実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

実戦教師塾通信百六十六号

2012-05-19 11:59:08 | 福島からの報告
 一年前と今
       ~山田真医師講演より~


 楢葉の学校


 前回の楢葉牧場主さんの話から始めよう。現在、楢葉町にいた子どもたち(小中学生)は、その多くがいわき市内の学校に通学している。同時に、「いわきにも楢葉の学校を」という声をバックに、楢葉の子どもたちだけが通う学校を開設している。開店休業中の会社のビルをレンタルして、そこに子どもたちが通っている。しかし現状は、そこに各学年14~15人くらいの子しか通っていない。子どもたちがすでに、いわき市内の学校、そして地域に馴染んでしまったということだ。では、その14~15人の子どもたちは、今もいわきの学校(地域)に馴染めていないということですか、という私の質問に、主さんは、う~んとうなった。小学生の娘さんがいる主さんは、子どもたちが(楢葉)の学校がなくなる、という心配をしているんじゃないか、との考えだった。
 今までどおり、楢葉町の学校の教員も教育委員会もいるのだ。教員は楢葉の子どもたちがいる学校にお手伝いとして派遣されている。職員室に彼らの机はあるのだろうか、などと私は想像した。


 福島市・郡山

 その福島での小学校の話が、去年の今頃ずいぶんと巷で話題になった。
 それを思い出したのは、震災(原発事故)から一年、ということでされた山田真氏の講演(記録)にふれたからだ。この山田真氏を知らない方もいると思うので少し解説する。山田は東京で診療所を開設していて、そこで子どもたちを診ている。子どもに寄り添った診療は、例えば発達障害を病とする時の現在の世論の姿勢に批判的な立場をとる。なにより「健康であらねばならない」という考えから改めようという姿勢がいいと思える。山田は、大昔、東京で定期的に開かれていた「子どもの健康を考える会」のメンバーでもあった。この会は、毛利子来、石川憲彦を初めとした小児科医や看護士中心で構成された会だ。私も微力ながら参加していたので、山田の存在と考えを知り、その時から好感を持っていた。
 その山田が「福島を切り捨ててはならない」という演題で話したことだ。多くの「?」を私は持ったのだが、これは山田がいう「福島市は完全に沈黙させられているが、郡山は闘いを組めている、いわきは復興を目指している、というようにいろいろなのだ」と話していることを考慮して読んだ方がいいのかも知れないと思った。山田がいう「福島」は「福島県」か「福島市」なのか、を注意した方がいいと思えた。

①福島の小中学生が全国で一番福島産の食材を食べている。
②福島産以外の食材を使ってほしいと要求する親はまわりの保護者から非難される。
③子どもを幼稚園(東京)に入れようとしたら「福島のひとは遠慮してください」と断られた。
④福島に残った人が「心配だ、不安だ」言うと、それには風評被害だ、と非難が集中する。

一年前のことを思い出すと、確かに思い当たることがあった。読者の皆さんも去年の今頃のことを覚えているだろうか。このブログでも取り上げた。つくばの小学校で「福島の子どもの入学を拒絶」ということで、つくばの市長だったか茨城県教委だったかは忘れたが「科学的根拠のない『差別』はよくない」なるコメントを出したことや、千葉県内の小学校に転入希望を出した福島の保護者が、担任から「福島だということを隠しますか」なる「好意ある」提案をされたことなどがニュースになった。今も思うが『差別』ではなく、『愚弄』であり『侮辱』じゃないのかね。
 また、同じく去年の6月のブログで報告したが、いわき市の小中学校は、軒並み「遠足/運動会」を中止にしたのだ。
 私は講演録を読んですぐ、議員さん(いわき市)に確認した。今年は「校外(校舎外)の行事をすべて復活します」という返答。さて、給食は「いわきに関しては『できるだけ遠くの県の食材を』ということでやってます」ということだった。やはり、この講演の「福島」は、「福島県」でなく「福島市」と読み替えた方がいいのかも知れない。あるいは去年のことなのか。
 ④の「心配、とはうかつに言えない」ことで思い出すことは、昨年、福島県の中通りエリア(福島市・郡山など)で高い線量の放射線が検出されるようになったあとの出来事だ。当時のボランティアに伝わってきた話は、郡山や福島(市)の軒下で線量を計っていると、市の職員らしき人物が「何をやってる」ととがめてくる、ということだった。実際そう言われた人も仲間にいた。
 山田のレポートを読むと、福島は「放射能タブー」のようなバリアが張られているかのように思える。そんな息苦しい場所だったかと思って振り返ると、確かに一年前はそう言えなくもなかったように思う。「孫の外での散歩もダメだ、と嫁から念を押されている」お婆さんのことも思い出した。あれから線量も確かに落ちた。学校の砂場からブルーシートも見えなくなっている。いわき市は人口が格段に増えた。避難していた人たちが戻ったからだ。そして双葉地区の人たちが、他県や会津からこのいわきに移動してきているからだ。もちろん、野田首相が「収束宣言」したような安心状態ではない。そして、福島の食材がいわき市の給食から排されていることもいいことではない。仕方がないのだ。ゴールや見通しはまだまだ見えない。
 そんなわけで、山田の「完全沈黙の福島市」や郡山の様子を聞いて、確認していかないといけないようだ。


