~50s
 「エデンの東」
 第二次世界大戦に参戦する直前のアメリカ、カリフォルニア。父親に愛されていないのではないかと悩むキャルは、彼が生まれてすぐに夫と子どもたちを捨て、今はいかがわしい酒場を営む実母に会いに行くが…
 伝説のスター、ジェームズ・ディーンの映画を恥ずかしながら初めて観ました!イケメンとか美男とかというより、可愛い男子って感じですね~。スカした反抗児っぽいイメージだったけど全然そんなことはなくて、ただもう孤独で薄幸そうでけなげな青年ジミーに、結構キュンときましたわ。あの悲しそうな上目づかいがいいですね~。そして、ちっちゃい!あんな小柄だとは知りませんでした。でも、大柄でバキバキムキムキな肉体美を誇る今のハリウッド俳優がキャルを演じたら、きっとすごい違和感。子どものようないたいけさがあるジミーだからこそ、今にも砕けそうなガラス細工のハートを抱えたキャルを、悲痛かつ魅力的に演じることができたのでしょう。どんなに演技が上手くて、どんなにルックスがよくても、今の俳優には演じてほしくない役かも。

 あらためて早世が惜しまれるジミーですが、生きてたらどんな俳優になってたことでしょうか。「理由なき反抗」と「ジャイアンツ」も観たいと存じます。ジミー、TV映画で彼を演じたジェームズ・フランコ、たまにブラピにもちょっと似て見えました。二人ほどイケメンではないけど、二人にはない繊細さがあります。ジミーのモゴモゴした声と喋り方、猫背気味の歩き方などが、内省的で不器用なキャルの性格をよく表していました。憂いはあるけど暗くはなく、若さであふれてるジミー。たまにアクションスターみたいな軽やかで俊敏な動きをして驚かされます。

 パパとの確執や家族間の相克、愛されない悲しみに苦しみ傷つくキャルですが。あのパパって、そんなに冷たくも厳しくもなかったような。むしろフツーに思えましたが。虐待やネグレクトしてるわけじゃないし。わしの親父のほうがよっぽど情なしですよ。でも、わしは今も昔もそんなに気にしたことないです。ベタベタと子どもを溺愛する父親のほうが、私には重苦しく気持ち悪く思えるけど。キャル、何でそこまでパパパパ言うの?パパなんかどうでもええやん!なんて叱りたくなった私、やはり冷血人間でしょうか。これが親にあまり愛されずに育った結果なのでしょうか

 キャルより兄のアーロンのほうが可哀想で不幸だったような。あのラストは悲惨すぎてインパクトあり。強すぎる愛は深い憎悪と、かなわぬ望みは絶望と表裏一体なのですね。愛も希望もほどほどにしておくのが最良かもしれません。それにしてもキャル、実母を尾行したり部屋に侵入したり、アーロンと恋人のイチャイチャをのぞいてたり、かなりストーカー気質でヤバい子だった。捨てられた子犬のようなジミーだから母性本能ズキュンバキュンだけど、あれがもしキモブサ男だったら通報されてしまうことでしょう。
 有名なテーマ曲がすごく好きで、いまピアノを猛練習中です🎹ピアノが弾ける人には簡単らしいけど、私にはかなりハードルが高い💦でも絶対弾けるようになるもんね!
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パパが乱心

2021-09-15 | 北米映画 20s~50s
 往年のハリウッド大女優映画祭④
 「コケット」
 アメリカ南部のとある町。医師の娘ノーマは友人たちと遊びまわる毎日を送っていた。そんな中、彼女は朴訥な青年マイケルと出会い恋に落ちる。しかしノーマの父はマイケルを嫌悪し…
 サイレント時代の大スター、メアリー・ピックフォード初のトーキー作品、そして彼女が第2回アカデミー賞の主演女優賞を受賞した作品です。メアリー・ピックフォードの映画を観たのは初めてですが、明るく清純な乙女の役で人気を博しただけあって、とても可愛らしかったです。小柄なのですごく少女っぽいです。でもはかなげでデリケートな女の子って感じではなく、見た目も演技も元気溌剌、たくましくバイタリティあふれてるところが、いかにもアメリカ女性。タイトル通りコケティッシュだけど、男に媚びたあざとさはないので好感。実際のメアリー・ピックフォードも、自ら設立した映画会社で主演作を制作するなど、女性プロデューサーの先駆け的な存在だったとか。当時のハリウッドでは珍しい、男性と対等、もしくは男性の上に立つカッコいい女性だったようです。

 そんなピックフォード女史が、乙女ちっくなヒロインに飽き足らず、大人の女性役を演じて女優として一皮剝けようと挑んだのが、この作品でのノーマ役です。前半は男たちにチヤホヤされながらパーティ三昧な、浮かれたフラッパー娘役を天真爛漫に演じてます。ちょっと舌ったらずなアニメ声と、ドレスが聖子の衣装みたいで可愛かった!あんなドレス、一度は着てみたい。サイレント時代の名残か、やはり演技がオーバーなところが今の映画ファンが観たら珍妙かもしれませんが、返って新鮮でもあります。事件を知りマイケルのもとへ向かうノーマが森を駆け抜けるシーンが、サイレント映画っぽくて面白かったです。

