仕事のない日が休みの日
3月16日。土曜日。正午過ぎに目が覚めたけど、しばしカレシの腕枕でぐずぐずしていて、起床はほぼ午後1時。ゆうべ(とうか午前3時)、かじりつく勢いで仕事を仕上げて、アメリカ東部にいる校正者に送って、やったぁ~!何とか期限に間に合って、手持ちの仕事がゼロ。フリーランス稼業は仕事のない日が休日。今日はその仕事のない日。
めでたく「休み」になった日は、やることいっぱい、やりたいこといっぱいなのに、いつも1日だらだら。それっ、休みだっ、と気分を切り替えるのが難しいんだなあ。まあ、おいしいものでも食べようと思って、カレシに何が食べたいか聞いてみたら、
「とんかつ!」
ええ、また~?でもまあ、きのうのランチはカップ麺だったりして、ちょっと手を抜きっぱなしだったから、じゃあ、とんかつ。今日の「とんかつ定食」は、ヒレカツに大根おろしとポン酢ソース、ひじきの煮物、八穀米ご飯。キャベツをどっさり刻んで、お代わりは無料サービスで~す。日本でとんかつやフライにあたりまえに付いて来る刻みキャベツ、大根おろし用にポン酢を薄めたソースをドレッシングにすると、もりもり食べてしまうくらいおいしくなる。さて、食後のおなかが落ち着いたところで、
「おい、そろそろ酒屋へ行くぞ」。
え?まだホッケーの試合やってるんじゃないの?
「また負けてるから見る気がしないよ。ど~しょ~もない連中だ」。
ということで、まずは酒屋。トラックででかけて、ハウスワインにしているStarboroughのソヴィニョンブランを1ダース、肉料理用の赤ワイン4本(カレシはボルドーが好きで、ワタシはローヌが好き)。レミは何日も切らしていた反動で2本。あとはスコッチにジンにウォッカにアルマニャック、ベルモット、その他・・・。
州の酒類販売局が出している雑誌「TASTE」の春の号もピックアップ。初めは薄っぺらな雑誌だったのが、今では180ページもある豪華な季刊誌。ワインとマッチしたグルメレシピ満載で、おまけに切り取れるレシピカード16枚。本屋で売ったら千円くらいしそうだけど、これがなんとタダ。(民営化の話が出るたびにサービスが良くなる・・・。)
ランチをしながら、おしゃれなオードブルの写真なんかを眺めて、再来週の復活祭にはどんなご馳走を作ろうか?と、お2人さまの家族会議。いいねえ、こういう休みの日。
みんな1日アイリッシュ
3月17日。日曜日。うわっ、いい天気。まさにパレード日和といったところ。
今日は世界中の人が1日だけアイリッシュになって浮かれ騒ぐ「セントパトリックスデイ」。もちろんお膝元のアイルランドおダブリンでは何日もかけて盛大なお祝い。パレードの道筋は目抜き通りのグラフトンストリートかな。「何でアイリッシュでもカトリックでもない人たちガ世界中で大騒ぎするの?」と、ダブリンっ子。ギネスやアイリッシュビールをおおっぴらに飲んで騒げるからじゃないの?緑色のビールを出すパブもあるそうだし・・・。
昔ジャガイモ飢饉のときにアイルランド移民がたくさん入ったニューヨークのパレードはメイシーズの感謝祭のパレードに匹敵するくらい賑わい。アメリカのブラスバンドはすごくテンポが速くて、躍動感がある。シカゴではダウンタウンを流れるシカゴ川を緑色に染めてしまう。(河畔のワッカードライブ沿いのスカイラインはすてきだったけど、川の水の色は澱んで見えたな。でも、今日のこの日だけは鮮やかな緑色になる。)バンクーバーでもパレードがあるし、お祭りの好きな日本人が放っておくはずがないから、きっと東京でもパレードをしたのかな。アイルランドの守護聖人聖パトリックもさぞかしびっくりだろうな。
私たちはアイルランドには2度行った。最初はウェールズから夜行のフェリーでコーク(フェリーのターミナルはリンギスカディというところにあった)、そしてレンタカーでキラニーへ。(左側通行の感覚がつかめるまでちょっとドリフトしたり、いきなり慣れないロータリーで間違った方向に出てしまったり、ずいぶん冒険したなあ。)ヨーロッパ最西端のディングル半島はゲール語地域で、人里離れた道で通りがかったおじいさんに話しかけたら、英語がうまく通じなかった。なにしろ、標識までゲール語だけだったりするので、ワタシはゲール語の交通用語を見覚えてしまったっけ。
車1台分の幅しかないつづら折の道を行くと、路面にSLOW(スピード落とせ)と大書。しばらく行くと今度はSLOWER(もっと落とせ)。もっと行くとVERY SLOW(徐行)と書いてあって、え、え、え?と思ったら、ヘアピンカーブ。かと思うと今度はGO MALLと書いてある。英語で読むとモールへお買い物になっちゃうけど、ゲール語では「ゆっくりと」の意味。対向車が現れたらどうしようとひやひやしっぱなしだったけど、一度も現れなかった。史跡の「ガラルスの礼拝堂」。小さなかまぼこ型の石組みの礼拝堂。外に磨り減ったケルト十字架が1本。見渡す限り私たち2人だけ。ときおり空で鳥の声。風が吹きぬける音。遠くでかすかに大西洋の荒波の音。いくら耳を澄ましても、聞こえてくるのは自然の音だけ・・・。霧に包まれたディングル半島は道東からオホーツク海にかけての風景によく似ていたな。
2度目のときはロンドンから空路コークへ。前回フェリーで入ってきたときに見えたプチフールのようにかわらしい町並みを見たくて、鉄道でコーヴへ。コーヴは昔クィーンズタウンと呼ばれていて、死者100万とも150万とも言われた17世紀のジャガイモ飢饉の後で大勢のアイルランド人がアメリカに活路を求めて移民して行ったところ。駅で切符を買うのに手間取って発車時間に間に合わないとあきらめたら、ホームから離れない電車のそばで2、3人がしきりに手招き。え?私たちを待っていてくれてるの?それっと百メートルダッシュでホームに駆けつけて乗り込んだら、乗っていた人たちはみんなにこにこ顔。電車は3、4分遅れて発車したけど、何とも大らかな人たちだと感激。
ああ、もう一度アイルランドに行きたいなあ。キラニーで2度ともお世話になったアイヴォリー夫妻は元気でまだB&Bをやっているのかな。なつかしいね。アイルランドの写真、どこにしまってあったかな。思い出話をしながら、ジェイミソンのグラスで、ハッピーセントパトリックスデイ!
