南斗屋のブログ

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最高裁への異議申立〜特別抗告と許可抗告

2021年07月12日 | 家事事件関係
(はじめに)
 婚姻費用の家事審判について即時抗告を高裁に対して申立て、それについて高裁の決定が出たとき、高裁の決定に対してどのような異議申立の方法があるか考えてみます。例えば、次のような事例になります。
(事例)妻から夫に対して婚姻費用の請求の調停が申し立てられ、調停は成立せず、家裁で審判が出た。夫はこれに不服であり、高裁に即時抗告をした。高裁は夫の主張を一部認め、家裁の審判を一部変更した。

(最高裁への異議申立〜特別抗告と許可抗告)
 事例のような場合、妻側からも夫側からも不満が残る可能性があります。
 不服申立の方法としては、最高裁への特別抗告と許可抗告があります。それぞれについて見ていきましょう。
 なお、いずれの場合も申立てをしただけでは執行停止の効力がありません。つまり、高裁での決定どおりに婚姻費用が支払われない場合は、妻は夫に対して強制執行ができ、夫の給料などの差押えができます。執行停止の効力を得たければ、別途執行停止の裁判を経る必要があります。

(特別抗告)
 特別抗告は、憲法解釈の誤りがあるか、憲法違反があることを理由とすることが申立ての要件です。
 憲法問題にならないと、特別抗告を申立てできないのです。高裁への即時抗告に比べると非常に狭き門です。

(許可抗告)
 許可抗告は、判例違反又は法令の解釈に関する重要な事項を含む場合に限られます。特別抗告が憲法問題に限られていることからすると、こちらの方が申立ての要件としては広いとはいえるでしょう。
 〈許可〉抗告といわれる理由は、申立てに一応理由があるかどうかを決定をした高裁が許可する権限があるからです。つまり、高裁が許可しないと最高裁にまで事件が上がらない、そこでおしまいということになります。このような制度にしているのは、最高裁には裁判官が15名しかおらず、処理能力が限られているからです。通常の訴訟に比べて、即時抗告の決定については、最高裁に審理してもらうこと自体が高いハードルがあるのです。
 
(手続き)
 特別抗告又は許可抗告は、高裁の決定を受けとってから5日以内にしなければなりません。高裁への即時抗告は14日以内ですか、これに比べるとかなり忙しいことになります。非常に短期間に行わなければならないので、弁護士を依頼されている場合は、最高裁まで争うか否か、高裁決定が出る前に協議をしておいた方が良いです。


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