 後半は父親が恋人を射殺するという悲劇に襲われ、ショックと嘆きで立ち直れない姿を痛ましく、父を裁く法廷では父を救うためふしだらな娘を演じなければならない苦悩を、渾身の大熱演。可愛いだけの女優と見られたくない!というピックフォード女史の強い意気込みが伝わってきます。大真面目な熱演なのですが、やはりかなりオーバーなので悲劇なのに笑ってしまった

 それにしても。ノーマのパパ、狂乱しすぎでしょ。何であそこまでマイケルを毛嫌いしたのでしょう。確かに私も、貧乏なのはいいとして、善良だけどちょっと陰気で正々堂々としてないところに男の魅力を感じなかったけど、なにも殺さなくても。どんなに反対されてもノーマはあんたより俺を選ぶ、みたいな不遜なマイケルの態度にカっとなったみたいでしたが、溺愛している娘をどこの馬の骨ともわからん男に盗られてたまるか、みたいな独占欲、嫉妬に狂った犯行だったのでしょうか。老いた男の娘への異常な執着、愛が怖い。ラストの法廷でのさらなる悲劇といい、かなりイカレたキャラと展開だったのが意外な映画でした。父と恋人、二人の男の運命を狂わせ破滅に導いたノーマは、ある意味ファムファタール、魔性の女。陽気で健康的なピックフォードの個性とは真逆なヒロインなので、何でそうなるの?な違和感を否めなかったのでしょうか。

 ↑ メアリー・ピックフォードも早々と引退し、悠々自適に長寿をまっとうしました
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3年目のダブル不倫!

2021-09-10 | 北米映画 20s~50s
 遅ればせながら、ワクチンを打ってもらいました!💉
 周囲の女性たちが接種後に軒並み体調不良に陥ったのを目の当たりにしてたので、死ぬる思いで覚悟を決めて夜間接種に。恐れてたような副反応はなく、その日と翌朝は打った腕がちょっと筋肉痛みたいな違和感がある程度だったのですが、午後になってから急に体が怠くなり痛みも強くなり、微熱だけどもうフラフラ状態に。帰宅してちょっと横になると気分はだいぶよくなって、ごはんも食べられました。副反応、甘く見たわ。2回目の接種後のほうがキツいらしいので、今から戦々恐々としてます。つらいけど、安全な社会生活のために耐えましょう…

 往年のハリウッド大女優映画祭③
 「結婚双紙」
 熱烈な恋愛を経て結婚したポールとジェリーだったが、結婚3年目にポールの浮気が発覚。ショックと怒りから、ジェリーはポールの親友ドンと衝動的に関係をもってしまい…
 伝説の美女ノーマ・シアラーが、第3回のアカデミー賞で主演女優賞を受賞した作品です。時代劇の「マリー・アントワネットの生涯」同様、現代劇の彼女もその臈たけた美貌と気品がまさにザ・大女優でした。どんな映画でも、どんな役でも、優美な上流婦人そのもの。貧しい卑しい役なんてできない女優さんです。所帯じみた生活感なんか微塵もありませんから。その優しさ、柔らかさは聖母のよう。最近の女優のように、親しみやすさや共感を抱かせる女優ではありません。雲上の佳人。そういうハリウッド大女優が好きです。ノーマ・シアラーはその典型的大女優です。

 オスカーを受賞したこの作品では、夫に浮気されてその当てつけみたいに夫の友だちと寝る人妻を演じてるノーマ・シアラー。30年代の古き佳きハリウッド映画らしく、優雅で軽妙なロマンス映画風にはなってますが、お話じたいは一世を風靡した金妻みたいでした。大人の既婚男女の痴情のもつれ!ダブル不倫!大好きな題材ですでも、さすがというか、やっぱりというか、ドロドロな展開とか激情的なシーなどはありません。こういう話は、やっぱドロドロじゃないと面白くないし、優雅さとか上品さよりも野卑で扇情的な男女の生々しさ、イタさこそが不倫劇の醍醐味です。

 不倫劇はやっぱ,、富裕層の恋愛遊戯だよな~と思いました。社会的ステイタスとお金があると、不倫も汚く見えないですよね。美しいドラマになり得るし。その辺の庶民の不倫なんか、ほんとみっともない、薄汚いと嗤われるだけですし。この映画のジェリーにしても、旦那が浮気したとわかったからって、その日に旦那の親友とベッドインしなくてもいいじゃん!夫と離婚後、今度は元カレ(もちろん既婚者)の誘いに乗ろうとしたり、浅はかな尻軽女!と呆れてしまいましたが、もちろんノーマ・シアラーは安いビッチには全然見えないので、揺れる想い~♪by ZARDなよろめき夫人、魅惑のヒロインたりえるのです。

