千の天使がバスケットボールする

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フィラデルフィア管弦楽団

2010-04-27 22:12:32 | Classic
「フィラデルフィア管弦楽団」という単語に反応して、いつも私の中で鳴りはじめるのは何故かチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ ハ長調 作品48」。指揮は勿論、Eugene Ormandy 。人間の記憶と刷り込みというのは、つくづく不思議なものだと思う。最近の洗練されて輝かしいコンサートやCDよりも、こどもの頃何回も何回も聴いてきた少し鄙びて燻銀のようなオーマンディ指揮によるフィラデルフィア管弦楽団の演奏がとても好きだ。1900年に創立された名門、フィラデルフィア管弦楽団が迎えた音楽監督はわずか7名。ユージン・オーマンディは4代目で1936年から80年という実に驚くべき長期に渡って、米国のオーケストラを支えてきた。
そして、今。シャルル・デュトワが首席指揮者に就任し、来日してきた。人気指揮者が、このオケの伝統と革新をどのように聴かせてくれるのか。しかも、プログラムは最近気になるストラヴィンスキー。

御年70歳を超え、20歳以上年下のヴァイオリニストと4回目の結婚も無事?果たしたシャルル・デュトワ。N響時代よりもちょっとメタボがすすんでいるかと気になるが、全く”老い”というものを感じさせない堂々たるタキシード姿は、確かに千秋よりも絵になるかもしれない。そしてデュトワの手にかかった《火の鳥》は、迷いもなく明確な音楽。現代人にとっては生まれた時から当たり前のように受け入れてきた色彩豊かにたちあがる神秘性は豊かな美質に変幻され、この曲の当時の人々を驚嘆させた革新性は、ダイナミックで確かな技術に支えられて見事に披露された。そして、後半で演奏されたあの映画『シャネル・ストラヴィンスキー』で感じた土臭い《春の祭典》が、これほど”洗練された”音楽に聴こえてくるとは。初演でパリの紳士淑女を騒音と怒らせた不協和音とリズムが、先進性のあるまぎれもない美しさであることを感じさせられた。

ところで、デュトワは実際にストラヴィンスキーに会っているそうだ。1959年、飛行機で偶然隣り合わせだった人から、ニューヨークでストラヴィンスキーの自作自演を聴きに行くと聞かされ、一緒についていってしまった。非公開の練習のピアニストのひとりフォスがデュトワの作曲の師匠でもあったことから、10日あまりの練習と本番を含めて譜めくりを勤めることとなった。その時の思い出を彼はこう語っている。

「ストラヴィンスキーとはその時自由に話しましたが、第1次世界大戦の間、彼はスイスのモルジュに滞在して《兵士の物語》などを作曲しています。そこが私の生まれた村でもあったものだから話は尽きませんでした。その頃ストラヴィンスキーが住んでいた家には、アンセルメやピカソ、ディアギレフ、ニジンスキーといった伝説的な人物がよく集っていたそうです。私の宝石のような思い出のひとつですね。」

ストラヴィンスキーはデュトワらしい優雅さと洗練が感じられたが、これぞフィラデルフィア管弦楽団と胸にせまってきたのが、、アンコールで演奏されたシベリウスのワルツ。やわらかく美しく輝いていた。これぞ、オーマンディから受け継がれた伝統である。またその伝統を支えるオケの団員にアジア人がいることも米国オケらしいのか、それだけアジア人の台頭がめざましいのか。コンマスは、名前からすると韓国系、首席ヴィオラとチェロは中国系、他にも日本人の名前がちらほら。
それからオーケストラボックスの裏や安い席はおおかたうまっていたが、S席・A席の高価格の席は空席がめだっていた。世界的な不景気を感じさせられたのだが、音楽事務所でもこのような現象を打開することも一考されては如何だろうか。今回、C席をとった私が言えることではないが、良い席が安価な席よりも空席率が高いのはなんとなく気がひけて居心地悪いものである。

余談だが、プログラムに翌日予定されていたソリストのアルゲリッチが本人の家庭の都合により出演できなくなったとのチラシが同封されていた。なんでも三人の娘のうちの一人が、欧州での出産がせまっているそうだ。「娘の出産に立ち会いたい」という本能的な願い(my feeling)が強まっての突然の帰国となったようだ。さすがにアルゲリッチ!

------------10/4/27 「フィラデルフィア管弦楽団」 サントリーホール -----------

オーケストラ : フィラデルフィア管弦楽団
指揮 : シャルル・デュトワ

プログラム
ストラヴィンスキー: バレエ「火の鳥」
ストラヴィンスキー: バレエ「春の祭典」

■アンコール
シベリウス :悲しきワルツ op.44-1


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