「国民投票」という話を書いたけど、今度は選挙制度に焦点をあてて何回か。野党の選挙協力も大事だけど、本来それはどういう意味があるのか。野党が乱立すると、「共倒れ」して与党を利してしまう。それを防ぐべきだという話になるが、野党が協力しても与党候補が有効投票の過半数を取っているなら意味がない。問題は、当選者が「比較第一位」であっても、過半数を獲得していない場合である。その場合は、仮に野党が全部協力していれば勝っていた可能性がある。もっとも、政策が違うから別の政党になっているんで、統一候補を立てたから支持者がついてくるかどうかは未知数である。
だけど、そういう選挙対策的な問題ではなく、もっと本質的なことを考えたいのである。つまり、「有効投票の過半数を獲得していない候補が、その小選挙区を代表して国会で活動していいのか」という問題である。(「有効投票」と書くのは、無効票を入れた人や棄権した人は抜いて考えていいだろうからである。棄権した人も考えて、「有権者の過半数」を取らないと当選できないとすると、永遠に議員が出られない選挙区が出てくるだろう。)
国会議員は全国民の代表である。選ばれた地域の代表だと間違って思い込んでいる人がいるが、そうではない。沖縄で当選しても、北海道で当選しても、沖縄の基地問題や東京五輪の問題に関わっていい。国会議員は全国民の代表だから、国会が決めたことが全国民を拘束するのである。(という風に考えるのが、議会制民主主義のシステムである。そんなのウソだろ、選ばれた議員は自分の選挙区や支持団体の事しか考えてないでしょと思うかもしれない。現実にはそうかもしれないが、それでは誰も国会の決定に納得できない。「一種のフィクション」には違いないけど、「全国民の代表」が決めたと見なすわけである。)
昨年の安保法審議のような、憲法違反を指摘され、国民世論の反対が強いような法案に対して、各議員は一票を投じる。それは所属する党の決定に従うことが多いだろう。そして、その行動が国の将来に大きな影響を与える。そんな重大な責任がある議員は、小選挙区制度ならば、選挙区で過半数の支持を得ている必要があるのではないだろうか。実際、こんな選挙区がある。
秋田一区
富樫博之(自民) 66,388 (47.02%) 当選
寺田学 (民主) 57,782 (40.92%) (比例区で当選)
山内梅良(共産) 11,579 (8.20%)
伊藤正通(社民) 5,441 (3.85%)
小選挙区で落選した候補は、民主、共産、社民だから、支持者も集団的自衛権容認反対派がほとんどだろうし、安倍政権反対の人である。過半数近くを自民候補が得ているが、秋田一区の民意は「安保法案反対」だと考えてもいいのではないか。それなのに、富樫議員が秋田一区で当選して、安保法案に賛成する。それはおかしいのではないだろうか。
ここで、富樫候補と寺田候補(第2位の得票者)が、「決選投票」を行えばどうだろう。そういう制度があれば、民主党と共産党と社民党が選挙前に選挙協力を決める必要もない。決めてもいいけど、とりあえず皆が立って、自民候補を過半数割れに追い込むために頑張ればいい。あるいは、こういう制度があると、保守系の無所属候補もたくさん出るかもしれない。小選挙区制度になってから、党執行部の力が大きくなり、自民党が一色化しているという人もいるが、「決選投票」制度があれば、もっと自由闊達な気風が出てくるかもしれない。
議員選挙の決選投票制度はフランスで行っている。小選挙区で一回目の選挙で過半数を取った候補がいない場合、一週間後に一位候補と二位候補で決選投票を行う。この制度があるから、極右の国民戦線が決戦に残った場合、社会党が「国民運動連合」(=サルコジ前大統領派の保守政党)を支持して、極右の当選を阻むことができる。「一回投票」制度だったら、国民戦線の当選者がもっと出てしまうはずだ。アメリカのように、事実上、民主党と共和党の二大政党の国はそのままでいいかもしれないが。ドイツは、小選挙区だけど比例代表併用制である。それなら決選投票はいらないが、日本が今後も小選挙区制度(比例代表並立制)を取るのであれば、決選投票が必要だと思う。