 「維新の会」

 山田真氏の紹介のくだりで、「発達障害」のことにふれて思い出した。今月の7日だったらしいが、例の「維新の会」が保護者に謝罪している。ご記憶のことと思うが「条例案」文面に「発達障害は親の愛情不足が原因」とあったことが物議をかもした。親の会は「脳の障害が原因」として、抗議したのだ。
 少し言っておかないといけない。発達障害が病気ではないとは私も思わない。治療は必要で、早期の薬の服用で本人のつらい感覚や生活が改善されることも見ている。当事者がこれを読んでいるかも知れないと思い書いておくが、有名なリタリンはかなり強い薬で、簡単に勧める医者もいるが、服用は慎重にした方がいい。
 いくつか疑義があることを言ってはおきたい。
 脳に障害がなくとも、たとえばADHDなる診断をくだすことが現実にはある。今は病気というより「症候群」という扱いが適切だと思われている。
 もうひとつ、こっちが大事だ。親や教師が子どもを統制出来ないときに、簡単にその子を発達障害としてしまうことが起きていることだ。教師の場合で言えば、新たな子どもへの「まなざし」が、この発達障害をめぐる世論の中で作られたことは紛れもない事実だ。


 ☆☆
夏場所、どう思います? とうとう白鵬は優勝争いにからんできました。横綱の中で何が起こっているのでしょうか。先場所は優勝インタビューで初めて「怪我」のことを告白。今場所は場所中です。怪我をしていたのか、という驚きを私は持ちませんでした。これも先場所のインタビューで訴えた「疲れ」、そっちにつながりました。朝青龍の引退と賭博事件、天皇杯のない優勝。そして東日本大震災。多くのことが角界の頂点たる横綱にのしかかっていた。おそらく人一倍責任感の強い横綱の孤独ばかりを考えました。
 「横綱の意地」とかいう馬鹿どもの雑音に惑わされることなく、あと二日間、勝負の世界をみせてほしいと思ってます。

 ☆☆
ケーブルテレビ、某会社のインチキな「キャッシュバック」に腹を立てて、先日別会社に変えました。ただのサービス期間ということで、たまたま昔放映された『ハケンの品格』をみました。「資格を全部書き切れないので、書けるだけ『記入いたしました』」という篠原涼子のセリフに、驚愕しました。今だったら間違いなく『記入させていただきました』です。2007年、まだ「させていただきます」病はなかったようです。言ってみれば「最敬礼状態」のこの言葉を、全員が全員にオールラウンドで使っているマヌケな状態をいつまで続けるんでしょうか。先日、ポストに入っていた配達会社の「届けさせていただく日を、連絡させていただきます」のトンチンカンなメモ! ああっ、ったく!

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3 コメント

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Unknown (石川晋)
2012-05-22 15:36:33
たしかリタリンは、ADHDへの処方は禁止になったと思います。ぼくの教え子も何人か、かつては服用していました。
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Unknown (琴寄)
2012-05-24 09:58:45
じゃあリタリンは、ADHDに関して医者が処方出来なくなったのですね。良かったです。
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忘れてはならないもの (リーガルハイ)
2013-07-19 16:02:21
この法華経を閻浮堤に行ずるということは、普賢菩薩という生命の力によるのである。この経すなわち三大秘法の南無妙法蓮華経が広宣流布するのは、普賢菩薩の守護の働きによるのである。

繰り返す

此の法華経を閻浮堤に行ずることは普賢菩薩の威神の力に依るなり、此の経の広宣流布することは
普賢菩薩の守護なるべきなり(御義口伝巻下)
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