実戦教師塾・琴寄政人の〈場所〉

震災と原発で大揺れの日本、私たちにとって不動の場所とは何か

実戦教師塾通信百八十二号

2012-06-30 10:43:27 | ニュースの読み方
 「足湯」の語らい その2/ニュースの読み方



 古着より分け


 いやあ、こんなデカイ穴子の天ぷらがよ、そう言っておばちゃんたちが嬉しそうについ先日の「くさの根」炊き出しを振り返る。米がうまがったよなぁ、この辺の米だねえって言ってたがなぁ。穴子も穴子の天ぷらも食ったことあっけどさ、穴子丼てのは初めてだ。でもあんなデッカイ丼にあんなデッカイ穴子じゃなあ、食い切んねぇ。勿体ねえがらよ、持って帰ったよ、そうデッカイ声で笑った。だから子どもはあの半分で良かったよなぁ、勿体ねえよ。珍しく少し顔を歪めたのは、子どもたちが残していったのかも知れない。
 次の日、集会所大部屋の隣で古着の仕分けをした(冒頭写真です)。言い出しっぺの女の方を中心にどんどん仕分けて行く。これが小さいおばあちゃん、これは妊婦みたいな人いっぺ、あの人がいいべよ、とご近所の見知った顔をいいながら仕事が進む。昨年ボランティアで知り合ったヘルパーさんが、仲間を通じて古着を集めてくれた。その古着をこの日、彼女は持ってきてくれていた。私の仲間のものとあわせて結構な数の服が集まった。
「オレのこと、いぐづだと思ってんだ」
「(二の)腕がタプタプいってんのによ」
「オレには似合わめえってな」
「娘にはいいがな」
などと、やっぱり女の人はいいなと思う。みんな自分のものを「ちゃんと」確保するのも忘れていない。そんなこんなは、おばちゃんたちが被災者であることをついうっかり忘れさせるのだ。終わってから大部屋に移り、いつもの茶飲み話はそのことを私に思い出させる。
 いつも元気な人がちっとも古着に手を出そうとしないので、私は、どうしたんですか一緒にどうぞ、と促したものだが、いつの間にか姿を消していたことを私はいぶかった。するとサブリーダーさんがいう。あの人も大変なんだよ。聞けば、娘さんがいつの頃からかずいぶん潔癖症になって、古着は臭い汚いって言うらしい、洗濯や洗い物もずいぶんと気をつかうらしいんだ、そう続けた。
 私はその彼女のことを、物静かな人ではあるが、たくましく笑みをたやさない人だと思っていた。
「分からないもんでしょ?」
そう副会長さんが言った。その彼女は自分の娘とこの仮設で同居しているのだ。どのような理由からの娘の変化なのか、また孫はいるのかなどと思いながら、私は彼女がいないため空いている、いつもの椅子を見る。また、サブリーダーさんは、自分の息子の東京仲間(かつての同僚)が集めた義援金が届いた時の話をして、思わずなのだろう、
「もう有り難くて…」
そこで言葉を切らした。そしてみんな豊間(いわき海岸)の震災前の暮らしを話す。瓦も全部新しくふき替えて、壁も分厚く塗りなおして、台所や風呂はシステムにして、トイレもウォシュレットにして、さあ、これで全部終わったと思ったら、それから三年もしないでこんなことになっちまって…
 でも、みんなきれいに片づけちまってよ、何もみんな片づけっことねえんだ。そう言ったのはニュースにもなった灯台のことである。ここにやってきた芸術家と地元のみんなが作った「瓦礫の灯台」のことだ。豊間の夜空と、むき出しの津波の現場を煌々と照らすその姿を一度だけ見た。でもその姿は二カ月となかったと思う。思い出すのが恐ろしいという声もあったのだろうか。確か塩谷灯台が復活してすぐに撤去されたはずだ。
「またしょっちゅう顔見せに来て」
集会所を出るとき、そう言われる。
 嬉しい。


 ニュース①「東電新社長インタビュー」

 28日の読売新聞に、東電新社長の読売単独インタビューが載っている。読んだだろうか。怒りも呆れるも通り越して、私は笑ってしまった。傑作である。全文載せたいところだが、そうするといよいよ腹も立ってきそうなので、端的な部分を取り上げよう。
〔問〕
福島第一原発の廃炉や除染費用をどう工面するのか
〔答〕
兆円単位の資金が必要と言われており、民間会社1社では持ちきれないのは事実だ。原子力損害賠償法では電力会社が全額を背負うことになっており、リスクが高すぎる。以下略

