日本の株式会社の多くは、国と同じく4月~3月を会計年度としている。前年度の決算の株主総会は3ヶ月以内に開く必要があるから、日本の株主総会は6月末に集中する。昔は「総会屋」を分散させるために「一斉集中日」があったものだ。今は昔よりはバラけて個人株主も出席しやすくなっている。阪急阪神ホールディングスでは例年阪神タイガースの成績不振を延々と問う個人株主がいると言うが、今年は例年にない好調ぶりだから特に質問もなかったという話。まあ、昨年と今年はコロナ禍で株主総会には来ないでくれ(ネットで賛否を表明)と書いてある。そんな中で注目を集めているのが、25日予定の東芝の株主総会だ。
(外部調査報告書の内容)
東芝と言えば、多くの家電製品を発売しテレビ番組やCMも多かったから、多くの人が小さい頃から名前を知っていただろう。冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジなどの一号機は東芝製だという。1875年に田中久重が創設した工場を発端にして、1939年に「東京芝浦電機株式会社」、1984年に「株式会社東芝」と名前を変えてきた。4代社長の石坂泰三、6代社長の土光敏夫など財界活動で知られたトップも輩出してきた。そんな東芝も2015年に発覚した粉飾決算問題以来、昔日の面影はなくなってしまった。
携帯電話やパソコン事業を売り、「白物家電」も2016年に中国の「美的集団」に売却した。それでも債務超過が続き、東証1部から2部へ指定替え。半導体メモリ事業も譲渡し、「東芝日曜劇場」や「サザエさん」の提供も取りやめた。このようにして「身売り」を続けながら生き延びたため、一般消費者からは遠くなっているが、その結果、原子炉、軍事機器、鉄道車両などの重工業メーカーになっているという。政府から見れば、かえって重要性が増しているのかもしれない。
さて、まあ一企業としての東芝の問題なら、ここで書く必要もないだろう。僕が関心を持つのは、東芝経営陣と経産省、政府との不透明な関わりである。株が公開されている以上、外国の投資ファンドなどが買うこともある。今や東芝株の約半数は外国人株主で、中には「ハゲタカファンド」みたいなところもあるだろう。「物言う株主」として配当増などを要求し、株価が上がったところで売り払うようなところである。株主が配当を増やすべきだと主張するのは当然で、それ自体はとやかく言えないが、資本主義のルールだからと言ってそういう投資ファンドも困ったもんだと思う。
(最近の東芝の株主総会)
とは言うものの、それは民間企業の問題で本来は政府が関与する問題ではない。ところが昨年の定期株主総会で不適切な問題があった。そもそも昨年1月に不正取引が発覚し、それをきっかけに投資ファンド側が株主総会に独自の取締役案を提出した。それは昨年の総会で否決されたのだが、秋になってその時の議決権の集計に不適切な処理があったことが判った。ファンド側が第三者委員会の設置を求めて臨時株主総会の開催を要求、今年3月に開かれた臨時株主総会で調査を求めた提案が可決された。その後にイギリスの別の投資ファンド(CVCキャピタル・パートナーズ)が東芝の買収を提案したが、実はそこが車谷暢昭社長の出身母体だった。さすがにおかしいという声が強く、車谷社長は辞任を余儀なくされた。
実に面倒な話で、たびたび不正が発覚する東芝はどうなっているんだと思うが、それと別に第三者による調査が発表されたところ、驚くべきことが判った。経済産業省が裏で海外株主に「圧力」を掛けていたというのである。これでは日本の「資本主義」はルールなき「国家管理」であって、中国を非難することは出来ない。東芝経営陣の方から総会前に経産省に支援を求めたのだというが、経産省もそれに応えたのである。経産省参与がハーバード大学の基金運営ファンドに投票の変更を依頼することもあった。経産省は外為法(外国為替管理法)を利用して圧力を掛けたんだという。その過程において、公権力の乱用や国家機密の漏洩などがあった可能性を否定できない。
(調査を否定する梶山経産相)
ところが驚くべきことに、梶山経産相はこの対応を当然のこととして、調査もしないと明言している。なんで調査せずに問題ないと言えるのか。東芝側の調査報告書に間違いや誤解があるというなら、しっかりと調査するのが当然ではないか。さらに昨年7月27日に加茂正治執行役上席常務が菅官房長官(当時)に面談している。菅氏からは「強引にやれば外為で捕まえられるんだろう」という話もあったと報告しているという。もっとも菅首相はそんな発言はしていないと言っているようだが、官邸がここまで介入するのか。これは権力の乱用としか思えないし、これが日本の現実なのかと改めて世界に示すものだ。国会でも是非追求しなくてはいけない。
