実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

伝える? 実戦教師塾通信六百九十四号

2020-03-06 11:02:51 | エンターテインメント

 伝える?
 ~『Fukushima50』公開にあたって~


 ☆初めに☆
ウィルス一般ではっきりしていることは、感染の山が一度でなく、その後何度か訪れること/感染を見てない地域や国にも程度の差はあれ影響が及ぶこと、です。それでやっと「共存」の道が開かれます。
 ☆ ☆
スペイン風邪の恐怖をあおる人たちがいますが、一千万人が亡くなったとされるこの感染症は、栄養状態と衛生状態の劣悪な第一次大戦に暴れ回ったものです。このことを無視して騒いでいる人たちには、注意が必要です。
 ☆ ☆
そして本日、「不要不急」の外出自粛を言われる中、映画『Fukushima50』は公開されるのでしょうか。

 1 郡山・特別試写会
 ひと月以上前なのだが、映画『Fukushima50』の公開にあたり、郡山で試写会が行われている(1月23日)。

試写会翌日の「福島民友」。トップが三段抜きで、社会面ではほぼ全面を使う扱いだった。二回の上映に530人が参加した。

 

 2 「残された」現場

「当時の現場の厳しさと緊張を感じた」
「被災者でもある原発関係者の当時の思いが伝わってほしい」
「事故後は恐怖より、自分に何ができるのかという思いでいっぱい……だった」

三人の観客の思いがつづられている。読んで分かると思うが、ひとり目以外は東電関係者である。「当事者の方々にどう受け止められるのか不安もある」と語ったのは、吉田昌郎所長を演じた渡辺謙である。命がけで原発の暴走と戦った「当事者」は、それが報われたのだろうかと思っていた。私たちは、原発現場の必死の戦いは当然だと、どこかで思っていた気がする。

 あの時、原発決死部隊は自らの意志で「残った」のだが、やはり「残された」、より正確には「残らざるを得なかった」人たちだった。たとえば、東電本社の「撤退発言」は、その存在をいくら否定しようとも疑わしかった。政権は現場の足を引っ張った。そして、686号でも書いたように、50人(以上の)決死部隊の報道は、外国メディアが口火を切った(当時は「フィフティー」ではなく「フィフティーズ」だった)。「不能化した制御システム」と、それを何とかしようとする部隊が「少数」だったのを「報道してはいけない」ことだったのは間違いない。国内メディアは「横並び」を守った。現場の死に物狂いの戦いは、闇の中のままだった。

 

 3 伝えて欲しい 

 「伝える」(監督)とか「風化させない」(新聞タイトル)とは、居心地が悪過ぎる。私たちの使う言葉としては、おこがましくないのだろうか。私たちは逃げようとしたか、逃げた。だからだ。しかしそれは当然のことでもあった。それが正しかったことを、映画は示しているはずだ。

 「伝える」のも「風化させない」のも、当事者以外は難しい。よそものが出来るという思い上がりは、慎むべきだ。そこで申し訳ないが、はっきり言う。原発決死隊の当事者は、果たして「伝える」ことをして来ただろうか。様々な調査に応じて来たことは知っている。それでも、吉田所長を頂点として「伝えられない事情」があった。吉田所長が「語らずに」亡くなったことで最も懸念されることは、「人間は原発を抑え込める」という勘違いが歩きだすことだ。

 また、原発が数カ所か再稼働されている現実に対し、決死部隊の方々は一体どのように考えているのだろう。その中に、決死部隊の「伝えないといけない」ことが必ずある。しかし、それを言うことは許されないのだろう。

 NHKのインタビュー上、映画制作に関わる中でどんなことに注意したかという質問に、「どっちに転んでもプロパガンダになること」と答えたのは、当直長を演じた佐藤浩市である。その通りだ。原発そのものが、紛れもない政治性を背負っているからだ。この「原発の存在そのもの」への問いを、映画は設定していない。原作者は「原発がイデオロギー論争」(門田隆将)にされている、という考えだからだ。だから決死部隊の勇敢/悲壮/家族をめぐる切なさ、が強く押し出される。決死部隊は勇敢に戦った。しかし、やはり振り回されたのだ。決死部隊の存在なく原発の暴走を防げなかったのは確かだ。しかしそこには更に、いくつかの「偶発的出来事」があった。それなしには原発の暴走が止められなかったことを、映画は語ったのだろうか。

 彼らに感謝や称賛を、少しも惜しむものではない。でも、私たちに「原発そのものの正当性」を考えさせることなしに、彼らは報われるのか。

 一体何を「伝える」のだ。

 

 

 ☆後記☆

あの時毎日、政府は学校にいつ休校を宣言させるのだろうと、天を仰ぎながら念じていました。自主的に春休みを前倒ししていなくなる生徒も多かった。正しい判断だったと思います。そしてとうとう避難指示は出ませんでした。さて、今回は全国に「休校『要請』」です。考えちゃいますねえ。

我が家の桃?も元気です。今はこの時よりもっと大きく咲き誇ってます。

 ☆ ☆

マスクの品薄状態に驚いたついでに、影響を受けているという「コロナビール」にエールを送ろうと思いスーパーに行ったのです。しかし、コロナのコーナーは空!でした。

 ☆ ☆

三日前、近くの小学校から、普段は聞こえない元気よい校歌が、窓から流れてきました。修了式だったのですねえ。教室で!


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