尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

C・マッカーシー、エルズバーグ、ベルルスコーニ他ー2023年6月の訃報①

2023年07月04日 22時32分52秒 | 追悼
 2023年6月の訃報特集。北半球では暑くなるにつれ、訃報が多くなってきた。今回は3回になる予定。海外は比較的すぐに訃報が発表されるようで、まず外国人から。

 アメリカの小説家、コーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy)が13日に死去、89歳。ノーベル文学賞候補とも言われた現代アメリカを代表する作家の一人。軍に入ったり、各地を放浪して、作家として認められたのは遅かった。1992年の『すべての美しい馬』が全米図書賞を受賞したときは、もう60歳に近かった。2003年の『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』はコーエン兄弟が映画化してアカデミー作品賞を受賞。2006年の『ザ・ロード』はピュリッツァー賞を受賞してベストセラーになった。会話を引用符なしで書いたり、暴力的、哲学的な独自の作風で知られた。日本では早川書房から主要作品が文庫化されていて、大型書店に行ったら追悼コーナーがあった。僕はほとんどもってるけど読んでないので近々読む予定。
(コーマック・マッカーシー)
 アメリカで1971年にヴェトナム戦争の戦争過程を分析した、いわゆる「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露したことで知られるダニエル・エルズバーグが16日死去、92歳。海兵隊を経て、国務省、国防省に勤務したが、やがてアメリカの戦争政策に批判的になっていった。ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポストにリークした様子は映画『ペンタゴン・ペーパーズ』に描かれた。国家機密漏洩罪に問われたが、ロサンゼルス連邦地裁で公訴棄却となった。その後は平和運動家、軍縮研究家として活動した。
(ダニエル・エルズバーグ)
 イギリスの俳優、元政治家のグレンダ・ジャクソンが15日死去、87歳。日本では知る人が少ないが、アカデミー賞主演女優賞を2回受賞した大女優である。シェークスピアの舞台から、コメディ映画、テレビではエリザベス1世を演じるなど、確かな演技力で大活躍した。ケン・ラッセル監督『恋する女たち』(1969)とメルヴィン・フランク監督『ウィークエンド・ラブ』(1973)でアカデミー賞。後者は中年男女の不倫コメディで、面白かったけど時代を超えて残ることが出来なかった。1992年に女優を引退して労働党から国会議員となり、2015年まで務めた。政界引退後は女優に復帰して、トニー賞を受賞するなど活躍した。映画『帰らない日曜日』(2021)で晩年の様子を見られる。実に見事な老後を演じて感銘深かった。
(グレンダ・ジャクソン)
 アメリカの俳優、アラン・アーキンが29日死去、89歳。地方の舞台からスタートし、ブロードウェイに進出。1966年の映画デビュー作『アメリカ上陸作戦』でアカデミー賞主演男優賞ノミネートされ、一気にスターとなった。『愛すれど心さびしく』(1968、マッカラーズ『心はさびしい狩人』の映画化)で再びアカデミー賞主演男優賞にノミネート。次第に渋い脇役に回るようになり、21世紀になって『リトル・ミス・サンシャイン』(2006)でアカデミー賞助演男優賞を受賞した。
(アラン・アーキン)
 イギリスの俳優ジュリアン・サンズの死亡が6月27日に確認された。65歳。1986年の『眺めのいい部屋』が評判となり、日本でも人気となった。その後も『裸のランチ』『リービング・ラスベガス』などで順調に活躍した。登山愛好家で、1月にカリフォルニア州の山にハイキングに行って、13日を最後に消息を絶っていた。6月24日に遺体が発見され、27日に身元が確認された。
(ジュリアン・サンズ)
 フランスの映画監督、ジャック・ロジエが2日死去、96歳。フランスの「ヌーヴェル・ヴァーグ」を代表する映画監督の一人だが、非商業的、自由で即興的な作風で、日本で公開されたのは近年のことだった。『アデュー・フィリッピーヌ』(1962)、『オルエットの方に』(1973)、『メーヌ・オセアン』(1986)などの長編の他、ゴダール『軽蔑』のメイキング『バルドー/ゴダール』(1963)などもある。こういう映画もあるんだという自由な映像が魅力。今夏ユーロスペースで追悼上映が予定されている。
(ジャック・ロジエ)
 ブラジルの歌手、アストラッド・ジルベルトが5日死去、83歳。1959年にジョアン・ジルベルトと結婚、1963年にアメリカに移住した。プロ歌手ではなかったが、夫のレコーディング時に歌声が素晴らしかったので、英語版の『イパネマの娘』を歌って世界的に大ヒットした。ボサノヴァの代表的歌手とされるが、そういう経緯からブラジルでの評価は高くないと言われる。
(アストラッド・ジルベルト)
 アメリカの物理学者、ジョン・グッドイナフが25日死去、100歳。リチウムイオン電池の研究で、2019年にノーベル化学賞を、日本の吉野彰、イギリスのウィッテンガムと同時受賞した。受賞時年齢97歳は、ノーベル賞史上最高齢の受賞となる。
(ジョン・グッドイナフ)
 アメリカの陸上競技選手、ジム・ハインズが3日死去、76歳。人類で最初に100メートルを9秒台で走った人である。1968年の全米選手権で手動計時で9秒9を記録。メキシコ五輪代表に選ばれ、五輪史上初の電動計時で9秒95を記録して金メダルを獲得した。この記録は1983年まで破られなかった。
(ジム・ハインズ)
 イタリアの元首相シルヴィオ・ベルルスコーニが12日死去、86歳。大実業家でメディア王と呼ばれた。90年代初期に積年の保守政界汚職が摘発され、保守政界が再編されたとき、新党「フォルツァ・イタリア」を結成して、一躍首相となった。94年~95年、2001年~2006年、2008年~2011年に掛けて首相を務めた。あまりにもスキャンダルが多く、公職追放されたこともあるが復活した。庶民的と呼ばれたりもするが、もう僕に書くべきことはない。「やっと死んだか」ということだろう。
(ベルルスコーニ)
セオドア・カジンスキー、10日死去、81歳。一時はカリフォルニア大学バークレー校の最年少教授だったが、1969年に退職して山の中で原始的生活を送った。現代文明批判を強め、社会に訴えるためとして1978年から95年にかけて、全米各地の現代技術関係者に爆弾を送りつけ、その結果3人が死亡した。「ユナボマー」と呼ばれたが、96年に逮捕された。仮釈放なしの終身刑を宣告され、ノースカロライナ州の連邦医療刑務所で死亡した。
ハリー・マーコウィッツ、22日死去、95歳。アメリカの経済学者。1990年ノーベル経済学賞。金融資産運用の安全性を高める研究。
クリスティン・キング・ファリス、29日死去、95歳。アメリカの人権活動家。マーティン・ルーサー・キングの姉。
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