 なかなか奔放なヒロインでしたが、男の思い通りにならない自立した女性像は、当時としては画期的でカッコいい女性として斬新だったのでは。ノーマ・シアラーの当時の上流社会の都会的ファッションも、上品で高級感あふれた趣味の高さで、韓流の成金マダムの悪趣味さとはやはり違います。
 ポールとジェリーの元カレが何かよく似ていて、たまに区別がつかなくなって???になったり。元カレ夫婦がまるでキャンディキャンディのテリイとスザナみたいでした(古っ!)。テリイと違って元カレは嫁を捨てようとしてましたが。捨てさせる寸前までもっていって、やっぱや~めた♪みたいなジェリー。絶対いつか誰かに刺される女だよなと、その自由すぎる生き方に呆れつつも羨望も感じました。

 ↑ 大女優でもあり映画会社の社長夫人でもあったノーマ・シアラーは、おんな盛りでスパっと潔く引退し、豊かで穏やかな余生を送ったとか。まさに女としてすべてを手に入れた人生ですね
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母は来ました今日も来た

2021-09-05 | 北米映画 20s~50s
 往年のハリウッド大女優映画祭②
 「マデロンの悲劇」
 田舎娘のマデロンは、アメリカ人の青年と恋に落ち彼とパリへと駆け落ちする。しかし恋人は身ごもったマデロンを置いてアメリカへと帰ってしまう。悲嘆の中、マデロンは男の子を出産するが…
 オールスターのパニック映画の名作「大空港」で、当時の人気スターたちを完全に食ってしまい、格の違いを見せつけアカデミー賞の助演女優賞を受賞した往年の名女優ヘレン・ヘイズが、最初のオスカーを獲得した1931年の作品です。約30年後に2度目のオスカーを受賞したアンソニー・ホプキンスもスゴいけど、ヘレン・ヘイズの40年以上経っての再受賞も驚異的ですよね~。飛行機タダ乗りの常習犯おばあちゃまを演じた大空港の彼女は、可愛らしく上品なおばあちゃまって感じでしたが、この作品の彼女も年取ったら可愛いおばあちゃんになるだろうなと思わせる愛らしさです。当時のハリウッド女優のほとんどが、近寄りがたい非人間的なまでの美女なのですが、小柄で可憐なヘレン・ヘイズはとても親しみやすい風貌。とはいえ庶民的というわけではなく、やはり往年のハリウッド大女優のオーラはまとってます。

 ヘレン・ヘイズが演じたマデロンは、よく言えば波乱万丈なメロドラマティックヒロインなのですが…ぶっちゃけて言えば世間によくいるだめんず女です。とにかく男運が悪すぎ!ていうか、男を見る目がなさすぎ!男と駆け落ち→貧乏暮らし→男に捨てられ→私生児出産→金持ち爺の愛人に→冤罪で牢屋行き→子どもとは生き別れ→出所後は売春婦→年老いて救貧院強制収容、そして…とまあ、とんとん拍子に転落。その落ちっぷりがテンポよすぎて笑ってしまいました。もうちょっと何とかできたでしょ、しっかりして!油断や隙がありすぎ!と、マデロンのつまづきやすく流されやすい生き方は、無分別で思慮に欠けてると呆れてしまいました。

 転落だめんず女なマデロンでしたが、悲劇のヒロインって感じではないんですよね~。悲運不運にまみれても、世をはかなんでガクっとなることはなく、ナンダカンダで過酷な人生を生き抜くバイタリティが。ててなし子を産んだ後、すぐに金持ち老人の愛人の座におさまるところなど、なかなかしたたか。都合が悪いと思ったことは迷わず秘密にし、金に困ったら売春婦にもスルっとなったり。客から盗んだ金をヒヒヒと笑いながら数えてる様子など、悲しみのヒロインにはあるまじきふてぶてしさ。少女のような可愛い風貌とギャップのあるちゃっかり女を、ヘレン・ヘイズが何となく楽しそうに演じてるのが、ありきたりな悲劇のヒロインものとは違って面白かったです。ちゃっかり可愛い、は大空港のおばあちゃまと共通してますね。

 生き別れになった息子への無償の愛、再会に涙、みたいな設定には一応なってるのですが、何も知らず幸せに暮らしている息子に会いにノコノコ家まで行って、使用人を騙してスルっと家の中に入りこんだり、同情を誘って息子の世話になることになったり、小気味よいほど厚かましくちゃっかりしてるマデロンが笑えた。それにしても。出てくる男たちがみんなろくでもない!特に駆け落ちしながらもパパが病気で死にそうだから、とアメリカに帰ったままマデロンの元に戻らず金持ち娘と結婚する恋人。卑劣すぎる。私なら出るところに出るわと憤りつつ、マデロンとは真逆な私の人生、ダメ男さえ寄ってこない人生ってのもどうなんだろう?と、マデロンを見ていてふと思ってしまいました

 ↑ アメリカではブロードウェイのファーストレディと称えられた名女優です
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女狐がひとりじめ!

