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江戸大火起こる・文政12年3月下旬・色川三中「家事志」

2024年04月04日 | 色川三中
江戸大火起こる・文政12年3月下旬・色川三中「家事志」

土浦市史史料『家事志 色川三中日記』をもとに、気になった一部の大意を現代語にしたものです。
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文政12年3月21日(1829年)晴
従業員佐助のことで、谷田部不動町の徳左衛門のところに行く(茂吉同道)。徳左衛門は酒肴に出して歓待してくれたので、馳走になる。昼過ぎにに親戚の飯塚家へ立ち寄ってから帰る。
#色川三中 #家事志
(コメント)
谷田部(現つくば市谷田部)には「不動町」があったようですが、現在はつくば市谷田部となっており、大字としてはのこっていません。谷田部の不動並木跡というものがあり、不動町の名残を伝えています。谷田部不動町までは、三中宅から往復約30キロありますが、日帰りしています。
土浦⇒谷田部

土浦城 大手門跡 to 谷田部の不動並木跡

土浦城 大手門跡 to 谷田部の不動並木跡


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文政12年3月22日(1829年)晴
昨日昼前に、江戸の外神田佐久間町から出火し、大伝馬町、小伝馬町、本町通りが全焼、東は浅草見付、 西は鎌倉川岸の豊嶋や、南は芝口新橋で留まる。近年稀なる大火。
取引先で全焼したところ以下のとおり。今朝与市は宿へ帰ってしまい、利兵衛殿は銚子へ私用旅行中。人がおらず、どうにもしようがない。
#色川三中 #家事志
(全焼した取引先)
いせ町 中条瀬兵衛
堀留 長崎や瀬兵衛
和泉町 四方久兵衛
小網三 土浦屋太兵衛
橘町三丁目 大坂や平六
横山町二丁目 近江や小兵衛
小船町 大枝清兵衛
今川はし 和泉や吉右衛門
本町四丁目 北川儀右衛門
本町三丁目 いせや平八
箱崎 常陸や太兵衛
小あみ三丁目 常陸や吉二郎
としま町 今川勾当
大伝馬町弐丁目 いせ屋惣兵衛
通壱丁目 白木屋彦太郎
(コメント)
文政の大火の記事。3月21日、江戸の神田佐久間町から出火。焼失家屋は37万、死者は2800人余りに達したといわれております。昨日起こった火事ですが、ここ土浦でも取引先の情報を把握しており、情報の伝達の速さには驚きます。

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文政12年3月23日(1829年) 晴
・この頃毎日晴れて日照り続き。在方では苗代作りに甚だ困っている由。
・夕方間原平右衛門が帰ってきた。江戸のことあらまし聞く。大火である。親船七艘が焼けた由。土浦船は田安様が御成で、下へさがっていたので、運よく焼けなかった由。
#色川三中 #家事志
(コメント)
・晴れてばかりで、雨が降らず、米作りにも影響が出ています。
・友人から江戸大火の情報を聞いています。土浦船は何とか被害に合わなかったようです。

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文政12年3月24日(1829年)晴
与市も利兵衛殿も不在ゆえ、火事の見舞いには色川庄右衛門殿に頼んで江戸まで行ってもらうこととした。江戸の取引先等に16通書状を書いた。見舞い金として、金2分2朱銭800文を持っていってもらう。
#色川三中 #家事志
(コメント)
江戸の大火での被害者に対して、見舞いを遣わすべきところですが、三中の従業員でそのような話しができる者が出張などで出払っており、やむを得ず色川庄右衛門殿に頼むことに。色川庄右衛門は、色川家親族の代表者的立場に有る人です(2月4日条参照)。
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文政12年3月25日(1829年)晴
・朝、色川庄右衛門殿、江戸に向けて出立。被災した取引先への見舞い金と書状を託した。
・熊のや忠蔵が、息子清兵衛の先日の一件で礼に来た。金壱朱、半紙壱状添えで持参してきた。
#色川三中 #家事志
(コメント)
清兵衛は、先日酔った勢いで湯屋で帯を盗むという刑事事件を起こしたのですが、町役人が動いたこともあり、刑事処罰は免れました。清兵衛の礼は半紙二丈でした(以上、3月8日〜10日条)。少ないと思ったのか、父親の忠蔵が金壱朱、半紙壱状添えで礼に来ました。

