ポレポレ東中野で、特集上映「駅と映画」をやっている。ここは写真家の本橋成一氏が持っている映画館だが、本橋さんの「上野駅の幕間」という有名な写真集の新装版が出た記念。日活100年特集も兼ねていて、古い日活映画5本とブレッソンの「スリ」、アニメの「秒速5センチメートル」を上映している。鉄道映画というジャンルはよく聞くが、「駅映画」なんて初めて聞いた。
「七人の刑事 終着駅の女」(1965、若杉光夫監督)は、今回の目玉らしい。昔の上野駅がいっぱい出てくるというので出かけて行った。今調べてみると、この映画はきちんと公開されなかったらしい。「七人の刑事」は、TBSの有名なテレビ番組で、1961年から1969年まで放映された。僕は同時代的に名前は知ってるけど、小学生の頃だからよく覚えていない。テレビと同じキャストで撮られた映画を見ると、芦田伸介や佐藤英夫なんかの顔を思い出す気がする。日活で映画化されたのはこの一本だけ。この頃は「事件記者」というNHKの番組が大人気で、日活で映画シリーズになった。
人気テレビドラマが映画になるときは、今では「映画版」と銘打って「超大作」扱いで製作されることが多い。しかし当時は高い知名度を生かした「プログラム・ピクチャー」で、二本立ての添え物映画が多い。(映画の「事件記者」は50分ほどの中編映画として作られている。)予算もあまりないからだろう、ほとんどロケで撮影され、社会派推理小説みたいな話をドキュメント・タッチで撮っている。それが今になると貴重で、映画そのもの以上に時代背景やロケ地を探るために役立つ。東映の「警視庁物語」シリーズなんか、今見ても60年代日本を考えさせる映画になっている。

「終着駅の女」は、上野駅の列車内で死体が発見されるという衝撃的な設定で、もう上野駅ばかり映されている。第一発見者の駅員はショックで倒れて救護所に運ばれるが、話を聞くとバッグが盗まれたらしい。聞き込みで男の特徴があがってくると、どうも「ショバ屋」らしい。なんだ、それは。場所取りして、その席順を売る仕事らしい。東北新幹線ができる20年近く前の話で、並んで座る場所が取れないと、ずっと立ってないといけない。
殺人捜査を進める中で、置き引き常習犯など駅に生きる小悪党の実態が見えてくる。新聞に載った記事を見て、自分の娘や妻ではないかと名乗り出る人々の姿も哀れである。知り合いではないかと来た女の様子が変だと後を付けてみると、地場のヤクザ大沢興行の姿がチラホラ出てくるよう。という筋立ての中で、駅の諸相だけでなく、地下道の店や駅前の様子などもロケされて出てくる。駅を利用する客や駅員の生態などもロケで出てきて、駅そのものが主人公と言ってもいい映画。

「七人の刑事」は、当時のことだから放映されたビデオがほとんど残ってないそうで、映画版は貴重だろう。若杉光夫監督は、劇団民藝所属で民藝と日活が協力していたために、ずいぶん日活映画を撮っている。だから民藝の俳優もいっぱい出ていて、「七人」外の刑事として大滝秀治が存在感を発揮している。日色ともゑもキャスティングされていたが、よく判らなかった。娘を探すために北林谷栄も登場する。今村昌平監督が「人間蒸発」を撮るのは1967年だが、60年代には家出を「蒸発」なんて言ってた。娘よ帰ってくれなんて、桂小金治アフタヌーンショーなんかでよく取り上げていた。
東京は高度成長中で地方の若者の受け皿はいくらでもあったし、地方農村は解体され親の権威も失墜して行った時代である。東北出身者は、上野駅に降りた後は東京東部に居つくことが多く、都市の下層労働者として滞留していく。「東北」が「国内植民地」だった時代の、「最前線の駅」が上野駅。そういう「見えない戦争」の実態を記録した映画とも言える。
「新しい背広」(1957)という映画がある。東京の建築事務所で働く男女(小林桂樹と八千草薫)の恋愛を描くが、場所は京王井の頭線。その映画でも貧困が大きなモチーフになっているが、23区の西側が出てくるだけでムードが違う。今回上映予定の「乳母車」(1956)は石坂洋次郎原作だが、鎌倉駅と東急九品仏駅が出てくる。小津映画のように鎌倉あたりが一番上で、次が東急や京王線沿線に住んでるカップル。上野駅や東京東部(例えば京成線柴又の「男はつらいよ」シリーズ)は、一番下の階層になる。「下町の太陽」とか「いつでも夢を」「見上げてごらん夜の星を」などが「下町映画」。東京の中に明確な階級対立がある。
僕は高校時代3年間地下鉄上野駅から高校へ通った。大学、大学院の期間も地下鉄と国鉄を上野駅で乗り換えていた。今でも遠くに出掛けるときに、上野駅を利用することがある。今の上野駅もよく知ってるし、映画の中の60年代の上野駅も知ってる。あの地下街の様子もよくわかるし、地下食堂で食べたこともある。今のエキナカの充実ぶりも素晴らしい。上の階にも店もいっぱいあるし、駅ビル自体が数年前にリニューアルされた。僕が今までに利用したJRの駅としては、1位が上野、2位が池袋なんじゃないかな。よく利用してきた上野駅の姿がいっぱい出てきたので、個人的に嬉しかった。
「七人の刑事 終着駅の女」(1965、若杉光夫監督)は、今回の目玉らしい。昔の上野駅がいっぱい出てくるというので出かけて行った。今調べてみると、この映画はきちんと公開されなかったらしい。「七人の刑事」は、TBSの有名なテレビ番組で、1961年から1969年まで放映された。僕は同時代的に名前は知ってるけど、小学生の頃だからよく覚えていない。テレビと同じキャストで撮られた映画を見ると、芦田伸介や佐藤英夫なんかの顔を思い出す気がする。日活で映画化されたのはこの一本だけ。この頃は「事件記者」というNHKの番組が大人気で、日活で映画シリーズになった。
人気テレビドラマが映画になるときは、今では「映画版」と銘打って「超大作」扱いで製作されることが多い。しかし当時は高い知名度を生かした「プログラム・ピクチャー」で、二本立ての添え物映画が多い。(映画の「事件記者」は50分ほどの中編映画として作られている。)予算もあまりないからだろう、ほとんどロケで撮影され、社会派推理小説みたいな話をドキュメント・タッチで撮っている。それが今になると貴重で、映画そのもの以上に時代背景やロケ地を探るために役立つ。東映の「警視庁物語」シリーズなんか、今見ても60年代日本を考えさせる映画になっている。

「終着駅の女」は、上野駅の列車内で死体が発見されるという衝撃的な設定で、もう上野駅ばかり映されている。第一発見者の駅員はショックで倒れて救護所に運ばれるが、話を聞くとバッグが盗まれたらしい。聞き込みで男の特徴があがってくると、どうも「ショバ屋」らしい。なんだ、それは。場所取りして、その席順を売る仕事らしい。東北新幹線ができる20年近く前の話で、並んで座る場所が取れないと、ずっと立ってないといけない。
殺人捜査を進める中で、置き引き常習犯など駅に生きる小悪党の実態が見えてくる。新聞に載った記事を見て、自分の娘や妻ではないかと名乗り出る人々の姿も哀れである。知り合いではないかと来た女の様子が変だと後を付けてみると、地場のヤクザ大沢興行の姿がチラホラ出てくるよう。という筋立ての中で、駅の諸相だけでなく、地下道の店や駅前の様子などもロケされて出てくる。駅を利用する客や駅員の生態などもロケで出てきて、駅そのものが主人公と言ってもいい映画。

「七人の刑事」は、当時のことだから放映されたビデオがほとんど残ってないそうで、映画版は貴重だろう。若杉光夫監督は、劇団民藝所属で民藝と日活が協力していたために、ずいぶん日活映画を撮っている。だから民藝の俳優もいっぱい出ていて、「七人」外の刑事として大滝秀治が存在感を発揮している。日色ともゑもキャスティングされていたが、よく判らなかった。娘を探すために北林谷栄も登場する。今村昌平監督が「人間蒸発」を撮るのは1967年だが、60年代には家出を「蒸発」なんて言ってた。娘よ帰ってくれなんて、桂小金治アフタヌーンショーなんかでよく取り上げていた。
東京は高度成長中で地方の若者の受け皿はいくらでもあったし、地方農村は解体され親の権威も失墜して行った時代である。東北出身者は、上野駅に降りた後は東京東部に居つくことが多く、都市の下層労働者として滞留していく。「東北」が「国内植民地」だった時代の、「最前線の駅」が上野駅。そういう「見えない戦争」の実態を記録した映画とも言える。
「新しい背広」(1957)という映画がある。東京の建築事務所で働く男女(小林桂樹と八千草薫)の恋愛を描くが、場所は京王井の頭線。その映画でも貧困が大きなモチーフになっているが、23区の西側が出てくるだけでムードが違う。今回上映予定の「乳母車」(1956)は石坂洋次郎原作だが、鎌倉駅と東急九品仏駅が出てくる。小津映画のように鎌倉あたりが一番上で、次が東急や京王線沿線に住んでるカップル。上野駅や東京東部(例えば京成線柴又の「男はつらいよ」シリーズ)は、一番下の階層になる。「下町の太陽」とか「いつでも夢を」「見上げてごらん夜の星を」などが「下町映画」。東京の中に明確な階級対立がある。
僕は高校時代3年間地下鉄上野駅から高校へ通った。大学、大学院の期間も地下鉄と国鉄を上野駅で乗り換えていた。今でも遠くに出掛けるときに、上野駅を利用することがある。今の上野駅もよく知ってるし、映画の中の60年代の上野駅も知ってる。あの地下街の様子もよくわかるし、地下食堂で食べたこともある。今のエキナカの充実ぶりも素晴らしい。上の階にも店もいっぱいあるし、駅ビル自体が数年前にリニューアルされた。僕が今までに利用したJRの駅としては、1位が上野、2位が池袋なんじゃないかな。よく利用してきた上野駅の姿がいっぱい出てきたので、個人的に嬉しかった。
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