1月9日に陸上自衛隊の小林弘樹陸上幕僚副長を含む幹部22名が、時間休を取得した上で靖国神社を集団で参拝していた。そのことが明らかになった後で、防衛省は1974年に出た「部隊参拝」や「参加の強制」を禁じる通達に違反していないか調査するとしていた。そして26日になって、通達で禁じる「部隊参拝」ではないと結論づけた調査結果を発表した。その上で公用車での移動は不適切として、小林氏ら3人を訓告処分としたという。しかし、これは非常に疑問の多い「調査結果」である。
まず、今回の参拝に関して陸上幕僚部の担当者が「実施計画」を立てていたという。これは正式な行政文書として作られた。この集団参拝は、小林氏がトップである陸自内の「航空機事故調査委員会」関係者で市ヶ谷駐屯地勤務者の1佐以上を対象にしたという。その対象は41名でそのうち22名が参加したことを「参拝者が22人にとどまった」と評価している。参加者は全員が「自由意志」で参拝したと主張している。そのため通達で禁止された「集団参拝」ではないと結論付けた。
しかし、これはどう考えてもヘリクツだろう。例えば学校には教員の親睦会があり、歓送迎会などを計画する。幹事が日時や店の場所などを書いた文書を作るだろうが、その計画書は当然ながら正式な行政文書ではない。(今はメールで通知するかもしれないが。)正式な文書として起案番号を取ったら、それは「正式な学校行事」になってしまう。自衛隊だって同じだろう。初めから「参加、不参加は自由」となってただろうが、それでも正式行事だったというしかないと思うけど。
(小林氏らに訓告)
それ以上に不可解なのは、「時間休」の扱いである。そもそも宗教施設への参拝は内面に関わる私的なものだから、「時間休」を取得して行うものじゃないだろう。週休日があるんだから、その日に行けば良い。時間休を取る権利はあるし、休暇申請の理由を問うことは出来ない。しかし、同じ職場で同時に22人が時間休を取るってあり得るだろうか。そんなことは普通「時限スト」でもやってない限り起こらない。22人が時間休を申請したら、管理職が「時季変更権」を行使すべきケースじゃないか。
能登半島地震で自衛隊が活動中だからこそ「公用車」を用いたと小林氏は主張していた。しかし、時間休を一斉に取った間に何が起こるか判らないわけだから、公務員の「職務専念義務」に照らして大きな疑問がある。民間人以上に公務員には厳しい「職務専念」が求められている。今回の調査では「徒歩でも30分以内で登庁できた」ことを理由に「公用車利用は不適切」とする。しかし、距離の問題なんだろうか。「参拝」は勤務時間中に時間休を取ってまで行うことじゃないだろう。
ところで、もちろん今回の問題の一番の本質はそういう事務的な解釈問題ではない。自衛隊幹部が「靖国神社」を参拝することは許されない。集団じゃなくても、休暇日であろうと、全く関係ない。「航空安全の祈願」が目的と言うが、靖国神社は特に航空関係で行く神社じゃない。市ヶ谷と九段が近いから行ったわけでもないだろう。靖国神社には「政教分離に反する」「A級戦犯刑死者を合祀」という問題があるのは誰でも知っている。政治家ならいろんな主張があろうが、現職公務員が行くべきではない。
靖国神社はもともと戊辰戦争の「官軍」側死者を祀る「東京招魂社」として建立され、1887年から旧帝国陸海軍が管轄していた。戦前の「国家神道」体制の中でも非常に特殊な宗教施設だ。よく知られているように戊辰戦争の幕府側死者、西南戦争の西郷軍側死者などは祀られない。その後の数多くの外国との戦争でも、軍と雇用関係がなかった民間人、例えば空襲での死者などは祀られていない。つまり「天皇のための死者」のみを祀る特異な宗教施設である。
そのことを知らない幹部自衛官はいないだろう。当然知っていて、自分たちは旧軍を引き継ぎ「天皇を中心にした日本国家」を守るんだという意識を持っていると考えられる。だからこそ、違和感なく靖国神社を参拝できるのだろう。そういう経緯を考えてみると、41人の対象者の中でちょうど半分ほどの22人が参拝に行ったことは偶然じゃないと想像出来る。残りの19人は自由意志で参拝しなかったというよりも、「待機要員」として残る側に回ったと理解するべきだと思う。
もう一つ、1月10日に宮古島駐屯地の宮古警備隊長ら隊員20人が公用車などで、地元の宮古神社を参拝していたことも判明している。これも沖縄で進む軍事化と関連があると考えるべきだろう。全体に自衛隊幹部に「政教分離」の意識がないのである。「政教分離」はあらゆる宗教が対象ではあるが、隊長がクリスチャンで部下を引き連れてクリスマス礼拝に参加するなんてことは起こらない。政教分離とは戦前に大きな影響力を持った「国家神道」と行政組織の分離が一番の眼目である。「そんなことも知らない」んじゃなく、そんなことは承知の上で、神道との結びつきを強めているんだと思う。警戒が必要だ。