スウェーデンのラブストーリー
3月18日。月曜日。好天。カレシはごみ収集トラックの轟音で目が覚めて、眠れなくなったと言って、午前10時半に起床。ワタシはもうひと眠り・・・というか、午前11時半までうとうと。何か中途半端・・・。
カレシは予定していた通り、今日は庭仕事。電動のミニ耕運機でガリガリ、ゴリゴリと前庭の掘り起こし作業。ポーチの横で私の目の高さに突き出して来ていたライラックの枝を切ってくれた。これで、夜、そばを通っても安心だな。ワタシはきのう飛び込んで来た仕事。テーマパークだって。日本にはテーマパークが多いような印象。まあ、固有名詞が多くて、ググればわかるから楽ではあるけど。
今日の郵便はMacLean’sとEconomistの雑誌2冊。Economistの最後のページには最近亡くなった有名人の経歴の記事があって、今週号はスウェーデン国王の叔母さんのリリアン妃。先週97歳で死去。Princessの称号だから日本のメディアは「王女」と呼んでいたけど、「王女」というのは国王や王族の娘。スウェーデンの王子と結婚したリリアンさんは「妃殿下」というのが妥当かな。ま、スウェーデンでは娘でも王子の妃でも称号はPrincessだから、英語なら問題なしか。それにしても、リリアン妃と故バーティル殿下の愛の物語はまるで映画のストーリーみたい。
当時の皇太子が事故死しなければ、バーティル殿下は規定通りに王室を出て結婚したんだろうな。でも、残された王子(今の国王)がまだ1歳で王室を出るわけにも行かず、リリアンさんは33年間も日陰の身で過ごし、ようやく現国王の許可が出て結婚できたときは2人とも60代になっていた。その間2人は子供もあきらめたそうだけど、これが愛というものなんだろうなあ。深く愛し合っていなければできないことだと思うもの。現国王のドイツの平民出身のシルヴィア王妃とは大の仲良しで、その子供たちにも慕われていたとか。ヴォーグのモデルだったと言うだけあって、老いてもきれいで、写真を見ると、ちゃめっ気のある若々しい目がすごくすてき。
王室となるとかのスウェーデンにもそういう古めかしい規範が残っていたというのはちょっと驚きだけど、次世代はと見ると、スウェーデンはジムのトレーナー、ノルウェイはシングルマザー、デンマークはオーストラリア人のコンサルタント、オランダはアルゼンチン人の投資銀行家、スペインはジャーナリスト、イギリスは実業家の娘、日本は外交官、というぐあいにみんなちゃんと平民と出会って、恋をして、結婚しているのは時代を反映しているんだろうな。だって、今どき平民はアウトなんていってたら、運悪く?王位継承者に生まれた人は結婚できなくなってしまいそうで、それこそお家断絶の危機・・・。
ちなみにスウェーデンの現王室はペルナドット家といって、跡継ぎがいなくなったときにフランスからナポレオンのライバルだったペルナドット元帥を養子として迎えてカール十四世として据えたのが始まり。王妃になった妻のデジレはナポレオンの相愛のフィアンセだったのが、ジョゼフィーヌの出現で捨てられて、ジャン・ベルナドットと結婚したという話が残っている。スウェーデンでの生活になじめなくて子供を連れてパリに帰ってしまったそうで、ロシア皇帝が一人暮らしの夫に「縁談話」を持ちかけて断られたとか。王妃になってからはスウェーデンに戻って終生国民に愛されたそうだけど、実は死ぬまで秘かにナポレオンを愛し続けたらしい。(昔マーロン・ブランドーとジーン・シモンズ主演の映画(『Désirée』(邦題は『王妃デジレ』?)があったな。)
それでも、「隠し妻」として33年。バーティル殿下に王妃デジレの熱情が生きていたのかもしれないけど、第二次大戦中の出会いからバーティル殿下が亡くなるまで、50年以上も文字通り陰になり日向になりして連れ添って、添い遂げたってことだよねえ。これが愛というものかと、じわ~っと感動してしまうな。
変えてばかりでいつもきれいな心
3月19日。火曜日。今日もまあまあの天気。カレシは庭仕事、ワタシは商売の仕事。
ワタシとカレシはそれぞれ専用ルータを持っていて、別々のWi-Fiネットワークがある。ワタシのが常時オンになっているもので、プリンタをこっち経由でシェアしようということになって、いつも「できる!」と主張するカレシが例によってああだこうだ。どうしてもダメで、かんしゃくを起こす寸前にギブアップ。プロに設定してもらうことになった。
それが金曜日。最初の予定は月曜日にダウンタウンへ行って、カレシはStaplesでプリンタの相談、ワタシは脱会した翻訳協会へ公証印の返却。ついでに新しいオーブンを見に行く。(方向がぜんぜん違うじゃないの。両方なんか行けっこな~い。)
土曜日。予定変更1回目。オーブンはすぐにいるもんじゃないから、月曜日はプリンタと公証印の件を片付けて、ついでにタブレットの下見をして、Hマートで買い物をして来る。
(ダウンタウンに車を止める気かな・・・?)
日曜日。予定変更2回目。月曜日と火曜日は雨の予報が出ていないので庭仕事デイとする。よって、ダウンタウン行きは水曜日に延期。日曜日の夜、日本は月曜日の午後で、ぽこっと仕事が飛び込んできたから、小さいものをささっとやっつけて送ってしまう。残りは月曜日と火曜日で終わらせて、水曜日を空けておく・・・と。
月曜日。予定変更3回目。水曜日のダウンタウン行きは変わらず。野菜がなくなるので、車はWhole Foodsの駐車場に止めて、地下鉄でダウンタウンへ。プリンタと公証印の件を片付けてから、タブレットの下見をして、ブロードウェイ界隈に戻ってWhole FoodsとSave-Onを掛け持ちの買出し。ついでにBest Buyでタブレットの下見。(午後だけでそんなにあれもこれもやれるわきゃない。)「遅くなりそうだから、どこかでご飯を食べてもいいな」。(あ、そう・・・。)
そして今日。予報の通りに夕方から雨。家に入って来たカレシはかすれた口笛を吹きながらうろうろ。ふむ、ワタシには仕事があるのに(あるから)予定を変えて振り回したもので、「ボクのこと、怒ってないよねえ」という「かまってちゃん」モードだな。でも、うるさいから無視して、ひたすら仕事に神経集中。おかげで近頃なかったくらい猛烈な勢いではかどって、ゆうべ飛び込んできた豆仕事もまとめて、ぜ~んぶ完了。
それにしてもまあ、カレシの心変わりは秋空の乙女心の比じゃないなあ。曰く、「いつもチェンジしてるから、オレの心はいつだってクリーンなんだよ」。あっ、そ・・・。
お出かけ疲れか、買い物疲れか
3月20日。水曜日。雨が降っているはずだったのに、目が覚めたら晴れ。きのうは予報の通りに夕方に雨が降り出したもので、なかなか正確だと感心していたカレシ、「褒めるのが早すぎたな」と。でも、雨、降ってないけど、出かけるよね、今日は?
