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「イヴの七人の娘たち」ブライアン・サイクス著

2013-03-17 14:25:54 | Book
現在、国立科学博物館で「グレートジャーニー 人類の旅」という特別企画展を開催している。
この展覧会のタイトル「グレートジャーニ」は、アフリカで誕生した人類が、世界中にひろがっていった人類最大の旅路を英国の考古学者ブライアン・M・フェイガンが名づけたところから由来している。それでは、私たちの遥かなる母はどこにいたのだろうか。

1991年9月19日、アルプス山脈でひとりの男性の遺体が発見された。やがて「アイスマン」と名づけられるその遺体は、なんと5000年前のヒトの死体だったのだ。 オックスフォード大学で人類遺伝学を研究している著者、ブライアン・サイクスのチームにその化石からDNAを採取する依頼がまいこんだ。彼は、その採取したDNAからアイスマンがヨーロッパ人であることを証明し、ラボに提供されている現代ヨーロッパ人のDNAのサンプルの中からぴったり一致する人物をも見つける。”彼女”は、アイスマンの親戚だったのだ。

それをきっかけに、著者はとぎれることのない遺伝的つながりをさかのぼっていくとたった7人の女性につながることにたどりついた。現代の6億5千万人のヨーロッパ人の共通祖先は、約4万5千年前から1万年前のある地域と時代に生まれた7人の母親からなる。

著者が彼女たちにたどりつくための重要な役割を果たしたのが、ミトコンドリアDNA。
その1.核遺伝子が父親と母親の両方から均等に受け継ぐが、ミトコンドリアDNAは母親のものしか受け継がない。
その2.娘をふたり以上出産している。(少々わかりにくいが、母系系列をつくってたどっていくと、5世代前の母親がふたりの娘を生んでいることが条件となっていく。)

本書の3分の2は、アイスマンの化石から採取したDNAから、7人のイヴにたどりつくまでの科学者としての、まさに”グレートジャーニ”の軌跡である。科学者たちとの熾烈にてシビアな戦いも伝わってくる。そして、ユーモラスな文章には、著者の科学者だけでなくなかなかの文才を感じさせられ、本書が世界中でベストセラーとなったことも頷ける。特に、後半の具体的に名前をつけられたアースラをはじめとした娘たちの暮らしぶり、キャラクターをおりこんだ物語はハリウッド映画風でもある。気になるのは、すでにこんな大昔から夫や男性に、今とそれほど変わらない恋愛感情をイヴたちがもちあわせていたということで物語が語られる点だ。異性への恋や愛は、高度な?テクニックだと思っていたけれど。

それは兎も角、誤解しやすいのは、イヴたちが人類最古の母というのではなく、ミトコンドリアDNAの追跡で現時点でたどれる祖先であることだ。ちなみに、瀬名秀明さんと太田成男さんの著書「ミトコンドリアのちから」によると、すべての現代人は約14万3000年前のアフリカに存在した祖先集団に由来するという説が主流だそうだ。


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