2021-08-27 | 北米映画 20s~50s
 夏も終わりになって、猛暑復活。こないだ夜中に突然気分が悪くなりフラフラに。ベッドに入ってしばらくすると震えが止まらなくなり、やばい!とうとうわしもコロナ?!と戦慄しましたが、どうやら脱水症状だったようです。その夜はほとんど眠れませんでしたが、水分をしっかりとってじっとしてたら何とか仕事には行ける状態にはなりました。コロナも怖いけど、脱水症状や熱中症も甘く見ると命に関わるので、皆様もご用心なさってください。
 最近、寝る前に古いハリウッド映画を観てます。特に往年の大女優主演作が好きです。例えて言うなら、彼女たちは高級ワイン。水道水やジュースとはやはり違います。イケメンオリンピックに続いては、往年の大女優映画祭開催(^^♪
 
 往年のハリウッド大女優映画祭①
 「偽りの花園」
 20世紀初頭のアメリカ南部。富豪夫人レジーナは、兄たちが持ち込んできた綿工場ビジネスでの儲け話に乗り気になり、静養で別居中の夫ホレイスに出資させるため、病身の彼を自宅に連れ戻すが…
 古き佳きハリウッドの名作がたまに観たくなります。特に往年の大女優主演作が好きです。最近の、特に日本の、キレイカワイイだけの毒にも薬にもならん、自称女優の学芸会にはウンザリ。無味無臭の味気ない、小さく無難にまとまってる最近の女優と違い、ハリウッド黄金期に燦然と輝いた大女優たちの、圧倒的で神々しいまでの美貌と強烈で気高い演技は、高級なワインのように私を酔わせてくれます。お松のハリウッド大女優映画祭、第1回はベティ・デイヴィス主演、名匠ウィリアム・ワイラー監督の1941年の作品です。

 ベティ・デイヴィスといえば、悪女の代名詞。ハリウッドという花園に咲いた黒い毒の花。美しく優しいヒロインたちがひしめく中、独自の路線で異彩を放ったベティの香り高い悪の魅力は、今なお危険なまでにかぐわしいままです。みんなから好かれたいという媚びとか、好感度から得る利益を狙った計算高さとは無縁。彼女にとって、女の業と欲の深さこそ演じがいがあったのでしょう。今作のベティも、かなり冷酷で強欲です。でも、すごくカッコいいんですよね~。ヒロインのレジーナは悪女だけど、見ていて嫌悪感や不快感を覚えるような悪ではなく、強い意志と精神力をもって我が道を突き進む信念のヒロインでもあるんです。レジーナの周囲の人々の善良さや臆病さのほうが、見ていてイラっとしました。愚かで弱い善人よりも、賢く強い悪人のほうが、映画の主人公としては魅力的です。

 すべてを独り占めしようと目論む悪辣な女狐レジーナを、毒々しくも威風堂々と演じてるベティ。圧巻だったのは、心臓の薬を求めて苦しむ夫を、無表情で見殺しにするシーン。こ、怖い!映画史に残る強烈な名シーンです。怖いんだけど、決して重苦しくも暗くもないベティ。毅然としつつも優雅、シニカルな冷笑、シレっとした軽やかさは、イザベル・ユペールとカブります。レジーナ役とか「イヴの総て」とか、リメイクするならベティの役はユペりんにピッタリかも。

 ベティasレジーナには、女特有のネチネチした陰険さとか狭量さがなく、どちらかといえば豪快で男っぽいのが小気味よい反面、家族との間でもっとドロドロした醜い争いや愛憎があればよかったのに、という物足りなさも。はじめっからベティはもうそこにいるだけで無双、誰がどう見ても彼女と互角に戦える者なんておらず、すでに勝負ついてる感がハンパないんですよ。ベティのような周囲を飲み込みかき消してしまうほどの存在感、オーラは諸刃の剣みたいなものかも。うまく扱えば名作傑作、扱えなければ失敗作に。ベティと何度も組んだウィリアム・ワイラー監督は、やはり類まれな才人です。

 ラスト、すべてを手に入れながらも大切なものを失ってしまったレジーナの、索漠とした表情も印象的。でも、みんないなくなってむしろせいせいするわ!なサバサバした表情のほうが、レジーナらしいしやっぱ怖い女!と感嘆できたかもしれません。モノクロと衣装の美しさも、ハリウッド黄金期の映画の魅力です。
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モラハラ夫の罠!

2019-08-18 | 北米映画 20s~50s
 「ガス燈」
 有名歌手の伯母が殺され遺産を相続したポーラは、留学先のイタリアでピアニストのグレゴリーと恋に落ち結婚し、事件のあったロンドンの屋敷で新婚生活を始める。事件の影に怯えるポーラに次々と奇妙な出来事が起き、グレゴリーに病気扱いされるうちにポーラは精神のバランスを崩し…
 イングリッド・バーグマン初のオスカー受賞作。モラハラ夫から精神的DVを受け、自信喪失と自己嫌悪で情緒不安定に陥り、追い詰められて本当に狂いかけるヒロインをデリケートに力演しています。

