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南斗屋のブログ

基本、月曜と木曜に更新します

飲酒運転の厳罰化(2007年9月19日、改正道路交通法の施行)

2007年09月24日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 飲酒運転やひき逃げの罰則強化が、9月19日から施行されています。
 
 警視庁のサイトを見たのですが、まだ、更新がされていないのか、罰則がどうなったのかについての情報は載せられていません。
 あまり参考になりませんが、ご覧になりたい方は→こちら

 千葉県警では、もっと情けないことに、本日現在では「作成中」ということでした。
 これまた全然参考になりませんが、ご覧になりたい方は→こちら

 ホームページを作成するよりは、取り締まりをやった方がPRになると考えているようですね。
 実際、法施行日の9月19日午前0時から、各警察は取り締まりを行っていたそうで、翌20日の新聞には一斉にその記事が出ていました。

 ところで、肝心の法改正の内容ですが、このNPOのサイトが見やすく、かつわかりやすいです。
 →こちら

 酒気帯び運転は、今回の改正で
  3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
になりました。

 私が弁護士になりたてのころは、
  3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
だったはずです。

 当時の検察庁・裁判所の運用は、ほかに前科がないとすると、
酒気帯び運転1回目 罰金5万円で起訴→罰金5万円の命令
酒気帯び運転2回目 罰金5万円で起訴→罰金5万円の命令
ただし、2回目になると、裁判官から、「この次やったら、もう罰金では収まりませんよ。次は裁判所の法廷に呼び出されることになりますよ」と諭されることが入ったそうです。
そして、
 酒気帯び運転3回目にして、正式裁判で起訴。
 懲役3ヶ月求刑で
 裁判官は、おおむね執行猶予3年をつける。

というようなものでした。
 飲酒運転のあまりの刑の軽さに唖然としていた思い出があります。

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被害者参加制度~参加するための手続き

2007年07月11日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 被害者参加制度は、犯罪被害者が法廷に参加できるという日本の刑事訴訟上、画期的な制度です。
 先週、どのような事件で参加できるのかについて取り上げましたが(→こちら)、今回は、参加するためにはどのような手続きになっているのかを説明します。

1 まず、被害者側から参加の申出をしなければなりません。
 もちろん、被害者本人ではなく、被害者が弁護士に委託をして参加の申し出をすることも可能です。
 被害者の参加は、被害者の権利ですが、被害者が参加しなければ、法廷が開けないということではないのです。
 ですから、その権利を使うためには、被害者側から申出をしなければならないという仕組みになっています。

2 参加の申出は、検察官に対してします、
 参加を許可するのは、裁判所ですが、まず検察官に対して申出をして、検察官が許可が相当かどうか意見をつけて、裁判所に回す仕組みになっています。
 これは、被害者が参加するには裁判所の許可が必要なのですが、裁判所は起訴されたばかりの時は、事件の詳細な内容がわかりませんので、事件の詳細をしっている検察官に意見をださせることにしたものと思います。

3 参加は、裁判所が相当と認めるときに許されます。
 条文上、申出をすれば必ず参加できるという規定にはなっていません。
 法律上は、「相当と認めるときは、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする」というような規定になっており、非常にあいまいです(もっとも、このような規定というのは法律上しばしば見受けられます)。
 何をもって「相当とする」のかは、法律が施行されてからの運用次第です。

4 いったん参加が認められても、裁判所は、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができるとされています。
 これはどういうケースを念頭に置いた規定なのか、よくわかりませんが、ここからも被害者が参加できるのが裁判所の裁量の範囲内にあることがおわかりいただけるかと思います。

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被害者参加制度~参加できる事件

2007年07月02日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 犯罪被害者の刑事裁判への参加等ができるようになる刑事訴訟法の改正などが成立し(2007年6月20日)、この改正が2008年12月までに施行されることや、この被害者参加制度がどのような意味をもつのかについては、既に、過去記事「被害者参加制度(改正刑事訴訟法)の成立」で書いたのですが、被害者参加制度というものは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