なお、ちょっとケースは違うが、日本でも地方の首長選挙では「4分の1を取る候補がいない場合は、再選挙」という規定がある。知られている事例では、2003年の札幌市長選がある。4月の選挙はいずれも新人候補の戦いで、民主党が支援する弁護士の上田文雄に対し、民主党元参議院議員の中尾則幸、自民が推薦する道見重信らが争った。その結果は以下の通り。上田候補は21.6%だった。
上田文雄 無所属 新人 172,512 民主党・市民ネット
中尾則幸 無所属 新人 168,474
道見重信 無所属 新人 159,787 自民党・保守新党
秋山孝司 無所属 新人 97,327
坪井善明 無所属 新人 76,405
山口たか 無所属 新人 67,785
佐藤宏和 無所属 新人 54,126 共産党
その結果、6月に再選挙となったが、決選投票ではないので誰でも出られる。候補を変えてもいい。自民は石崎岳を立てたが、結局上田が当選した。共産党も候補を変えて再度立候補したが、選挙戦の最中に選挙運動を中止し自由投票とした。結果を一応載せておくと以下の通り。
上田文雄 無所属 新人 282,170 (41.67%)(推薦)市民ネット(支持)民主党・社民党
石崎岳 無所属 新人 256,173 (37.83%)(推薦)自民党・保守新党(支持)公明党
中尾則幸 無所属 新人 126,488 (18.68%)
青山慶二 共産党 新人 12,315 (1.82%)
もう忘れている人が多いだろうが、1999年の東京都知事選も、もしかしたら誰も25%に行かないのではないかと言われていた。現職の青島幸男が立候補を断念し、新人候補が乱立した。自民党は元国連事務次長の明石康を立て、民主党は当時兄弟で民主党にいた鳩山邦夫を立てた。他に舛添要一、柿沢弘治、共産党の三上満などが立候補を表明した後で、石原慎太郎が立候補を表明したのだった。結局、石原は約166万票で、30%を獲得して当選した。次点は鳩山邦夫で85万票、次いで舛添83万票、明石69万票…といった結果。石原と鳩山邦夫で決選投票をする意味があるかどうかは難しいが、こういう過去を見れば、少なくとも都道府県知事と政令指定都市市長は、権限が大きいので決選投票制度があった方がいいのではないか。
だけど、そういう選挙対策的な問題ではなく、もっと本質的なことを考えたいのである。つまり、「有効投票の過半数を獲得していない候補が、その小選挙区を代表して国会で活動していいのか」という問題である。(「有効投票」と書くのは、無効票を入れた人や棄権した人は抜いて考えていいだろうからである。棄権した人も考えて、「有権者の過半数」を取らないと当選できないとすると、永遠に議員が出られない選挙区が出てくるだろう。)
国会議員は全国民の代表である。選ばれた地域の代表だと間違って思い込んでいる人がいるが、そうではない。沖縄で当選しても、北海道で当選しても、沖縄の基地問題や東京五輪の問題に関わっていい。国会議員は全国民の代表だから、国会が決めたことが全国民を拘束するのである。(という風に考えるのが、議会制民主主義のシステムである。そんなのウソだろ、選ばれた議員は自分の選挙区や支持団体の事しか考えてないでしょと思うかもしれない。現実にはそうかもしれないが、それでは誰も国会の決定に納得できない。「一種のフィクション」には違いないけど、「全国民の代表」が決めたと見なすわけである。)
昨年の安保法審議のような、憲法違反を指摘され、国民世論の反対が強いような法案に対して、各議員は一票を投じる。それは所属する党の決定に従うことが多いだろう。そして、その行動が国の将来に大きな影響を与える。そんな重大な責任がある議員は、小選挙区制度ならば、選挙区で過半数の支持を得ている必要があるのではないだろうか。実際、こんな選挙区がある。
秋田一区
富樫博之(自民) 66,388 (47.02%) 当選
寺田学 (民主) 57,782 (40.92%) (比例区で当選)
山内梅良(共産) 11,579 (8.20%)
伊藤正通(社民) 5,441 (3.85%)