朝食をして、カレシがな~んかまたどたチェンしたそうな顔。どたチェンはダメよとオーラを出しつつ、今日の郵便をチェックするワタシ。あは、会計事務所から所得税申告のお知らせ。てことは、来週また書類を持ってダウンタウン行きか・・・。
「Best Buyで買いたいものがあるから、プリンタのことも聞いてみようと思うんだ」。
そうねえ。公証印は今日じゃなくてもいいし、来週また税金申告の書類を持って行かなきゃならないしねえ。
「それに、今日は起きるのが遅かったもんな」。
そうねえ。もう1時半だもんねえ。じゃあ、ダウンタウンは省略する?
「そうした方がいいと思うよ、オレとしては」。
そうねえ。Best Buyと、Whole Foodsと、Save-Onと、でしょ・・・。
「それと、Home Depot。小さい鋸を買いたいから」。
あらら、4ヵ所となると、ちょっとしたショッピングツアー。まあ、どの店も2ブロック四方にまとまってあるから、買い物は便利すぎるくらい便利。トートバッグをどっさり積んで行って、空いていたメーターに車を止めて、2時間分のコインを入れて、時間切れになりかけたらコインを足して、車と店の間を行ったり来たり・・・。
どの店も広いから、2人とも、どっちかが買い物をしている間にてんでな方向にぶらぶらと行ってしまうので、互いに行方不明。互いにうろうろと探し回るから、まさに動く標的を狙うようなもの。
「何をお探しですかぁ~?」と、Best Buyでは元気のいい店員さん。
ええ、主人がどこかに消えてしまったみたいで・・・。
「そうなんですよ~。ここ、お客サマを吸い込んでしまうんですよねえ」。
そうねえ。男の人にはおもしろそうなものがたくさんあるものねえ。
「そうなんですよ、ほんとに」。
でも、吸い込んじゃっても、そのうちに吐き出してくれるんでしょうね?
「それはもちろん!」と、レジの方を見るおねえさん・・・。
急に曇って降り出した雨の中を帰りついたら午後5時半。ああ、くたびれた。お出かけ疲れなのか、散財疲れなのか、2人ともくたびれたなあ、今日は。
文字が全部あるキーボード
3月21日。木曜日。午前11時30分に目覚まし。気温がちょっと低めらしいけど、今日もいい天気。道路向かいの桜もだいぶ咲いて来た。(窓越しにちょっとズームインして・・・。)[写真]
朝食後、英語教室午後の部に出かける準備をしていたカレシ。「印刷できない。キミのでやってくれ~」と。急いでワタシのPCを起動したけど、運悪く寝る前にWindowsの自動アップデートがあったので立ち上がりに時間がかかる。カレシは「遅刻だ、遅刻だ」と、不思議の国のアリスの白うさぎみたいにおろおろ。教材をゆうべのうちに印刷する暇がなかったの?「忘れた。いつも忘れるんだよ」。はあ。(高齢者の3割が死ぬときには(死因ではなくても)認知症にかかっているという話だけど、アナタ、だいじょ~ぶ~?)印刷できた紙をひったくって、ジャケットを着るのもそこそこに飛び出して行ったけど、ほんと、大丈夫なのかなあ・・・。
ワタシはきのうBest Buyでカレシを待っている間に思いついて買った新しいワイヤレスのキーボードとマウスの設定。といっても、買い換えるたびに小さくなって、とうとう豆粒のようなサイズになったドングル(レシーバー)を裏のUSBソケットに差し込むのにひと苦労したけど、マウスもキーボードもすでに電池が入っていたのにはびっくり。ぺらぺらと出している絶縁テープをえいっと引き抜いて、スイッチをオンにするだけ。いつもこうだといいのに。ドライバをダウンロードしているのか、しばらく「アップデート中」みたいなメッセージが出ていて、やがて「再起動して、ど~ぞ」。はいはい。
新しいキーボードはLogitech。キーの上の文字が真ん中にあるのが気に入った。(CapsLockのキーの隅っこにちいっちゃな表示ライトがついているのもうれしい。)いつも3ヵ月くらいから文字が消え始めるので、今度は並んでいる商品のキーをためつすがめつ。マイクロソフトのキーボードの文字はやっぱりいかにもキーに「貼り付けた」という感じ。よく観察すると、文字を四角いキーの左上隅に貼ってあるから、打つときに爪の先が当って削れるのかもしれない。いつも右側の手前のキーから、しかも文字の右下部分から消え始めるのも、指の動きの方向と関係がありそうだな。Logitechのは、これもたしかに貼ってあることには変わりがないけど、キーの中央なので爪はあまり当たらない。少しは長持ちするといいな。
ハワイでの会議に今月中に登録しないと早期割引が適用されなくなるので、とりあえずワタシの分だけ登録して、参加費の支払い手続きを済ませて、午後5時が期限の仕事にかかる。めずらしく行楽関係だから、どっさり送られてきた資料の写真を見ながら、ちゃかちゃかと仕上げる。写真で見る限りはすごいところだけど、ワタシ好みとは言えないな。子供がいなかったせいかもしれないけど、テーマパークや遊園地の類にはあまり興味がわかない。昔、北海道に『赤毛のアン』をテーマにした「カナディアンワールド」とかいうところ(今でもあるのかな?)に行ったことがあって、そこでトーテムポール彫りの実演をしていたおじさんが、ワタシたちがカナダから来たと知って、「それらしく見えるかい?」と聞いてきた。丸太はまっすぐじゃないし、何よりもプリンスエドワード島の先住民はトーテムポールを作らない(だからこのおじさんもどんなものかよく知らない)んだけど、カレシと声をそろえて「よくできてるよ~」と返事。それ以来テーマパークなんてものはあんなもんだと思っているので、よけいに興味がわかない。ま、仕事となれば話は別で、興味も何も関係ないんだけど・・・。
新しいキーボードの手ごたえは上々。マイクロソフトのよりも重いので、使っているうちに左右に滑ることがない。(画面の中心とキーボードの中心が合わないと打ちにくい。)新しいマウスも手にぴたっとなじむ感じで、すべりも良くて使い勝手は上々。衝動買いして正解だったな。余裕で期限に間に合って納品。カレシを英語教室夜の部に送り出すために、早めに食事のしたくをしなくちゃ。
