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震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

帝国 実戦教師塾通信七百九十八号

2022-03-04 11:49:20 | 戦後/昭和

帝国

 ~ウクライナ侵攻・上~

 

 ☆初めに☆

ロシアの提案する休戦の条件が、思い通りにウクライナを分割するのが狙いであることは間違いありません。それで早く戦果を出そうとしている。今回の戦争について早く書いて、と多くの読者からリクエストいただきました。事態の進展に気がはやりますが、どうすればいいかなんてのではない、どうなっているのかという点でのレポートになります。悲観的な内容になるかもしれませんが、しっかり見るためつかんでおきたい、と思っています。

(参考文献‥和田春樹/長尾久/松田道雄/田中克彦/高島俊男/竹内好 各氏著作 レーニン全集など)

前回の続きは、この二回の投稿が終わってからにします。

 

 1 どこまで拡げる気か 

 最初に断っておかないといけない。この「帝国」に関するレポートは、あくまで「帝国」的体質が繰り返し現れるという意味であって、その国の民衆全てがそうであるわけではない。そうでなければ「改革」やら「革命」は起きない。以上が前提である。

 ロシアの今回の侵攻は、一体どこまでエリアを目論んだものなのだろう。八世紀頃と言われるが、ノルマン族の一派「ルス族(ロス族)」がスラブ人を同化した。これが後の「ルシア(ロシア)」になる。言わずと知れたゲルマン人大移動の、約四世紀後だ。つまり、スラブ地域の民族として、あるいはノルマン入植後に土着したのが「ロシア」ということだ。こうして汎スラブ主義と言われる思想は、広いエリアを抱える。この「スラブ」を冠した国が、現在のセルビア、スロバキア、スロベニア、そして今はボスニアとなった、かつてのユーゴスラヴィアと考えれば、その広さが分かる。これが西のゲルマン世界(汎ゲルマン主義)との歴史的対立として続く。ことのついでに言っておけば、このあと南からイスラム世界が登場し、民族対立に宗教の対立が加わる。バルカン半島が「ヨーロッパの火薬庫」と言われるゆえんである。

 では、ロシア東部への広がりはどうか。日本で蘭学や国学が盛んだったころ、ロシアではまだ「農奴」として、人身売買が行われていた。領主に開墾するよう命じられた農地だが、納税や労働の厳しさにそれを捨てて逃亡する農奴もたくさんいた。彼らは辺境やボルガやドンの河に逃げた。そこまで追跡して来た警察や軍隊と戦うも(プガチョフやステンカ・ラージンが有名)鎮圧される。逃亡先となった地での仕事が「国境警備」だった。そして帝国の手先として、ポーランドやシベリアへ領土を広げる。最近のニュース上でよく聞く「エカテリーナ女帝」の時代だ。この女帝は東方のシベリアを越え、ベーリング海を越えてアラスカまで、そして凍ることのない海港を求めてサハリンまで進出。この時、江戸幕府・老中(松平定信)は、千島の警備を命じた。エカテリーナ恐るべし。

 暴力性・戦闘性にたけていたのが、今や農奴から帝国の先兵となったドン河沿いのドン・コサック(カザック)である。ロシア革命の発端となった「血の日曜日」(1905年)では、皇帝請願に向かった丸腰の民衆にサーベルと馬で突っ込んだのも、このコサック隊だ。このコサックがカザフ(カザック)地方として、名前を残している。ロシアはどこまで?と聞かれた時、帝国の時代を引き継ごうとするものは、以上の広大なエリアを思うに違いない。これに対抗してあるのは、汎ゲルマン主義として、世界で最も優秀なドイツ民族、という考えである。いまも繰り返し立ち現れるネオナチの台頭は、そのことを示す。

 

