尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

岸田首相と山本太郎、現地視察をめぐる問題ー能登半島地震から一週間②

2024年01月10日 22時40分18秒 | 政治
 岸田首相13日に能登半島地震の被災地を訪問する意向だという。岸田首相の現地視察が遅いのかという問題を考えたい。今回は自衛隊の派遣も「逐次投入」で遅いという批判がある。事実評価の判断は難しいと思うが、自衛隊のことはちょっと置いて首相の問題に絞る。実は今までの大震災と比べて、今回の首相訪問が遅すぎるのは事実である。

 それは1月10日東京新聞掲載の斎藤美奈子のコラムに明示されている。それによれば、阪神淡路大震災(1995年)の村山首相は、2日後の1月19日に現地を視察した。村山首相の対応は遅いと当時批判されたかと記憶するが、2日後には現地に行っているのだ。新潟中越地震(2004年10月23日)では、小泉首相が現地を視察したのは3日後の26日である。熊本地震(2016年4月16日)では、14日に強い地震があり安倍首相は16日に現地入りを予定していたが、その16日未明に「本震」が起こって延期され、結局23日に現地入りしたという。そして、もちろん2011年3月11日の東日本大震災では、菅直人首相が12日に原発視察を強行し、その後三陸沿岸も上空から視察した。その結果翌13日に首相から自衛隊派遣人員を10万人態勢に強化するよう指示があった。
(阪神大震災を視察する村山首相)
 東日本大震災を除いて、僕も詳しい日時は忘れていた。多くの人がそうだと思う。日時が確かなのか確認したところ、その時点の報道写真がネット上ですぐ見つかるので間違いない。一方、東日本大震災の菅直人首相の原発視察は記憶しているが、それは当時から毀誉褒貶がある。自民党は批判したし、保守的な評論家などは今も強く批判していると思う。僕が思うに、自民党には2011年の記憶だけ残っていて、「自縄自縛」になっているのではないか。震度7レベルの大地震が起きた時には、首相は出来るだけ早期に現地を見に行ってきたという「政治の知恵」を忘れているのだと思う。
(原発事故を視察する菅直人首相)
 今回岸田首相の現地視察が遅れている原因は幾つか考えられる。お正月に当たって、現地の自治体も被害規模に応じた情報収集が遅れた。2日夕方に羽田空港で日航機と海上保安庁機が衝突する事故も起きた影響もある。正月の用事も立て込んで、なかなか現地入りの日程確保が難しいのも確かだろう。だが、防災担当相が誰かすぐに言える人がどれだけいるだろう。(松村祥史参議院議員である。)政治からの発信が弱いのは間違いない。僕はやはり岸田内閣の支持率低下安倍派裏金問題などが影響している気がする。例えば、現地入りした日に捜査が大きく進展したりすれば、現地でも記者の質問はそっちに集中してしまう。
(熊本地震を視察する安倍首相)
 また岸田首相は「保守派」の批判を気にしているんじゃないかと思う。支持率が下がって、無党派層の多くは離反している。一方、「超保守派」の中には安倍首相が亡くなり、安倍派も解体の危機にあり、もう義理は済んだ的な思いもあるらしい。岸田内閣の政策を批判する保守派も増えているらしい。保守派なら自衛隊が災害救助で活躍することは大歓迎だろうと思うと、東日本大震災の時に自衛隊を大々的に動員したことに批判もあった。「本来業務」である「国防」に影響を与えてはならないということだ。中国や北朝鮮に備える自衛隊員を災害救助に動員して、「国防体制」に隙を見せてはならないと考える人もいるのである。
(1月5日の与野党党首会談)
 さて、そんな中で「れいわ新選組」の山本太郎代表が1月5日に能登町を視察していたという。この問題をどう考えるべきだろうか。その前提として、石川県は交通渋滞を避けるため県外からの訪問を避けるように発表していたこと、5日の与野党党首会談で「当面の訪問は自粛する」という申し合わせを行っていたことがある。ただし、この与野党党首会談は上記写真のように、自民、公明、立憲民主、日本維新の会、共産、国民民主の6党首が参加していた。この写真は山本太郎議員を激しく非難している「維新」の音喜多駿議員のブログに出ていたものである。だが、「れいわ新選組」はこの会談に呼ばれていない。国会の正式機関で議決されたわけでもないから、呼ばれてない政党を拘束するものではないだろう。

 首相動静を見ると、与野党党首会談は5日午後3時1分から開かれている。時間的にも間に合わない。ただ、山本太郎氏はこの日はケガをして、松葉杖だったという情報もある。それなら無理をして行くのはどうなのかという問題はある。僕は何も山本太郎を絶対に擁護するつもりはないんだけど、ただ「国民は行ってはいけない時期」みたいな言い方はおかしいと思う。むやみに皆が行ってもジャマになるだけだが、国会議員は「一般国民」ではない。上でも下でもなく、「われわれ日本国民の代表」である。「れいわ新選組」を支持しない人にとっても、当選した国会議員は自分たちの代表である。岸田首相を支持しない人にとっても、日本国の行政権の代表者は岸田首相である。
 
 ただの市民は遠慮するべきだろうが、代わりに「われわれの代表」は行ってもよいだろうし、むしろ「現地に出掛ける義務と権利がある」と思う。国会議員が国民の代表という意識がない人が多いのか、実際とんでもない議員が多いからか、民主主義の原則を踏まえてない議論はおかしい。それにやはり災害はそれぞれ違った側面があり、「実際に見る」ことで判ることは大きい。現地の行政担当者も、直接首相に要望を届けられるチャンスは欲しいのではないか。首相が来られなければ、他の国会議員でもよい。

 僕はこの地震をきっかけにして、岸田首相がテレビなどに出突っ張りになって、支持率低下に歯止めが掛かるのではないかと想像していた。しかし、どうもそうでもないようだ。僕はその与野党党首会談をやっていた1月5日の午後が現地訪問のチャンスだったんじゃないかと思う。党首会談とその後の経済三団体新年会を欠席するのである。これが出来れば、党首や財界より被災者を優先したというメッセージに出来たはずだ。そういう判断を出来る体力がもう内閣に残されていないのかもしれない。

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