 被害者は、これまで刑事裁判に当事者として参加できませんでした。
 「当事者として参加できない」ということは、実際には法廷を傍聴するしかできなかった、発言しようと思っても、自分から主体的に発言することはできなかったということです。

 これが今回の改正によって可能となります。

 ただ、あらゆる事件に適用されるというわけではありません。
 このブログは交通事故関係なので、その関係だけにしぼりますと、
  危険運転致死傷
  自動車運転致死傷
は参加することが可能です。
 しかし、道路交通法違反事件だけの事件、たとえば、無免許運転・酒気帯び運転・酒酔い運転・救護義務違反といった事件については、被害者参加をすることができません。

 このように被害者参加できな事件があるということは、たとえば、このようなケースが生じる可能性があります。

 たとえば、無免許、酒気帯び自動車を運転していた人が、被害者をはねて死亡させたという場合、犯罪としては
 1 無免許・酒気帯び運転
 2 自動車運転致死
というものが成立する可能性がありますが、捜査の結果、加害者には過失がない(たとえば、被害者がいきなり飛び出してきたので避けることが不可能だった)と検察官が判断した場合、検察官は、
 無免許・酒気帯び運転
のみで起訴し、
 自動車運転致死
は不起訴にすると思います。
 このケースでは、無免許・酒気帯び運転のみが起訴されているため、被害者参加はできないということになります。

 つまり、被害者参加できるかどうかは、検察官がどのように起訴されるかによって決められてしまうことになります。

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被害者参加制度(改正刑事訴訟法)の成立

2007年06月25日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 2007年6月20日、犯罪被害者の刑事裁判への参加等ができるようになる刑事訴訟法の改正などが成立しました。
 この改正は2008年12月までに施行されます。

 今回の改正は、犯罪被害者の刑事裁判への参加という道を開いたもので、意義深いものです。

 もっとも、刑事裁判への参加自体が、かえって被害者を傷つけるのではないかという懸念の声も被害者側から出されていたところでして、今後どのような運用になるのかということが問題です。

 しかも、犯罪被害者の参加ということになりますと、主体はあくまでも犯罪被害者(又はその委託を受けた弁護士)ということで、個々の犯罪被害者が自分で参加するのかしないのか、参加するとしてどのような権利をどのように行使するのかということを考えていかなければなりません。

 しかも、刑事裁判は、犯罪被害が起こって比較的早い段階で行われるものであり、その段階で十分な準備を行うことができるのかどうか、かえってそれを行うこと自体が被害者のストレスを高めてしまうのではないかという問題も、場合によっては生じうるのではないかと思います。

 その意味では、犯罪被害者サイドの弁護士の役割は重大なものとなり、今回お改正についての十分な知識の吸収が必要ではないかと思います。

 今後このブログでも改正の内容については、少しずつでもお伝えしていただければと考えています。

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交通事故事件における刑事記録の入手方法

2007年06月13日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 交通事故の事件を依頼されますと、どのような交通事故が起きたのかを把握するため、刑事事件の記録はまず真っ先に取得するようにしています。
 刑事記録については、被害者の方ご自身でも取得することが可能ですので、その取得方法についてご説明いたします。

 まず、刑事記録を取得できる時期ですが、
ア 刑事事件の処分が確定している場合
又は
イ 起訴されて正式裁判になっている場合
です。
 刑事事件の処分が確定したというのは、
・不起訴処分になった
・略式罰金になった
・正式裁判になって刑が確定した 
というような場合をいいます。
 まだ、捜査中である場合は、刑事記録は開示してもらえません。
 
 刑事事件が今、どのような状況になっているのかは次のように調べることが出来ます(被害者の方又はご家族に限ります)。

ア 事件を担当した警察に電話して、「検察庁に事件を送致しましたか、送致したのであれば、何月何日にどこの検察庁にしたのですか」と聞きます。
イ 送致された検察庁に電話して、刑事処分がでたかどうか聞きます。
ウ 刑事処分が確定していれば、刑事記録を見ることが可能です。
 
 被害者等通知制度の申し込みをしていれば、どのような刑事処分がでたかは書面で回答してもらえますので、まだ捜査中であるという回答をされた場合は、被害者等通知制度(→参照、過去記事)を申し込まれることをお勧めします。