 それにしても。“ただキレイ、カワイイ女優”と“大女優”の格と質の違いを、この映画のイングリッド・バーグマンを見てあらためて思い知りました。当時バーグマンは29歳ぐらいなのですが、綾瀬ハルカとか深田キョウコより年下って事実に驚かされます。いい年してかわいこぶりっこな気持ち悪い日本のアラフォー女優にはない凛とした落ち着き、怜悧な知性、そして何より圧倒的なまでに神々しい美貌。バーグマンの美しさの素晴らしい点は、クールビューティなのに冷たさも高慢さもなく、高嶺の花だけど優しそうで誠実な人間的なぬくもりがあるところでしょうか。

 高貴さと優美さ、今の女優にはない尊い魅力で映画史上屈指の大女優として今なお崇められているバーグマンですが、その卓越した演技力もオスカーを3度も受賞という形で高く評価されています。夫に貶められ蔑まれ、じわじわと心が蝕まれていく繊細なコワレ演技にも惹きこまれます。キョドった目つきとか、かなりヤバい人です。こまやかな表情の変化や体の動きで、不安や恐怖にたゆたう心を表現するテクニックには、台詞を覚えるのが精いっぱいな女優とはやっぱ違うな~と感嘆させられます。

 バーグマンって大柄(180㎝近くある?)だし、か弱い女には見た目だけだと見えないのですが、たおやかな風情のおかげで世間知らずなお嬢様、夫の言いなりになる妻の役にも違和感がありません。同じデカい女でも、米倉涼子とか天海祐希とかにポーラ役は無理です。だいたい、今の女優ってみんな見た目も性格も強いキツいので、ポーラみたいなヒロインは似合わないし、演じたくもないでしょう。me,too運動とかの社会情勢もあるし、モラハラ野郎などフザケンナ!と鼻息荒く一蹴しそうな女優ばかりなのも、何だか味気ないですね。

 それにしても。モラハラ夫に支配され委縮して病んでしまう女なんて、多くの女性からしたらイライラするダメ女に思えてしまいますが、実際には世の中たくさん存在してるんですよね~。モハラハ男に操られて凶悪事件を起こした女たちもいます。北九州一家殺人事件の緒方純子や、長崎・佐賀保険金殺人事件の山口礼子を思い出しました。私もどちらかといえば依存心が強く言いなりになるタイプですが、グレゴリーみたいな男には早い段階で耐えられなくなると思います。女性の権利!を声高に叫び求める勇ましい戦士にはなれないけど、モラハラ男に付け入るスキを与えるような自己肯定感の低い人間にはなりたくないです。

 モラハラ夫役は、フランス出身の美男俳優シャルル・ボワイエ。真綿で首を絞めるような、遠まわしでさりげない、かつ執拗で陰湿なモラハラが腹ただしく怖いです。狡猾な手口が中年男のイヤらしさ。優しげに接しながらも、目つきは氷のように冷たい。妻への蔑み方、侮り方が優雅で慇懃なのが庶民のモハラハ男との大きな違いでしょうか。ポーラを助けようとする刑事役は、「第三の男」や「市民ケーン」などで有名なジョゼフ・コットン。バーグマンとは「山羊座のもとに」でも共演してましたね。懐かしのTVドラマ「ジェシカおばさんの事件簿」で人気を博し、最近は「メリー・ポピンズ リターンズ」で元気なお姿を見せてくれたアンジェラ・ランズベリーが、ちょっと感じの悪い、けど何か笑えるメイド役を好演してます。「マイ・フェア・レディ」などハリウッドの大女優主演作を数多く撮った名匠ジョージ・キューカー監督作品です。
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天国にいちばん近い部屋

2018-07-01 | 北米映画 20s~50s
 「第七天国」
 第一次世界大戦前のパリのスラム街。下水清掃員の若者シコは、アル中の姉に虐待されていたディアーヌを助け、彼女を“第七天国”と名付けた自分の屋根裏部屋に匿うが…
 広島市映像文化ライブラリーで上映された1927年の無声映画。記念すべき第1回アカデミー賞の監督賞、主演女優賞、脚本賞を受賞した伝説の作品です。
 初めてのサイレント映画鑑賞!危惧してたような違和感とか退屈とか、まったくありませんでした。古~い映画なのに、返って何もかもが目新しく新鮮でした。上映中のピアノの生演奏も素敵で、サイレント映画も悪くないな~と思いました。映画も時代とともに進化し、映像も音響も驚異的な技術で、映画ファンもそれにもう狎れきってますが…この映画を観て、進化には余計なもの、不要なものも多いよな~と、最近のCGだらけ映画や映像に凝りすぎ映画や奇をてらい過ぎな設定映画を思い出したりしました。最近の映画は、美味しいけど脂肪分も添加物も着色料もたっぷりなコンビニ弁当みたい。その点、この無声映画はおかしなものは何も入ってないけど、ほのかな甘みのあるオーガニックお菓子みたいでした。シンプルイズベスト、だけど、笑いや感動といった心の栄養分はちゃんと含まれてました。