春の陽気に浮かれて買い物
3月22日。金曜日。今日もいい天気。だけど、何だか眠いなあ。ひと足先に起きたカレシに正午前に起こされたからかな・・・。
ヘアカットの予約があるカレシを送り出して、ワタシはトートバッグを肩にモールへ運動がてらてくてく。気温はひと桁。郊外ではかなり大きな雹が降ったという話だったけど、きのうは我が家のあたりでも急に雹が降り出して、何とも落ち着きのない天気。でも、風が止んだので、空気は冷たくても日差しの下を歩いていると汗が出て来る。桜並木はほとんどが5分咲きに近くなったかな。開花が少し遅めの種類の方はちらほら程度・・・。
ヘアカットとハイライトの予約を入れるつもりで、ジュゼッペとアンナが椅子を借りているサロンに行ったら、あら、2人の姿がない。聞いていてみたら、ジュゼッペは常連の予約が入っているときだけ来て、奥さんのアンナは週4回来るようになったとか。そっか、カレシが行っているアントニオと同じく、ジュゼッペも常連だったお客だけに絞っての「半引退」になったわけか。カットとハイライトを別々に予約するつもりだったので、電話してみようっと。まあ、みんなそういう年令になって来たというわけだけど、年金をもらいながらパートタイム型の働き方を選んでいるようだな。ワタシも、従前の通りに継続する1社と担当分野を特定する1社を除いて、5月1日付で引退すると知らせてあるけど、少しは「半引退」近づけるのかなあ。
郵便局で私書箱を空にして、エスカレータのすぐそばにきのうオープンしたばかりのCrate & Barrelの偵察。去年からず~っと首を長くして待ってた。12月にサンフランシスコに遊びに行ったときも、もうすぐバンクーバーにも開店するからと、買いたいものも買わずに帰ってきた。その店が何と家から歩いて行けるところにオープン。テレビのローカルニュースでキャスターが「もう国境の南まで行かなくても良くなりました」と言ったくらいだから、ワタシと同じように待ちかねていたファンがたくさんいるんだろうな。きのうは朝から開店を待つ人の行列ができたという話だった。
一歩入ってみると、うわっ、広い。思っていたよりもず~っと広い。映画館2つと中華レストランとモールの外側にあった小さな店(ジュゼッペのアンナのヘアサロンも)を全部まとめてひとつの店にしたわけだから、広くてあたりまえか。(調べてみたら、床面積2500平方メートルだそうな。)オープンしたばかりとあって店の中はちょっと込んでいたけど、明るくて、第一印象は100点満点。家具もあるけど、やっぱりお目当てはキッチン用品。食器やグラス、カトラリー、鍋にフライパン、調理器具と、サンフランシスコにあるものは何でもある。壊れるのが心配で、買って帰れなかった小さな器やお皿がたっくさん。でも、今日は偵察のつもりだったので、「これ、欲しい」、「これ、欲しい」は心の中で言うだけにしておいて・・・。
と、そのつもりだったんだけど、やっぱり誘惑に勝てなくて、持てるだけにしておかないと、と諌めつつ、小さい器を2種類4個ずつ、すてきなデザインの小型のオードブル皿を2枚、ついでにチーズナイフのセット。そして、ついに見つけた理想サイズのスロークッカー!量販店やデパートで売っているのは家族用サイズで大きすぎる。やっとめぐり合えたのはカルファロンの4クォート(4リットル弱)サイズ。お2人さま用のポットローストやプライムリブのローストを作れる!欲しい、欲しい、欲しい。だけど、かさばるからひとりで持って帰るのは無理、無理、無理。でも、ここはサンフランシスコじゃないんだよね。いつでも買いに来れるんだよね、今日でなくても・・・。
そうなんだ、歩いて30分足らず。これからはいつでも来れるんだっけ。開店記念の15%オフのうちに運び役にカレシをつれて来よう。でも、ほんっとに開店が待ち遠しかったCrate & Barrelはワタシタイプのファッション店。うきうきとスキップしたい気分で家路についた。(春の陽気に浮かれたのかな?)
コース料理で復活祭の予行演習
3月23日。復活祭まであと1週間の土曜日。このところ立て続けにど~んと食材の買出しをしていたせいもあって、ちょっと手が空いた今日は、久々に(ほんとに久々に)思い付きのご馳走を作ってみたい気分で、モチベーションが急上昇。フリーザーをかきまわして、あれこれ・・・。
今日のメニュー:
アミューズブーシュ(トマトゼリー入りチルドトマトエッセンス)
大西洋サケのみそ味ポケ
シーバスのフライパン焼き、ヘッジホッグきのこのソテー、アスパラガス(蒸)
ラムのコンフィ風メダリオン、赤ベルモットのリダクションソース、
レモンバターライス、フレンチインゲン(蒸)
セルリアックのサラダ、レムラードドレッシング(カレシ特製)
マティニ(食前酒)、白ワイン、赤ワイン、アルマニャック(食後酒)
[写真] 角切りトマトの缶詰をジュースを絞って使うとき、ジュースを捨てずに取っておいて、コーヒーのフィルターで2度くらいろ過したものを冷凍保存しておく。(生のトマトの場合は、つぶしたものを木綿の袋などに入れて、一晩くらいかけて抽出する。)赤いトマトの色はないけど、トマトの「味」が濃縮されていて、冷たいスープを作るのに最適。トマトのパサタを寒天で固めて、スプーンですくったものにバジルの葉っぱを飾って落としたら、予想に反して沈まなかったので、飾りの緑が生きてくれた。きのう買ったオードブルがぺったんこなので、ペーパータオルをはさみでちょきちょきとドイリーに仕立ててみた・・・。
[写真] ポケはまぐろなどを使ったハワイの郷土料理。ここはすし用の大西洋サケをざくざくと切って、ごま油、ラー油、一味唐辛子、醤油、味噌少々で和えて、刻んだねぎを混ぜ、炒った白ゴマをぱらぱら。先々週、Tojo’sで刺身サラダのドレッシングに味噌が使われていたので、さっそく「お試し」。醤油は控えめにして、唐辛子でピリ辛。耳付きの四角い容器はきのう買ってきたもの。