 記録の開示の範囲は、どのような刑事処分が出されたかによって変わってきます。
ア 不起訴の場合
 基本的に実況見分調書だけです。
 実況見分調書の意味については→過去記事

イ 起訴された場合(罰金の場合及び正式裁判の場合)
 裁判所に提出された記録の中から、検察官が許可を与えたものになります。
 加害者のプライバシーに関する事柄(仕事先とか前科前歴など)については、開示されないのが普通です。

 記録を開示してくれる機関ですが、
ア 加害者が成人→検察庁
イ 加害者が少年(少女を含む20歳未満の者)→家庭裁判所
です。

 ほとんどのところでは、一般の方が利用できるコピー機があるか又は業者さんにお金を払ってコピーしてもらいますが、とても地方にある検察庁の支部によっては、一般の人が利用できるコピー機がないところもあります。
 そのような場合には、途方にくれますが、スキャナーなどを用意していかざるをえないのでしょうね。
 なお、このようなところでは、「電源を貸すこともできません」といわれる可能性が高いので(現に、拘置所では弁護士がノートパソコンを使用するための電源を貸してくれません)、バッテリーで駆動するものを持っていく必要があると思われます。

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犯罪被害者通知制度の説明は、まだ徹底されていないようです

2007年06月08日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
被害者にとっては、刑事事件で加害者がどのような処分をされたのかは、とても気になるところだろうと思います。
現在、捜査機関の方で、犯罪被害者通知制度というものが設けられ、加害者の処分結果などについて、通知がなされる制度が整えられています。
(この点については、以前私のブログでも書いたことがありますので、詳細は→こちらの過去記事を参照して下さい)。

 しかし、先日ある被害者団体の集会に、お邪魔させていただいた時に、「加害者がどのような刑事処分をされていたのか通知がなかった」「自分で調べて、ようやく処分結果が分かったときは、既に刑事処分が終わっていた」という声がまだまだありました。

この被害者の方には、犯罪被害者通知制度が機能していないのです。

 なぜなのかと思い、その方達にも、お話を聞いたところ"犯罪被害者通知制度というものがあること自体知らなかった"というのです。

 犯罪被害者通知制度は、被害者が通知制度を申し込む必要があります。
 しかし、その制度を被害にあう前から知っている一般の人はいないわけですから、捜査機関側が
 "犯罪被害者通知制度という制度がありましてね、これを申し込みますと加害者の刑事処分等を通知することになっているのですが、申し込みしますか"
と内容をお知らせしなければ、被害者側が申し込まないで、終わったままになってしまうでしょう。

 刑事処分の通知をもらっていない人は、このような制度があることを知らず、申込むことができないままになってしまっているわけです。
 このように、制度自体知らず、申し込みも出来なかった被害者がいる一方、制度の内容の知らせを受けて申し込みをされ、ちゃんと通知をもらっている被害者もいます。
 つまり、捜査機関の現場で被害者に制度を説明しているところと、していないところがあり、説明しているところでは、被害者通知制度が機能していますが、説明されないところでは機能していないということです。

 捜査機関の犯罪被害者に対する対応には、まだまだ大きな幅があり、各県警ごと、場合によっては捜査担当ごとで犯罪被害者に対する対応にブレが生じる場合がありますので、犯罪被害者が自ら主体的に情報をとるように行動する必要があるのが現状のようです。

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バイクも「自動車」~自動車運転過失致死傷罪

2007年06月01日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回「自動車運転過失致死傷罪」の成立について書きましたが、名称が「自動車」と書いてあるから、バイクは入らないだろうと思う方が多いのではないだろうかと思います。
 
 しかし、バイクを運転していても「自動車運転過失致死傷罪」の適用があります。

 なぜかといいますと、法律上「自動車」には、バイクが入るからです。

 もう少し詳しく見ていきましょう。

 道路交通法上「自動車」というのは、次のように定義されています。

 「原動機を用い、かつ、レール又は架線によらないで運転する車であって、原動機付自転車、自転車及び身体障害者用の車いす並びに歩行補助車その他の小型の車で政令で定めるもの以外のものをいう」(道路交通法2条1項9号)