 声や音はなく、たまに字幕が挿入される、というサイレント映画のスタイルは、慣れるとなかなか面白く、なおかつ余計なものを削いで物語に集中できる効果もありました。いい台詞だけが字幕にされてたのも良かった。シコの口癖である『いつも上を向いて生きる』には、永六輔があの名曲「上を向いて歩こう」を作詞する際にインスパイアされたのだとか。つらく悲しい境遇、孤独な夜でも、幸せを信じ希望を抱いて優しく強く生きる、という「上を向いて歩こう」のテーマそのものな内容でした。貧困や戦争といった暗い影にすっぽり覆われたりしない、ハートウォーミングでロマンティックでスウィートなシーンは、かなりアメリカ的。シコやディアーヌみたいなフランス人、あんましフランス映画では見ないですし。ムチで打たれるヒロインとか、大時代すぎる設定がいかにも古~い映画。そういうところも、現代の映画では味わえない珍味ではありました。

 行き場を失い、警察に連行されそうになったディアーヌを、しょーがねーな~と仕方なく自分の部屋に匿うシコが、ディアーヌを迷惑な居候扱いしつつもナンダカンダで親切に紳士的に振る舞って同居を続け、しだいに彼女との間に親愛を培っていく、という筋書きは、現代でも少女漫画の定番中の定番である“イケメンとヒロインのワケありルームシェア”もので、この映画は胸キュンよりもほのぼの重視でした。シコのツンデレっぷりが可愛く微笑ましかったです。ちょっと荒っぽく口が悪いけど、強く明るくウルトラポジティヴで善良なイケメンのシコに、ディアーヌが心惹かれるのは当然のことですが、シコがディアーヌに惚れるには、もうちょっとディアーヌの魅力の掘り下げが必要だったかも。父性本能が強い男は、ああいう可憐で可哀想な女の子が好きなんだろうな~。俺が守ってやらねば!と思わせる弱さこそ、ディアーヌの魅力なのかな。ただもうビクビクした臆病者だったディアーヌが、シコに影響されて強くたくましい女に成長する姿も、なかなか感動的でした。

 ロマンティックで心温まる前半から一転、戦争が勃発してからの後半は、かなりドラマティックで哀切な展開に。出兵したシコは生きてディアーヌのもとに戻れるのか、それとも…けなげなディアーヌとともに、祈るような気持ちにかられてしまいました。ベタともいえる引き裂かれた運命物語ながら、これも無声映画のおかげか、フツーならお涙ちょうだい狙いに鼻白む私も、つい涙腺を緩ませてしまいました。神さまを信じれば…な、ちょっと宗教色のある内容が気になったけど。最も尊い幸せを得るためには、大きな代償を払わねばならないのですね。ラストシーンは、神々しくも峻厳でした。

 ↑ 窓辺のシーンがロマンティックですごく好き
 ディアーヌ役を演じ、オスカーの主演女優賞受賞者第1号となったジャネット・ゲイナーの、可憐さ、けなげさも今の女優にはない魅力。今の女優ってみんな、男以上に強いじゃないですか。セクハラ問題に激怒し、女性の権利を鼻息荒く鬼の形相で訴える女優たちは、立派だけど何かもう優しさとか愛らしさなど微塵もない。映画の役も、男に守られ愛されるかよわい女なんて愚の骨頂!な風潮だし。男に守られる、男に影響されるヒロインなんて、もう絶滅種。今もてはやされてる、性格もキツそうで見た目も態度もデカい女優とは別生物のような、見るからに乙女といった風情の小柄で愛らしいジャネット・ゲイナーの、尊厳と愛に目覚めて強くなっていく演技には、今の女優が軽蔑してる、失っている女性の魅力について考えさせられました。シコ役のチャールズ・ファレルは、ちょっとマシュー・マコナヒーっぽいイケメンで、いかにもアメリカ男な(フランス人役だけど)タフでノーテンキでお人よしな感じがワタシ好みでした。

 ↑ジャネット・ゲイナーが可愛かった!他の出演作も観たいです
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我、弾劾す

2016-02-22 | 北米映画 20s~50s
 先日、久々にツ○ヤに行ったのですが…
 レジでレンタル料を払おうとしたら、げっ!所持金45円!仕方なくクレジットカードで。でも…店員が何度やっても、カードがカードリーダーに通らない。え!?何で何で何で?!店員が『お客さんのカードに何か問題があるのかも』と、まるでカード利用停止になってるかのようなことを。ええ~!?私カードなんか滅多に使わんし、そんな覚えない!と、不安と恐怖に。○タヤカード有効期限が切れてるので更新料は払って!と言われ、ちょ、ちょっと待っててください…と、恥ずかしいけどいったん店を出て、近くのコンビニヘ。試しに恐々とクレジットカードで買い物…え!?フツーに使えた!まったく利用停止になってませんでした。どーいうこと!?ツタ○に戻って、あの~コンビニではフツーに使えたのですけど…とオズオズと申し立てると、レジの磁気が合わなかったのかも!はい、更新料払って!と、ササっとスルーされてしまいました。ええ~!?人前でカード利用停止にされてる恥かしい人扱いされ、気まずさと不安に陥っただけでなく、わざわざコンビニまで行ったのに。店員さんの対応、あまりにも情が薄いというか…そんなもんなのでしょうか?私がいろいろ他人に期待しすぎなのかしらん?自分では誰に対しても多くを求めてないつもりなのですが…今日はコンビニで、店員にメチャクチャ理不尽なクレームをつけてるおじさんと遭遇したのですが。あのおじさんみたいになれたら凹むこともなく気が楽だろうな、と羨望する反面、他人に不愉快な思いをさせるよりは自分が不愉快な思いをするほうがいい、なんて思う私は聖人?それとも単なる小心者の負け犬?

