南斗屋のブログ

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「パパの脳が壊れちゃった」より 3

2006年05月25日 | 高次脳機能障害
<アランの急性期の治療方法>
(本の要約)
 薬物でアランを昏睡状態にし、人工呼吸器につなぐ。これは、身体の動きを最小限にして、脊髄にまで災いが及ぶのを防ぐため。
 胃の内容物をポンプで吸出し、鼻から食道に管を通す(経管栄養)。これは、脳は損傷したところを自分で修復する時に、大量のエネルギーを必要とするため、昏睡状態の患者に早い段階から栄養を与える方が、回復の助けになるから。
 下腹部は、白い小さなタオルで覆われただけの姿でベッドに横たわっているが、これは体温を低くして、脳の腫脹を抑える為。

(感想)
 法律家である私には、脳外傷の治療は門外漢ですが、かなり詳しい記載がされています。筆者が描くアランの状態は、医学書に掲載されている急性期治療の様子の図に符合します(例えば「脳外傷リハビリテーションマニュアル」神奈川リハビリテーション病院 P5)。

 筆者は、アランが「びまん性軸策損傷」と診断され、「前頭葉全体に硬膜下血種ができている」と専門用語を用いてアランの様子を説明するのですが、このような知識は「病院に置かれた小冊子を読んだり、アランの状態をしょっちゅうたずねて身につけた」と書いています。
 また、色々な友人に電話をかけまくって、情報収集につとめています。大学時代の友人がリハビリ病院を経営していると知ると、そこに電話をし、その友人も経営している病院が作っている「脳損傷を理解する-緊急入院について」というガイドブックを送ってくれたりしています。

 これらは、アランや筆者の知的レベルの高さによるのかもしれませんが(アランは弁護士、筆者は作家)、このようなガイドブックが作成されているアメリカのレベルの高さを、無視するわけにはいかないでしょう。
 アメリカでは、1996年に「脳外傷法」が可決され、脳外傷のリハビリテーションに、毎年多額の財政援助が行われるようになり、2000年までにはそれぞれの治療段階で、誰が何をすべきかの方法論が、確立された感があるとされています。
 一方、日本では、医療期間で行える急性期リハは、診療報酬の対象とされている理学療法、作業療法、言語療法に集中しがちで、認知や記憶障害の評価と、その障害への対応が遅れがちとの指摘もあります(神奈川リハビリテーション病院著の「高次脳機能障害マニュアル」)。

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