10月26日。ジャパンタイムズに載っていた「特定秘密保護法」に反対する社説を読んで、FBに友達が貼っていた日本の女性活動団体へのリンクを辿って日弁連の反対弁論も読んで、やっと初めてこの法律の内容が少しわかって来た。なるほど、アメリカ(オバマ君?)が「一緒に遊びたかったら、ちゃんと秘密を守れよ」と言うもので、アベ君が「はい、そうします」と腕まくりをしたわけか。でも、これはあんがい表向きの「建前」で、アメリカをダシにして、実は国内での情報統制を図ろうとしているんじゃないかと思うだけど、どうなんだろうな。
最近国家機密が漏れっぱなしで赤っ恥のかき通しアメリカが他国に秘密を守れと要求するのは皮肉だけど、The Economist誌によると、日本政府の秘密保持体制があまりにもお粗末なもので、アメリカも他の友好国も日本には何も知らせないことが多いんだそうな。でも、いくら日本で秘密を守るための法律を作っても、アメリカ経由で漏れたらどうしようもない。せいぜいアベ君が「遺憾である!」と声明を出すくらいかな。もっとも、敵から国を守るためには秘密は必要なものだし、外交では国際交渉の武器にもなるものだから、法律で守られて当然の必要悪だと思う。アベ君の秘密保護法が問題なのは、(公務員も含めて)日本国民が「国民の不安をあおり、公共の秩序を害する」ような情報を他の日本国民に知らせないようにすることにまで範囲を広げているという点ではないかと思う。
だとしたら、日本国民はうまくしてやられたということになるけど、原発ほどには反対運動が盛り上がっていないように見えるのはどうしてかな。取材の自由を制限されるかもしれない新聞に反対運動の報道がほとんどないのはどうしてかな。アメリカに押し付けられたと思うんだったら、反米デモのひとつやふたつ起きても良さそうなもんだけど、それも聞かないな。どうしてかな。もしかして、アメリカにはムカつくけど、韓国や中国から日本の国益を守るのに必要だから、とりあえず目をつぶろうということなんだったら何をかいわんやだけど、排外思想はけっこう選択的なもんだから・・・。
まあ、平和憲法と同じようにアメリカの押し付けで作らされた法律と印象付けておけば、不都合が起きても「アメリカに作らされたんだもん」と口をとんがらせればいいわけで、アベ君にとっては好都合だろうな。(それにしても、アメリカって国はほんとに「都合のいい女」みたいなお人よしだな。)アベ君は反対する連立パートナーを宥めるために「国民の知る権利の保障に資する報道または取材の自由に十分に配慮しなければならない」という一文を入れたそうだけど、「十分に配慮」って、どれだけ配慮すれば十分なんだろうね。「十分に配慮したけど、やっぱり秘密にしとくことにしたよ」となるのかな。
どの国も諜報機関や盗聴機関があるし、国家存立の根底に関わる機密を保護する法律が普通にある。カナダにもCSIS、CSECといった機関と、Security of Information Act(情報保護法)という法律があって、ワタシもその旧法(Official Secrets Act)の下で宣誓して警察機関に勤めた関係で、生涯この法律が適用される。採用のときには指紋を登録させられて、徹底した身元調査をされた。カナダ大使館から警察庁を通じて日本の家族も調査されたはずで、機密取り扱いのクリアランスが出るまでの4ヵ月近くは採用されたポジションの業務とは無関係の受付と電話交換をやらされていた。もっとも、ワタシが勤務していたのは(スパイがやるような盗聴や隠密捜査はやっていたけど)諜報機関じゃないから、国の存立に関わるような秘密には縁がなかったけど。
政府による過剰な秘密保護を抑制するために、カナダには30年前からAccess to Information Act(情報アクセス法)という法律があって、これを補完する形でPrivacy Act(プライバシー法)というのがある。前者はメディアが政府が持っている情報を請求するのに活用している。政府はこれはダメという部分を塗り潰すことができるけど、メディアは開示された資料があまりにも真っ黒だと政府は何を隠しているんだと書き立てるし、議会では野党が追及して来るから、なぜ隠しているのか釈明するはめになる。(それでもしょっちゅう真っ黒に塗りつぶした莫大な資料を出して来るらしいけど。)後者の法律では、個人が政府が持っている自分に関する情報を請求することができる。政府が四の五の言って拒否したら、Privacy Commissioner(プライバシー保護官)に訴えればいい。
これだけの法律があっても、カナダ市民の知る権利を守る上では完璧にはほど遠い。まあ、完璧な制度などないし、少なくとも「チェック・アンド・バランス」としてある程度機能していると思う。日本のアベ君は何が何でも秘密保護法を押し通すつもりらしいから、秘密保護の行き過ぎや濫用を牽制できる法律の制定を要求する運動を起こすのが次善の策じゃないのかな。でなければ、次の総選挙で別の政府を選んで、国民のためにならない法律は改正させるか、廃止させるかすればいい。それが民主主義というもので、日本だって民主主義の国なんだから、日本国民ががんばって守らないとね。放っておくと、韓国や中国、ロシア、テロリストetc.(ついでにアメリカとヨーロッパ)の脅威から日本を守り、日本国民の不安を取り除くためだと言って特別警察を作り、政治秩序を維持するためだと言って大政翼賛会を作るなんてことにならないという保証はないでしょうが。
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