[写真] 普通はひとり分のシーバスの切り身を2つにスライスして、こしょうをがりがり、サリッシュ族の燻製塩をぱらぱら。前のコースが終わるまでスモーキーな塩をなじませる。アスパラガスを蒸している間に、ヘッジホッグきのこ(シロカノシタ)をバターでソテー。カレシの野菜冷蔵庫から失敬してきたトマトをここでも使う。
[写真] こういう小皿料理のコースは軽いものから重いもの、冷たいものから温かいものに進むことが多い。今日の締めはラム。朝食後に骨付きのラムのラックを解凍して、(ミニのスロークッカーでは邪魔なので)骨を取り、脂身を取って、シリコーンのバンドでメダリオンに整え、切り取った脂身や骨と一緒にスロークッカーにセット。赤ワイン、水、オレガノ。後でにんじん、セロリでゆっくり煮込んでいる間に、ルンバでキッチンの掃除。後でボイラーオニオンという玉ねぎを足したら、食べる頃には影も形もなくなっていた。肉に添えるつもりだったのに、何とか使えたのはにんじんだけ。ソースは赤のベルモットを小鍋で煮詰めたもの。炊いておいた長粒米をいるだけフライパンにとって、バターとレモンジュースで味付け。肉が小さいので、カレシの冷蔵庫からバターレタスの葉っぱを失敬してきて、下に敷いてソースをかけた。
今日のサラダ一応の構想を聞いてカレシが決めた特性のセルリアックとセロリのサラダ。塩味はケッパーと塩ヨーグルトのものだけなのに、なぜかちょうどいい塩味になるから不思議。それにしても、コース料理はほんとに久しぶりだな。いつもあるていどのメニューを思い描いて、材料を出しておいてから始めるけど、使われずに冷蔵庫に戻るものも多いし、途中が気が変わって想定外の料理に鞍替えするものも多いし、まあ、そのときの気分と想像力しだい。
さて、来週の金曜日はグッドフライデイで、日曜日は復活祭だし、どんな料理を作ろうか・・・。
赤い糸が結ぶもの
3月24日。日曜日。今日もいい天気。気温もやっと2桁になって、窓の外の桜も急に開花が進んでいるような。東の方も道路の続く限りもや~っとピンク色になって来た。日本だったら、ご近所さんが集まって歩道の芝生にご馳走を広げて花見をするのかな。(芝生どころか歩道がないよなあ、そういえば・・・。)
今日が期限の仕事はきのうのうちに納品してしまったので、今日は「休み」モード。朝食後のコーヒーを楽しみながら、マーティン・ガードナーの『The New Ambidextrous Universe』(『自然界における左と右』新版)を読み始めた。日本語訳された初版を読んだのは40年も前のまだ日本にいた頃。20年後に大幅に加筆、拡張した新版が出て、読み始めた「New」はさらに改訂したもの。その間の科学の世界の変化はすごいから、もう一度読みたくなって買ってあった。鏡に映る像の不思議と対称、非対称の話で始まっているけど、新版は「左と右」のテーマからかなり発展しているらしい。なおさらおもしろそう。
きのうやっと読み終えたビル・ブライソンの『Notes from a Small Island』(『ビル・ブライソンのイギリス見て歩き』)は最後の締めが強烈だった。アメリカ人の著者が20年ぶりに家族を連れてアメリカに移り住むことになり、その前にこよなく愛するイギリスを見ておこうと、バスや鉄道を乗り継いでのひとり旅に出る。ちょっと見るとアメリカ人がイギリスについてあれもこれも文句たらたらという印象なんだけど、読み進むうちに、文句じゃなくて嘆息なんだと思えて来て、この人はそういうイギリスが好きなんだとわかって来る。(だからこそ、イギリス人は「世界本の日」にこの本を「イギリス人とイギリスを最も良く描写した本」として選んだと思う。)そして、旅を終えて、住まいのある北ヨークシャーに帰り着き、目の前に広がる丘陵風景を見渡して、「オレはここが好きなんだ。どのくらいなんて言えないくらい好きなんだ!」
わかる、わかる。生まれ育った国を離れて、移り住んだ別の国を好きになったその気持。あばたもえくぼもぜ~んぶひっくるめて丸ごと大好き。生まれ育った国と比べて、文化がどうの、政治や宗教がどうの、医療や社会保障の制度がどうの、治安や社会問題がどうの、人がどうのといった、そういう「婚活の条件」のようなものさしとはまったく次元が違う「好き」なんだよなあ。「だから~」と好きな理由を説明することができない「好き」。いうなれば、夫婦愛のような「好き」なのかな。一緒にいると心が落ち着いて幸せと感じる「好き」と、ほんっとにしょうがないなあというときの「好き」がごっちゃになっていて、それを「I love you」としか言葉にできないくらいの「好き」。人間同士でのそういう愛を知っている人はどんな気持なのかわかるかもしれない。
そういう人や土地に出会えるのは運のおかげなのか、あるいは縁の力なのか。よく聞く「運命の赤い糸」というのは、人と人だけでなく、人と土地も結びつけるものなのかもしれないな。まあ、自分からその赤い糸の先にある運命の人または運命の土地をたぐり寄せるものなのか、あるいは見えない運命によってたぐり寄せられるものなのか、そこのあたりはよくわからないけど、この地球の上の万物の営みはみんなどこかで何かしらつながっているような気がしないでもない。読み始めたガードナーの本には「スーパーストリング理論」の話があるけど、もしかしてそれかなあ・・・。
何を今さら
3月25日。月曜日。朝食後、きのう遅くに入ってきた仕事にかかろうか、かかるまいかと、しばし思案。その気になれば1日でできる量で、納期までは2日半と余裕たっぷり。どうしようかなあ。
隣のリビングで、テレビを見ながら自分の洗濯物をたたんでいたカレシが、やぶからぼうに、
「キミは大学に行くべきだったよな」。
(リビングに行って)何でなの?
「言語学者とかになってたかもしれないよ」。
ええ?そんなの考えたことないよ~。
「でなければ、ビジネスの才能があるから、起業したらよかったのに」。
ええ?今までちゃんとひとりで自営業をやって来たじゃないの。
「じゃなくてさ、会社を作って、社長になって、社員を雇って。キミならすごく儲けたと思うけどなあ」。
ふ~ん、そっかなあ・・・。(そんなこと、できたわきゃないじゃん!)