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文政12年3月26日(1829年)晴
・等覚寺で角力興業の計画あり(寺の境内で行う)。昨日、寺社御役所宛の願書の提出があり、本日、町役にて奥印。
⇒願書の本文は末尾付1&2
・夜に入って大雨。御奉行は風烈廻りをされた。雨は終夜に及んだ。
#色川三中 #家事志
(コメント)
・等覚寺は土浦の町にある寺(現土浦市大手町4−16)。寺の境内で角力興業をしたいという願書が提出されました。寺社御役所宛ですが、町役人に提出し、町役人が奥印をしてから、藩に提出されるのがルール。町役人としては、形式が整っているか、宛先をは間違いないか、提出した人物が名義人かを確認しているのですね。
・風烈廻りとは、風が強い日の火災予防等の取締りのこと(2月21日条参照)。これまでずっと晴れて日照りで困っていましたが、風烈廻りをするほどの大雨。文政12年も振れ幅の大きい天候不順だったようです。

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文政12年3月27日(1829年)雨 昼前から晴
等覚寺から角力興行の願書の写しを取りたいとの要請があった。
#色川三中 #家事志
(コメント)
等覚寺の和尚が願書を提出しており、内容は自分で分かっているはずです。それでも写しを取りたいというのは、奥印も含めての写しを残しておきたいのでしょう。現代のようにコピー機はないので、手書きの写し。そのようなものでも記録として残すことに価値があったのですね。
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文政12年3月28日(1829年)晴
奉行所での吟味に町役人として立会。
正午、荒川や太兵衛を呼出す(組合の記七・伝蔵も)。御疑心あるため、細田や次郎右衛門も御呼出し(組合の藤吉・源治も)。次郎右衛門の供述により、田兵衛を再御呼出。夕方になりひとまず終わる。「心得違いのないよう、よくよく町役人とも話すのだな」との仰せあり、一同下がる。
#色川三中 #家事志
(コメント)
奉行所での吟味(刑事裁判)に立会うのも町役人としての仕事。何が問題となっているのか、私にはよく分からないのですが、被告人荒川や太兵衛の主張に不明なところがあり、奉行所は参考人次郎右衛門も取り調べを行っています。午後いっぱい吟味に時間を取っていますが、決着せず、町役人とよく話すように奉行所は促しています。
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文政12年3月29日(1829年)晴
江戸から帰ってきた者(和田や)から、大火の話しを聞く。
親船三十七艘は全焼の由。船のために佃島にも類焼。今回の火事はその時にはわからなかったが、時をおって詳細が知れると、当初の話しより大変である。
長崎やは店舗のみ焼失。中条は店舗及びかしの樽蔵が焼失。四方も店舗のみ焼失。近小(近江や小兵衛)からは今日書状が届き、被害は店舗のみで、人は無事とのこと。
#色川三中 #家事志
(コメント)
文政の大火の続報。当初聞いていた話しよりも、被害は深刻そうです。後世には、焼失家屋37万、死者2800人余りと伝わる大火ですので、無理もありません。当時は島だった佃島だったにも船を介して延焼。恐るべき火事の勢いです。

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文政12年に3月30日は存在しませんので(同年3月は小の月)、#色川三中 #家事志はお休みです。
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文政12年に3月31日は存在しませんので(旧暦には31日は存在しません)、 #色川三中 #家事志はお休みです。

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付1:等覚寺の願書①〈3月26日条〉
『書面をもってお願い致します』
当寺の境内は地面が低いため、出水致しますと参詣者が難渋致します。直したいと思いますが、貧寺でありまして自力では難しいのです。これまでに本堂から門前までの敷石の設置を計画し、着手はしたのですが、完成には至りませんでした。資金に難渋しておりますので、江戸大角力興行を行い、この資金を普請金とさせていただきたく存じます。何とも自由がましくて恐入りますが、お聞き及びいただければ幸いです。 以上
田宿町 等覚寺
文政十二丑年三月
寺社御役所
以上のように田宿町等覚寺からの願いがあったので、奧印致します。以上
入江全兵衛
八兵衛
金之丞
吉右衛門
桂助(色川三中)
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付2:等覚寺の願書②〈3月26日条〉
『書面をもってお願い致します』
当寺の本堂、庫裏、裏屋根等が大破しておりみまして、甚だ難渋至しております。修復作業を進めておりますが、境内や外地の窪んだ場所からの水の浸入も深刻です。仏参の方も難渋しております。本堂より表通りまでの土地も整備致したく、この段お願い申し上げます。特に本堂から門前までの敷石の設置は先年願書を提出し、着手もしておりますが、完成しておりません。必要な資金が不足しているため、檀中の皆様とも相談しましたが、近年に打ち続く凶作で一同困窮しております。
当節、近隣で歌舞伎や芝居が行われ、五日間晴天が続いたこともあって、その成功により資金を得たので、当寺にも角力興行を行いたく、よろしくお願い致します。従前、桜橋、銭亀橋、真鍋村辻の三か所に建札を建てたとのことですので、同様に行わせて下さい。
興行場所や日にちについては、後日お知らせいたします。何卒、この願いをご理解いただき、承認していただけますようお願い申し上げます。以上
田宿町 等覚寺
文政十二年丑三月
寺社御役所
奥印は前のとおり



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