 2 中華

 この記事のテーマではないが、ロシア侵攻に中国がどう対応するか目が離せない。スキに乗じて台湾・尖閣諸島、そして沖縄まで虎視眈々としているという見方を、ばかばかしいとは言えない。ので、中国が自らの国土をどのように考えているか押さえておこう。前に書いたが、中華人民共和国の「中華」という呼称は国ではない。「中華」は中国を支える思想を指すもので、英語で中国が「 People's Republic of China」とある通り、中華なるものは見当たらない。差別的名称と言われる「China(シナ・支那)」は、しっかり残されている。というか、古くからの呼び名が「使ってはいけない」言葉となったのは戦後で、日本に対してである。今も蔑(さげす)みを込めて言われる「シナ人めが!」という言動を、戦争中に多くの日本人がしたからである。オメエらには言わせねえぞ、という中国の思いがある。

 シナはさておき、この「中華」がくせ者である。世界の中心はここに、という意味だ。では今度は「スラブ」でない「中華」なるものは、どこまで延びるのか。これが「東夷・南蛮・西戎・北荻(とうい・なんばん・せいじゅう・ほくてき)」という通り、どこまでも延びる。方角を示すあとの漢字の意味は、何となく分かると思うが、すべて「けだもの・虫けら・くず」といったもので、そんなものは蹴散らしてしまえというのが「中華」だと思うと、背筋が寒くなると同時に納得できるわけである。最近の南シナ海での傲慢な行動やネパールへの侵出。遠いところでは、ベトナムへの軍事介入(1979年)は、ベトナム戦争が終わった4年後である。まぁそれぞれに中国の言い分はあるのだが。そしてウィグルや台湾、香港は自国の内政問題だということになる。

 我々はすでにシルクロードで偉大な「中華」を実証している、次は「一帯一路」(習近平)というわけだ。中国にすれば、別に目新しい考えではない。帝国ロシアを上回る、広大な世界制覇路線と言える。繰り返すが、私のロシアや中国への批判は、みんな「帝国の野望」を持って突き進んでいる連中に向けている。お間違いなく。

 

 3 ロシアの人々

 もう字数が十分にかさんだので、帝国の対極にある民衆のことを少しだけ。世界中で今回のロシア侵攻に対して抗議行動が起こっている。ロシア国内も然りである。それに対して日本の軟弱な評論家どもが、ロシア国民の抗議は生ぬるいという非難を浴びせている。ナバリヌイ毒殺事件が、まだ記憶に生々しいというのに、命をかけろみたいなことまで言ってるやつもいるわけである。プーチンを批判する次期大統領立候補者という、それだけで殺される。ヨーロッパ、とりわけドイツ・メルケルの力が大きいが、ドイツで治療してなんとか助かったという事実が語るのは、ロシアの政府を批判することが「命がけ」であるということだ。ついでながら、ナバリヌイを治療したロシアの医師は、その後原因不明の急死を遂げている。パワハラのおかげで上司に物が言えないなんていう、どっかの国のレベルではない。ロシアの人々も戦っている。

 

 ☆後記☆

日本にそういう「帝国」の思想はないのか、という危惧も出て来そうですね。そう言えば「八紘一宇」なるものが、日本では良く話題になります。先日もタレントをリタイアした、無知な議員が国会で誇らしげに言ってましたね。日本が「神の国」であることには、私も異存はありません。でもそれは、日本書紀に始まるなんて新しいもんじゃない。日本の神は石や木や山に宿る。そんな風に始まり根付いてるって話は、またどこかでいたします。

次回は、帝国ロシアとロシアの人々、そしてスラブ圏の人々が現在までどう歴史を歩んできたのか、というレポートになります。引き続きよろしくお願いします。

今月のこども食堂「うさぎとカメ」まで、あと二週間となりました。会食再開しますが、皆さんきっと、お持ち帰りの方が多いのではないか、と私たちは思ってます。いずれにせよ、また皆さんの笑顔が見られることを楽しみに、あったかいトン汁を作りたいと思ってます。よろしくお願いします

チラシ裏面です。拡大して読んで下さいね。

先月の「うさぎとカメ」は、全市的に学級閉鎖が渦巻く中だったので、シチューはたくさん余るんではないか、という私たちの予想でした。しかし、いつものような「一気」ではく、切れ目なく訪れるこの日の皆さんで、シチューは「完売」となりました。小さい二人だけで来たお客さん、激しい兄弟げんかを続行しながら来てくれた五人家族など、みんな笑顔で帰ってくれて嬉しい一日でした。また、今月もおいでください


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