 非常に法律用語らしい、いいまわしで、一読しただけでは何をいっているのか、さっぱりわからない文章の典型だと思います。

 この条文をかみくだくと
1 原動機を用いる→エンジンを使用する
2 レール又は架線によらないで運転する車(=電車)は除く
3 その他原付バイクなども除く
ということになりますので、中核は「原動機を用いる」だけで、あとは「自動車」にあてはまらないものを並べているだけということがわかります。

 バイクはエンジンで動きますから、「原動機を用いる」ということで、「自動車」の定義の中にはいってきますが、「自動車」ということになるわけです。

 このように、バイク運転の方にも「自動車運転過失致死傷罪」の適用があります(なお、法務省サイドの見解では原付バイクも同罪の適用があるということですが、道路交通法上の「自動車」の定義からは導き出せないので、私としては法務省の解釈に疑問があるのですが)。

 では、日常用語の意味での自動車を法律上はどう表すのかといいますと、
  「四輪以上の自動車」
という言い方をします。

 現に、危険運転致死傷罪という、業務上過失致死傷よりもはるかに法定刑の重い犯罪には、この表現が使われていました。 
 使われていました、と過去形で書きましたのは、この危険運転致死傷も今回の法律改正で、法律上の「自動車」、つまりバイクを含める形で改正されたからです。
 
 参考までに改正前の危険運転致死傷の条文を記しておきますので、興味のある方はお読みください(これも、いかにも難解な法律の条文でわかりにくいと思いますが)

(危険運転致死傷)
刑法 第208条の2

アルコール又は薬物の影響により正常な運転が困難な状態で四輪以上の自動車を走行させ、よって、人を負傷させた者は十年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。その進行を制御することが困難な高速度で、又はその進行を制御する技能を有しないで四輪以上の自動車を走行させ、よって人を死傷させた者も、同様とする。

2 人又は車の通行を妨害する目的で、走行中の自動車の直前に進入し、その他通行中の人又は車に著しく接近し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、前項と同様とする。赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で四輪以上の自動車を運転し、よって人を死傷させた者も、同様とする。




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「自動車運転過失致死傷罪」が成立

2007年05月30日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 「自動車運転過失致死傷罪」という新しい犯罪が5月17日の国会で成立しました。

 今まで自動車を運転して事故を起こし、被害者に怪我を負わせたり、死亡させたりした場合は、
 「業務上過失致死傷罪」
という犯罪で処罰されていました。 

 この犯罪は刑法の211条1項にあります。
 条文をあげておきます。

 業務上必要な注意を怠りよって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。重大な過失により人を死傷させた者も同様とする。

 この条文の中の最初の方の1文、
 ”業務上必要な注意を怠りよって人を死傷させた者は、5年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する。”
が業務上過失致死傷罪です。後半の方は、重過失致死傷罪といって別の犯罪です。

 ところで、この中には自動車という言葉は一つもでてきませんが、自動車運転は「業務」だと解釈され、それで自動車運転で事故を起こした場合は、業務上過失致死傷罪となるということで運用されてきたのです。
 
 しかし、これだと刑が軽いという世論が起こり、厳罰化政策の一環として、自動車運転の場合には、新しい犯罪類型、自動車運転過失致死傷罪が作られました。

 これも条文をあげておきます。
 さきほどの、業務上過失致死傷は刑法211条1項にあるのですが、その2項が次のようになりました。

2 自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、7年以下の懲役若しくは禁錮又は100円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。

このように法定刑があがりました。
 業務上過失致死傷では、
  懲役か禁錮だと5年以下、罰金だと50万円以下
だったのが、
 自動車運転過失致死傷では
  懲役か禁錮だと7年以下、罰金だと100万円以下
になっています。

 この犯罪が適用されるのは、公布から20日後となっているので、6月中旬からになりそうです。




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”被害者が軽傷である”は正しいか

2007年05月02日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 前回、業務上過失傷害事件について、被害者が軽傷の場合は検察官は不起訴処分(起訴猶予)にすることが多いということを書きましたが、今回はその問題点です。