「女の方が男よりも正しい決断ができて、ビジネス上手なんだってさ」。
へえ、そうなの。だけど、会社ビジネスは片手間の仕事じゃないからね。ひとりでフリーランス稼業を切り盛りするんだってタイヘンだったのに、会社なんか経営してたら、とっくにカローシしてるよ。
それにしても、何で唐突にそんな話になるのかなあ。テレビで何か言ってたのかもしれないけど、それじゃあ、まるで昼間のワイドショーを見てる奥さんみたい。あはは。
まあ、ひとり身だったら、あるいは、カレシが専業主夫になって全面的にサポートしてくれるタイプだったら、もしかしてということもあり得たかもしれない。でも、働き始めてからずっと仕事100%、家事100%で、自分のことをかまっている暇もなかったくらい。この10年ほどは、カレシも自分の洗濯物くらいは自発的にたたむようになったし、ほんっとに楽になったと思う。
なんたって、今さら「会社社長」なんていう柄でもないでしょう、ワタシ。
時の流れは絶えずして
3月26日。火曜日。午前11時40分に起床。ここのところ、わりと早めに寝て、わりと早めに起きているような感じ。天気は上々だし、いいことだな。
朝食後にダウンタウンに行くことにしていたので、ささっと支度。留守番役のカレシにバイバイして、すっかり春らしくなった日差しの中を地下鉄駅まで15分足らず。切符を買って、(まだ改札口が機能していないので)ホームへ行ったらすぐに電車が来た。終着駅のウォーターフロント駅まで14分。バスだった頃は、バス停まで17分くらい。数分おきに通っているはずのバスが待てども待てども来なくて、突然3台も金魚の何とかみたいにつながって来たり。乗っても途中の渋滞に引っかかったりして、ダウンタウンまで30分くらい、ときにはそれ以上かかっていたな。つまり、約束の時間があったら1時間以上も前に家を出ないと間に合わない。今は家から終着ひとつ前のシティセンター駅まですいすいと30分だから、オリンピックさまさまというところ。
ダウンタウンに着いて、まずは翻訳協会のオフィスに行って公証印を返却。行く前に住所を確認したら、前に行ったことのある住所と違っていた。虫の知らせというけど、確認しておいて良かったな。1914年に建てられたビル(市の「遺産」に指定されている)の5階のジグザグと曲がる廊下のずっと奥のオフィスを探し当てるほうがタイヘンだった。元の袋に入ったままの公証印を渡して、もう少しで名前を言い忘れるところ。まあ、予告はしてあったからわかるだろうけど、20年も昔に払った50ドルを返してくれるそうだから、念のため。退会したので「公認」のタイトルも返上だし、これで、地元市場からは「引退」・・・。
次は会計事務所に所得税申告の書類を届ける。歩きながら、ずいぶん高級ブティックやブランド店ができているのに気がついた。カルティエの店もある。ひと昔前のダウンタウンはいたるところに語学学校があって、一時はその数は160校とか言われていた。不景気だったから古いビルの家賃なんか格安だっただろうな。周辺は学生相手のコンビニや安い食べ物屋が軒を連ねて、何となく場末的な感じがした。学校のあるところはどこも休憩時間の語学生とわかるグループが歩道を占拠していたから、歩行者は車道に下りないと通れなかったし、おまけにタバコを吸っている人が多くて、煙いのなんのって。かなりメイワクだったんだけど、まあ、みんな「お遊学生様」然としていたな、あの頃は。でも、リーマンショック以降は星の数ほどあった語学学校の多くが淘汰されたようで、新しい高層マンションが林立するダウンタウンには都会らしい活気が戻って来ているようだった。
地下鉄駅の後ろ、銀行の隣にあるのっぺりした(薄汚れた)白い建物は大手デパートのEaton’sがあったところ。倒産したのはもうかなり前で、その後に大手のSearsが入ったけど、ダウンタウンの中心にあるのになぜかジリ貧で、今度はアメリカの高級デパートNordstromが進出して来ることになった。すぐにオープンするのかと思ったら、これから2年かけて建物を大改装するんだとか。歩道に歩行者用の通路ができたと思ったら、何とあの建物全体を覆っていたのっべらぼうの外壁パネルを外しにかかっている。またダウンタウンの景観が変わるんだなあ。でも、38年前に比べたら、格段におしゃれな街になったよ、バンクーバー。
帰り道。午後3時を過ぎて、地下鉄は込み始める。いろんな人がいて、いろんなことをしていて(たいていはスマホをいじっているけど)、外国語の会話もあちこちから聞こえる。知らない同士、目と目とが合ってちょこっとスマイル。うん、ワタシはこの街のそういうところが好きなんだ。ああ、春だなあ。
生理的な感覚の違いかな
3月27日。水曜日。起床は午前11時ちょっと過ぎ。何だか早いけど、お掃除の日だから、早い方が掃除前に朝食が終わっていい。シーラとヴァルが現れた12時半には気温がもう15度。道路向かいの桜はほぼ満開で、少し咲くのが遅い並木も五分咲き以上かな。天気予報では、感謝祭の四連休を通して15度前後。きっとこの種馬は園芸センターが大混雑だな。春だ、春だって・・・。
オフィスの掃除が終わってすぐに今日の5時が期限の仕事を仕上げにかかる。残っているのは推定で約500ワード分。質の良い文章なら1時間でやっつけられる量なんだけど、なかなかそうは問屋が卸してくれない。シンクタンクのようなところには饒舌家がいるものらしくて、この文書は最後の「。」に行き着くまで200文字近い文がぞろぞろ出て来る。おまけに、あれもこれもとワンセンテンスに詰め込む(ひと息で言ってしまおうとする)から、「and」でつなぐとへんてこな英語になったりする。うまく「and」でつながればいいけど、つなげないものはセンテンスを分割するしかない(まあ、ワタシの文もけっこう長いけど、100文字さえ行かないと思うな。)
それにしても、どうしてこんなにいろいろと、ときにはあまり脈絡のなさそうなことまで詰め込んだ文を書くのかなあ。いつもながらつらつらと考えてみるけど、結局はわからない。そういう構造にしないと、日本語としては心地よく響かないのかな。法律文書も長ったらしい文が多いけど、筋道は通っているから、漢文の訓読の要領で、返り点を想像しながら「英読」すると問題はない。でも、企業やITの文書屋さんは端的に言っていわゆる「ボキャ貧」が多いように思う。たとえば「情報発信」をそのまま辞書にある英語にすると、日本人が普通に使っている(と思われる)意味合いから微妙にずれたものになってしまう。たしかに、「情報発信」といえば、ハイテクで時代の先端を行くハイカラさんのような感じがしないでもないな。でも、「HPに掲載した」でいいんじゃないかと思うけど、それでは「情報化」の波にスマートに乗っていないような気がするのかもしれないな。
どうやら無事に終わって、全体を見直して、多少の意訳を加えたりして、無事に期限に間に合って納品。やれやれ、こういうのはくたびれるなあ。いったいどんな人が書いたんだろう。こういう文書を書かされるのはだいたいはまだ若い下っ端くんだろうと思うけど、buzzword(キャッチコピー的な流行り言葉)を意味をよく理解した上で使っているかどうか疑問に思うようなところも多い。たぶん、先輩たちが使っているのをそのまま使っているんだろうな。会社勤めには順送り的なところがあるから。でも、そんなにあれもこれもひとまとめに言ってしまわなくてもいいんじゃないかと思うなあ。落ち着いて、あせらないで、と言ってしまいそう。
でも、こういう寄り道文は枝が何本もあって、「訓読」式では読みにくい。そこで、ひとつの文の中に2つも3つもあるトピックをそれぞれ別の文に分けてくれるとすっきりして助かるんだけど、日本語の感覚ではぶつ切りのようで、すらすら流れないことに違和感があるのかな。何か毛筆でさらさらと「候文」を書いているイメージが浮かんで来てしまうけど、やっぱり言語の感覚的な違いということになるのかな。まあ、こういう感覚の違いはたぶん生理的なもので、文化や思考の違いのように説明したり、理屈ですり合わせたりできるものではないんだろうと思うな。そうとわかれば文句を垂れていてもしょうがないけど、もしかして、おかしいのはワタシの日本語感覚の方だったりして・・・。
いいね、春爛漫
3月28日。木曜日。午前11時30分に目覚まし。ほんとに「いいね」ボタンを10回くらい押してしまいそうないい天気。ポーチの気温は正午で13度。外は桜が満開。
[写真] キッチンの東向きの窓から見える桜並木。料理をしながらお花見ができる。日差しを受けて温室の屋根も満開。
[写真] 実家から種を持って来て(お役所には内緒)植えて、ずいぶん長いこと窮屈な鉢植えでがまんしていた桜。おととしやっと庭に下ろされて、去年は2個しか花をつけなかったけど、専門業者に施肥してもらったら、今年はたくさん花をつけた。もっと大きくなったら、お弁当を作って、裏庭のパティオでお花見ができるかなあ。
[写真] 前庭のライラックにも花芽がたくさんついて、二階の窓から見下ろすと、粒々のつぼみがな~んとなく青みがかって来たような。ひょろひょろと野放図に伸びたレンギョウもそれなりに精一杯の満開。
[写真] キッチンの南向きの窓の外にあるモミジバフウの木。まだ葉が出ていなくて、冬の間に落ちずに残った実がどっさり。カレッジの外にある並木のトチノキみたいに頭に爆弾を落とさないでよね。(でも、これは当たっても痛くないかな。)
[写真] 温室の中は27度。菜園への植え替えを待ちかねている野菜の苗・・・。
でも、家の中に入ると、いたるところにリサイクルに出す雑誌類やペーパーの山。英語教室から帰ってきたカレシに言ってみた・・・。
ねえ、spring cleaning(春の大掃除)ってのをやらない?