 「ゾラの生涯」
 19世紀末のパリ。苦節を経て富と名声を得た作家エミール・たゾラは、老境に入っても創作に意欲を燃やしていた。そんな中、軍人のドレフェスがスパイ容疑で逮捕されるという事件が起き、世間を騒然とさせる。夫の無実を信じるドレフェス夫人は、ゾラに救いを求めるが…
 1937年のアカデミー賞作品賞、助演男優賞などを受賞した名作、のわりにはあまり知名度が高くない?私も最近まで知らなかったのですが、オスカー受賞作だけあってなかなかの力作でした。フランスの文豪ゾラの一生、というより、有名な“ドレフュス事件”に彼がどう関わり、どう戦ったかを描いた内容です。
 非道い冤罪事件って、日本でもよく起きていますが…このドレフェス事件も、理不尽で非情すぎます。当事者や家族にとっては、たまったもんじゃない災難。いきなり身に覚えのない罪を着せられ、劣悪な流刑地の牢獄に長い間閉じ込められてしまうなんて、想像しただけでゾっとします。ドレフェスがスパイ容疑をかけられる経緯が、これまた杜撰というか超テキトーだったのも戦慄。あんな風にいとも簡単に無慈悲に、他人の人生をメチャクチャにするなんて。自分の利益のためや保身のために、部下を犠牲にすることも厭わない軍のお偉いさんたちに、こんな上司ぜったいイヤー!でも、いるよな~と、組織の中で生きてる者にとしては他人事ではない恐怖を覚えました。

 エミール・ゾラって、名前は知ってるけどどんな作品を書いたのかと訊かれたら、パっと出てこない作家。映画にもなった「居酒屋」とか「ジェルミナル」「嘆きのテレーズ」の原作者なんですね。画家セザンヌと親友同士だったというのも、へぇトレビア!でした。理不尽なドレフェス事件に義憤を燃やし、世論を動かして法廷闘争に持ち込むゾラの、バイタリティと気骨あふれる人柄が、魅力的に描かれています。若き日のビンボー生活が、いきいきとコミカル。若い人はやっぱ夢や意欲を持ってないといけませんね。大作家になっても気さくで元気いっぱい、お金も名誉も大好きな俗っぽさも人間的で好感。俗世を嫌う親友のセザンヌとの別離に、ちょっとしんみりしてしまいました。創作スタイルにも裁判にも、不屈の信念と闘志を貫くゾラですが…え!?な最期に唖然。あっけな~…偉人って必ずしも、ドラマティックな人生の幕引きをするわけではないのですね。
 ゾラを熱演したのは、30年代に活躍した伝説の名優、ポール・ムニ。

 私、古き佳き時代のハリウッドの女優は大好きなのですが、男優はあまり心惹かれないんですよね~。美男が多いけど、その美しさが何か不自然というか、作り物っぽすぎるというか。日本の美男系でも松じゅんとか成宮とか、メイクばっちり男って苦手なんですよ。女優はいいのだけど、男優はね~…その点、ポール・ムニはそんなにメイクばっちり感がなく、今の時代の俳優っぽいというか、リアルで自然。美しく見せるメイク感はないけど、役に化けるための特殊メイクは入念。そこが百花繚乱の美男がひしめく時代のハリウッドの中で、独特の個性と魅力にもなっているのではないでしょうか。もちろん、すごく男前です。そして、演技も素晴らしかった!若かりし頃は、ちょっと内気で夢見る青年って感じで可愛く、大成した老境は自信たっぷりの貫禄と威厳。有名な『我、糾弾す』の演説シーンと、法廷での独演シーンは、元は舞台で名を馳せたというだけあって、圧巻のひとり芝居。あの長い台詞を、怒涛かつ流麗に、朗々と淀みなく、エモーショナルにこなせるなんて、役者さんってほんとスゴいわ~と畏怖せずにはいられません。すっかりポール・ムニのファンになってしまったので、彼の他の作品も観たい!調べてみると、出演作は少なくて早々と引退してしまったみたいですね。
 古~い映画ですが、睡眠誘導的まったりゆったりムードでも展開でもなく、なかなか劇的にスピーディに物語は進むので、ぜんぜん退屈しませんでした。当時のパリの世情やファッションも興味深かったです。モノクロも返って新鮮。不正に立ち向かい、苦難の果てに巨悪をギャフンと言わせる痛快逆転劇は、いかにもアメリカ人が好きそうな内容。そのせいか、舞台はパリで登場人物はフランス人なのに、みんなアメリカ人に見えて仕方なかった。まあ、ハリウッドの俳優が英語で演じてるアメリカ映画なので、仕方ないことですが
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私より強い男を探してた

