菅直人前総理は2010年10月8日、新成長戦略の中で、突然TPPへの参加を検討すると発表、11月10日のAPEC閣僚会議の場で前原前外務大臣はTPPへの参加検討を正式表明しました。
事前の国会論議もなく、世論への問いかけもなく、民主党議員の多くも寝耳に水であったといいます。
本書はこうした手続き論の異常さに疑義を呈しつつ、問題の核心はTPPが日本の国益にならず、アメリカの輸出増強戦略におもねるだけのものと断罪しています。
著者はTPPが締結された場合のメリット、デメリットを大手製造業、商社、大手小売業、地域経済、政府や地方自治体との取引企業、地方自治体、農業、労働者(国民)のそれぞれについて点検した後に、TPPでメリットを享受できるのはグローバル企業であること、デメリットを被るのは大多数の国民であると結論付けています。
TPPは例外なき100%の市場開放が大前提であるので、関税は完全撤廃であり、手続きの簡素化は至上命令であり、それはTPP加盟国貿易の事実上の内国化に結果します。
農業が大打撃を受けるのはもとより、地方公共事業に関しても政府調達開放となるので海外企業が参加してくることが予想されます。100%の市場開放に抵触することは禁じ手となるので、外国人雇用は自由化せざるをえず、海外企業の流入で生活の質、安全の低下は必至です。
日本はTPP加盟に走らなくとも、FTA/EPAを拡充していけばよいのです。そこに利害対立があれば相手国と時間をかけて交渉しすればよく、個別交渉であれば農業や地方自治体への影響は最小限に抑えることが可能である、というわけです。
著者は関西圏に住んでいるので、TPP加盟がなった場合の影響を大阪、関西圏でどうなるかをシミュレートしています。実際に大阪の橋下知事が代表する大阪維新の会ではホームページで「大阪都構想について」という記事を公にしているので、著者はその内容を検討しています。TPPと大阪都構想は一卵性双生児というのが、検討結果です。
「平成の開国」とのスローガンでTPPの推進ばかりが先走りしているが、内容をもっと慎重に検討し、議論を深め、アメリカの思惑に安易にのってはいけないということだけは確かです。
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