尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

桂米丸、新川和江、田名網敬一、松岡正剛他ー2024年8月の訃報②

2024年09月07日 21時54分46秒 | 追悼
 2024年8月の訃報。日本人は芸能、文学、アート関係などを最初に書き、学者や社会運動、その他の人を2回目に。僕には何と言っても高石ともやさんの訃報に大きな衝撃を受けた。

 落語家で元落語芸術協会会長の4代目桂米丸(かつら・よねまる)が1日に死去、99歳。この年齢には驚くが、引退していたわけではない。2019年9月が最後の高座(新宿末廣亭)で、90歳を過ぎても寄席に出ていた。しかも自作の新作落語で皆を笑わせていたのである。僕は何度も聴いていて元気な人だなと思っていたが、コロナを機に見なくなった。1961年から75年まで続いたテレビ番組「日曜演芸会」で司会をしていたので、多くの人に知られていた。また1976年に芸術協会会長となり、77年の法人化(落語芸術協会)後も99年まで23年間にわたって会長を務めた。1946年に古今亭今輔に入門して1949年に桂米丸を襲名。弟子の桂歌丸が先に亡くなったが、他の弟子に桂米助(ヨネスケ)や桂幸丸桂竹丸桂米福などがいる。新作を作り続けた情熱が凄い。
(桂米丸)
 詩人の新川和江が10日死去、95歳。僕はほとんど読んでなくて、茨城県結城市出身とも知らなかった。疎開してきた西条八十に詩を学んだというから創作歴が長い。1953年に第一詩集『睡り椅子』を発表以来、多数の詩集を刊行し現代詩人賞、歴程賞など多くの受賞歴がある。83年に吉原幸子とともに季刊雑誌「ラ・メール」を創刊して女性詩人を育てた。代表作としては「わたしを束ねないで」が知られている。「わたしを束(たば)ねないで/あらせいとうの花のように/白い葱(ねぎ)のように/束ねないでください わたしは稲穂(いなほ)/秋 大地が胸を焦がす/見渡すかぎりの金色(こんじき)の稲穂」(中略)「わたしを名付けないで/娘という名 妻という名/重々しい母という名でしつらえた座に/座りきりにさせないでください わたしは風/りんごの木と/泉のありかを知っている風」と続く。全文はネット上でも読めるが、力強い言葉だ。
(新川和江)
  グラフィックデザイナー、イラストレーター、映像作家の田名網敬一が9日死去。88歳。武蔵野美大在学中の1957年に日宣美で特選。卒業後に広告会社に勤めるが2年で退社に幅広い創作活動を展開した。極彩色のポップなデザインで知られたが、アメリカ大衆文化の影響だけでなく東京大空襲など戦時の記憶が反映していると言われる。僕は70年代に四谷三丁目にあったイメージフォーラムで、映像作品の特集上映を見た記憶がある。ちょうど現在国立新美術館で大回顧展を開催している。
 (田名網敬一)
 著述家、編集者で「編集工学」を提唱した松岡正剛(まつおか・せいごう)が12日死去、80歳。71年に出版社「工作舎」を設立して.雑誌「」を創刊した。そのことは記憶しているが、「遊」は買ったことがない。自分の方向性と少し違っていたのである。2000年からネット上で「千夜千冊」の連載を始め、一日一冊ずつ同じ著者は取り上げずに完走した。しかし、それも読んでなくて、僕は名前を知っていただけで読んだことがない人だった。文化横断的に日本文化を幅広く論じ、多くの人々に影響を与えた。
(松岡正剛)
 ノンフィクション作家の石川好(いしかわ・よしみ)が19日死去、77歳。伊豆大島に生まれ、大島高校卒業後に兄を頼って渡米し農園で働いた。1969年に帰国し慶応大を卒業、再び渡米し庭園業で働いた。1981年帰国後米国体験を基に作家となり、『カリフォルニア・ストーリー』(1983)でデビューした。1988年の『ストロベリー・ロード』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。これはものすごく面白い本で、カリフォルニアのイチゴ農園の体験を描いている。突然現れた大型新人という感じで、その後日米関係に関して多くの言論活動を行った。テレビにもよく出ていて、1995年の参院選に「新党さきがけ」から神奈川選挙区で出馬したこともあった。(3人当選のところ、5位で落選。)その後、あまり名前を聞かなかったが、今回調べると秋田公立美術工芸短期大学学長や酒田市美術館長などを務めていた。そう言えば忘れてたなあと思い出した訃報。
(石川好)
 作家の大崎善生(おおさき・よしお)が3日死去、66歳。日本将棋連盟に勤務し、雑誌「将棋世界」編集長時代に『聖(さとし)の青春』(新潮学芸賞)で作家デビュー。映画化もされた。『将棋の子』で講談社ノンフィクション賞、『パイロットフィッシュ』で吉川英治新人賞を受けた。2001年から作家に専念し短い作家人生の中で多くの作品を残している。
(大崎善生)
・7月13日に児童文学者の矢玉四郎が死去、80歳。「はれときどきぶた」のシリーズで知られた。
・俳優の下村青が15日死去、60歳。劇団四季で『コーラスライン』『キャッツ』『ライオンキング』などに出演した。

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