まず、今回の参拝に関して陸上幕僚部の担当者が「実施計画」を立てていたという。これは正式な行政文書として作られた。この集団参拝は、小林氏がトップである陸自内の「航空機事故調査委員会」関係者で市ヶ谷駐屯地勤務者の1佐以上を対象にしたという。その対象は41名でそのうち22名が参加したことを「参拝者が22人にとどまった」と評価している。参加者は全員が「自由意志」で参拝したと主張している。そのため通達で禁止された「集団参拝」ではないと結論付けた。
しかし、これはどう考えてもヘリクツだろう。例えば学校には教員の親睦会があり、歓送迎会などを計画する。幹事が日時や店の場所などを書いた文書を作るだろうが、その計画書は当然ながら正式な行政文書ではない。(今はメールで通知するかもしれないが。)正式な文書として起案番号を取ったら、それは「正式な学校行事」になってしまう。自衛隊だって同じだろう。初めから「参加、不参加は自由」となってただろうが、それでも正式行事だったというしかないと思うけど。
(小林氏らに訓告)
それ以上に不可解なのは、「時間休」の扱いである。そもそも宗教施設への参拝は内面に関わる私的なものだから、「時間休」を取得して行うものじゃないだろう。週休日があるんだから、その日に行けば良い。時間休を取る権利はあるし、休暇申請の理由を問うことは出来ない。しかし、同じ職場で同時に22人が時間休を取るってあり得るだろうか。そんなことは普通「時限スト」でもやってない限り起こらない。22人が時間休を申請したら、管理職が「時季変更権」を行使すべきケースじゃないか。
能登半島地震で自衛隊が活動中だからこそ「公用車」を用いたと小林氏は主張していた。しかし、時間休を一斉に取った間に何が起こるか判らないわけだから、公務員の「職務専念義務」に照らして大きな疑問がある。民間人以上に公務員には厳しい「職務専念」が求められている。今回の調査では「徒歩でも30分以内で登庁できた」ことを理由に「公用車利用は不適切」とする。しかし、距離の問題なんだろうか。「参拝」は勤務時間中に時間休を取ってまで行うことじゃないだろう。
ところで、もちろん今回の問題の一番の本質はそういう事務的な解釈問題ではない。自衛隊幹部が「靖国神社」を参拝することは許されない。集団じゃなくても、休暇日であろうと、全く関係ない。「航空安全の祈願」が目的と言うが、靖国神社は特に航空関係で行く神社じゃない。市ヶ谷と九段が近いから行ったわけでもないだろう。靖国神社には「政教分離に反する」「A級戦犯刑死者を合祀」という問題があるのは誰でも知っている。政治家ならいろんな主張があろうが、現職公務員が行くべきではない。
靖国神社はもともと戊辰戦争の「官軍」側死者を祀る「東京招魂社」として建立され、1887年から旧帝国陸海軍が管轄していた。戦前の「国家神道」体制の中でも非常に特殊な宗教施設だ。よく知られているように戊辰戦争の幕府側死者、西南戦争の西郷軍側死者などは祀られない。その後の数多くの外国との戦争でも、軍と雇用関係がなかった民間人、例えば空襲での死者などは祀られていない。つまり「天皇のための死者」のみを祀る特異な宗教施設である。
そのことを知らない幹部自衛官はいないだろう。当然知っていて、自分たちは旧軍を引き継ぎ「天皇を中心にした日本国家」を守るんだという意識を持っていると考えられる。だからこそ、違和感なく靖国神社を参拝できるのだろう。そういう経緯を考えてみると、41人の対象者の中でちょうど半分ほどの22人が参拝に行ったことは偶然じゃないと想像出来る。残りの19人は自由意志で参拝しなかったというよりも、「待機要員」として残る側に回ったと理解するべきだと思う。
もう一つ、1月10日に宮古島駐屯地の宮古警備隊長ら隊員20人が公用車などで、地元の宮古神社を参拝していたことも判明している。これも沖縄で進む軍事化と関連があると考えるべきだろう。全体に自衛隊幹部に「政教分離」の意識がないのである。「政教分離」はあらゆる宗教が対象ではあるが、隊長がクリスチャンで部下を引き連れてクリスマス礼拝に参加するなんてことは起こらない。政教分離とは戦前に大きな影響力を持った「国家神道」と行政組織の分離が一番の眼目である。「そんなことも知らない」んじゃなく、そんなことは承知の上で、神道との結びつきを強めているんだと思う。警戒が必要だ。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます