日本のニュースでは自民党総裁選挙の話ばかりである。高市早苗氏は総務相時代に「放送局が"政治的に公平であること"と定めた放送法第4条第1項に違反した放送が行われた場合」には停波を命じる可能性を否定しないと言ったはずだけど。総選挙の直前に自民党総裁選ばかり取り上げるのはおかしいと言うべきでは…。
まあ、それはジョークだが、その裏で多くのニュースが埋もれている。国際ニュースでは26日に迫っている「ドイツ総選挙」のニュースがすっかり霞んでいる。自民党で誰がトップになるかよりも、ドイツの選挙は国際的にはずっと重要である。何しろ2005年から首相を務めているアンゲラ・メルケルの後継を決めるのである。西ドイツ時代から数えた「ドイツ連邦共和国」としては9人目、ドイツ統一(1990年)後では4人目となる。日本と違って1人が長いから、ちょっと国際ニュースに詳しい人なら戦後の米国大統領とドイツ首相は全員言える。
さてタイトルの「ケニア、ジャマイカ、信号機」だが、すぐに意味を判った人は国際通だ。これはドイツの連立政権の枠組のことである。ドイツでは政党のシンボルカラーが決まっていて、その組み合わせに通称がある。キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)=黒、社会民主党(SPD)=赤、同盟90/緑の党=緑、自由民主党(FDP)=黄である。他に最左派の「左派党」=赤、極右の「ドイツのための選択肢」(AfD)=青があるが、基本的には連立の対象外である。特に「ドイツのための選択肢」とは各党が組まないと表明している。
信号機は「赤黄緑」だから、SPD、FDP、緑の党の連立を指す。じゃあ、「ケニア」と「ジャマイカ」は? とっさに聞かれて両国の国旗を思い浮かべられる人は少ないだろう。画像は下に載せておくが、ジャマイカ国旗は黒、緑、黄になっている。だから「ジャマイカ連立」というのは、CDU・CSU、緑の党、FDP連立のこと。ケニア国旗は複雑だが、黒、赤、緑が三層になっているから、「ケニア連立」とはCDU・CSU、SPD、緑の党連立である。面倒くさくて申し訳ないが、まあドイツでは実際にそう言われているのである。
(ジャマイカ国旗)(ケニア国旗)
戦後のドイツでは単独過半数を獲得した政党は一つもない。だからすべて連立政権。キリスト教民主同盟(CDU)は日本で言えば自民党に当たる保守政党で、バイエルン州だけはキリスト教社会同盟(CSU)と名乗っている。両者は必ず同盟して選挙に臨むことになっている。1966年まではCDU・CSUと自由民主党(FDP)が連立していた。その後、CDU・CSUとSPD(社民党)の「大連立」をはさんで、SPDとFDPが連立してブラント政権が成立した。ブラント退陣後のシュミット政権も同じだが、1982年にCDU・CSUがFDPと連立してコール政権が誕生した。ここまではFDPが付く方が政権に付いていた。
ドイツの選挙は「小選挙区比例代表併用制」というやり方である。その内容に関しては「並立制と併用制」(2017.11.8)で詳しく書いたから参照。これは基本的には比例代表制なので、どこも過半数が取れないのである。さらに戦前にナチスが勃興した反省から「5%条項」があって、得票率が5%を下回った政党には議席が与えられない。(ただし、小選挙区で当選した場合は有効。)2013年にはFDPが下回って議席が取れなかった。緑の党や「ドイツのための選択肢」も最初は議席を取れなかった。今回は予想では先に挙げた6党は5%を越えそうだが、左派党が少し低調なので厳しい可能性もある。
今回は最近になくSPDの支持率が高い。それは首相候補に挙げられているSPDのオーラフ・ショルツ財務相に支持が集まっているからである。前回選挙後には連立枠組がなかなか決まらず、結局「大連立」に落ち着いた。ハンブルク市長だったショルツ氏は、2018年に副首相・財務相となった。CDU・CSUは首相候補がなかなか決まらず、結局ノルトライン=ヴェストファーレン州首相を務めているアルミン・ラシェット氏が選ばれた。しかし大洪水の視察時に談笑していて批判された。緑の党のアンナレーナ・ベーアボック共同代表が一番人気だった時もあったが、最近ではいろいろな「疑惑」が取り沙汰されて人気が急落している。
(ショルツ財務相)(ラシェット党首)
小党の党首が首相になるのは大変なので、結局はショルツかラシェットを中止に連立協議が進むだろう。ショルツの人気が高くなって、左派党から少し支持が戻っているのだと思う。しかし、久しぶりのSPD首相を避けたいと思ってか、主要2党の支持率が拮抗してきたというニュースもある。獲得議席が多かった方が首相になると思われるが、連立協議は難航すると思う。SPDが第一党になった場合、「大連立」か「信号機連立」でショルツ首相の可能性が高いと思うが、場合によっては決着まで何ヶ月かかかるのではないか。いずれにせよ、メルケル首相ほどの存在感を示すのは難しいと思う。
まあ、それはジョークだが、その裏で多くのニュースが埋もれている。国際ニュースでは26日に迫っている「ドイツ総選挙」のニュースがすっかり霞んでいる。自民党で誰がトップになるかよりも、ドイツの選挙は国際的にはずっと重要である。何しろ2005年から首相を務めているアンゲラ・メルケルの後継を決めるのである。西ドイツ時代から数えた「ドイツ連邦共和国」としては9人目、ドイツ統一(1990年)後では4人目となる。日本と違って1人が長いから、ちょっと国際ニュースに詳しい人なら戦後の米国大統領とドイツ首相は全員言える。
さてタイトルの「ケニア、ジャマイカ、信号機」だが、すぐに意味を判った人は国際通だ。これはドイツの連立政権の枠組のことである。ドイツでは政党のシンボルカラーが決まっていて、その組み合わせに通称がある。キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)=黒、社会民主党(SPD)=赤、同盟90/緑の党=緑、自由民主党(FDP)=黄である。他に最左派の「左派党」=赤、極右の「ドイツのための選択肢」(AfD)=青があるが、基本的には連立の対象外である。特に「ドイツのための選択肢」とは各党が組まないと表明している。
信号機は「赤黄緑」だから、SPD、FDP、緑の党の連立を指す。じゃあ、「ケニア」と「ジャマイカ」は? とっさに聞かれて両国の国旗を思い浮かべられる人は少ないだろう。画像は下に載せておくが、ジャマイカ国旗は黒、緑、黄になっている。だから「ジャマイカ連立」というのは、CDU・CSU、緑の党、FDP連立のこと。ケニア国旗は複雑だが、黒、赤、緑が三層になっているから、「ケニア連立」とはCDU・CSU、SPD、緑の党連立である。面倒くさくて申し訳ないが、まあドイツでは実際にそう言われているのである。
(ジャマイカ国旗)(ケニア国旗)
戦後のドイツでは単独過半数を獲得した政党は一つもない。だからすべて連立政権。キリスト教民主同盟(CDU)は日本で言えば自民党に当たる保守政党で、バイエルン州だけはキリスト教社会同盟(CSU)と名乗っている。両者は必ず同盟して選挙に臨むことになっている。1966年まではCDU・CSUと自由民主党(FDP)が連立していた。その後、CDU・CSUとSPD(社民党)の「大連立」をはさんで、SPDとFDPが連立してブラント政権が成立した。ブラント退陣後のシュミット政権も同じだが、1982年にCDU・CSUがFDPと連立してコール政権が誕生した。ここまではFDPが付く方が政権に付いていた。
ドイツの選挙は「小選挙区比例代表併用制」というやり方である。その内容に関しては「並立制と併用制」(2017.11.8)で詳しく書いたから参照。これは基本的には比例代表制なので、どこも過半数が取れないのである。さらに戦前にナチスが勃興した反省から「5%条項」があって、得票率が5%を下回った政党には議席が与えられない。(ただし、小選挙区で当選した場合は有効。)2013年にはFDPが下回って議席が取れなかった。緑の党や「ドイツのための選択肢」も最初は議席を取れなかった。今回は予想では先に挙げた6党は5%を越えそうだが、左派党が少し低調なので厳しい可能性もある。
今回は最近になくSPDの支持率が高い。それは首相候補に挙げられているSPDのオーラフ・ショルツ財務相に支持が集まっているからである。前回選挙後には連立枠組がなかなか決まらず、結局「大連立」に落ち着いた。ハンブルク市長だったショルツ氏は、2018年に副首相・財務相となった。CDU・CSUは首相候補がなかなか決まらず、結局ノルトライン=ヴェストファーレン州首相を務めているアルミン・ラシェット氏が選ばれた。しかし大洪水の視察時に談笑していて批判された。緑の党のアンナレーナ・ベーアボック共同代表が一番人気だった時もあったが、最近ではいろいろな「疑惑」が取り沙汰されて人気が急落している。
(ショルツ財務相)(ラシェット党首)
小党の党首が首相になるのは大変なので、結局はショルツかラシェットを中止に連立協議が進むだろう。ショルツの人気が高くなって、左派党から少し支持が戻っているのだと思う。しかし、久しぶりのSPD首相を避けたいと思ってか、主要2党の支持率が拮抗してきたというニュースもある。獲得議席が多かった方が首相になると思われるが、連立協議は難航すると思う。SPDが第一党になった場合、「大連立」か「信号機連立」でショルツ首相の可能性が高いと思うが、場合によっては決着まで何ヶ月かかかるのではないか。いずれにせよ、メルケル首相ほどの存在感を示すのは難しいと思う。
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