 笑えないか。「答えるにあたっては客観性と慎重を期した」といういい訳も考えられるが、「誠意」という言葉を知らない。まず「必要と言われており」と言うのだ。つまり「私は良く知らない」ということだ。でないとこう言えない。知らないわけは「『新社長』なので」とでも言うのか。次だ、「民間会社1社では持ちきれない」って、一体どこの「民間会社」だ? 「私の会社だけでは無理だ」と言いなさい、まったくの「人ごと」である。そして、「全額を背負うこと」は「リスクが高すぎる」だと? 待ってくれ、この言い分が原発という事業の開始前に「これではリスクが高すぎるので、国に応分の負担をして欲しい」と出されるなら分かる。でも事故はもう「起こってしまった」のだ。なのにその後に言うことなのか? 今さらジロウって古い曲を思い出したよ。いいですか、その場所にはもう行けないのですよ、「対策費用をどうする」という質問に答えなさい。こみ上げる笑いは乾いているのである。
〔問〕
会社更生法の適用申請は念頭にあるか
〔答〕
破綻するリスクがないとは明言出来ないが、(国による支援で東電が存続する)現在の筋書きを崩さずに再建出来るのが一番だ。

 微塵も後ろめたさがない。すみませんが、迷惑かけますがよろしくお願いします、のひと言ぐらい普通は言うよ。見事なものだ。「国による支援」は公的資金のこと、つまり国民の預貯金のことだ。国土だけでなく、国民の財産まで汚染・散財していることを忘れるなよ。電力会社の株主総会(ニュース)を見て分かる通り、多分あれが「謝罪」であり「説明」だと本人たちはきっと思っている。ウソをつくとか、演技をするとか意地悪をするとか、そんなレベルではない。震災前からずっとやってきた数えきれない「謝罪」と「説明」の中のひとつにすぎない。みんな何を怒っているのか、と考えるような高級なレベルではない。「○○の時は××と言う」マニュアル/システムが作動しているだけだ。『夕鶴』(木下順二)で、与ひょうがただ口をぱくぱくと開けているようにしか見えないと、つうが嘆き悲しむ場面、あの場面がちょうどあてはまるかな。与ひょうは大まじめに、
「都さ行ぐだ、そしてお金いっぱい儲けるだ」
と何度も言っているのだが、つうには聞こえない。与ひょうは真面目に言ってるのだ。
 東電に言葉を期待する、ということが無駄だということが再度(またしても、か)確認出来たということだ。


 ニュース②「AKB指原」

 「指原賠償訴訟」なるニュースがネットで流れた。なんのこっちゃ、プライベートなことに口を挟まれた指原が怒り心頭、まさか裁判かと思ったら違った。逆だった。指原を「処女だと信じてたくさんCDを買った」野郎が騒いでいるらしい。こんな小賢しい智恵をどこで教えられたの?坊や、みたいな感じだ(まさかオジサンではないだろう)。この間の「元彼」だってどこから焚きつけられたのか知らんが、同じことだ。振られた恨みやら金や、また有名への妬みやら動機はいろいろあるだろうが、どうせよそから煽られてやっていることは見えている。ケツの青いガキンチョが騒いだところで誰も相手にしてくれるものではない。それは小沢のカミさん問題にしても同じだ。大きな力が働いている。小沢の場合、この絶妙なタイミングで、そして一斉に報じられたわけだ。カミさんの文面が「離婚します」でなく「離婚しました」とあったことに違和感を覚えた読者も多いことだろう。
 さて指原問題は何を意味するのだろう。まずAKBの「恋愛禁止」は「現時点」だけでなく、「過去」も対象になった、ということだ。メンバーに多かれ少なかれ「過去」はあるはずだ。「順位」の対象として「過去」が浮上し、彼女たちの怯えるものがまた増えたということだ。おそらくは「過去」のいくつかは彼女たちにとって「大切」なものだ。しかしそれは「消す」ことを余儀なくされている。汚れのない美しさでいなさい、そういうお達しである。そして、指原処分を通して、その「純潔信仰」!?をファンは続けることが出来る。て、この信仰心は男が持つんだろなあ。
 指原は福岡に「左遷」された後も、週刊誌などメディアから「フェラ写真」やらと、追撃を受けている。こういうのをスケープゴートというのだ。明らかに標的とされた指原報道から、
「ミスをすれば『左遷』という報復だけではすみません。『抹殺』という場所にまで追い込まれますよ」
というメッセージが透けて見える。


 ☆☆
地井さん、亡くなりましたね。この5月『ちい散歩』が休止でなく終了となった時点で、地井さんの病気が良くないのだなとは思ったのですが、残念。柏に来たときは駅近くの『飛龍』に立ち寄って、キャベツ入りメンチだったかな?を食べてました。あの市井との距離感覚が良かったんだけどなあ。残念。

 ☆☆
名古屋場所はじまりますね。次回は白鵬にからみ「武道」でなく、「<子ども>の現在」を書きたい思いとなっています。

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1 コメント

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忘れてはならないもの (リーガルハイ)
2013-07-20 12:39:05
傲っている者は、強い敵にあうと必ず怖れる心が
出てくる。たとえば、修羅は自分の力に傲っていたが、(祈って、仏の加護を得た)帝釈天に責められて、無熱池(という大池)の蓮の中に、小さくなって隠れたようなものである。

繰り返す

おごれる者は必ず強敵に値ておそるる心出来するなり例せば修羅のおごり帝釈にせめられて無熱池の
蓮の中に小身と成りて隠れしが如し(佐渡御書)
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