(はじめに)
結婚していない男女の付合いで、女性が妊娠し、やむなく中絶に至った場合、女性は男性に対して損害賠償できるのかという問題があります。両者でよく話し合って解決すべき問題ですが、話し合いがうまく行かない場合に問題となります。
(男性の損害賠償義務を認めた東京高裁の判決)
妊娠中絶した場合に女性から男性に対して損害賠償を請求できるかという問題に一つの解決を与えたのが、東京高裁平成21年10月15日判決(判例時報2108号57頁)です。
この判決は、女性から男性への損害賠償請求が認められる場合があると判断しました。
① 妊娠中絶をしたときから、女性は直接的に具体的及び精神的苦痛にさらされるし、経済的負担をせざるをえない。
よって、女性は男性からその不利益を軽減し、解消するための法的利益を有する。
男性が女性の不利益を軽減・解消しない場合は不法行為となって、男性が損害を賠償する義務を有する。
(請求できる額)
では、何を請求できるかですが、紹介した東京高裁判決のケースでは、治療費と慰謝料が認められています。
治療費は68万円かかっていたのですが、請求できるのは、その半額34万円としています。また、別途慰謝料(100万円)を認めています。
慰謝料は個別要素により左右され、別の判決では、慰謝料50万円としたものもあります(東京地裁平成24年5月16日判決)。
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