「ん・・・」。
ね、ね、やろうよっ。春が終わってしまわないうちに。
「まあ、来たばっかりだから、まだ急ぐこともないだろ?」
はあ・・・?
陽だまりで昼寝を
3月29日。金曜日。グッドフライデイ。キリストが磔刑になった日で復活祭の四連休の始まり。木曜日(というか金曜日の丑三つ時)に店じまいする時間までに仕事が入って来なかったから、ワタシも日曜の夜までは確実にウィークエンド。予算消化期の「魔の3月」もどうやら地獄の底までは行かずに終わりそうな感じ。
もっとも、四連休と言っても月曜日(Easter Monday)は法定祝日ではないので、4日休めるのは官庁と大手企業、労働組合の強い産業の人くらい。州の公務員時代はあたりまえに四連休だったのに、会計事務所に転職したら三連休。まあ、3月、4月は所得税申告の時期で猫の手も借りたいときだからしょうがないんだけど、朝寝坊を決め込んでいるカレシを横目に出勤するのは何となくブルーマンデイ。
もう四半世紀も前の、ほんとに遠い昔のこと・・・。「連休」初日、カレシは庭仕事。ワタシはキッチンの陽だまりでのんびり読書。なんか逆転したような感じがしないでもないな。
[写真] 八角塔の二階の陽だまり。多目的と言うよりは「無目的」な部屋で、あまり使わないまま。窓が5つ。角地なので、南西方向を中心に展望270度。でも、ゴルフ場の木が伸びたせいか「眺望」はなくなった。昔は空港の飛行機の尾翼のライトが見えたもんだけど・・・。
ねえ、屋根の葺き替えのときにスカイライトを埋めるついでに、ドアをつけてちゃんとした部屋にしてもらおうか?
「うん、いいねえ」。
そうしたら、お客があるときに臨時のベッドルームにして泊まってもらえるよねえ。
「うん、いいねえ」。
夏の暑いときは閉めておけばベッドルームが暑くならないかもしれないし・・・。
「おっ、それはいいなあ」。
そうする?
「それはキミがマイクと相談して決めろよ」。
よ~し、そうしようっと。そして、おばあちゃんになったら陽だまりで昼寝をするのだ。
行きはコワイし、帰りもコワイ(1)
3月30日。土曜日。復活祭の連休の2日目。正午をちょっと過ぎて起床。今日も春満開のいい天気。ポーチの温度計は午後1時でもう16度。今日はママのご機嫌伺いに行って、帰りに園芸センターに行って、スーパーに行って、という日程・・・。
いざ出発!と言うところで、トラックのエンジンがかからない。あ~あ、またバッテリが上がったか。カレシはぶつぶつ言いながら、家に戻ってエコーのキーを持って来て、トラックと鼻を突き合わせてのジャンプスタート。さすがにベテラン?になったと見えて、ほどなくして轟音を立ててエンジンがかかった。ああ~。
ハイウェイは込んでいるかと思ったけど、入ってみたら意外と空いていた。このハイウェイは「トランスカナダ・ハイウェイ」という名で、緑の地の白いカエデの真ん中に「1」と書いてある、カナダの「国道1号線」。カナダ国章の標語「A Mari Usque Ad Mare(海から海へ)」そのもで、太平洋岸から大西洋岸まで、ロッキー山脈を越えて大陸を横断すること延々7,821キロ。。「どこま~でもいこ~お~」はタイヤのCMだったけど、今もしも若かったら、端っこまでドライブしてみたいな。何日くらいかかるのかなあ。
有料の橋に迷い込まずに無事「最後の出口」を出て、左折して、右折して無事ローヒードハイウェイの東方面の車線に乗ったのはいいけど、ピットリバー橋への車線に入り損ねて、橋の下を潜ってしまった。あ~あ、また迷子だ。行けども行けども「農村地帯」の風景で、「どこなのか皆目わからん」とカレシ。
しょうがないから途中でUターンして、通って来た道を戻ったのはいいけど、ワタシが左と言うのに右に曲がったカレシ。反対方向の元来たこの道、何とやら。しばらく行って適当な交差点でまたUターンして、やっとピットリバー橋を渡れて本来の道筋。まあ、ハイウェイはどこも効率化や拡張のための工事、工事、工事。通るたびに構成が変わっているような気がするから、あなちがカレシのせいばかりでもないんだけどね。
まっ、せっかくの春の陽気に気をよくして、どこま~でも~ゆこ~ぉ~。みちは~きびしくとも~。くちぶ~えを、ふきな~がら、はしぃ~ってゆ~こ~ぉ~・・・(今、どこ?)