 最も問題であると私が感じているのは、
”被害者が軽傷である”
ことが正しいのか否かです。

 警察や検察という捜査機関が軽傷であるかどうかは医師の診断書をもとにしています。
 しかし、医師の診断書をとり続けるわけではありません。
 事故の被害にあった方は、医師の診断書を警察に提出するように言われたことがあると思いますが、この事故が起こった後すぐの診断書で判断されてしまうのがほとんどだといってよいでしょう。

 事故にあって、まず病院に行き、そこで診断書が「全治2週間」となっていれば、警察は軽傷の事案と判断しますし、検察官だって同じです。
 ところが、この「全治2週間」はあくまで最初に行った病院の最初の診断であり、その後、怪我の治療が長引くこともありますし、後遺障害が残る場合もあります。最初の時は気がつかなかった傷害が後でわかる場合もあります。

 私の担当したケースでも、当初「全治2週間」と診断されながら、自賠責の等級で2級の後遺障害が残ったという方がおりますので、最初の診断書だけだと適切な判断をされない可能性があるという意識が強くありますが、多くの警察・検察はその後の被害者の怪我の状態を確かめないことが多く、最初の診断書1枚でその後の手続きが進められてしまいます。

 このような状態を防ぐには、被害者が加害者の刑事事件の状況がどうなっているか、自分の怪我が長引いているのであれば、その診断書をとって検察官に提出するするということで対応するしかありません。
 検察官によっては、被害者の状況を確認していく方もおりますが、膨大な数を処理している検察官にすべてを期待しない方が賢明です。
 
 日本人は、警察・検察というと正義の実現者のように考えておられる方が多いのですが、残念ながら、警察・検察といえども所詮は我々と同じ人間が動いており、また、あくまで彼らは公務員であって、役所の中で生きている人たちですから、それぞれの限界というものがあるということは、念頭に置かれておいた方がよいかと思います。

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刑事事件の処分では当初の診断書が重視されている

2007年04月30日 | 交通事故刑事事件の基礎知識
 先週は、刑事事件での検察官の不起訴処分にまつわる話をかいたところ(先週の記事はこちらです)、これをご覧になった方が、この方法で検察官から不起訴理由を書面で取得したというご連絡をいただきました。

 その理由というのが、「業務上過失傷害罪は成立するが傷害の程度が比較的軽度である」ということでした。

 日本では検察官が、被疑者(犯罪を犯したという疑いをもたれている人)を起訴する権限をほぼ独占しています。
 しかし、検察官はすべての被疑者を起訴するわけではありません。
1 犯罪が成立しない又は証拠で立証できない
ものについては、起訴のしようがありませんので、起訴せず、不起訴とします。

 犯罪が成立するものについてもすべて起訴するのではなく、
2 起訴する必要性がないというとき
は、起訴しなくてもよいという権限を検察官に与えています。
 これは、刑訴法248条に根拠がありまして、
「犯人の性格、年齢及び境遇、犯罪の軽重及び情状並びに犯罪後の状況により訴追を必要としてないときは、公訴を提起しないことができる」
という条文となっています。

 先ほどの
「業務上過失傷害罪は成立するが傷害の程度が比較的軽度である」
というのは、
1 業務上過失傷害罪という犯罪は成立するし、証拠で立証もできる
2 しかし、傷害の程度が比較的軽微であるので、業務上過失傷害罪としては軽い部類に入るから起訴しない
という考えであるといえるでしょう。

このような不起訴の仕方を、
 ”起訴猶予”
といいます。

 交通事故犯罪である業務上過失傷害は年間相当な件数が起きていますから、これをすべて起訴したら、検察や裁判所の処理容量を超えてしまう、また、業務上浄化室傷害とはいえ起訴されて有罪となれば前科となりますから、国民の多くが前科をもつことになる、そんなことを避けたいために軽傷事案については、検察官は起訴猶予(不起訴)にすることとなっています。

 はたしてそれがよいのかどうか、その政策がどのような影響を与えるかについては、次回にも考えていきたいと思います。


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