(外部調査報告書の内容)
東芝と言えば、多くの家電製品を発売しテレビ番組やCMも多かったから、多くの人が小さい頃から名前を知っていただろう。冷蔵庫、洗濯機、掃除機、電子レンジなどの一号機は東芝製だという。1875年に田中久重が創設した工場を発端にして、1939年に「東京芝浦電機株式会社」、1984年に「株式会社東芝」と名前を変えてきた。4代社長の石坂泰三、6代社長の土光敏夫など財界活動で知られたトップも輩出してきた。そんな東芝も2015年に発覚した粉飾決算問題以来、昔日の面影はなくなってしまった。
携帯電話やパソコン事業を売り、「白物家電」も2016年に中国の「美的集団」に売却した。それでも債務超過が続き、東証1部から2部へ指定替え。半導体メモリ事業も譲渡し、「東芝日曜劇場」や「サザエさん」の提供も取りやめた。このようにして「身売り」を続けながら生き延びたため、一般消費者からは遠くなっているが、その結果、原子炉、軍事機器、鉄道車両などの重工業メーカーになっているという。政府から見れば、かえって重要性が増しているのかもしれない。
さて、まあ一企業としての東芝の問題なら、ここで書く必要もないだろう。僕が関心を持つのは、東芝経営陣と経産省、政府との不透明な関わりである。株が公開されている以上、外国の投資ファンドなどが買うこともある。今や東芝株の約半数は外国人株主で、中には「ハゲタカファンド」みたいなところもあるだろう。「物言う株主」として配当増などを要求し、株価が上がったところで売り払うようなところである。株主が配当を増やすべきだと主張するのは当然で、それ自体はとやかく言えないが、資本主義のルールだからと言ってそういう投資ファンドも困ったもんだと思う。
(最近の東芝の株主総会)
とは言うものの、それは民間企業の問題で本来は政府が関与する問題ではない。ところが昨年の定期株主総会で不適切な問題があった。そもそも昨年1月に不正取引が発覚し、それをきっかけに投資ファンド側が株主総会に独自の取締役案を提出した。それは昨年の総会で否決されたのだが、秋になってその時の議決権の集計に不適切な処理があったことが判った。ファンド側が第三者委員会の設置を求めて臨時株主総会の開催を要求、今年3月に開かれた臨時株主総会で調査を求めた提案が可決された。その後にイギリスの別の投資ファンド(CVCキャピタル・パートナーズ)が東芝の買収を提案したが、実はそこが車谷暢昭社長の出身母体だった。さすがにおかしいという声が強く、車谷社長は辞任を余儀なくされた。
実に面倒な話で、たびたび不正が発覚する東芝はどうなっているんだと思うが、それと別に第三者による調査が発表されたところ、驚くべきことが判った。経済産業省が裏で海外株主に「圧力」を掛けていたというのである。これでは日本の「資本主義」はルールなき「国家管理」であって、中国を非難することは出来ない。東芝経営陣の方から総会前に経産省に支援を求めたのだというが、経産省もそれに応えたのである。経産省参与がハーバード大学の基金運営ファンドに投票の変更を依頼することもあった。経産省は外為法(外国為替管理法)を利用して圧力を掛けたんだという。その過程において、公権力の乱用や国家機密の漏洩などがあった可能性を否定できない。
(調査を否定する梶山経産相)
ところが驚くべきことに、梶山経産相はこの対応を当然のこととして、調査もしないと明言している。なんで調査せずに問題ないと言えるのか。東芝側の調査報告書に間違いや誤解があるというなら、しっかりと調査するのが当然ではないか。さらに昨年7月27日に加茂正治執行役上席常務が菅官房長官(当時)に面談している。菅氏からは「強引にやれば外為で捕まえられるんだろう」という話もあったと報告しているという。もっとも菅首相はそんな発言はしていないと言っているようだが、官邸がここまで介入するのか。これは権力の乱用としか思えないし、これが日本の現実なのかと改めて世界に示すものだ。国会でも是非追求しなくてはいけない。
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