記憶の空白を埋める昔話
久しぶりにママのご機嫌伺いで、話が弾んだ。最近は膝が痛くて歩くのがちょっとつらいようだけど、「この年になったらこんなもんでしょ」と。5月には96歳。歩行の問題以外はいたって元気で、カレシに入れさせた紅茶を飲みながら、いつものように昔話に花が咲いた。
復活祭がもう大きなイベントでなくなっていること。その代わりかどうか、昔はあまり騒がれなかったバレンタインが「絆」の大イベントになり、子供の行事だったハロウィーンが今や大人のパーティイベントになっていること。今年で、ママ、96年、カレシ、70年、ワタシ、65年。それだけの年月を生きて来たということは、世界が変わって行く歴史を見て来たということだよなあ・・・。
遠い郊外の農場育ちで、高校卒業を待ちかねて「都会」(バンクーバー)に飛び出したというママは、下宿しながら金持の家の掃除代行をして生計を立てていた。そのとき、そのひとつの家の奥さんに頼まれてベビーシッターをした男の子がきのう82歳で亡くなったアート・フィリップス元バンクーバー市長。バンクーバーはよく世界の「住み良い都市」のトップクラスにランクされるけど、最初にその枠組みとも言えるビジョンを示したのがフィリップス市長だった。
「とってもいい子だったわ」。
「お坊ちゃま育ちだしなあ」。
「でも、ちょっと内気な子でね」。
「へえ。そんな感じじゃなかったけどなあ」。
「いつも指をくわえて、べそをかいてはお母さんに叱られていたのよ」。
へえ。あのアート・フィリップスがねえ。小さいときは指をくわえてべそをかいていたなんて・・・。長身でハンサムで、大学ではバスケットのスター選手。若くして投資会社を立ち上げ、市内に高速道路を通す計画に反対して市議会に打って出て、やがて市長に当選。独身市長をインタビューしに来た元ミス・トロントの美人テレビジャーナリストに猛アタックして、結婚。奥さんは市長夫人から市議会議員、州議会議員、州の財務大臣になり、今はサイモンフレーザー大学の総長。パワーカップルだよねえ。へえ・・・。
ママとカレシの昔話は、ワタシがカナダの人になるまでの30年近い「記憶の空白」を埋めてくれているような気がして、いつもながら興味が尽きない。
行きはコワイし、帰りもコワイ(2)
ごくたまにしか顔を出さない親不孝息子でもママにとっては息子。実に楽しそうに昔話が弾んだもので、お暇したのはいつもより1時間も遅い午後5時すぎ。(迷子になってせいで着くのが遅かったこともあるけど。)園芸センターは完全にアウト。スーパーへ行くのはどうしようか。おなかが空いて来たし・・・。
「どこかで食べて行こうか」。
どこかって、どこ?マクドナルド?サブウェイ?タコベル?ピッツァハット?
「やだよ、そんなの。Milestone’sはどうだ?」
あそこはねえ・・・。あ、もうすぐ出口だよ。
「じゃあ、Whole Foodsからテイクアウトして、買い物は夜になってからにする?」
うん、それはいいかも・・・。ああああ、出口を通り過ぎちゃったよ~。
「@#$%^&*」。
(あ~あ、また軌道を外れちゃった。)
「このまま行ったらキャンビーに出るから、昔のあの寿司屋に行ってみようか?」
うん、何年も行ってないね、あそこ。行ってみようか?
ハイウェイからの出口を見逃したおかげで、夕食は久しぶりに昔よく行った寿司屋に決まった。けっこう繁盛している寿司屋で、土曜日とあって小さな店内は近辺の家族連れで一杯。それでもカウンターの端に2席空いていた。ここのおすしはおいしいし、イカのゲソの唐揚げは絶品。最後に行ってから何年も経つけど、おすしの味は変わっていなくて、「前菜」がメインの後から出て来るのも変わっていなかった。2人ともゲソの唐揚げとすしの特上盛り合わせで満腹して、チップを入れて50ドル。やっす~い。
でも、寿司屋はどこもそうだけど、スタッフはワーホリ組で接客は今いち。「らっしゃ~い」の連呼は日本的サービスなのかもしれないけど、狭い店内ではにぎやか過ぎだなあと思っていて、来なくなった理由に思い当たった。アジア系の客はワタシだけだったあるとき、ウェイトレスとおかみさん?が大きな声で知人や客の悪口や噂話をして盛り上がっていて、今どき風に言うなら「ドン引き」してしまったんだった。日本語でしゃべってもわからないと思ってたがを緩めていたんだろうけど、バンクーバーには日本帰りで日本語のわかる「外人」がけっこういるのにと思ったな。
スーパーに寄っての帰り道は午後8時過ぎ。西の空は夕焼け小焼け。明日もきっといい天気。ついでに途中にある酒屋にも寄り道して、帰ってきたらもう9時近く。「冒険」がいっぱいの日でくたびれた・・・。
復活祭のディナーは雑食系
3月31日。日曜日。復活祭。予報通り良い天気。郊外ではこの日の高温記録を更新しそうだという話。朝食後、カレシは裏庭へ出て行って、日を浴びながらの庭仕事。汗をかいて労働している間に、ワタシはかねてから約束してあった「極楽とんぼ亭」のスペシャルメニューの段取り・・・。
今日のメニュー:
アミューズブーシュ(シーバスの二色蒸し団子)
アスパラガスの豚肉巻き、ポン酢大根おろし添え
鶏ももと野菜の唐揚げ、フレンチラディッシュ
牛ヒレ肉のステーキ、赤ワインのリダクションソース
ほうれん草入りマッシュポテトと蒸したズッキーニ添え
マティニ、白ワイン、赤ワイン(ボージョレー)
[写真] 突き出しは、適当に切った使い残しの小さなシーバスと少量の卵白をチョッパーでペーストにして、2つに分け、一方は中にからし明太子を少量入れてボールにまとめ、もう一方はボールにまとめて、シートに広げた抹茶の上をころころ。シリコーンのマフィン型に入れてスチーマーで蒸した。うっすら緑色の抹茶ボールにはコリアンダーの葉、白いボールには明太子で華を添えて、復活祭ディナーの始まり。
[写真] 小分けにしてある薄切りの豚肉4枚。アスパラガスの穂先を肉の幅に合わせて切って巻き込み、溶き卵にくぐらせてフライパンで転がしながら焼いた。刻みねぎを混ぜた大根おろしにポン酢で味をつけ、付け合せの蒸したフレンチインゲン、生のアジアきゅうりのスライスといっしょに添えてみたら、けっこうさっぱりした一品になって、「これはリピートものだ」とカレシの太鼓判。
[写真] 使い残し鶏もも1枚。ひと口サイズに切って、市販の中華風唐揚げミックスをもみ込み、小いもを4枚に切り、ピーマンも縦に切り出したのを斜めに2つ切りして、肉といっしょに漬けておいた。フライヤーをセットしておいて、前のコースを食べ終わったところで、まず肉、次にいもとピーマンを揚げて、赤と白の細長いフレンチラディッシュで彩り。
[写真] きのうの夜Save-On-Foodsで買って来た牛肉のヒレ。このスーパーではトレイに入れずに真空パックにしてある。少々サイズの違うものが2枚入っていたので、小さいほうをさらに2つに分けて、塩と胡椒だけのシンプルなステーキ。マッシュポテトにさっと熱を通したほうれん草と潰したローストガーリックを混ぜ、ブロッコリのスプラウトで飾り。ズッキーニを蒸している間にステーキをミディアムレアに焼き、コースを食べている間にゆっくりと煮詰めた赤ワインのリダクションソースを添えて、テーブルのワインも赤に切り替えて、今日のメインコース。
魚、鶏、豚肉、牛肉、野菜と、まんべんなく食べるのが雑食系。ほんとに、たまにはこうして食材のバラエティを楽しむのもいいね。量の加減がうまく行ったらしく、2人とも食べ過ぎ感はなくて、ああ、おいしかった~という満腹感。でも、今日はランチは不要かな・・・。
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