南斗屋のブログ

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静岡県土採取等規制条例について (熱海市の土石流関連)

2021年07月09日 | 地方自治体と法律
(はじめに)
 熱海市の土石流(2021/07/03発生)につき、静岡県が盛土の問題点を指摘しています。
 報道によると、静岡県土採取等規制条例が問題となっているようですので、同条例の内容について調べてみました。

(条例の目的)
 この条例の目的は、
①土の採取等に伴う土砂の崩壊、流出等による災害の防止
②土の採取等の跡地の緑化等の整備を図る
ことにあり、もつて県民の生命、身体及び財産の安全の保持と環境の保全に資することとされています(同条例1条)。
 今回問題となったのは、土砂の崩壊、流出による災害ですが、そのような災害を防止する目的が一番目に掲げられています。

(土の採取等の定義)
 目的にでてきた「土の採取等」という文言は以下のように定義されています(同2条)。
(1) 切土、床掘その他の土地の掘さくをする行為
(2) 埋土又は盛土をする行為
 今回問題となったのは、「盛土」ですから、「土の採取等」に該当します。

(土の採取等に関する規制の概要)
 県が行う規制については、次のように規定されています。
(1)土の採取等を行おうとする者は、土の採取等の計画を定めて、必要書類とともに県知事に届け出る(同3条)。計画に変更があったときもその内容を届け出る(同4条)。
(2)県知事は、届出の内容をみて、土砂の崩壊、流出等による災害が発生するおそれがあると認めるときは、届出者に、変更の勧告を行える(同5条)(計画変更の勧告)。
(3)勧告に従わないで土砂の採取等を行っている場合や、土の採取等に伴う土砂の崩壊、流出等による災害が発生するおそれがある場合は、県知事は、土の採取等を行つている者に対し、期限を定めて、災害防止に必要な措置をとるよう命令できる(同6条)(措置命令)。
(4)措置命令に従わなかった場合や、土の採取等に伴う土砂の崩壊、流出等による災害の防止のため緊急の必要がある場合は、県知事は、土の採取等を行つている者に対し、土の採取等の停止を命ずることができる(停止命令)。
 このように、事業者に計画を届出させ、災害防止に必要なときは、計画変更の勧告や措置命令・停止命令ができるという権限を県知事に与えています。

(現在までの報道で判明した行政の対応)
 現在(7月8日)までのところ、静岡県の方では、行政指導を行ったということは報道されていますが、措置命令や停止命令という権限を行使したとはされていません。
 これらの命令は、「土砂の崩壊、流出等による災害が発生するおそれがある場合」(措置命令の場合)、「土砂の崩壊、流出等による災害の防止のため緊急の必要がある場合」(停止命令の場合)にその規制権限を行使できることとなっており、静岡県の方でこの点についてどのように認識をしていたのかが、個人的には気になっています。

(2021/10/18追記)
2021/10/18になって、静岡県と熱海市は措置命令をだす手続きを進めていたが、最終的には措置命令はなされず、放置されていたことが明らかになりました。
「県と市は11年6月、強制的に対策をさせる措置命令を出す手続きを始めることを決定した。業者側が対策に着手したため命令は見送られたが、その後に対策は中断されて完了しなかったという。」(朝日新聞2021/10/18付)
 このことから、2011年当時には措置命令の要件に該当する状況にあったことがわかります。即ち、土の採取等に伴う土砂の崩壊、流出等による災害が発生するおそれがあったということです。
 

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