2015-07-29 | 北米映画 20s~50s
 お松の独りアイルランド映画祭③
 「静かなる男」
 30年代のアイルランド。アメリカから生まれ故郷に戻ってきた元ボクサーのショーンは、村の金持ちで偏屈者であるダナハーの妹メアリーと恋に落ちる。しかし、ショーンのことが気に入らないダナハーは、二人の結婚を認めようとせず…
 巨匠ジョン・フォード監督が、4度目!のアカデミー賞監督賞を受賞した名作。アイルランドが舞台ということで、さっそく観てみました♪
 フォード監督&ジョン・ウェインのコンビ作といえば、硬派で骨太な男の映画、というイメージですが。意外なことに、この映画はほとんどラブコメなんですよ。男らしい主人公と勝気なヒロインが互いに一目ぼれ、でも気が強い者同士なかなか素直になれなかったり、周囲や環境に邪魔されたりしつつ、ケンカしながらもラブラブになっていき、障害を乗り越えてハッピーエンド。壁ドンや顎クイ、お姫様ダッコとか雨の中のキスとか、胸キュンなLOVEシチュエーションもバッチリあったりします。

 基本は純愛ラブコメ、そこにフォード監督&ジョン・ウェインっぽい漢(おとこ)らしいシーンや友情人情、そしてアイルランドの美しい自然がトッピングされている、といった感じの映画でしょうか。とにかく、ジョン・ウェイン扮するショーンが、今や絶滅種ともえいる男らしいキャラなんですよ。ハーレイクンとかによく出てくる、ほとんどファンタジーな男。生まれはアイルランドだけど、育ったのはアメリカなヤンキーキャラも素敵。アメリカナイズされたショーンが、アイルランドの風習や因習に戸惑う、というより、そんなん知るか!と男らしく打破していく姿が、めっちゃ痛快豪快でカッコいい。ヒロインだけでなく、周囲の男たちも惚れていく雄々しさ。でも、やみくもに男らしさをひけらかす粗野さはなく、普段は静かで紳士的なところも理想的。そんな強く優しい男に、恋しない女はいないでしょう。ヒロインのメアリーも、ショーンのやることなすことにハートをズキュンバキュンされまくり、でもプライドが高く気が強いので、逆らったり抗ったり、でも好き好き大好きビーム出しまくりな彼女のツンデレっぷりが、かなり笑えます。

 素直になれないメアリーに対するショーンのアプローチが、これまた男らしいんですよ。たいていのことは女に合わせてくれ、女が怒ったりスネたりしても可愛い奴だなと余裕で笑ってる彼ですが、いざという時はめっちゃ強引。その行動力、決断力に女はますますメロメロに。女ってほんとは、自分より強い男に屈したいんだよな~。メアリーみたいな気が強い女は、特にそんな傾向あり。なんとか結婚にこぎつけても、兄が認めてくれない、持参金なしで嫁入りした自分が恥ずかしいと、ショーンにとってはどーでもいいことにウジウジこだわって家出してしまうメアリー。ついにプッツンし、彼女を無理やり家に連れて帰るショーン。ズルズル女を引きずりまわしたり髪の毛掴んだり突き飛ばしたり、DVに近い強引さはちょっと怖かったけど。でも、ワガママな女にはあれぐらいの荒療治は必要!女もナンダカンダで嬉しそうだったし。愛のために手をこまねいたり手を抜いたりしない男って、ほんとカッコいいですよね。あんな風に男に、熱く大切に思われるって幸せなことです。

 ショーン役のジョン・ウェインがカッコよかったです。イケメンとか美男は腐るほどいるけど、彼みたいな男の中の男は今いないですよね~。キャラ的には、高倉健に近い?顔がちょっと國村準に似て見えたのは私だけ?デカくてゴツいところも頼もしい。ラブコメも頑張ってたけど、馬に乗って疾走するシーンや、ダナハーとのファイトクラブも真っ青なガチンコタイマンシーンは、これぞジョン・ウェイン!な漢(おとこ)っぷりです。まさに拳で解かり合う的なショーンとダナハー、ノリはジャンプの漫画っぽくて笑えた。それはそうと…ショーンは、もうちょっと若い俳優のほうがよかったかも。青年役にしては、さすがに見た目はおじさんすぎなジョン・ウェインでした。
 メアリー役のモーリン・オハラも、すごくチャーミングでした。勝気なキャラにピッタリな赤毛も印象的。主役のカップルを取り巻く人々も、みんないい味だしてます。アイルランド人って、のんびりとおおらか、でも血の気が多い、という気質なのでしょうか。私も日がな一日、のんびりパブでほろ酔いしてみたいものです。
 この映画の真の主役は、アイルランドの自然の美しさかも。木々の葉や大地の緑、空の青、涼やかな小川、荒々しい海、のどかな馬や羊etc.すべてがほんと瑞々しくて清らかで牧歌的で、デトックスできそう!シンプルな住民の生活も、いいな~と感嘆。携帯やPCなんてなくても、じゅうぶん生きていけるんですよねホントは。ゴチャゴチャ不必要なものにあふれた、有害な情報にまみれた現代社会が、あたらめて薄汚れた息苦しいものに思われました。
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