小選挙区で落選した候補は、民主、共産、社民だから、支持者も集団的自衛権容認反対派がほとんどだろうし、安倍政権反対の人である。過半数近くを自民候補が得ているが、秋田一区の民意は「安保法案反対」だと考えてもいいのではないか。それなのに、富樫議員が秋田一区で当選して、安保法案に賛成する。それはおかしいのではないだろうか。
ここで、富樫候補と寺田候補(第2位の得票者)が、「決選投票」を行えばどうだろう。そういう制度があれば、民主党と共産党と社民党が選挙前に選挙協力を決める必要もない。決めてもいいけど、とりあえず皆が立って、自民候補を過半数割れに追い込むために頑張ればいい。あるいは、こういう制度があると、保守系の無所属候補もたくさん出るかもしれない。小選挙区制度になってから、党執行部の力が大きくなり、自民党が一色化しているという人もいるが、「決選投票」制度があれば、もっと自由闊達な気風が出てくるかもしれない。
議員選挙の決選投票制度はフランスで行っている。小選挙区で一回目の選挙で過半数を取った候補がいない場合、一週間後に一位候補と二位候補で決選投票を行う。この制度があるから、極右の国民戦線が決戦に残った場合、社会党が「国民運動連合」(=サルコジ前大統領派の保守政党)を支持して、極右の当選を阻むことができる。「一回投票」制度だったら、国民戦線の当選者がもっと出てしまうはずだ。アメリカのように、事実上、民主党と共和党の二大政党の国はそのままでいいかもしれないが。ドイツは、小選挙区だけど比例代表併用制である。それなら決選投票はいらないが、日本が今後も小選挙区制度(比例代表並立制)を取るのであれば、決選投票が必要だと思う。
なお、ちょっとケースは違うが、日本でも地方の首長選挙では「4分の1を取る候補がいない場合は、再選挙」という規定がある。知られている事例では、2003年の札幌市長選がある。4月の選挙はいずれも新人候補の戦いで、民主党が支援する弁護士の上田文雄に対し、民主党元参議院議員の中尾則幸、自民が推薦する道見重信らが争った。その結果は以下の通り。上田候補は21.6%だった。
上田文雄 無所属 新人 172,512 民主党・市民ネット
中尾則幸 無所属 新人 168,474
道見重信 無所属 新人 159,787 自民党・保守新党
秋山孝司 無所属 新人 97,327
坪井善明 無所属 新人 76,405
山口たか 無所属 新人 67,785
佐藤宏和 無所属 新人 54,126 共産党
その結果、6月に再選挙となったが、決選投票ではないので誰でも出られる。候補を変えてもいい。自民は石崎岳を立てたが、結局上田が当選した。共産党も候補を変えて再度立候補したが、選挙戦の最中に選挙運動を中止し自由投票とした。結果を一応載せておくと以下の通り。
上田文雄 無所属 新人 282,170 (41.67%)(推薦)市民ネット(支持)民主党・社民党
石崎岳 無所属 新人 256,173 (37.83%)(推薦)自民党・保守新党(支持)公明党
中尾則幸 無所属 新人 126,488 (18.68%)
青山慶二 共産党 新人 12,315 (1.82%)
もう忘れている人が多いだろうが、1999年の東京都知事選も、もしかしたら誰も25%に行かないのではないかと言われていた。現職の青島幸男が立候補を断念し、新人候補が乱立した。自民党は元国連事務次長の明石康を立て、民主党は当時兄弟で民主党にいた鳩山邦夫を立てた。他に舛添要一、柿沢弘治、共産党の三上満などが立候補を表明した後で、石原慎太郎が立候補を表明したのだった。結局、石原は約166万票で、30%を獲得して当選した。次点は鳩山邦夫で85万票、次いで舛添83万票、明石69万票…といった結果。石原と鳩山邦夫で決選投票をする意味があるかどうかは難しいが、こういう過去を見れば、少なくとも都道府県知事と政令指定都市市長は、権限が大きいので決選投票制度があった方がいいのではないか。
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